こんにちは。久留米市安武町にある「まつもと整形外科」院長の松本淳志です。
まつもと整形外科には、連日多くの患者様が首や肩、腰の痛みを抱えて来院されます。
その中でも、特に中高年の方から多く寄せられるお悩みが「肩が痛くて腕が上がらない」「夜、肩が痛くて眠れない」といった、いわゆる「四十肩・五十肩」の症状です。
「ただの肩こりだと思って放置していたら、だんだん服を着替えるのも辛くなってきた…」
「痛みがひどくて夜中に何度も目が覚めてしまう…」
「腕が挙がらないない・・・」
このような辛い症状を抱え、日常生活に大きな支障をきたしてから当院を受診される方が少なくありません。
肩の痛みは我慢すればするほど関節が固まり、治療と回復に長い時間がかかってしまうことがあります。
そこで今回から3回にわたり、院長ブログで「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」をテーマに連載を行います。
第1回目となる今回は、四十肩・五十肩の「原因と症状」、そして「ただの肩こりや他の疾患との見分け方」について、詳しく解説していきます。
目次
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)とは?ただの肩こりとの違い
「四十肩」や「五十肩」というのは一般的な呼び名(俗語)であり、正式な医学用語では「肩関節周囲炎(かたかんせつしゅういえん)」と呼ばれます。
その名の通り、肩の関節の周りにある組織(関節を包む関節包、靭帯、筋肉の腱など)に炎症が起きている状態を指します。
よく患者様から「肩こりが悪化したものですか?」とご質問を受けますが、実は発生するメカニズムが全く異なります。
一般的な「肩こり」は、姿勢の悪さや長時間のデスクワークなどによって、首から肩にかけての筋肉が緊張し、血流が悪くなることで生じる「筋肉や筋膜の疲労やコリ」です。
一方、「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」は、加齢に伴い肩関節の組織がもろくなり、そこに日常生活の負担が重なることで「強い炎症」が生じる疾患です。
炎症が起こると強い痛みが発生し、それが進行すると関節を包んでいる袋(関節包)が分厚く硬くなり、肩の動く範囲が極端に狭くなってしまいます(拘縮:こうしゅく)。
腕を上げようとすると「ズキッ」と痛む、エプロンの紐が結べない、下着がつけずらい、背中に手が回せなくなるといった症状は、この炎症と関節の硬さが原因です。
「肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)」の発症メカニズム
この疾患は、単なる筋肉の疲労ではなく、関節を構成する組織の「老化」と、そこから連鎖する「炎症と癒着」によって引き起こされます。具体的には、以下のようなプロセスを辿ります。
1. 加齢による組織の老化(退行変性)
中年以降(特に50歳代)になると、肩関節を構成する骨、軟骨、そしてそれらを繋ぐ靱帯や腱などの組織が徐々に老化し、弾力性や柔軟性が失われてもろくなっていきます。
さらに、加齢に伴う代謝の低下やホルモンバランスの変化などにより、組織が本来持っている抗炎症作用や修復機能も低下しやすい状態になります。
2. 日常生活での物理的な負担
このように柔軟性や修復力が低下した肩の組織に対して、腕を上げる、重い物を持つ、あるいは長時間同じ姿勢を続けるといった日常的な反復動作(機械的なストレス)が加わると、組織に微小な損傷が生じやすくなります。
若い頃であればすぐに修復される負担でも、脆くなった組織では修復が追いつかなくなります。
3. 強い炎症の発生と広がり
微小な損傷が蓄積すると、それを修復しようとする過程で過剰な反応が起き、炎症を引き起こす物質(サイトカインなど)が放出されます。
この炎症が、肩関節の動きを滑らかにするための「滑液包(かつえきほう)」や、関節全体を包んでいる「関節包(かんせつほう)」という袋状の組織にまで波及し、夜間痛などの激しい痛みを伴う強い炎症を引き起こします。
4. 拘縮(関節が固まる状態)への進行
この強い炎症が長期間続くと、関節包などの組織が分厚く硬くなり(線維化)、周囲の組織と癒着してしまいます。
これが、痛みに加えて「肩が上がらない」「関節がガチガチに固まる」といった四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)特有の運動制限(拘縮・凍結肩)を引き起こす最大の原因となります。
このように、「加齢による組織の質の低下」をベースとして、そこに「日常的な物理的負担」が引き金となり、「関節周囲の袋(滑液包や関節包)に激しい炎症と癒着が起こる」というのが、より詳しい発症のメカニズムとなります。
辛い「夜間痛」はなぜ起こるのか?
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の患者さまを最も悩ませるのが「夜間痛(やかんつう)」です。
「日中は何とか我慢できるのに、布団に入って寝ようとすると肩がうずいて眠れない」という非常に辛い症状です。
夜間痛が起こる理由はいくつかあります。
一つは、寝ている姿勢です。仰向けに寝ると、肩の関節が重力で後方に落ち込む形になり、関節の前側の組織が引っ張られて痛みが出やすくなります。
また、睡眠中は日中よりも体温がわずかに下がるため、血流が滞りやすくなり、痛みの物質が蓄積して神経を刺激しやすくなることも要因と考えられています。
夜間痛が続くと、睡眠不足からくる疲労や自律神経の乱れが生じ、さらに痛みを強く感じるという悪循環に陥ってしまいます。
夜眠れないほどの痛みがある場合は、市販の湿布や鎮痛剤だけで様子を見ず、早急に整形外科を受診して適切な炎症を抑える、痛みをコントロールすることが重要です。

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の進行ステージと放置するリスク
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は、一般的に以下の3つのステージを経て進行します。
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急性期(痛みが最も強い時期):関節に強い炎症が起きており、動かさなくても痛む(安静時痛)や、前述した夜間痛が顕著に現れます。
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慢性期(痛みが落ち着き、関節が固まる時期):鋭い痛みは徐々に和らぎますが、関節包が癒着して硬くなり、「腕が上がらない」といった運動制限(拘縮)が最も目立つようになります。
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回復期:徐々に関節の動く範囲が広がり、痛みも取れていく時期です。
「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は放っておけばそのうち治る」と耳にすることがあるかもしれませんが、それは大きな誤解です。
適切な治療やリハビリを行わずに放置すると、痛みが引いた後も関節の癒着が残り、以前のように腕が上がらなくなる後遺症に悩まされる方が多くいらっしゃいます。
自己判断は危険!似た症状に隠れた別の疾患
「年齢的に四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)だろう」と自己判断して、自己流で痛みを我慢しながら無理にストレッチをしたり、マッサージに通ったりするのは大変危険です。
なぜなら、肩の痛みを引き起こす疾患は「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」だけではないからです。
当院のブログでも以前取り上げましたが、突然肩に激しい痛みが走る場合、「石灰沈着性腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)」という疾患の可能性があります 。
これは、肩の腱の中にカルシウム(石灰)が沈着し、急激な炎症を引き起こすものです。
また、「肩腱板断裂(かたけんばんだんれつ)」といって、肩の骨と筋肉をつなぐスジ(腱板)が加齢や外傷によって切れてしまっているケースもあります。
腱板が断裂している状態で、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)だと思い込んで無理に動かすと、断裂がさらに広がってしまう恐れがあります。
これらの疾患は、症状が似ていても「治療法」が全く異なります。
石灰沈着性腱板炎であれば、沈着した石灰に直接アプローチする注射が非常に有効ですし、腱板断裂であれば手術を検討する必要が出てくる場合もあります。
だからこそ、「ただの四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)だろう」と自己判断せず、まずは整形外科で正確な診断を受けることが、痛みを根本から解決するための第一歩となります。

第1回のまとめ
今回は、四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の原因と、他の疾患との見分け方の重要性についてお話ししました。
肩の痛みや違和感が数週間続く場合、あるいは夜眠れないほどの痛みがある場合は、迷わず久留米市のまつもと整形外科へご相談ください。
次回、連載第2回では、「当院のエコーを用いた精密診断と、痛みを早期に鎮める注射治療」について詳しく解説します。
当院が導入している3台の超音波診断装置(エコー)を用いた最新の設備と、患者様の負担を最小限に抑える治療の裏側に迫りますので、ぜひご覧ください。















