心雑音を指摘されたら
当院の循環器内科では、学校や職場の健診で「心雑音あり」と診断を受けた多くの患者様が二次検査目的で受診されています。
心雑音と言われて大丈夫なのか、心臓に問題があるの?と大変不安な気持ちで受診される方が多いです。心雑音の原因を調べる検査には心臓超音波検査(心エコー検査)が最も有効な検査になります。心エコー検査では心臓の内部を観察し、心臓の動き、心臓の弁の異常、心臓の肥大、心臓の血流など様々な心臓の病気を見つけることができます。当院でも、これまで心エコー検査で心臓弁膜症など多くの心臓の病気が見つかっており、心雑音がある方は心エコー検査を受けることを強くお勧めします。心雑音を指摘された場合は、まずは当院の循環器外来までご相談ください。
心雑音とは
心雑音とは心臓の音に混じった雑音のことで、血液の移動の際に発生します。狭い隙間を血液が速い速度で通過すると振動して音が聞こえます。正常な心臓では心臓の弁が閉じるときの音が聞こえますが、心臓の中を血液が流れる音は聞こえないため、血液の流れる音が聞こえた場合には、心雑音として心臓に何らかの異常がある可能性が高くなります。心雑音の原因は様々ですが、一般的には心臓弁膜症のことが多いです。
心臓には4つの部屋があり、部屋から部屋に1心拍毎に60mlの血液が移動し、心臓弁膜症には、弁が狭くなること(狭窄症)が原因で血液の流れが速くなって生じる心雑音と、弁がきちんと閉じないこと(閉鎖不全症)によって血液が逆流する際に生じる心雑音があります。
また、心臓に異常がなくても、甲状腺機能亢進症では心臓の血液の拍出速度が上がるために心雑音が聞こえることがありますし、貧血では血液が薄くなって薄い分を血流を増やすことで全身に必要な酸素を送るために心雑音が聞こえることがあります。また、自律神経が興奮していると、心臓が活動過剰になっているときにもなどでも音が生じることもあります。その他では、動脈硬化で弁が狭くなっている時などに音がします。また、心臓の出口の筋肉が分厚くなっている状態でも音がします。弁が閉じずに血液が逆流を起こした際にも音がします。
心雑音の原因として考えられる病気
心臓にある4つの弁の仕組み
心臓には右心房・右心室・左心房・左心室の4つの部屋があり、全身から心臓に戻ってくる静脈血(酸素の少ない血液)は、右心房から右心室に入り、肺に送られます。
肺で酸素を取り込み動脈血(酸素の少ない血液)は、左心房から左心室を経由して大動脈から全身に送られます。
心臓には、右心房と右心室の間にある三尖弁、右心室の出口にある肺動脈弁、左心房と左心室の間にある僧帽弁、左心室の出口にある大動脈弁の4つの弁があります。弁には、逆流を防止する働きを持っています。
弁膜症
心臓には4つの弁があり、この弁が必要に応じて開閉することで効率よく全身へ血液を送り出していますが、その弁がうまく開閉しなくなる病気を心臓弁膜症と言います。弁の開きが悪くなり出口が狭くなる「狭窄症」と弁がきちんと閉じなくなり血液が逆流してしまう「閉鎖不全症」があり、「狭窄」と「閉鎖不全」が同時に起こることもあります。
弁膜症を起こす原因には、加齢、感染、先天的な問題など様々で、心臓弁膜症はどの弁にも起こりますが、大動脈弁と僧房弁とで9595%以上を占めるとされています。いずれの場合も、心エコー検査が最も有効な検査で、弁の開き具合や血流の速度や向きなどを確認することで、病気の有無を評価することが可能です。
大動脈弁狭窄症
大動脈弁が十分に開かないために、左心室から大動脈へ送られる血流が妨げられ、心臓から全身に血液が送り出しにくくなってしまう病気です。結果として、左心室には大きな負担がかかり、左室の壁が肥厚し、収縮力が弱まって心臓の機能が低下するようになります。
大動脈弁狭窄症では、胸痛、息切れ、動悸、足のむくみ、倦怠感、失神、呼吸困難などを起こすことがあります。大動脈弁狭窄症の特徴のひとつに、突然死があります。大動脈弁狭窄症が進行すると、突然死の危険性が高まります。症状を自覚してから2~3年で突然死するケースがあるので、要注意です。
大動脈弁閉鎖不全症
大動脈弁がきちんと閉じないために、大動脈へ送り出された血液が左心室側へ逆流します。逆流するため、左心室の負担が増えて、心臓が拡大してしまいます。胸痛、動悸、息切れ、呼吸困難などの症状を起こします。
僧帽弁閉鎖不全症
僧房弁がきちんと閉じないために、左心室から大動脈だけに送られる血液が左心房へ逆流します。左心房が拡大して、心房細動という不整脈を高頻度に合併します。
先天性心疾患
先天性心疾患とは、生まれつき心臓の構造に異常がある先天性の疾患です。先天性心疾患は数多くの種類に分類されますが、その中でも多いのは心房中隔欠損症や心室中隔欠損症という、心臓の中に小さな穴が開いている状態の疾患です。心房中隔欠損症は先天性心疾患の中でも、大人になってから最も多く見つかる疾患です。いずれの疾患も心エコー検査によって、本来は存在しない穴の存在や、血流の向きなどを見て診断を行うことが可能です。
お子様の定期検査等で心雑音を指摘された場合、多くは無害性である場合が多いですが、稀に先天性心疾患が原因の場合もありますので、心雑音が確認された場合は必ず心エコー精査を行うことが大切です。
甲状腺機能亢進症や貧血など心臓以外の原因
心臓に異常がないにも関わらず心雑音が聞こえる原因として、甲状腺機能亢進症、貧血、発熱、運動、妊娠などが考えられます。
貧血や発熱時、運動時などは、心臓の拍動が正常時よりも強くなるため、大動脈弁や肺動脈弁の開きが悪くなり、弁膜症の時と似たような心雑音が聞こえることがあります。
心臓に異常がない場合は、採血を行なって貧血や甲状腺ホルモンの状態を確認することもあります。
心雑音を指摘されても問題ないこともある?
機能性心雑音(無害性心雑音)
心臓の病気がないのに聞こえる雑音で、子供の3人に1人は静かな場所で聴くと心雑音があると言われ、心雑音の大半はこれにあたります。小学校に入るころには聞こえなくなることが多いですが、大人でもやせた人では聞こえることがあります。
健康な人でも聴かれ、病気ではない雑音を無害性心雑音といいます。雑音が聞こえる理由はいろいろありますが、心臓の血流が心臓の構造物にぶつかって生じる音であると言われています。しかし、心臓に異常がありませんので様子をみても問題ありません。
健診で心雑音を指摘されたとしても、全てが異常という訳ではありません。しかし、心雑音が確認された場合は、心臓に異常がある可能性もあるため、心エコー検査で病的雑音ではないことを確認する必要があります。心雑音を指摘された方は、まずは当院にご相談ください。