不整脈とは心臓の鼓動が安定せず、脈拍が速くなったり遅くなったり、不規則になったり、脈のリズムがおかしくなる病気です。動悸や息切れ、胸痛などの自覚症状が現れるだけでなく、ほとんど自覚症状が出現しないケースもあります。放置すると失神や心不全になったり、なかには突然死に繋がりうる不整脈もありますので、疑いがある方は早めに循環器内科を受診しましょう。
不整脈の種類
不整脈は、症状の違いによって3種類に分けられます。
脈が乱れるタイプ
心房性期外収縮や心室性期外収縮など
急に脈が飛んだり、胸がドキッとすることがあります。正常に電気が流れるはずの別の部分から電気刺激が発生し、心房筋や心室筋が興奮することにより脈が飛びます。心配のいらないタイプの不整脈ですが、症状が強かったり繰り返し起こる場合は、薬剤治療やカテーテル治療が対象となることがあります。
脈が速くなるタイプ(頻脈)
洞性頻脈、発作性上室頻拍、心房細動、心房粗動、心室頻拍、心室細動、WPW症候群など
電気を作る洞結節という部分が、異常に刺激を出しすぎてしまったり、通常の電気回路とは別の回路ができて、そこを電気が回ることにより起こります。頻脈性不整脈には頻拍と細動があり、脈拍が1分に100回以上となるタイプが頻拍です。また、細動といって電気信号が250回以上送られることで、脈拍が不規則になるタイプもあります。脈が乱れるため動悸が出たり、脈が早すぎるために心臓が空打ちして脳に血流がうまく運べなくなり、失神することがあります。心房や心室に細動が起こると脳梗塞や突然死の危険性が高まり、一部の頻脈では死に至ることもまれではありません。
洞性頻脈
心臓の洞結節からの刺激が増えることで心拍が通常より速くなる状態です。運動後のリラックス時や、日常のストレス、カフェインの摂取などの生活習慣から起こるるものや、脱水、発熱、感染症、貧血、低酸素状態、心不全、内分泌系の異常など、医学的な問題まで様々な原因によって起こります。治療では、速い脈拍を遅らせるだけでなく、その根本的な原因を特定することが重要です。
発作性上室頻拍
洞性頻脈とは違って、病的な原因で心拍が突然速くなる現象です。この状態では、突然の動悸を感じることが多く、患者様の中には病院に到着するまでに症状が治まっていることがよくあります。診断は心電図により行われることが多く、症状の不定期な発現に対しては、ホルター心電図(24時間心電図検査)が有効です。発作性上室頻拍の治療には薬物療法がよく効くこともあり、症状が継続する場合はカテーテルアブレーションというより根本的な治療を受ける選択肢もあります。この治療法では、心臓の異常な電気信号を直接修正し、発作の予防を目指します。
心房細動
心臓の心房部分が不規則にブルブルと震えるように収縮します。この不規則な収縮は心臓の機能に影響を及ぼし、時には日常生活に支障をきたす症状が現れることがあります。この収縮により、血液が心房内でよどんで血栓(血の塊)ができやすくなります。この血栓が血流にのって脳の血管を塞いだ場合、脳梗塞が発生するリスクがあります。脳梗塞は重大な障害を引き起こす可能性があり、最悪の場合は命に関わることもあります。そのため、心房細動の患者様には通常、血液をサラサラにする抗凝固薬の服用が推奨されます。無症状である場合も多いので、定期的な健康診断や心電図検査が重要です。また、自身で脈をチェックする(検脈)ことも有効な対策とされています。
心房細動の治療は心不全の予防にも繋がります。治療方法には薬物治療や、より根本的なカテーテルアブレーションが含まれます。これらの治療により、心房細動の症状管理と合併症のリスクを軽減できます。
脈が遅くなるタイプ(徐脈)
心臓内での電気信号の生成が減少するか、適切に伝達されないことで発生します。これにより、心臓の鼓動の数が通常より少なくなり、結果として脈が遅くなります。脈拍の回数は通常、1分間に60〜100回程度ですが、徐脈では50回以下になる場合があります。心拍数の減少は、全身への血流に影響を及ぼし、倦怠感や失神の原因となることがあります。徐脈の原因は様々で、特定の疾患や脈を遅らせる薬の使用が挙げられます。原因が特定された場合は、その治療が優先されます。また、原因が特定できない場合、徐脈は自然な老化プロセスの一部と考えられることもあり、そのような状況ではペースメーカーの挿入が治療の選択肢となることがあります。
洞不全症候群
心臓のペースメーカー部分(洞結節)に異常が生じることで心拍数が低下する病気です。症状はみられない場合もあれば、脱力感や疲労、動悸がみられる場合もあります。
房室ブロック
心房と心室を連絡するつなぎ目部分の房室結節で電気が伝わりにくくなり、心拍数が低下する病気です。完全に脈が途絶してもかろうじて心臓が動いていることもあり、ペースメーカ治療を急ぐ場合もあります。
不整脈の検査
心電図
最も一般的な検査で、体の表面から心臓に流れている電気の流れを調べます。ベッドの上で静かに寝て、心電図を記録することで、不整脈や心筋障害の有無などを調べることができます。所要時間は1分間程度です。
24時間ホルター心電図
24時間連続記録する心電図検査です。通常の心電図検査では心臓に発作が起こった時でないとその変化を捉えられません。24時間ホルター心電図では1日分の心電図を記録するため、どのような不整脈がいつ、何をしているときに起こるのかを調べることができます。
不整脈の治療
カテーテルアブレーション
心房細動、心室頻拍、WPW症候群、発作性上室性頻拍といった病気の場合、不整脈となる興奮を起こしている箇所を焼き切るカテーテルアブレーションという治療があります。そのような特殊な治療が必要な場合は、近隣の総合病院を紹介して受診していただくこともあります。
ペースメーカー治療
ペースメーカーは、基本的には徐脈性不整脈に対する治療法で、心臓に一定のリズムで電気刺激を与える機器です。ペースメーカーを植え込むことによって、正常な心臓の拍動リズムを取り戻すことができます。
ホルター心電図などの検査によって危険な不整脈が認められた場合には、ペースメーカーも検討できるよう、大きな医療機関に紹介します。