こんにちは。久留米市安武町にある「まつもと整形外科」院長の松本淳志です。
交通事故の治療・補償について解説するシリーズも、今回が最終回となります。
第1回では「自賠責保険と一括対応の仕組み」を、第2回では「後遺障害診断書の等級認定」をお伝えしました。
当院で年間1,000名以上の交通事故患者様を診察する中で、ケガの痛みと同じくらい患者様を苦しめているのが「保険会社とのやり取り(交渉)による強いストレス」です。
「まだ痛いのに治療の打ち切りを迫られた」「早く治療を終わるように催促される」といった不安から、治療に専念できなくなってしまう方は少なくありません。
そんな時、患者様の最強の味方となるのが「弁護士費用特約(弁護士特約)」です。
今回は、医師の視点から見た「弁護士特約」と「医療と法律の連携の重要性」について詳しく解説します。
目次
そもそも「弁護士特約」とは?
弁護士特約とは、ご自身が加入している任意保険に付帯しているオプションサービスのことです。
交通事故の示談交渉や後遺障害の申請手続きを弁護士に依頼した際にかかる「弁護士費用を最大300万円まで」「法律相談料を最大10万円まで」保険会社が代わりに支払ってくれる制度です。
死亡事故や重篤な後遺障害が残るような数千万円規模の賠償金になるケースを除き、一般的なむち打ち症などの交通事故トラブルにおいて、弁護士費用が300万円を超えることはほぼありません。
つまり、弁護士特約を使えば「実質的な自己負担0円」で、交通事故の専門家である弁護士にすべての交渉を任せることができるのです。

知っておくべき弁護士特約の3つのポイント
①特約を使っても保険の等級は下がらない(保険料は上がりません)
「自動車保険を使うと等級が下がって、来年からの保険料が高くなってしまうのでは?」と心配される方が非常に多いです。
確かに、ご自身の車をぶつけてしまって車両保険を使ったり、相手への賠償のために保険を使ったりすると、通常は3等級ダウンして保険料が上がります。
しかし、弁護士特約のみを利用した場合は「ノーカウント事故」という扱いになります。
つまり、事故の件数としてカウントされないため、翌年の等級が下がることはなく、保険料が高くなるペナルティも一切ありません。
自己負担なしでプロに依頼できるのですから、使わない理由はまったくありません。
②「私は車の保険に入っていないから…」「今回は自転車に乗っていた時の事故だから…」と諦めるのは早計です。
弁護士特約の適用範囲は、皆さんが想像している以上に広く設定されています。
一般的に、弁護士特約は以下の範囲の人に適用されます。
-
記名被保険者(保険の契約者ご本人)
-
記名被保険者の配偶者
-
記名被保険者または配偶者の「同居の親族」
(例:同居している親や子供など) -
記名被保険者または配偶者の「別居の未婚の子」
(例:実家を離れて下宿している大学生のお子様など)
③ 依頼する弁護士は「自分で自由に」選べる
保険会社から特定の弁護士を紹介されることもありますが、必ずしもそれに従う必要はありません。
ご自身で探した「交通事故問題に強く、自分と相性の良い弁護士」を自由に選び、特約を利用して依頼することが可能です。
医療において「整形外科」「内科」「眼科」といった専門分野があるように、弁護士にも「離婚問題に強い」「企業法務に強い」「交通事故に強い」といった専門分野が存在します。
ご自身でインターネットなどを活用し、「交通事故問題に精通しており、医学的な知識も豊富で、自分と相性の良い弁護士」を探して、自由に依頼することが可能です。
弁護士に介入してもらうことで得られる「3つのメリット」
メリット①:示談金(慰謝料)が増額する可能性があり
実は、交通事故の慰謝料の計算方法には「自賠責基準」「任意保険基準」「裁判所基準(弁護士基準)」という3つの基準が存在します。
保険会社が当初提示してくる金額は、自社の支払い額を抑えるために設定された、最も低い「自賠責基準」や独自の「任意保険基準」によるものです。
しかし、弁護士が介入すると、過去の裁判例に基づいた最も高額な「裁判所基準(弁護士基準)」を用いて交渉を行うため、最終的に受け取れる賠償金が上がるケースがあります。
メリット②:治療期間の延長交渉をしてくれる
事故から3ヶ月ほど経過すると、保険会社から「そろそろ治療を終了(一括対応を打ち切り)して示談にしませんか」という電話がかかってくることが増えます。
まだ痛みがあり、当院でのリハビリが必要な状態であっても、患者様ご自身で保険会社を説得するのは至難の業です。
弁護士がついていれば、主治医である医学的所見を基に、「まだ治療が必要である」という正当性を主張し、治療期間の延長をしっかりと交渉してくれます。
メリット③:すべてのストレスから解放され、治療に専念できる
何よりも大きなメリットがこれです。弁護士に依頼した瞬間から、保険会社からの連絡窓口はすべて弁護士になります。
日中に職場へかかってくる電話や、専門用語が並ぶ書類の作成などから完全に解放されます。
患者様は余計なストレスを感じることなく、「しっかりと通院し、自分の身体を治すこと」だけに100%のエネルギーを注ぐことができるようになります。
弁護士に依頼する「最適なタイミング」とは?
多くの方が「弁護士に頼むのは、すべての治療が終わって示談金が提示されてから」と勘違いされていますが、実は「事故直後」や「治療中」の早い段階で依頼することもできます。
治療開始から数ヶ月経つと、保険会社から「そろそろ治療を終了しませんか(一括対応を打ち切り)と打診されることがありますが、まだリハビリが必要な状態にもかかわらず、患者様ご自身で「まだ通院が必要です」「まだ痛みがあります」と保険会社を説得するのは非常に困難で、ストレスにもなります。
早い段階で弁護士が介入していれば、主治医である我々の方針をもとに、弁護士が保険会社と「治療期間の延長」について直接交渉してくれます。
煩わしい電話対応から解放され、患者様は「治すこと」だけに集中できるのです。

弁護士特約が使えない主なケース
1. 故意や重大な過失による事故
飲酒運転、無免許運転、麻薬などの薬物使用中の運転、あおり運転(危険運転)など、本人に極めて重大な過失や故意がある事故の場合は、保険金支払いの対象外となります。
2. 家族間・親族間での事故
「配偶者」「父母」「子」などの親族に対して損害賠償請求をする場合は使えません。(例:夫が運転する車に妻が同乗しており、夫の運転ミスで電柱にぶつかって妻がケガをしたため、妻が夫に対して賠償請求をする場合など)
3. 相手が存在しない自損事故(単独事故)
自分でガードレールや電柱にぶつかった、崖から転落したなど、損害賠償を請求する「相手(加害者)」が存在しない場合は、交渉の余地がないため弁護士特約は使えません。
4. 自分に100%の過失がある事故(※実質的に使えない)
例えば「赤信号で停車中の車に、自分がノーブレーキで追突した(過失割合10対0)」というようなケースです。特約自体が無効になるわけではありませんが、自分が100%悪い場合、相手方に請求できる損害賠償金(慰謝料など)が存在しないため、弁護士に依頼して交渉してもらう内容自体がなく、実質的に利用できません。
5. 自然災害に起因する事故
地震、台風、洪水、津波などの自然災害が直接の原因で発生した損害については、賠償請求を行う相手が存在しない、あるいは免責事項となるため適用外です。
6. 自動車が全く関与しない事故(※特約の種類による)
「自動車保険」の一般的な弁護士特約の場合、歩行中に自転車とぶつかった、自転車同士でぶつかったなど、自動車が一切絡まない事故は対象外になることが多いです。
ただし、近年は「日常生活での事故」もカバーするタイプの弁護士特約が付帯されている保険も増えており、その場合は利用可能です。
7. 契約車両の「用途」に違反していた場合
保険契約時に「日常・レジャー使用」で申告していたにもかかわらず、業務目的(配達の仕事中など)で車を使用していた際に事故に遭った場合、告知義務違反として特約を含めた保険自体が適用されない可能性があります。
おわりに
全3回にわたり、交通事故の保険制度、自賠責保険について解説してまいりました。
福岡県久留米市周辺で交通事故に遭われ、「首や腰の痛みが引かない」「保険会社の対応に精神的に疲れてしまった」「交通事故に実績のある整形外科でしっかり治療したい」とお悩みの方は、決して一人で抱え込まず、どうかお早めにまつもと整形外科へご相談ください。
当院が誇る約80名の交専門スタッフがチーム一丸となり、医学的な身体の治療から、弁護士と連携した社会的な補償のサポートまで、あなたが「元の穏やかな生活」を取り戻すための道のりを、全力で伴走いたします。















