糖尿病の治療は当院へ
当院は、地域のかかりつけ医として「初めて糖尿病の可能性を指摘された」患者様にも多くお越しいただいています。糖尿病の治療と聞くと「不摂生な生活を怒られるだけでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。しかし、糖尿病は早期から適切な治療を行うことにより、合併症の発症リスクを抑え、健康寿命(自立して活動し、健康に過ごせる期間)を延ばすことができます。
少しでも不安のある方は、当院へお気軽にお越しください。
糖尿病とは
糖尿病とは、日常生活のエネルギー源であるブドウ糖が、何らかの原因により、細胞にうまく運ばれないためブドウ糖が血液中に過剰に残ってしまう状態(高血糖)となる慢性疾患です。血糖は生きていく上で非常に大事なものですが、あればあるほどいいというわけではありません。血糖値が高いまま放置されると、身体全体の血管が傷つき、合併症が引き起こされ、健康に様々な悪影響を及ぼします。血糖値を管理し、このような合併症を防ぐことが、糖尿病治療の主な目的になります。
しかし、糖尿病には大きな問題点があります。それは「症状が全くでない」ということです。そのため、自身が糖尿病であることに気付かない人が多いのです。また、すでに糖尿病と診断されていても、症状に気付かないために治療が遅れるケースも多く見受けられます。糖尿病は「サイレントキラー」とも呼ばれ、知らぬ間に身体をむしばんでいく恐ろしい病気なのです。結果的に、脳梗塞や心筋梗塞などの糖尿病合併症を若年で引き起こす恐れがあります。
糖尿病合併症は非常に怖いものですし、ある程度のところまで進行してしまうと、残念ながら元の健康な状態に戻すことが非常に難しくなってしまいます。しかし、糖尿病を早期に発見し、治療を始めることで、その後の健康状態の改善が期待できます。症状がないからこそ、定期的な診療と検査を受けることが重要となります。
糖尿病になる原因と症状
糖尿病には大きく4つの種類があり、それぞれ発症の原因が異なります。
以下に、それぞれの原因と症状を紹介します。
2型糖尿病
2型糖尿病は最も一般的な糖尿病で、日本では10人中9人はこのタイプに当てはまります。
原因
2型糖尿病は、以下のような人に起こりやすいことが分かっています。
- 加齢(40歳以上から特に)
- 肥満体型
- 家族に糖尿病の人がいる
- 著しい運動不足
- ストレス
- 過食・早食い
症状
2型糖尿病は、初期段階においては自覚症状が無いことが多く、「糖尿病合併症」が進行することにより、以下のような症状が少しずつあらわれます。
- 疲労感、倦怠感
- のどが渇く
- すぐお腹がすく
- よく食べても痩せる
- 頻尿
- 尿が泡立つ
- 手足がしびれる
- 感染症によくかかる
- 目がかすむ
- 性機能の問題(ED)
- 皮膚の傷が治りにくい
1型糖尿病
原因
1型糖尿病は、自己免疫によっておこる病気で膵臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が、壊されてしまう病気です。自己免疫がβ細胞を破壊するきっかけは現代においても、未だはっきり解明・特定されていません。
症状
- 倦怠感
- 口渇(のどが渇く)
- 多飲
- 多尿
- 急激な体重減少
妊娠糖尿病
原因
体内の血糖はインスリンというホルモンにより管理されています。妊娠すると赤ちゃんにブドウ糖を供給するため胎盤からインスリンを抑えるホルモンが分泌されるようになります。このようなホルモンによってインスリンの効き目が低下することをインスリン抵抗性といいます。2型糖尿病になりやすい遺伝的な素因があったり、妊娠によるインスリン抵抗性が加わった際に、インスリンの作用が低下し、通常時よりも血糖値が上がりやすくなります。このようにインスリンがうまく機能しないことにより、妊娠糖尿病を発症します。妊娠糖尿病は妊娠していることが原因で起こる糖尿病なので、出産後には血糖が正常に戻ることが多いのも特徴の1つです。脂肪組織はインスリンの働きを抑えるサイトカインを分泌するため、肥満の人は糖尿病になりやすい傾向にあります。妊娠中の女性は体重増加に伴って脂肪がつきやすく、インスリン抵抗性も加わるために糖尿病にかかるリスクが高まります。
症状
妊娠糖尿病は通常の糖尿病と同様に自覚症状がほとんどありません。しかし、自覚症状がなくとも妊婦や赤ちゃんにとって重篤な病気を誘発する可能性があります。
その他
原因
その他の糖尿病には以下の2種類の原因が考えられます。
単一の遺伝子異常によって引き起こされるもの
遺伝子の異常はインスリンを作り出す過程や作用する過程に異常をきたすことがわかっています。
ほかの病気や薬剤の影響で起こるもの
二次性糖尿病とは、何らかの病気や薬剤の投与が原因となって起こる糖尿病のことをいいます。二次性糖尿病は病気や薬剤投与によって、インスリンのバランスが崩れることで発症します。
二次性糖尿病の原因となる病気には以下のようなものがあります。
1.内分泌疾患
- クッシング症候群
- 甲状腺機能亢進症(バセドウ病)
- 先端巨大症
- グルカゴノーマ
- アルドステロン症
- 褐色細胞腫
2.膵臓疾患
3.肝臓疾患
【二次性糖尿病の原因となる薬剤】
二次性糖尿病の原因となる薬剤には以下のようなものがあります。
症状
その他の糖尿病も通常の糖尿病と同様に自覚症状がない場合が多いです。
糖尿病の合併症
糖尿病は血糖値が高くなる病気です。しかし、高血糖だからと言って特別な自覚症状があらわれることはあまりありません。ではなぜ治療が必要なのでしょうか?
それは、糖尿病の治療が十分でないと、気付かぬうちに、様々な病気(糖尿病合併症)を引き起こし、健康に悪影響を及ぼす恐れがあるからです。
動脈硬化性の病気
高血糖の状態が続くと、動脈は血管の壁が傷つけられ、炎症を繰り返すことで硬く、もろくなっていきます。これを動脈硬化と呼びます。動脈硬化によって血管が詰まって栄養である血液が流れなくなると、その先にある臓器がダメージを受けます。
心臓に流れる血管が障害されると狭心症や心筋梗塞、脳に流れる血管が障害されると脳梗塞、足に流れる血管が障害されると足壊疽となります。
動脈硬化の進行を防ぐためには、食事後の血糖値の急上昇、高血圧、脂質異常症、肥満を適切に管理することが大切です。中でも、食事後の血糖値の急上昇は特に動脈硬化のリスクを高めるため、注意が必要です。
糖尿病を治療しない状態が続くと、糖尿病の「三大合併症」が起こると言われています。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症は成人後の主要な失明原因の一つです。
「糖尿病で失明なんてありえるの…?」と、思われた方も少なくないことでしょう。しかし、糖尿病網膜症により、失明してしまう人は毎年3,000人と多く、成人後の失明原因のトップなのです。糖尿病性網膜症は初期の段階では自覚症状が無く、その間にじわじわと進行し、自覚症状が出たときには手遅れのことが多く我が国の失明原因の第1位となっています。このような事態を防ぐためにも、少なくとも年に1回の眼底検査を行いましょう。
糖尿病神経障害
糖尿病神経障害は高血糖によって神経が障害されることによって引き起こされます。多くの場合、手足のしびれが生じ、感覚が鈍くなると、怪我に気づきにくかったり、熱さに気づかず火傷を起こすこともあります。自覚症状がある場合は、早めに当院へご相談ください。
糖尿病腎症
糖尿病腎症は透析が必要になる原因の第一位です。高血糖で血糖値の高い状態が長期間続くと、動脈硬化が進行し始め、毛細血管の塊である腎臓の糸球体内の細い血管が障害され糖尿病腎症が発症します。糖尿病性腎症になると血液中に不純物が溜まり命の危険が生じます。そうなった場合、血液透析の治療を始める必要に迫られます。
糖尿病の治療
糖尿病の治療には、1.食事療法、2.運動療法、3.薬物治療(経口薬、注射薬)があります。
糖尿病治療において大切なことは「適切な治療」を「継続」することです。糖尿病は「完治する」病気ではありません。
長期的な目標は、病気をコントロールし、合併症を防ぎ、健康な人と同じように生活することです。「適切な治療法」は私たち医療専門家が提供し、「継続」するのは患者様自身です。どんなに良い治療法であっても、継続できなければ意味がありません。だからこそ、「無理のない治療」を行いつつ、「定期的に通院する」ことが重要です。
食事療法
糖尿病にとって、食事療法は治療の基本であり、薬物治療やインスリン治療と並んで重要な要素となります。適切な食事療法を行うことで、血糖値のコントロールが可能となり、病状の悪化を防ぐことができます。糖尿病の食事療法において、特に注意すべきポイントを以下にご紹介します。
食事のポイント
主食の選択
高血糖を避けるために、糖質の摂取量を抑えることが重要です。白米の代わりに雑穀米や玄米を選択するなど、糖質の種類や量に配慮しましょう。
たんぱく質のバランス
肉や魚、大豆製品などのたんぱく質は、適度な量を摂取することが大切です。たんぱく質をバランス良く摂取することで、筋肉量の維持や免疫力向上に役立ちます。
野菜や果物の摂取
野菜や果物は食物繊維が豊富で、血糖値上昇を緩やかにする効果があります。また、ビタミンやミネラルが豊富で、免疫力を高める働きもあります。
脂質の質の確保
脂質はエネルギー源であるだけでなく、細胞の構成成分でもあります。不飽和脂肪酸を多く含むオリーブオイルやアボカドなどを積極的に摂取し、飽和脂肪酸が多い動物性脂肪は控えましょう。
塩分の摂取量の抑制
糖尿病患者は、高血圧や動脈硬化のリスクが高まることがあります。そのため、塩分の摂取量を適切な範囲に抑えることが重要です。
食事療法のコツ
- ゆっくり、よく噛んで食べる。
- 毎日、1日3食(朝食、昼食、夕食)を規則正しく食べる。
- バランスよく食べる。
- 食事は食べ過ぎず、腹八分にする。
- 寝る前には食べない。
- 菓子や清涼飲料などの砂糖の多い食品は控えましょう。
食品交換表を活用したカロリーの計算方法
糖尿病の食事療法では80kcalを1単位として計算する食品交換表を活用したカロリーの計算を行います。食べる量をはかる「ものさし」です。 食品のカロリー計算は、栄養管理や健康維持に役立つ重要な情報です。それでは、カロリー計算の方法を見ていきましょう。
食品交換表は、糖尿病患者が食事療法において、血糖コントロールや栄養バランスを適切に管理するためのツールです。食品交換表は、主食・肉・魚・卵・大豆・乳製品・野菜・果物・海藻・炭水化物などの主要な食品群に分類され、それぞれの食品に対応する交換単位が設定されています。
食品交換表の利用方法は、まず自分の必要なエネルギーや栄養素の摂取量を計算し、それに応じて各食品群から適切な交換単位を選びます。次に、食品交換表を参考に、各食品の交換単位に応じた量を摂取することで、適切なカロリー摂取や血糖コントロールが可能となります。
【1日に必要なエネルギー量】
1日あたりの適正なエネルギー量の計算には、下記の式が用いられます。
エネルギー摂取量(kcal)= 身体活動量 × 標準体重
※1 身体活動量(kcal)
※2 標準体重(kg) = 身長(m)× 身長(m) × 22
軽い労作 |
25~30(kcal/kg目標体重) |
普通の労作 |
30~35(kcal/kg目標体重) |
重い労作 |
35~(kcal/kg目標体重) |
減塩で糖尿病リスク軽減!効果的な摂取量と工夫
日本人の摂取塩分量は高く、高血圧や腎臓病の原因となることから、厚生労働省は1日当たりの摂取目標量を食塩相当量として18 歳以上の成人男性で7.5g 未満、女性で6.5g 未満と設定しています。しかし、外食や加工食品の利用が増える中、塩分摂取を減らすことが難しくなっています。ここで役立つのが、日常の食生活での工夫です。
具体的には..
- 食材や調味料の選び方に注意
- 野菜や果物を多く摂る
- 塩分が少ない調理法を取り入れる(例:蒸し料理、煮物など)
- 醤油や味噌等の調味料を減らす
食事のバランスや栄養の意識も大切です。ナトリウムだけでなく、カリウムや水分の摂取にも注意しましょう。また、定期的に血圧を測るなど健康管理も欠かさないようにしてください。自分に適切な塩分摂取量を知り、健康的な食生活を送りましょう。
糖尿病の食事療法は、患者様の年齢や体重、運動量などによっても異なります。個々の状況に合わせて、医師や栄養士・看護師と相談しながら食事療法を進めることが望ましいです。継続的に適切な食事療法を行うことで、糖尿病の予防・改善に大きく寄与します。
運動療法
糖尿病の患者様が運動療法を実践する際に注意すべきポイントや具体的な方法について解説します。
まずはじめに、糖尿病患者が運動療法を行う際の基本的な考え方をお伝えします。運動療法は、安全性を確保しながら、楽しく続けられることが大切です。以下に、運動療法の5つの基本原則をご紹介します。
- 医師と相談して、適切な運動プランを立てること。
- 運動の強度や持続時間を、自分の体調や病状に合わせて調整すること。
- 運動を始める前に、十分なウォーミングアップを行い、終了後にクールダウンを行うこと。
- 血糖値が250mg/dL以上の場合は、運動前に血糖値を下げること。
- 運動中や運動後に、適度な水分補給を行うこと。
次に、糖尿病患者に適した運動方法をいくつかご紹介します。
有酸素運動
有酸素運動は、心拍数を上げて行う運動で、体内の酸素を効率良く利用することが特徴です。ウォーキングやジョギング、水泳、サイクリングなどが代表的な有酸素運動です。週に最低3回、1回30分以上の運動を心掛けることが望ましいです。
筋力トレーニング
筋力トレーニングは、筋肉の力を使って行われる運動で、糖尿病患者の血糖値コントロールに非常に効果的です。ダンベルやエクササイズバンド等の器具を使う場合もありますが、自分の体重だけで行えるトレーニングもあります。筋力トレーニングは週に2~3回行うことが望ましいです。
柔軟性エクササイズ
柔軟性エクササイズは、筋肉や関節の柔軟性を高める運動です。ストレッチングやヨガ、ピラティスなどが代表的な柔軟性エクササイズです。柔軟性エクササイズは、筋肉の緊張を和らげ、関節の可動域を広げるため、運動療法の効果を高める役割があります。
バランスエクササイズ
バランスエクササイズは、身体のバランス感覚を鍛える運動です。糖尿病患者は、バランス感覚の低下が起こることがあるため、バランスエクササイズを取り入れることが有益です。立ったまま片足立ちを行うなど、簡単なバランスエクササイズから始めましょう。
これらの運動療法を組み合わせることで、糖尿病患者は血糖値コントロールや健康維持に役立てることができます。運動療法は、継続して行うことが大切です。日々の生活に運動を取り入れ、健康的な生活を送りましょう。
薬物療法
食事療法と運動療法を2-3か月継続しているにもかかわらず、良好な血糖コントロールが得られない場合、薬物療法を行う必要があります。薬物療法には経口薬と、大きく注射薬があります。
経口薬
現在、日本では多くの経口薬を使用することができます。1種類だけではなく、複数の経口薬を組み合わせることで、良好な血糖コントロールが期待できます。
注射薬
1型糖尿病の患者様では、インスリン注射による治療が一般的です。2型糖尿病の患者様の場合、食事療法・運動療法・経口薬で治療しても効果が見込めないときにインスリン注射を開始する場合が多いです。