こんにちは。久留米市安武町にある「まつもと整形外科」院長の松本淳志です。
当院は久留米市を中心に、年間1,000名以上の交通事故に遭われた患者様の治療・リハビリテーションをサポートさせていただいております。
日々の診療の中で強く感じるのは、交通事故の被害者の方は「むち打ち」や打撲といったお身体の強い痛みだけでなく、「治療費は誰が払うのか」「保険会社とのやり取りはどうすればいいのか」という、経済的・心理的な不安を抱えておられるということです。
心身のストレスは、治療に専念できずに痛みの回復を遅らせる要因にもなります。
そこで今回から3回にわたり、交通事故に遭われた方が必ず知っておくべき「自賠責保険」と、それにまつわる重要な制度について、医師の視点から分かりやすく解説していきます。
第1回のテーマは、最もご質問の多い「自賠責保険の基本」と「一括対応の仕組み」についてです。
目次
保険の構造は「2階建て」
まず知っておいていただきたいのが、交通事故の賠償金や治療費を支える日本の保険制度は、大きく分けて「自賠責保険」と「任意保険」の2階建て構造になっているということです。
1階部分:自賠責保険(強制保険)
すべての車・バイクに加入が義務付けられている、被害者救済のための最低限の補償です。
2階部分:任意保険
自賠責保険の補償上限を超えた分をカバーするために、加害者が任意で加入している保険です。
そもそも「自賠責保険」とは何か?
自動車やバイク(原動機付自転車を含む)を所有・運転する際、法律によってすべての運転者に加入が義務付けられているのが「自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)」です。
別名「強制保険」とも呼ばれており、加入が強制的に義務付けられているため未加入のまま公道を走行することは法律で厳しく罰せられます。
なぜ国がすべての人に加入を強制しているのかというと、最大の目的は交通事故の被害者を救済するためです。
万が一、事故を起こした加害者に十分な支払い能力がなかったり、任意保険に加入していなかったりした場合でも、被害者が泣き寝入りすることなく、国が定めた基準に従って適切に補償を受けられるよう、社会的なセーフティネットとして機能しています。
ただし、あくまで「最低限の被害者救済」を目的としているため、補償の対象は「人への損害(対人賠償)」に限定されています。
車の修理代や壊れたガードレールの弁償といった「物への損害(対物賠償)」は一切対象外となります。
被害者の方のケガの治療費、通院にかかる交通費、仕事を休んだことによる休業損害、そして精神的苦痛に対する慰謝料などは、原則としてこの自賠責保険の枠組みの中から支払われます。しかし、傷害(ケガ)による損害の場合、支払い上限額は被害者1名につき「120万円まで」と厳格に定められている点も、知っておくべき重要なポイントです。
患者様の窓口負担が「0円」になる「一括対応」という制度
交通事故でケガをして整形外科を受診した場合、一般的な健康保険を使った通常の診療とは異なり、自由診療(自費)となるのが原則です。
もし、患者様ご自身で自賠責保険に直接請求を行おうとする(これを「被害者請求」と呼びます)と、窓口で高額な治療費を全額立て替え払いし、後日、領収書や診断書を揃えて保険会社に請求するという非常に煩雑な手続きが必要になります。
ただでさえケガで苦しんでいる時に、このような経済的・時間的負担を強いることは現実的ではありませんし、安心して治療に専念することができません。
そこで一般的に広く利用されているのが「一括対応(任意一括対応)」という仕組みです。
一括対応とは、加害者が加入している「任意保険会社」が、自賠責保険の補償分も含めて一括し窓口となり、医療機関(当院)へ直接治療費を支払う制度です。
【一括対応の流れ】
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患者様が加害者の任意保険会社へ「まつもと整形外科で治療を受けます」と連絡する。
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保険会社から当院へ、治療費を負担する旨の連絡が入る。
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当院での治療開始
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毎月の治療費は、当院から保険会社へ直接請求する。
この一括対応の仕組みが機能することで、患者様は窓口での負担金が発生せず、「窓口での自己負担0円」で、安心して治療やリハビリに専念することができるのです。
※事故が夜間や休日に起きた場合など、加害者の保険会社とすぐに連絡がつかないケースも多々あります。その場合、保険会社と連絡がつかなくても、当院を受診していただくことは可能です。
決して痛みを我慢したり、受診を後回しにしたりしないでください。
まずはご来院いただき、後日保険会社との連絡がつき次第、窓口負担0円の「一括対応」へ切り替えることができますのでご安心ください。

一括対応を利用する3つのメリット
被害者にとって、一括対応を利用することには以下のメリットがあります。
① 窓口負担0円(窓口での自己負担がない)
窓口での自己負担金がないので、治療に専念できることです。お金がないから治療ができないと諦める必要はなく、手持ちの現金を心配することなく、早期に適切な医療を受けることができます。
② 煩雑な手続きを保険会社に一任
事故直後の心身ともに辛い時期に、複雑な書類作成を行う必要はありません。一括対応なら自賠責保険への請求なども保険会社が代行するため、事務的な負担を大幅に減らすことができます。
③ 治療に専念できる精神的なゆとり
費用や手続きのストレスから解放されることで、最も大切な「ご自身の身体を治すこと」に集中していただけます。
一括対応の注意点とデメリット
一括対応は便利な反面、あくまで加害者側の「任意保険会社の独自サービス」であり、法的な義務はありません。
そのため、以下のような注意点が存在します。
① 治療費の「打ち切り」打診
最も多いトラブルが治療費の打ち切りです。
保険会社は支払いを抑える傾向があるため、むち打ち等では、症状が残っていても事故から3〜4ヶ月ほどで「症状固定」や「対応の終了」を打診してくるケースが少なくありません。
まだ、症状が残っていて治っていない状態で治療終了の打ち切り打診があることで患者様と保険会社で溝ができることがあります。
② 利用できないケースがある
被害者側の過失割合が大きい場合(信号無視など)や、そもそも加害者が任意保険に未加入の場合、一括対応は利用できません。
③ 接骨院のみの通院は補償面でリスクがある
接骨院(整骨院)は医療機関ではないため、接骨院のみで治療を続けると、治療費や休業補償、後遺障害といった補償を適切に受けられなくなる可能性があります。
併用する場合は、必ず週1回は整形外科に通院する必要がある。
一括対応をスムーズに受けるための「整形外科受診」の重要性
ここで非常に重要なポイントがあります。
この一括対応という便利な制度は、保険会社のサービス(任意)で行われているものであり、法的な義務ではありません。
保険会社が「この治療は交通事故によるケガを治すために医学的に必要かつ妥当である」と判断した場合にのみ継続されます。
そのためには、事故直後に必ず「整形外科(医師)」を受診し、レントゲン検査や診察を受けて、「診断書」を作成してもらう必要があります。
当院では、交通事故治療に実績のある整形外科専門医による診断はもちろんのこと、約80名のスタッフ体制のもと、理学療法士・作業療法士・柔道整復師・鍼灸師などの国家資格を持つセラピストが多数在籍しており、医学的根拠に基づいた専門性の高いリハビリテーションを提供しています。
年間1,000名以上という豊富な交通事故診療の実績があるからこそ、保険会社に対しても「なぜこの治療やリハビリが、この期間必要なのか」を的確に記載した書類を作成し、患者様が不当に早期に治療を打ち切られることがないようサポートするように努めています。

治療の打ち切り(一括対応の終了)を打診されたら
治療を続けて数ヶ月経つと、保険会社から「そろそろ治療を終了(症状固定)しませんか」「来月で一括対応を打ち切ります」と連絡が来ることがあります。
保険会社は患者様の回復状況の確認、治療の進捗状況を確認するために、患者様に連絡する必要があり、これは一般的な流れになります。
もし、まだ痛みや不調があり治療の継続を希望される場合は、一人で悩まず、まずは主治医にご相談ください。
医師が「継続的な治療が必要」と判断した場合、保険会社へ伝えることで一括対応の期間が延長されるケースもあります。
仮に一括対応が終了となった場合でも、治療を諦める必要はありません。以下のような方法で通院を継続できます。
・健康保険へ切り替えての治療(※「第三者行為による傷病届」の提出が必要です)
・自費治療としての継続
これらの方法で治療を続けた後、自賠責保険へ「被害者請求」を行うことで、かかった費用が補償される可能性があります。
ただし、被害者請求の手続きは複雑なため、弁護士への依頼が一般的です。ご自身の保険に「弁護士費用特約」が付いていれば、自己負担なしで依頼が可能です。
最も大切なのは、ご自身の状態に合わせて適切な医療を最後まで受け切ることです。
治療方針やお手続きに関して不安なことがあれば、いつでも医師やスタッフにご相談ください。
おわりに
交通事故の治療は、初期の正確な診断と、継続的で適切なリハビリテーションが後遺症を残さないための鍵となります。
「自賠責保険」「一括対応」の仕組みを正しく理解し、余計なストレスなく治療に専念できる環境を整えましょう。
次回、シリーズ第2回では、万が一痛みが残ってしまった場合に極めて重要となる「後遺障害診断書(特に最も多い14級障害)」について詳しく解説いたします。
久留米市周辺で交通事故に遭われ、お困りの方は、どうぞお早めにまつもと整形外科へご相談ください。
皆様のご来院を、スタッフ一同心よりお待ちしております。















