【執筆】
この記事は、福岡県久留米市安武町の「まつもと整形外科」院長 松本淳志(整形外科専門医)が執筆しています。
整形外科疾患、交通事故によるむちうちやケガの治療、リハビリテーションについて、医学的な見地から正しい情報をお届けします。
目次
はじめに
車同士の軽い接触事故や追突事故に遭った際、お車へのダメージが少なく、その場では目立った外傷や出血がないと、「今回は車が少しへこんだだけだから、警察には物損事故として届け出ればいいだろう」「大したケガもなさそうだし、病院に行く必要はないかな」と自己判断してしまいがちです。
しかし、交通事故の手続きや医療の現場において、「物損事故だからお身体は無傷である」とは決して言い切れません。
事故直後は何ともないと思っていても、数日経ってから首や腰に激しい痛みやしびれが現れ、日常生活に支障をきたすケースは非常に多く見られます。
まつもと整形外科では、交通事故に巻き込まれた患者さまが後遺症に悩まされることなく、安心して心身の健康を取り戻せるよう、専門的なアプローチによる治療と確かな情報発信に注力しています。
交通事故における「物損事故」と「人身事故」の違いとは?
交通事故は、法的な取り扱いにおいて大きく「物損事故」と「人身事故」の2種類に分類されます。
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物損事故(物件事故)
事故によって、お車やガードレール、電柱など「物」だけが破損し、乗員や歩行者などの「人」にはケガがなかったと処理される事故です。
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人身事故:
事故によって、軽傷・重傷を問わず「人」がケガをしたり、亡くなったりした場合に扱われる事故です。
事故の直後、現場に駆けつけた警察官から「目立ったお怪我がないようでしたら、ひとまず物損事故として処理しておきますね」と言われるケースは珍しくありません。
しかし、これはあくまで「事故発生のその瞬間」における見た目の判断に過ぎません。
医学的な観点から見ると、物損事故として処理されたからといって、必ずしも身体にお怪我がなかったということではありません。
物損事故でも整形外科を受診すべき3つの理由
たとえお車の傷が小さく、現場で物損事故として処理されたとしても、事故後はできるだけ早期に整形外科を受診し、医師の診察を受ける必要があります。
それには以下の3つの重要な医学的・手続き的な理由があります。
① お身体の痛みや違和感は「遅れてやってくる」から
交通事故に遭った直後は、誰しもが突然の出来事に気が動転し、極度の緊張状態(興奮状態)に陥ります。
そのため、首や腰の靭帯、筋肉、神経に大きなダメージを受けていたとしても、その場では「どこも痛くない」「軽い違和感しかない」と錯覚してしまうのです。
事故から翌日、あるいは数日が経過して精神的な緊張が解けた頃に、急に激しい首の痛み(むち打ち症)や頭痛、腰痛、めまい、しびれといった症状が一気に襲ってくるケースは後を絶ちません。
「物損事故だからケガをしていない」と自己判断せず、整形外科を受診してお身体にダメージが隠れていないかをしっかりと確認してもらうことが大切です。
② 事故との「因果関係」を証明できなくなるリスクがあるから
現場で物損事故として処理されていたとしても、後からお身体に痛みが出た場合は、医療機関が発行する「診断書」を警察へ提出することで、「人身事故(ケガを伴う事故)」へと切り替えることができます。
しかし、事故に遭った日から初診までに1週間や2週間といった長い期間が空いてしまうと、医学的にも手続き的にも「その痛みは本当にあの時の交通事故が原因(因果関係)なのか、それとも日常生活や仕事、加齢による痛みなのか」の区別がつきにくくなってしまいます。
その結果、保険会社から交通事故によるお怪我としての因果関係を認めてもらうことが難しくなり、治療費などの支払い対象から外れてしまうという大きなリスクが生じてしまいます。
③ 初期段階での適切な処置が「後遺障害」を防ぐから
交通事故による「むち打ち症(頸椎捻挫)」などは、骨折とは異なり、外見からは目立った傷がないため、周囲からはもちろんご自身でもお怪我の深刻さに気づきにくいという特徴があります。
だからこそ、初期の段階でまつもと整形外科のような交通事故治療に実績のある整形外科を受診し、レントゲン検査を受け、医師の診察による客観的な記録(カルテ)をしっかりと残した上で、適切な投薬や物理療法(電気治療)、専門的なリハビリテーションを開始することが極めて重要です。
「物損事故だから」「軽い違和感だけだから」と放置して治療のスタートが遅れると、お身体の深部で起きた微細な筋肉や靭帯の炎症が慢性化し、将来的に長引く痛みや手のしびれといった重い後遺症(後遺障害)として残ってしまう可能性が高くなります。
お車に傷がついたということは、それを受け止めた乗員の皆さまのお身体にも、それなりの強いエネルギー(衝撃)が加わっているという決定的な証拠です。

物損事故のままで通院する場合のポイントと補償の知識
「物損事故の扱いのままだと、ケガの治療費はすべて自己負担になってしまうのではないか」と不安に思われる方もいらっしゃいますが、どうぞご安心ください。
実務上、警察への届け出が物損事故のままであっても、相手方の保険会社が同意(一括対応)していれば、交通事故によるケガとして自賠責保険などを適用し、窓口負担なしでまつもと整形外科に通院して治療を受けることが可能です。
交通事故でお怪我をされた場合、物損事故のままであっても、基本的には以下のような保険や補償の制度を活用しながら治療を進めていくことになります。
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自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)
法律によってすべての自動車に加入が義務付けられている強制保険です。
被害者さまの人身損害(治療費、通院交通費、入通院慰謝料など)を最低限補償することを目的としており、傷害分の上限額は被害者1人につき「最大120万円」と定められています。
自賠責基準における入通院慰謝料は、対象となる日数1日につき原則「4,300円」として計算され、これは物損事故のままであっても通院実績に応じて正当に支払われます。 -
任意保険
自賠責保険の上限(120万円)を超えた損害などをカバーする保険です。
患者さまの窓口での自己負担をゼロにする「一括対応」の手続きを整えてくれます。 -
休業補償(休業損害)
交通事故によるお怪我が原因で仕事を休まざるを得なくなり、収入が減ってしまった場合への補償です。
自賠責基準では原則として1日あたり「6,100円」が支給されます。
これは会社員やパート、アルバイトの方だけでなく、家事労働を担う「専業主婦(主夫)」の方も同様に日額6,100円の請求対象となります。
※給与が高額な方の場合は、源泉徴収票や休業損害証明書などで実際の減収を証明することにより、自賠責基準の範囲内で最大日額19,000円まで増額可能です。さらに、日額19,000円を超えるような高収入の方であっても、相手方の任意保険や弁護士基準に基づいて、実際の収入に準じた実損額が正当に補償されますのでご安心ください。
状況に応じた「人身扱い」への切り替えも選択肢に
物損事故のままでも問題なく治療は進められますが、もし「痛みが強くて治療が数ヶ月に及びそう」「お互いの見解が食い違って過失割合の話し合いが難航している」といった場合には、状況に応じて警察へ医師の診断書を提出し、公的に「人身事故(人身扱い)」へ切り替える手続きを取ることも選択肢の一つです。
公的な記録を人身事故にしておくことで、長期の治療が必要になった際の手続きがよりスムーズになったり、万が一お身体に深刻な痛みが残ってしまった場合の「後遺障害等級認定(※むち打ち症などで申請される14級は一般的な認定率が2%台と言われる非常にハードルの高い審査です)」において、警察の作成した客観的な書類(実況見分調書)を証拠として提出できるようになるというメリットがあります。
また、こうした手続きや保険会社とのやり取りで少しでも不安や疑問が生じた場合は、ご自身の保険に付帯されている「弁護士特約(弁護士費用特約)」を活用し、交通事故に強い弁護士に窓口になってもらうことも非常に有用なシステムです(一般的な限度額は弁護士費用300万円、法律相談10万円まで補償され、特約を使っても翌年の等級は下がりません)。
まとめ:自己判断せずお早めにご相談ください
物損事故だからといって、お身体にかかった強い衝撃や、筋肉・靭帯の損傷が消えてなくなるわけではありません。
「車が少し傷ついただけだから」「これくらいの軽い痛みなら我慢できるから」と自己判断で放置してしまうことが、将来の健康や正当な権利を損ねる最大の原因となってしまいます。
夜間や休日の事故であっても、緊急時を除けば、翌日や休日明けの早い段階で整形外科を受診すれば手続き上も健康上も問題ありません。
まつもと整形外科では、交通事故に遭われた患者さま一人ひとりの症状やお悩みに寄り添い、丁寧な診察と最適なリハビリテーション、的確な診断書の作成を通じて、早期回復と安心を全力でサポートいたします。
少しでもお身体に違和感がある場合は、どうぞ我慢をなさらず、お早めにまつもと整形外科へご相談ください。
よくある質問
Q1. 現場で「物損事故」として処理してしまいましたが、翌日になって首が回りません。今からまつもと整形外科を受診しても保険は使えますか?
A1. はい、受診していただけます。
交通事故の直後は興奮状態で痛みを感じにくく、翌日以降に「むち打ち症」などの症状が強く現れることは医学的に非常によくあるケースです。
事故から1週間〜2週間以上空いてしまうと、保険会社側の手続きにおいて事故との因果関係を証明することが難しくなるリスクがあるため、異変を感じたらできるだけ早い段階でお越しください。
Q2.相手の保険会社からまだ連絡が届いていないのですが、連絡を待たずに受診した場合、初診時の費用(窓口での支払い)はどうなりますか?
A2. はい、お身体の治療を最優先に、連絡を待たずにそのままお越しください。
保険会社による通院の手続き(一括対応の手配)が完了する前の受診となる場合は、窓口にて一時的に自己負担金(またはお預かり金)をいただく形になります。
しかし、その後保険会社の手続きが完了し、保険会社からまつもと整形外科へ通院受付の連絡が入り次第、お支払いいただいた金額は窓口にて全額精算・返金されますのでご安心ください。
Q3. 保険会社との示談交渉などを弁護士にお願いしたいのですが、弁護士特約を使うと自分の保険料は上がってしまいますか?
A3. いいえ、弁護士特約(弁護士費用特約)を使用しても、翌年の保険の等級が下がる(保険料が上がる)ことは一切ありませんので、どうぞご安心ください。
交通事故の保険において、弁護士特約の利用は「ノーカウント事故」として扱われます。
弁護士特約を利用すると、被害者さま1名につき弁護士費用は最大300万円、法律相談費用は最大10万円まで保険会社が全額負担してくれるため、ほとんどのケースで自己負担なしで弁護士に依頼することができます
【お問い合わせ・ご予約はこちら】
お電話:0942-27-0755
(平日:9~13時、14時30分~18時 / 土曜:9時~13時)
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