インピンジメント症候群|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

インピンジメント症候群 IMPINGEMENT-SYNDROME

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インピンジメント症候群(肩)とは

インピンジメント(Impingement)とは、英語で「衝突」や「挟み込み」を意味する言葉です。肩関節におけるインピンジメント症候群とは、腕を挙げたり動かしたりする際に、肩関節の構造物同士が衝突し、その間にある腱や軟部組織が挟み込まれることで痛みや炎症を引き起こす状態の総称です。最も代表的なものが「肩峰下(けんぽうか)インピンジメント症候群」です。

人間の肩は、腕の骨(上腕骨)と肩甲骨で構成されています。肩甲骨の先端には「肩峰(けんぽう)」と呼ばれる屋根のような出っ張りがあり、上腕骨との間には数ミリから1センチ程度の狭い隙間(肩峰下腔:けんぽうかくう)が存在します。この狭い隙間の中を、腕を挙げるためのインナーマッスルである「腱板(けんばん)」や、骨と腱の摩擦を防ぐクッションの役割を果たす「肩峰下滑液包(けんぽうかかつえきほう)」が通っています。

正常な状態であれば、腕を挙げてもこれらの組織が挟まれることはありません。しかし、加齢による骨の変形や、猫背などの不良姿勢、あるいはスポーツでの肩の酷使などが原因でこの隙間がさらに狭くなると、腕を挙げるたびに上腕骨と肩峰の間に腱板や滑液包が何度も「衝突(挟み込み)」を起こすようになります。

この物理的な衝突が毎日の生活や練習で繰り返されることで、クッションである滑液包が赤く腫れ上がり(滑液包炎)、腱板が擦り切れてボロボロになり、腕を挙げるたびに肩の奥に鋭い激痛が走るようになるのが、インピンジメント症候群のメカニズムです。野球、水泳、テニス、バレーボールなどの腕を高く挙げるスポーツ(オーバーヘッドスポーツ)を行うアスリートはもちろん、長時間のデスクワークをされる方や、日常的に洗濯物を干す・高いところの物を取る動作が多い中高年の方にも広く発症します。

症状

CONSULTATION

  • 腕を横から挙げていく途中(約70度〜120度の間)で肩に激痛が走る
  • 肩を動かすと「ゴリッ」という異音や引っかかり感がある
  • 衣服の着脱や、背中に手を回す動作で肩の奥が痛む
  • 夜、寝ている時に肩がズキズキと痛む(夜間痛)
  • 腕を挙げた姿勢をキープできず、力が入らない(脱力感)

など

原因

肩の狭い隙間(肩峰下腔)で衝突が起きてしまう原因は、主に「骨の構造的な問題」「不良姿勢による運動連鎖の破綻」「筋肉のアンバランス」の3つに分けられます。

加齢による骨棘(こつきょく)の形成と肩峰の形状

年齢を重ねると、肩峰(肩の屋根の骨)の下面にトゲのような骨の変形(骨棘)ができることがあり、これが物理的に隙間を狭くして腱板を傷つけます。また、生まれつき肩峰が下に向かってカーブしている形状(鉤状肩峰)の方は、構造的にインピンジメントを起こしやすい傾向があります。

猫背・巻き肩(上位交差症候群)と肩甲骨の動きの低下

現代人に非常に多い原因です。長時間のパソコンやスマートフォンの使用で背中が丸まり、肩が前に出た「巻き肩」の姿勢になると、肩甲骨が前傾したまま固まってしまいます。この姿勢のまま腕を挙げようとすると、肩甲骨が正しい角度に逃げてくれない(上方回旋しない)ため、上腕骨と肩峰が衝突して痛みを生じます。

スポーツや労働によるオーバーユース(使いすぎ)

野球の投球動作、テニスのサーブ、水泳のクロールなど、腕を頭上で強く回す動作を反復することで、滑液包や腱板に摩擦ストレスが蓄積し、炎症で組織が腫れ上がって隙間が狭くなる悪循環に陥ります。

インナーマッスル(腱板)の機能低下

肩の表面の大きな筋肉(アウターマッスル:三角筋)ばかりが働き、関節を安定させる奥の筋肉(インナーマッスル:腱板)が弱いと、腕を挙げる際に上腕骨の頭が上方に引き上がってしまい、屋根である肩峰に衝突しやすくなります。

診断

問診と触診・徒手検査

いつ、どのような動作で痛むかを確認します。そして、腕を前方に挙上させながら内側に捻り、意図的に肩峰下での衝突を誘発して痛みが出るかを確認する「ニア・テスト(Neer test)」や、腕を横に挙げて肘を90度に曲げ、そこから腕を内側に捻って痛みを誘発する「ホーキンス・テスト(Hawkins test)」などのスペシャルテストを行い、挟み込みの有無を的確に評価します。

X線(レントゲン)検査

骨の異常を確認します。肩峰の形(カーブの具合)や、加齢による骨のトゲ(骨棘)の有無、上腕骨と肩峰の隙間が狭くなっていないかなどを確認し、構造的な衝突の原因がないかを評価します。

超音波(エコー)検査

レントゲンでは写らない軟部組織(滑液包や腱板)や関節内の液貯留状態(水が溜まっていないか)を、リアルタイムに評価できる非常に重要な検査です。

MRI検査

肩の深い部分にある組織の損傷具合や、腱板断裂の広がり、骨内部の炎症などを鮮明な画像として把握することができます。MRI検査が必要と判断した場合は、提携する医療機関へご紹介します。

セルフチェック

ご自身の肩の痛みが、インピンジメント症候群の疑いがあるかどうか、ご自宅で確認できる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ 腕をまっすぐ下ろした状態から、横からゆっくりと上へ挙げていくと、水平(90度付近)を過ぎたあたりで肩にズキッと鋭い痛みが走り、耳の横まで挙げきると痛みがスッと消える。
☑️ 痛い方の腕を前に真っ直ぐ伸ばし、親指を床に向けた状態(缶のジュースを逆さに空けるような「エンプティカン」の姿勢)で、誰かに上から腕を押し下げてもらい、それに逆らって腕をキープしようとすると肩の奥が痛い。
☑️ 痛くない方の手を使って、痛い方の腕を「受動的」に持ち上げてもらえば、耳の横まで挙げることができる(五十肩のように関節全体が固まっているわけではない)。
☑️ 上着を着る時や、車の後部座席の荷物を取ろうと腕を後ろに伸ばした時に肩が痛む。
☑️ 肩を回すと、関節の奥の方で「ゴリッ」という嫌な音が鳴る。

治療

インピンジメント症候群の治療は、まずは痛みと炎症を速やかに鎮め、組織の摩擦を防ぐための「保存療法」を第一選択とします。

保存療法(炎症の鎮静化と痛みの緩和)

◯安静と動作指導
まずは痛みを誘発する動作(腕を肩より上に挙げる動作、投球動作など)を極力避けていただきます。「痛い角度を避ける」ことが、炎症を長引かせないための鉄則です。

◯薬物療法
炎症を強力に抑えるために、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の飲み薬や湿布を処方します。NSAIDsでは十分な緩和が得られない激しい痛みがある場合には、弱オピオイド系鎮痛薬(ツートラム、トラムセットなど)を患者さまの症状に合わせて慎重に組み合わせるなど、専門的に痛みのコントロールを行います。

◯注射療法
痛みが強く夜も眠れないような場合や、滑液包の腫れが顕著な場合は、超音波(エコー)で患部を正確に確認しながら、肩峰下滑液包に直接、局所麻酔薬とステロイド剤を注入する注射を行います。これにより、劇的に炎症が引き、痛みが改善します。また、関節の滑りを良くするためにヒアルロン酸注射を併用することもあります。

◯物理療法
超音波治療器を用いて深部の組織の炎症を和らげ、組織の修復を促します。同時に、肩甲骨や首周りの筋肉の過剰な緊張をほぐす「低周波治療器」や「干渉波治療器」などの専門的な物理療法機器を効果的に組み合わせ、患部の早期回復を後押しします。

手術療法について

数ヶ月にわたって保存療法(注射やリハビリ)を徹底しても痛みが全く改善しない場合や、骨の変形(大きな骨棘)が原因で物理的な衝突が避けられない場合、または腱板断裂を合併している重症例に対しては、関節鏡視下手術(肩峰下除圧術や腱板縫合術)が検討されます。肩に小さな穴を開け、内視鏡で確認しながら衝突の原因となっている骨のトゲを削り取り、隙間を広げる手術です。手術が必要と判断した場合は、肩関節を専門とする医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。

リハビリ

可動域訓練と姿勢指導(運動療法)

肩の痛みの原因は、実は「背中」にあることが大半です。猫背で丸まり硬くなった胸椎(背骨)の動きを改善し、胸の前の筋肉(大胸筋や小胸筋)をストレッチします。これにより、腕を挙げた際に肩甲骨がスムーズに連動して上方回旋するように本来の機能を回復させ、全身のバランスを根本から整えます。

腱板(インナーマッスル)の強化

肩を挙げた時に上腕骨が屋根にぶつからないよう、骨頭を関節の受け皿にしっかり引きつけて安定させる役割を持つ「腱板」を強化します。ゴムチューブなどを用いた低負荷のエクササイズ(カフ・エクササイズ)を丁寧に行い、関節の安定性を高めます。

日常生活動作の指導とホームエクササイズ

ご自宅や職場でできる肩甲骨周りのストレッチや、デスクワーク中の正しい姿勢の保ち方などを具体的にアドバイスします。ご自身で関節の摩擦を防ぎ、痛みをコントロールできるようになるまで、理学療法士がしっかりとサポートいたします。

セルフケア・予防

姿勢の改善(巻き肩・スマホ首の予防)

長時間のスマートフォン操作やデスクワークの際は、画面を目線の高さまで上げ、背筋を伸ばすよう意識してください。1時間に1回は立ち上がり、胸を大きく張って肩甲骨を内側に寄せるストレッチ(リセット運動)を行い、巻き肩を防ぎましょう。

痛みの出る動作を反復しない

「痛いけれど動かした方が良い気がする」と、あえて痛みの出る角度(ペインフルアーク)で腕を上げ下げしたり、無理に肩をぐるぐる回したりするのは、腱を自ら削っているのと同じであり絶対に避けてください。

スポーツ前後の入念なストレッチ

野球やテニスなどを行うアスリートの方は、肩だけでなく、股関節や体幹の柔軟性を高めることが肩への負担軽減に直結します。手投げ・手打ちにならないよう、全身の連動性(キネティック・チェーン)を意識したフォームを維持し、練習後のクールダウンを徹底してください。

Q&A

Q

五十肩(四十肩)とインピンジメント症候群はどう違うのですか?‌

A

最も大きな違いは「関節の固まり具合」です。五十肩(肩関節周囲炎)は関節の袋全体が炎症を起こしているため、どの方向に動かしても痛く、他人が腕を持ち上げようとしても痛くて挙がりません。一方、インピンジメント症候群は「特定の角度(70〜120度付近)」で組織が挟まった時だけ痛みが出ます。他人が腕を持ち上げてあげれば、痛みはあるものの耳の横まで挙げきることが可能な場合が多いです。ただし、両者が併発しているケースもあるため、専門医による鑑別が重要です。

Q

痛みを我慢して放置していると、どうなりますか?

A

放置は非常に危険です。インピンジメント(衝突・摩擦)を繰り返すことで、上腕骨と肩峰の間にある「腱板」がロープのように徐々に擦り切れ、最終的には完全にブチッと切れてしまう「腱板断裂」へと進行してしまいます。腱板が断裂すると、腕を自力で挙げることすらできなくなり、手術が必要になる確率が上がります。

Q

痛みがある期間は、スポーツや運動は一切してはいけませんか?

A

腕を肩より上に高く挙げる動作(投球、サーブ、クロールなど)や、痛みを誘発するようなウェイトトレーニングは厳禁です。しかし、患部に負担をかけない範囲での運動(ジョギング、エアロバイク、下半身や体幹のトレーニングなど)は、全身のコンディションを維持するための「積極的休養(アクティブレスト)」として有効です。

Q

整体院で「肩甲骨はがし」をしてもらえば治りますか?

A

肩甲骨の動きを良くすることはリハビリの観点からも重要ですが、自己判断で強い力を加える施術を受けることはお勧めしません。インピンジメント症候群は、関節の内部で滑液包が腫れ上がり、腱板が傷ついている「器質的なケガ」です。正確な画像診断をせずに外部から無理な力を加えると、炎症が激化したり腱の損傷が広がったりする危険があります。

Q

治療にはどのくらいの期間がかかりますか?

A

症状の強さや、炎症が起きている部位(滑液包炎のみか、腱板の損傷を伴っているか)によって異なります。初期の段階で適切な安静と注射療法、リハビリを開始できれば、数週間〜1ヶ月程度で日常生活の痛みが改善することも多いです。しかし、長期間放置して慢性化している場合や、骨棘などの変形が強い場合は、数ヶ月単位で根気よくリハビリを続ける必要があります。