大腿骨近位部骨折(だいたいこつきんいぶこっせつ)とは

大腿骨近位部骨折とは、太ももの骨(大腿骨)の付け根部分である、股関節に近い場所で発生する骨折のことです。この部位は、骨盤とつながる「骨頭(こっとう)」、その下のくびれた部分である「頚部(けいぶ)」、そして少し膨らんだ「転子部(てんしぶ)」に分けられます。
特に高齢者の方に多く見られる骨折であり、その背景には加齢に伴う骨密度の低下(骨粗しょう症)が大きく関わっています。骨が脆くなっている状態(骨の脆弱)では、立った高さからの転倒やくしゃみといった、日常生活の中のほんのわずかな衝撃でも骨折してしまうことがあります。
大腿骨近位部骨折は、大きく分けて「大腿骨頚部骨折」と「大腿骨転子部骨折」の2種類に分類されます。
大腿骨頚部骨折: 関節包(関節を包む袋)の中で骨折するケースで、血管が損傷しやすく、骨がつきにくいという特徴があります。
大腿骨転子部骨折: 関節包の外側で骨折するケースで、比較的骨はつきやすいものの、出血が多くなりやすい傾向があります。
まつもと整形外科では、これらの骨折に対して迅速な診断と、その後の生活の質(QOL)を維持するための適切なリハビリテーションの提案を行っています。
症状
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股関節周りの激しい痛み
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痛みのため、自力で立ち上がったり歩いたりすることができない
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骨折した側の足が反対側より短く見える
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つま先が外側を向いたまま、自分の力で戻せなくなる
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骨折部位の周辺が腫れ上がる
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皮膚の下に内出血による青あざが見られる
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動かさなくてもズキズキとした痛みを感じる
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膝のあたりを軽く叩くと、足の付け根に響く
など
原因
骨粗しょう症
加齢や閉経後のホルモンバランスの変化により、骨の中がスカスカになり、強度が著しく低下します。これにより、通常なら骨折しないような軽い衝撃でも骨が折れやすくなります。
転倒
筋力の衰えやバランス感覚の低下により、家の中の段差やつまずきやすい場所で転んでしまうことが直接のきっかけとなります。
基礎疾患の影響
糖尿病や慢性腎臓病、ステロイド治療などの影響で骨質が劣化している場合もリスクが高まります。
活動性の低下
外出機会が減り、足腰の筋肉が弱まることで、転倒のリスクがさらに増大します。
診断
問診
どのように転んだか、どこが痛むか、持病の有無などを詳しくお聞きします。
視診・触診
足の向き、変形の有無、痛みの出る場所を確認します。
X線(レントゲン)検査
骨折の有無、場所、ズレの程度を確認するための基本の検査です。
MRI・CT検査
レントゲンでははっきりしない「隠れた骨折(不全骨折)(不顕性骨折)」を診断する際に非常に有効です。※MRI・CT検査が必要な場合は、連携する総合病院を紹介いたします。
セルフチェック
もし転倒した後に以下の項目に1つでも当てはまる場合は、大腿骨近位部骨折の可能性があります。無理に動かさず、すぐにまつもと整形外科を受診してください。
☑️ 足の付け根(股関節)が痛くて立ち上がれない
☑️ 寝た状態で、自分の力で足を上げることができない
☑️ 反対側の足に比べて、つま先が不自然に外を向いている
☑️ 足の付け根を触ると、反対側より明らかに腫れている
☑️ 転んだ後から、足をつくだけで付け根に響くような激痛がある
治療
手術療法
○骨接合術: 自分の骨を残したまま、ネイルやボルト、プレートで固定する方法
○人工骨頭置換術: 損傷した骨頭を取り除き、金属製(チタン性)の人工物に置き換える方法
保存的加療
全身状態が著しく悪く、手術に耐えられない場合に選択されますが基本的に手術適応となります。
薬物療法
痛みに対して消炎鎮痛剤(NSAIDs)などを使用します。
再発防止のため、骨粗鬆症の治療薬(ビスホスホネート製剤やデノスマブなど)を開始することが非常に重要です。
リハビリ
早期離床
手術後できるだけ早く(翌日からなど)、座る練習や立ち上がる練習を開始します。
関節可動域訓練
手術によって硬くなりやすい股関節の動きを、理学療法士が「人の手」を使って丁寧に改善していきます。
筋力トレーニング
お尻の筋肉(中殿筋など)や太ももの筋肉を鍛え、歩行に必要な力を取り戻します。
歩行訓練
平行棒内での歩行から始め、歩行器、杖へと段階的に進めていきます。
ADL(日常生活動作)練習
トイレ動作や着替え、段差の昇り降りなど、自宅復帰に向けた具体的な動作を練習します。
セルフケア・予防
住環境の整備
段差をなくす(スロープの設置)。 階段やトイレ、浴室に手すりをつける。 滑りやすいカーペットを固定する。 夜間の足元を明るくする(足元灯の活用)。
適度な運動
スクワットや片足立ちなど、バランス能力と下肢筋力を維持する運動を継続しましょう。
栄養管理
カルシウムだけでなく、ビタミンD(魚やキノコ)やビタミンK(納豆)、タンパク質をバランスよく摂取しましょう。
骨粗しょう症の継続治療
処方されたお薬を自己判断で中断せず、定期的な骨密度検査を受けることが重要です。
Q&A
手術をしないと歩けるようになりませんか?
骨がずれている場合、自然に骨がつくのを待つ(保存的加療)と数ヶ月の寝たきり生活が必要になり、その間に筋力が著しく低下して歩けなくなる可能性が高いです。そのため、早期に歩行練習を始めるための手術が推奨されます。
高齢での手術は体への負担が心配です。
確かにリスクはゼロではありませんが、現在は麻酔技術や手術手法が進化しています。手術をせずに寝たきりになると結果として寿命が縮まります。そのため、超高齢で100歳でも手術することがあります。
骨折した場所によって治療法は変わりますか?
はい。頚部骨折(骨の付け根の細い部分)か、転子部骨折(その下の膨らんだ部分)かによって、使用する固定器具や人工物にするかどうかが決まります。
退院後、自宅で気をつけることはありますか?
再転倒を防ぐことが最も重要です。室内でのつまずきに注意し、リハビリで指導されたストレッチや運動を無理のない範囲で続けてください。また、骨粗鬆症の治療を継続することが「2度目の骨折」を防ぐ鍵となります。
まつもと整形外科でリハビリだけを受けることはできますか?
はい、可能です。他院で手術を受けられた後のリハビリテーションも受け付けております。理学療法士によるマンツーマンのリハビリで、患者さまの回復をしっかりサポートいたします。















