【久留米市の整形外科医が解説】ステロイド注射の正しい知識〜種類・効果・副作用〜
【執筆】
この記事は、福岡県久留米市安武町の「まつもと整形外科」院長 松本淳志(整形外科専門医)が執筆しています。
整形外科疾患、交通事故によるむちうちやケガの治療、リハビリテーションについて、医学的な見地から正しい情報をお届けします。
はじめに:「ステロイド=怖い薬」という誤解と正しい理解
患者さまから、「関節が痛いけれど、ステロイド注射は副作用が怖いから打ちたくない」と相談を受けることがあります。
インターネット上でも様々な情報が溢れているため、不安になられるお気持ちは非常によく分かります。
確かに、ステロイド(副腎皮質ホルモン)は内服薬として長期間大量に使用すると、全身に様々な副作用を引き起こすリスクがあります。
しかし、整形外科で行う局所への「ステロイド注射」は、痛みの原因となっている部分にピンポイントで直接薬を届けるため、全身への影響は非常に少なく抑えられます。
ステロイドは、医療現場に存在する薬の中で「最強の抗炎症作用(炎症を抑える力)」を持っています。
痛みが強すぎて日常生活もままならないような強い炎症を、劇的に鎮めてくれる非常に有効な治療ツールなのです。
今回は、整形外科で使用されるステロイド注射の種類や、適応となる疾患、そして副作用の正しい知識について、整形外科専門医が詳しく解説いたします。
どのような痛みや症状にステロイド注射を行うのか?(適応疾患)
ステロイド注射は、関節や腱に生じた強烈な「炎症」をピンポイントで鎮めるために非常に有効な治療法です。
まつもと整形外科では、日常の動作すら困難になるような、以下のようなつらい痛みや腫れに対してステロイド注射を検討します。
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膝の激しい痛み(変形性膝関節症や半月板損傷など)
加齢により軟骨がすり減ったり、膝のクッションの役割をする半月板が傷ついたりして、関節内に強い炎症や水溜まりが起きている状態です。
ヒアルロン酸注射だけでは痛みが引かない場合に選択されます。 -
肩が上がらない・夜も眠れない(肩関節周囲炎・石灰沈着性腱板炎)
いわゆる四十肩・五十肩の急性期や、肩の腱にカルシウムが溜まり急激な激痛を伴う疾患に非常に有効です。
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手首や指の引っ掛かり(ばね指・ドケルバン病など)
指や手首の腱(すじ)と、それを包む腱鞘(トンネル)が擦れて厚くなり、日常生活で酷使しやすい部位の腱鞘炎です。
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急な関節の腫れ・熱感
痛風発作や偽痛風発作、関節リウマチによって引き起こされる強い関節炎に対して用います。
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肘や足裏の痛み
上腕骨外側上顆炎(テニス肘)や上腕骨内側上顆炎(ゴルフ肘)、足底腱膜炎など、腱が骨に付着する部分の強い炎症に対しても効果を発揮します。

症状に合わせて使い分ける!4つの代表的なステロイド製剤
一口に「ステロイド注射」と言っても、お薬の種類によって「効き目の早さ(即効性)」や「効果が続く期間(持続性)」が大きく異なります。
まつもと整形外科では、患者さまの症状やライフスタイルに合わせて、主に以下の4種類の製剤(懸濁性と水溶性)を細かく使い分けています。
【じっくり長く効かせる「持続型・懸濁性」ステロイド】
痛みが強い慢性的な炎症を、時間をかけてしっかり抑え込みたい場合に使用します。
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ケナコルト-A(トリアムシノロンアセトニド)
薬の成分が水に溶けにくい微細な結晶(粒子)になっており、関節内にとどまりやすいように設計されています。
打ってすぐの即効性はやや控えめですが、1回の注射で数週間から数ヶ月にわたり効果が長持ちするのが最大の特徴です。
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デポメドロール(メチルプレドニゾロン酢酸エステル)
ケナコルトと同じく効果が長持ちする持続型のお薬ですが、成分の構造上、ケナコルトと比較すると「ほんの少しだけ水に溶けやすい」という性質を持っています。
抗炎症効果はどちらも非常に強力で大きな差はありませんが、薬の溶け出し方や関節内への留まり方がわずかに異なるため、まつもと整形外科では、患者さまの関節の状態や副作用(組織への影響)のリスクを総合的に判断し、ケナコルトと慎重に使い分けています。
【すぐに痛みをとりたい「即効型・水溶性」ステロイド】
急性の激痛など、「今すぐこの痛みを何とかしたい」という場面や、組織へのダメージを極力避けたい場所で優れた効果を発揮します。
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リンデロン(ベタメタゾン)
水に溶ける透明な薬液で即効性に優れており、注射した直後から痛みの軽減を実感しやすいお薬です。
効果の持続は2〜3週間程度とされていますが、ケナコルトと比較して皮膚が薄くなる副作用(皮膚萎縮)が少ないという特徴があります。
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デカドロン(デキサメタゾン)
どちらも「デキサメタゾン」という同じ有効成分を含む、非常に即効性の高いお薬です。
我慢できない急激な強い痛みをスッと抑えるのに適しています。懸濁性のような粒子を含まないため組織へのダメージが少なく、神経の周りに打つブロック注射などにも安全に使用されますが、作用が持続する期間は数日程度と短めです。
まつもと整形外科におけるステロイド注射の位置づけと安全への取り組み
「痛みが取れるから」と安易にステロイド注射を繰り返すことは、組織を痛めてしまうため絶対に避けなければなりません。
まつもと整形外科では、ステロイド注射を「痛みをコントロールするための強力なサポートツール」と位置づけ、以下の安全基準を徹底しています。
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関節軟骨や腱へのダメージ防止(回数制限)
同じ部位への注射を何度も頻繁に繰り返すと、組織がもろくなり、最悪の場合は腱が切れてしまう(腱断裂)リスクがあります。そのため、同じ部位への注射は数ヶ月の期間を空け、「年間3〜4回まで」を上限として厳格に制限しています。
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ステロイドフレアへの対応
注射を打った直後〜翌日頃に、お薬の結晶が刺激となって一時的に痛みが増す現象(ステロイドフレア)が起きることが稀にありますが、数日で自然に落ち着くことがほとんどです。
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感染リスクの管理と適切な投与間隔の徹底
ステロイドには強力な抗炎症作用がある一方で、局所の免疫(ばい菌と戦う力)を一時的に低下させる作用があります。そのため、短期間に何度も頻繁に注射を繰り返したり、糖尿病などの持病によって全身の免疫力が落ちていたりすると、関節内で細菌が繁殖し「化膿性関節炎」という重大な感染症を引き起こすリスクが高まります。まつもと整形外科では、注射の際の徹底した消毒はもちろんのこと、患者さまの持病(糖尿病など)を事前にしっかりと確認し、安全な間隔を空けて必要最小限の投与にとどめるよう厳格なリスク管理を行っています。
エコー(超音波)を用いて1ミリ単位で正確な位置に薬を届け、必要最小限の量と回数で最大の効果を引き出します。
そして、痛みが和らいだタイミングで理学療法士による丁寧なリハビリテーションを開始し、「注射に頼らなくても痛みの出ない身体づくり」を目指すことこそが根本治療だと考えています。

結語:痛みを我慢せず、本来の健やかな日常を取り戻すために
ここまで、整形外科におけるステロイド注射の効果や種類、そして安全への取り組みについて解説いたしました。
「ステロイド」という言葉だけが先行し、過度な不安から痛みを我慢し続けてしまうことは、日常生活の質を大きく低下させてしまいます。
まつもと整形外科では、患者さまの「目に見えない痛みや不安」に寄り添い、お一人おひとりの症状に合わせた最適な治療法をご提案いたします。
必要最小限の注射で最大の効果を引き出し、理学療法士と連携しながら「痛みの出ない身体づくり」を全力でサポートいたします。
久留米市周辺で長引く関節や腱の痛みにお悩みの方は、決して一人で抱え込まず、ぜひ一度まつもと整形外科へご相談ください。
よくある質問(Q&A)
Q1. ステロイド注射はかなり痛いと聞いて怖いのですが、大丈夫でしょうか?
A1. 注射の痛みをできるだけ和らげるため、まつもと整形外科ではステロイド薬に局所麻酔薬(キシロカインなど)を混ぜて注射を行います。
針を刺す時や薬液が入る瞬間にチクッとした痛みや押されるような重い感覚はありますが、麻酔が効いてくるとすぐに痛みは和らぎます。不安な方は遠慮なくスタッフにお声がけください。
Q2. 一度ステロイド注射をして再び痛くなってきた場合、どのくらいの期間を空ければ2回目を打つことができますか?
A2. 注射を打つ部位や症状によっても異なりますが、副作用(軟骨や腱へのダメージ、感染症のリスクなど)を安全に防ぐため、同じ場所への注射は最低でも3ヶ月の期間を空けるのが一般的です。
痛みが再発したからといってすぐに注射を繰り返すのではなく、まつもと整形外科では、理学療法士によるリハビリや内服薬などを効果的に組み合わせ、身体に負担をかけずに根本的な痛みの改善を図ります。
Q3. ステロイドの副作用で「太る」「顔が丸くなる」と聞いたことがあり、不安です。
A3. リウマチや喘息などの治療のために、長期間・大量のステロイドを「内服薬(飲み薬)」として毎日使い続けた場合には、「ムーンフェイス(満月様顔貌)」と呼ばれるお顔が丸くなる副作用や、体重増加が起こることがあります。
しかし、整形外科で行う数か月に1回程度の局所への「注射」では、使用する薬の量もごくわずかであるため、そのような全身的な副作用が起こることはまずありませんのでご安心ください。
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当院には国家資格を持つ理学療法士・作業療法士・柔道整復師が計32名在籍しています。
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