化膿性脊椎炎|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

化膿性脊椎炎 PYOGENIC-SPONDYLITIS

化膿性脊椎炎|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】
  1. Home
  2. >
  3. 化膿性脊椎炎

化膿性脊椎炎とは

化膿性脊椎炎(かのうせいせきついえん)とは、体のどこかで発生した細菌(ばい菌)の感染が、血液の流れに乗って背骨(脊椎:せきつい)に運ばれ、骨や、骨と骨の間にあるクッション(椎間板:ついかんばん)に定着して増殖し、化膿してしまう深刻な感染症です。

人間の背骨は、首から腰までブロック状の骨が積み重なってできており、常に体重を支え、豊富な血液が巡っています。何らかの理由で血液中に細菌が入り込むと(菌血症)、この血流が豊富な背骨に細菌が住み着きやすくなります。細菌はそこで猛烈な勢いで増殖を始め、強い炎症を引き起こしながら、椎間板や椎体、周囲の組織をドロドロに溶かして破壊していきます。

単なる「ぎっくり腰」や「椎間板ヘルニア」は物理的な組織の痛みですが、化膿性脊椎炎は「感染症」であるため、全身の強い炎症反応(高熱や悪寒など)を伴うのが最大の違いです。黄色ブドウ球菌という、私たちの皮膚や鼻の中に普段から存在する一般的な細菌が原因となることが最も多いとされています。

かつては不治の病と恐れられた時代もありましたが、現在では適切な抗菌薬(抗生物質)の点滴治療により治癒が可能な疾患となりました。しかし、初期の段階ではレントゲン検査で異常が見つかりにくく、「ただの腰痛」と誤診されて整体やマッサージに通い続け、発見が遅れて重症化してしまうケースが後を絶ちません。早期に精密検査を受け、正しい診断を下すことが、後遺症を防ぐ何よりの鍵となります。

症状

CONSULTATION

  • 経験したことのないような激しい腰の痛みや背中の痛み
  • 腰や背中の激痛と同時期に、38度以上の高熱が出たり、風邪のような寒気(悪寒)がしたりする
  • 夜、布団に入って休んでいても痛みが治まらず、痛みのあまり眠れない(夜間痛・安静時痛)
  • 痛みが強すぎて、寝返りを打つことや、自力で起き上がって歩くことが全くできない
  • 足に力が入らない、足がジンジンとしびれる、尿や便が出にくくなる

など

原因

背骨に細菌が入り込んでしまう原因は、背骨そのものに傷がついたわけではなく、体の別の場所にあった感染巣から血液を介して細菌が運ばれてくることがほとんどです。発症の背景には、細菌が侵入しやすい状況と、患者さま自身の免疫力の低下が深く関わっています。

他臓器からの細菌の侵入

虫歯や歯槽膿漏(口腔内の細菌)、膀胱炎や腎盂腎炎(尿路の細菌)、肺炎、皮膚の化膿(おできや傷口の感染)などが原因の引き金となります。これらの場所で増殖した細菌が血液の中に漏れ出し、背骨の毛細血管にたどり着いて化膿性脊椎炎を引き起こします。

基礎疾患(免疫力の低下)の影響

健康で免疫力が高い状態であれば、少々の細菌が血液に入っても白血球が退治してくれます。しかし、「糖尿病」を患っている方(特に血糖コントロールが不良な方)、ご高齢の方、がんの治療中の方、ステロイド剤や免疫抑制剤を長期服用している方、人工透析を受けている方などは、細菌と戦う免疫力が著しく低下しているため、容易に細菌の定着と増殖を許してしまいます。

医療処置・手術後の感染

稀ではありますが、過去に受けた背骨の手術の後や、神経ブロック注射などの医療処置をきっかけとして、細菌が直接背骨の周囲に侵入して発症するケースもあります。

診断

詳細な問診と視診・触診

「いつから痛いか」「熱はあるか」「糖尿病などの持病はないか」「最近、歯の治療や風邪、膀胱炎にならなかったか」を伺います。そして、背骨に叩打した際に飛び上がるような激しい痛み(叩打痛:こうだつう)がないかを確認します。

血液検査(炎症反応の確認)

体内で細菌感染が起きていることを裏付けるため、血液検査は必須です。白血球数の異常な増加や、CRP(炎症反応の数値)の著しい上昇が見られます。

X線(レントゲン)検査

初期の化膿性脊椎炎は、骨が溶け始めるまでに数週間かかるため、発症直後はレントゲンに異常が全く写らないことが多々あります。進行すると、椎間板の隙間が狭くなったり、骨が虫食い状に欠けてきたりする様子が確認できます。

MRI検査(早期発見の切り札)

化膿性脊椎炎の早期診断において、最も重要で決定的な証拠となるのがMRI検査です。レントゲンでは分からない発症初期の骨や椎間板の誘拐の融解、周囲に膿(うみ)が溜まっている様子、そして神経が圧迫されていないかを鮮明に画像化することができます。まつもと整形外科では、問診や血液検査で化膿性脊椎炎を疑った場合、速やかに提携する総合病院等の専門医療機関へご紹介します。

セルフチェック

ご自身の、あるいはご家族の突然の背中や腰の痛みが化膿性脊椎炎の疑いがあるかどうか、ご自宅で確認できる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ 身動きが取れないほど激しい腰や背中の痛みが突然始まった。
☑️ 痛みと同時期に、37.5度以上(時には38度以上)の発熱や寒気がある。
☑️ どんなに楽な姿勢をとって横になっても、ズキズキとした痛みが絶え間なく続く。
☑️ 糖尿病の持病がある、またはステロイド剤などを服用している。
☑️ 痛みが始まる数週間前に、虫歯の治療、膀胱炎、皮膚の化膿などがあった。

治療

化膿性脊椎炎の治療は、原因となっている細菌を完全に死滅させることと、破壊された背骨を保護し、神経の麻痺を防ぐことが最大の目的となります。非常に重篤な感染症であるため、原則として入院設備のある総合病院での長期入院治療が必要となります。

保存的加療(抗菌薬の点滴と絶対安静)

治療の基本は、手術を行わない保存的加療です。飲み薬だけでは背骨の奥深くの細菌を殺しきれないため、原因となっている細菌を特定し(血液培養検査など)、その細菌に最も効果のある抗菌薬(抗生物質)をまずは「点滴」で長期間(約4週間〜8週間程度)投与し続けます。また、抗菌薬の投与と同時に「絶対安静」が不可欠です。細菌に溶かされて脆くなった背骨に体重をかけると、背骨が潰れて神経を傷つけてしまう恐れがあります。さらに、コルセットを装着して、背骨を強固に固定した上で、ベッド上で安静を保ちながら感染が沈静化するのを待ちます。

手術療法(病巣郭清術・脊椎固定術)

以下のような重症例や、保存的加療で効果が出ない場合には、手術療法が選択されます。

強力な点滴を行っても熱が下がらず、炎症が広がり続けている場合。
膿(うみ)が溜まりすぎたり、骨が大きく崩れたりして、脊髄や神経を圧迫し、足の麻痺や排尿障害が出現している場合。 手術では膿や感染した骨や組織を徹底的に取り除きます(病巣郭清術)。そして、大きく骨が欠損してしまった部分には、ご自身の骨盤の骨などを移植し、金属製のスクリューやロッドを用いて背骨を強力に固定して再建します(脊椎固定術)。

高気圧酸素療法

保存的加療や手術療法と併用して、難治性の化膿性脊椎炎に対して「高気圧酸素療法」が追加で行われることがあります。特殊な治療装置(カプセル)に入り、高い気圧の環境下で100%の高濃度酸素を吸入する治療法です。血液中に大量の酸素が溶け込むことで、細菌の増殖によって酸素不足に陥った背骨周辺の組織の回復を強力に促します。また、白血球が細菌と戦う力(殺菌作用)を高め、抗生物質の効き目を向上させる効果が期待できます。治療が長期化しているケースなどで非常に有効な選択肢となります

リハビリ

急性期(入院中)

長期間ベッド上で絶対安静を強いられるため、足腰の筋肉は急激に衰え(廃用症候群)、エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)のリスクも高まります。そのため、ベッドに寝たままの状態で、足首を動かしたり、理学療法士が関節を動かしたりする予防的なリハビリからスタートします。

回復期(コルセット装着後)

コルセットが完成し、起き上がる許可が出たら、座る訓練、立つ訓練、そして歩行器を使った歩行訓練へと段階的に進めていきます。まつもと整形外科では、退院後の患者さまの社会復帰に向けて、専門の理学療法士がマンツーマンで寄り添い、弱ってしまった体幹(コア)の筋肉や下半身の筋力を安全に強化していくために、お一人おひとりの状態に合わせた最適なリハビリテーションを提供いたします。

セルフケア・予防

基礎疾患(特に糖尿病)の徹底的な管理

化膿性脊椎炎の患者さまに最も多い基礎疾患が糖尿病です。血糖値が高い状態が続くと、白血球の機能が低下し、細菌に対する抵抗力が著しく落ちてしまいます。かかりつけの内科医の指導のもと、食事療法と運動療法、適切なお薬で血糖値をコントロールすることが最大の予防策です。

小さな感染症を放置しない

虫歯、歯周病、膀胱炎(排尿時の痛みや頻尿)、風邪をこじらせた肺炎、ちょっとした切り傷や擦り傷からの化膿など、日常の小さな感染症が背骨の感染の引き金になります。「たかが虫歯」「そのうち治るだろう」と放置せず、早め早めに適切な科を受診し、しっかりと治療を完了させて細菌を体内に残さないようにしましょう。

免疫力を高める生活習慣

十分な睡眠、栄養バランスの取れた食事、過度なストレスの回避など、人間が本来持っている自然治癒力や免疫力を落とさない規則正しい生活が、すべての感染症を防ぐ土台となります。

Q&A

Q

ただの「ぎっくり腰」と「化膿性脊椎炎」の違いは何ですか?

A

一番の違いは「発熱の有無」と「安静時の痛み」です。ぎっくり腰などの一般的な腰痛は、筋肉や関節の微小な損傷や炎症が原因ですので、横になって安静にしていれば痛みは和らぎ、熱が出ることもありません。一方、化膿性脊椎炎は細菌感染による強い炎症が起きているため、38度近い高熱を伴うことが多く、どんなに楽な姿勢で寝ていてもズキズキとした激痛が絶え間なく続くのが特徴です。

Q

抗生物質の飲み薬を処方してもらえば、自宅で治せますか?

A

化膿性脊椎炎は、飲み薬だけで自宅で治癒させることは極めて困難で危険です。背骨の奥深くまで入り込んだ細菌を完全に死滅させるためには、血液中の抗菌薬の濃度を高く一定に保つ必要があり、それには数週間から数ヶ月にわたる「点滴治療」が不可欠です。また、骨が潰れないように厳重なベッド上安静が必要となるため、専門的な設備が整った病院での入院治療が原則となります。

Q

熱があって背中が痛い場合、整形外科と内科のどちらを受診すればいいですか?

A

どちらを受診しても間違いではありません。「熱があって悪寒がする」という症状がメインであれば、腎盂腎炎や尿路感染症の可能性もあり、まずは内科を受診して血液検査などを受けるケースも多いです。しかし、「背中や腰の痛みが激しくて動けない」という運動器の症状が強い場合は、整形外科を受診してください。

Q

治療期間(入院期間)はどれくらいかかりますか?

A

患者さまの免疫状態や細菌の種類、発見されたタイミングによって大きく異なりますが、一般的には非常に長い治療期間を要します。点滴による抗菌薬治療だけでも数週間かかり、その後も飲み薬への切り替えやコルセットでのリハビリ期間を含めると、2ヶ月から3ヶ月以上の長期入院となるケースも珍しくありません。焦らずに完全に細菌を退治することが重要です。

Q

治療が遅れると、どのような後遺症が残る可能性がありますか?

A

発見や治療が遅れて細菌が背骨を大きく破壊してしまうと、骨が潰れて背骨が大きく曲がってしまったり(後弯変形)、慢性的な腰痛が一生残ったりする恐れがあります。さらに恐ろしいのは、背骨の中に溜まった膿(うみ)や潰れた骨が「脊髄神経」を圧迫し、両足が動かせなくなる「対麻痺」や、自力で排尿・排便ができなくなる重篤な後遺症が残ることです。また、細菌が全身に回れば命に関わる敗血症を引き起こすこともあります。