これらに当てはまる方は睡眠時無呼吸症候群に要注意
寝ているときにいびきをかいていると周りの方に指摘されたことはありませんか?
もしかしたら睡眠時無呼吸症候群かもしれません。以下の項目をチェックしてみましょう。
- いびきをかいていると指摘されたことがある
- 睡眠中に呼吸が止まっていると指摘されたことがある
- 日中に強い眠気と疲労を感じる
- 寝ても疲れが取れない
- 息苦しさで目覚めることがある
- 運転中に強い眠気を感じることが多い
- 起床時に頭痛を感じる
上記の症状のうち、1つでも当てはまれば睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。
少しでも不安に感じたら、お気軽に当院へお越し下さい。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome)とは、睡眠中に呼吸が止まってしまう病気です。通常、英語の頭文字をとってSAS(サス)と呼ばれます。無呼吸とは、医学的には10秒以上の呼吸停止があり、この無呼吸が1時間に5回以上、または7時間の睡眠中に30回以上ある場合に、睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
呼吸が止まることで、体内の酸素濃度が低下し、夜中に何度も目が覚めてしまいます。昼間の強い眠気が典型的な症状で、夜に十分睡眠をとったつもりなのに昼間にすっきりしない場合は睡眠時無呼吸症候群の可能性があります。SASが重症化すると、「倦怠感」や「日中の強い眠気」、「気分の落ち込み」「起床時の頭痛」などがあらわれ、勉強や仕事に支障をきたす可能性があります。さらに、血中酸素濃度の低下や睡眠不足によるストレスにより勃起障害(ED)の原因となったり、血糖値やコレステロール値も高くなり、高血圧や糖尿病、脂質異常症などさまざまな生活習慣病が引き起こされます。さらに血中酸素濃度の低下は動脈硬化も進めるため、健康な方と比較して、脳卒中、心筋梗塞などを引き起こす危険性が約3〜4倍高くなるといわれています。日本国内の推定患者数は900万人以上といわれていますが、自覚症状に乏しいため、実際に治療を受けているのは50万人に満たないとされています。この病気は早期治療によって劇的に改善することが多いです。周りの人にいびきや無呼吸を指摘された方はお気軽に当院へお越しください。
睡眠時無呼吸症候群の種類と原因
睡眠時無呼吸症候群は大きく以下の2種類に分類されます。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)
閉塞性睡眠時無呼吸症候群は、空気の通り道が狭くなり、気流が停止することで無呼吸となります。無呼吸になる病気です。空気の通り道の中でも、喉の部分が狭くなることが多いです。無呼吸中でも呼吸努力をするために、狭くなっている気道が振動して、いびきをかくことが特徴的です。成人男性の約3〜7%、女性の約2〜5%が罹患していると言われ、男性では40歳〜50歳代が半数以上を占める一方で、女性では閉経後に増加します。
中枢性睡眠時無呼吸(CSA)
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)のように上気道が部分的に、または完全に閉塞して呼吸が制限されるのとは異なり、CSAの患者様は中枢神経系に障害が生じています。そのため、脳の呼吸中枢で呼吸抑制が生じたり、吸気を促す信号が適切な関連部位へと伝達されなくなります。睡眠中に呼吸が止まってしまうのは、空気の通り道である気道が塞がってしまうからです。
一般的には、中枢性(CSA)よりも閉塞性(OSA)の方が多く、患者様の9割程度がOSAに該当します。
ここでは閉塞性タイプの睡眠時無呼吸症候群について解説します。
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)になる原因の1つは「肥満」といえます。体重増加により、のどに脂肪が蓄積して気道が狭くなるうえに、あおむけで寝ることでさらに気道が狭まるからです。この狭くなった気道を空気が通るたびに、大きないびきが起こります。この気道が完全に塞がれたときに、無呼吸となります。
実際に「肥満」はOSA患者様全体の60%以上にみられます。ただし、OSAは「肥満」の人だけにみられる病気ではありません。やせている人でも、「下あごが小さい」、「扁桃腺が大きい」などがあれば、気道が狭くなりやすいため、OSAの原因となります。やせている人も注意すべき病気ですが、ほかに、閉経後の女性や高齢者の方でもOSAは起こりやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群の検査と治療法
一般的に、以下の図の流れでSASの検査・治療を進めていきます。
当院では、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の診断を行うために、簡易型PSG検査(ポリソムノグラフィー)を導入しています。
AHIは無呼吸・低呼吸指数といい、5以上かつ日中の過眠などの症状を伴うと睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
AHIにより重症度が下記のように分類されております。
軽症:5~15
中等症:15~30
重症:30以上
簡易型PSG検査
簡易PSG検査はいびきや日中の眠気などがあり、睡眠時無呼吸症候群(SAS)が疑われる患者様に対して最初に行う検査です。
装置はコンパクトで、心拍数、酸素飽和度、および呼吸パターンなどの基本的な生理データを記録します。患者様は、寝る前に装置を装着し、普段通りに寝ます。
装置は通常、2種類のセンサーが取り付けられていて、指の小さなセンサーと、鼻のセンサーから構成されています。2つのセンサーによって、睡眠中の酸素レベルや呼吸のパターンを非常に正確に記録することができます。
簡易PSG検査は、自宅で検査ができる点が最大のメリットで、検査のために休暇をとったり、日常生活の予定をずらす必要はありません。患者様自身で検査装置を装着し、普段通りに就寝することで、睡眠中の呼吸状態などを記録します。簡易PSGによる検査は、装置を医療機関から借りた日の夜から開始できる点もメリットと言えるでしょう。簡易型PSG検査は原則として保険適用で、3割負担の場合の自己負担額は約2,700円です。
精密PSG検査
精密検査の装置は、簡易検査のセンサーに加え、脳波、胸部・腹部の換気運動なども記録します。多数のセンサーを付けますが、痛みはありません。しかし、ご自身で取り付けていただくので、やや複雑です。
簡易PSGとの違いは、総睡眠時間が測定できる点です。総睡眠時間中の無呼吸と低呼吸の合計数がわかるため、1時間あたりのAHIを正確に測ることができます。その他にも検査データから睡眠の質や無呼吸の種類、そのほか睡眠を妨げる症状などを確認します。
様々な情報を得ることができますが、やや複雑な方法ですので、簡易検査で異常があった場合や、居眠りで交通事故を起こしたことがあるなど重い睡眠時無呼吸症候群が疑われる方に行う検査方法です。
検査は、健康保険がご利用いただけますが、3割負担の方で約12,000円と高価です(別に診察代がかかります)。
ただし、入院して検査を行う場合、個室での入院になるため、3〜5万円程度かかる場合が多く、入院するよりは金銭的な負担は少ない検査です。
CPAP治療
当院は、CPAPの治療を行っています。CPAP療法とは、経鼻的持続陽圧呼吸療法といい、鼻にマスクを装着し、一晩中一定の気圧の空気を患者の気道に送り込むことで、寝ている間の無呼吸を防止します。睡眠時無呼吸症候群では、上気道を中心に気道が狭くなっているため空気の通りが悪くなることで低酸素になります。そのため、CPAP療法では狭くなった部分を広げるために、圧をかけて気道の通り道を確保する治療になります。患者様に適した空気圧を設定することで、質の良い睡眠が可能になり、日中の疲労感や頭痛、集中力の低下などの症状を改善することができます。
当院では、患者様一人ひとりの状態に合わせて、最適なマスクの選択や風圧の調整など、細かな設定を行っております。
運動療法
運動療法は、睡眠時無呼吸症候群の治療法の一つとして、近年注目を集めています。どのような運動が効果的かをご紹介します。 運動療法の主な目的は、体重の減少を促し、筋力を向上させることです。体重の減少により、上気道の圧迫が軽減され、無呼吸の回数が減ることが期待されます。また、筋力の向上により、寝ている間に筋肉が緩まないようになるため、上気道が閉塞しにくくなります。 運動療法に取り組む際には、以下のポイントが重要です。
- 無理をしすぎない
- 継続が鍵
- 自分に合った運動を選ぶ
それでは、睡眠時無呼吸症候群に効果的な運動をいくつかご紹介します。
ウォーキング
ウォーキングは、負担が少なく続けやすい運動です。また、心肺機能が向上し、循環器系の健康にも良い影響を与えます。血中の酸素供給を増加させるため、呼吸中枢の刺激につながり、正確かつ効果的な呼吸を促進します。
水泳
水泳は、全身を使った有酸素運動で、肺機能が向上する効果があります。さらに、水中では体重が軽減されるため、関節への 負担が減り、長期間続けられる運動と言えます。
ヨガ
ヨガは、呼吸法を意識することから、呼吸筋のトレーニングになり、肺機能の改善につながります。また、ストレス緩和やリラックス効果も期待できるため、睡眠の質を高める効果もあります。
筋トレ
簡単な筋力トレーニングは、体幹や喉周りの筋肉を鍛えることができます。呼吸筋を強化することで、気道の安定性を向上します。これにより、寝ている間の筋肉の緩みが軽減され、無呼吸の回数が減ることが期待されます。 運動は睡眠の質の向上にも寄与します。
運動はストレスホルモンの調整を行い、不安や緊張を軽減します。これにより、深い眠りに入りやすくなり、無呼吸の回数を減少させる効果があります。 最後に、運動療法は単独で睡眠時無呼吸症候群が改善するわけではありません。運動療法と併せて、生活習慣の見直しなど医師と相談して適切な治療法を選ぶことが大切です。継続的に取り組んでいきましょう。
著者
執筆者 松本 淳志
まつもと整形外科 院長
<経歴>
福岡大学医学部卒
済生会福岡総合病院
九州大学病院
九州医療センター
福岡赤十字病院
<保有資格>
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本フットケア学会認定フットケア指導士
<所属学会>
日本整形外科学会
日本感染症学会
日本フットケア・足病学会