首下がり症候群|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

首下がり症候群 DROPPED-HEAD-SYNDROME

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首下がり症候群とは

首下がり症候群(Dropped Head Syndrome:DHS)とは、一つの特定の病気の名前ではなく、首の後ろ側の筋肉(頸部伸筋群:けいぶしんきんぐん)が弱くなったり、首の骨(頸椎:けいつい)の配列が崩れたりすることで、自力で頭を持ち上げておくことが困難になり、首が極端に前に垂れ下がってしまう「状態」の総称です。

人間の頭は体重の約10%(体重50kgの方であれば約5kg)というボウリングの球ほどの重さがあります。普段、私たちは無意識のうちに首の後ろや背中の筋肉を使って、この重い頭を支えています。しかし、何らかの原因で頭を支える筋肉の力が失われると、重力に負けて頭が前に倒れ、あごが胸にくっつくような姿勢になってしまいます。

この状態になると、まっすぐ前を見て歩くことができなくなるため、転倒のリスクが非常に高くなります。また、首が極端に曲がることで気道や食道が圧迫され、呼吸がしづらくなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりするなど、全身の健康状態を著しく悪化させる恐れがあります。

「最近、親の姿勢が急に悪くなり、ずっと下を向いている」「首が疲れるからと、いつも手で頭を支えている」といった様子が見られる場合は、この首下がり症候群の可能性があります。

症状

CONSULTATION

  • 前を向いて歩けない・視野が極端に狭くなる
  • 首の後ろから背中にかけての激しい凝りと痛み
  • 食べ物や飲み物が飲み込みにくい(嚥下障害)
  • 息苦しさや呼吸のしづらさがある(呼吸障害)
  • 仰向けに寝ると、首がまっすぐに戻る

など

原因

首下がり症候群を引き起こす原因は非常に多岐にわたります。

加齢による筋肉の衰え(特発性首下がり症候群)

最も多いのがこのタイプです。特別な神経の病気などはないものの、加齢によって首の後ろの筋肉(傍脊柱筋など)が極端に萎縮し、脂肪に置き換わってしまうことで筋力が低下し、頭を支えきれなくなる状態です。ご高齢の女性に比較的多く見られます。

神経や筋肉の病気(神経筋疾患)

パーキンソン病、多系統萎縮症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、重症筋無力症など、全身の筋肉や神経に異常をきたす病気の一症状として、首下がりが現れることがあります。これらの疾患が隠れていないかを見極めることが重要です。

頸椎の変形や異常(頸椎後弯症)

長年の不良姿勢や加齢によって首の骨(頸椎)やその間のクッション(椎間板)が潰れ、骨の配列が後ろに凸に曲がって固まってしまう状態です。

薬剤の副作用やその他の要因

一部の精神神経用薬などを長期間服用している場合、副作用として筋肉の緊張に異常が生じ、首が下がることがあります。また、甲状腺機能の異常などが関係しているケースもあります。

診断

詳細な問診と身体診察

「いつ頃から首が下がり始めたか」「仰向けになると首は伸びるか」「手足のしびれや震え、歩きにくさはないか」などを詳しく伺います。また、手で頭を持ち上げた時の首の柔らかさ(拘縮の有無)を確認します。

X線(レントゲン)検査・MRI検査

首の骨の変形の度合い、骨折の有無、神経が圧迫されていないかを確認します。

血液検査

筋肉の破壊を示す数値(CK:クレアチンキナーゼ)の上昇や、炎症反応、甲状腺ホルモンの異常などがないかを確認します。

専門医療機関との連携

問診や診察の中で、パーキンソン病や重症筋無力症といった神経難病の可能性が疑われる場合には、まつもと整形外科から速やかに提携する神経内科へご紹介します。

セルフチェック

ご自身やご家族の「首の重さ」や「前かがみの姿勢」が、単なる猫背や肩こりなのか、それとも本格的な「首下がり症候群」の兆候なのかを確認できる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ まっすぐ前を向いて歩こうとしても、数分で首が疲れて頭が前に垂れてしまう。
☑️ 椅子に座っている時、手であごを支えたり、頭の後ろで手を組んだりしないと姿勢を保てない。
☑️ 食事の際、よくむせるようになったり、飲み込みにくさを感じるようになった。
☑️ 仰向けにベッドに寝転がると、自然に首がまっすぐになる(重力がなくなると首の曲がりが解消する)。
☑️ 壁に背中をつけて立った時、後頭部を壁にピッタリとつけることができない、またはつけるのに激しい痛みを伴う。

治療

首下がり症候群の治療は、特定された原因によって全く異なります。パーキンソン病などの神経内科疾患が原因である場合は、その原疾患に対するお薬の治療(ドパミン製剤の投与など)が最優先となります。

まつもと整形外科で主に行うのは、加齢による筋力低下(特発性)や頸椎の変形に対する治療です。

保存療法(装具療法と薬物療法)

まずは、首の負担を減らすために「頸椎カラー」という首のコルセットを装着します。ただし、長時間カラーを着けっぱなしにすると、かえって自分の筋肉が衰えてしまうため、外出時や疲労が強い時など、装着時間をコントロールすることが重要です。また、痛みが強い場合は、消炎鎮痛剤(NSAIDs)や筋弛緩薬を処方し、筋肉の緊張と痛みを和らげます。

運動療法(リハビリテーション)

首下がり症候群の保存療法において、最も効果的で重要なのが理学療法士によるリハビリテーションです(詳細は後述します)。

リハビリ

頸部・肩甲骨周囲のストレッチと可動域訓練

長期間首が下がっていたことで、胸の前側の筋肉や首の前の筋肉が短く縮こまっています。まずはここをゆっくりとほぐし、胸を張りやすい(首を起こしやすい)土台を作ります。

頸部伸筋群(首の後ろの筋肉)の強化

仰向けやうつ伏せになり、重力の影響を減らした安全な姿勢で、首を後ろに反らす筋肉(頭板状筋、頸半棘筋など)を少しずつ鍛えていきます。

体幹・骨盤の姿勢矯正

首が下がる方は、バランスをとるために骨盤が後傾し、極端な猫背になっていることがほとんどです。首の筋肉だけで頭を支えるのではなく、骨盤、背骨、そして首へと至る全身の「S字カーブ」を取り戻し、骨格全体で頭の重さを支えられるよう、体幹のインナーマッスルを強化し、正しい姿勢をプロデュースいたします。

セルフケア・予防

加齢による筋肉の衰えを完全に防ぐことは難しいですが、日々の少しの心がけで、首下がり症候群の進行を遅らせたり、発症を予防したりすることは十分に可能です。

「スマホ首」に注意し、こまめに姿勢をリセットする

スマートフォンやパソコンを長時間うつむいた姿勢(ストレートネック)で操作し続けることは、首の後ろの筋肉を酷使し、将来の首下がりの大きな原因となります。30分に一度は顔を上げ、天井を見るように首を後ろに反らすストレッチを行ってください。

背中と肩甲骨を動かす習慣をつける

首の筋肉は背中や肩甲骨と連動しています。ラジオ体操や、両腕を大きく回して肩甲骨を寄せる運動を毎日の日課に取り入れ、背面の筋肉全体を活性化させましょう。

良質なタンパク質の摂取と適度な運動

ご高齢の方の場合、「サルコペニア(加齢による筋肉量の減少)」が首下がりの背景にあります。お肉、魚、大豆製品などのタンパク質をしっかりと食事で摂取し、ウォーキングなどで全身の筋力を維持することが、首を支える力を保つことにも繋がります。

Q&A

Q

急に首が下がるようになったのですが、何科を受診すればいいですか?

A

まずは「整形外科」を受診してください。首の骨(頸椎)の異常や、筋肉の状態を専門的に診察いたします。まつもと整形外科では、レントゲンやMRI検査を行い、整形外科的な問題か、あるいはパーキンソン病などの「神経内科」の病気が疑われるかを的確に判断し、必要な場合は適切な専門科へご紹介いたします。

Q

首下がり症候群は、リハビリで治る病気ですか?

A

原因や進行度によって異なります。加齢による筋力低下が原因で、まだ関節が完全に固まっていない初期〜中期の段階であれば、適切なリハビリテーションと姿勢指導を根気よく続けることで、日常生活に支障がないレベルまで症状を改善できるケースが多くあります。しかし、放置して骨が変形して固まってしまうとリハビリだけでは治すことが難しくなるため、早期発見・早期治療が重要です。

Q

首が辛いので、市販の首のコルセット(カラー)を一日中着けていてもいいですか?

A

一日中着けっぱなしにするのは避けてください。痛みが強い時や、どうしても前を向いて歩かなければならない外出時などに限定して使用することをお勧めします。コルセットに頼りきりになると、首を支える自分自身の筋肉がさらに衰えてしまい、コルセットなしではいられなくなるという悪循環に陥ってしまうためです。

Q

首下がり症候群になると、寿命に影響することはありますか?

A

首が下がることそのものが直接的に命を奪うわけではありませんが、首が極端に曲がることで食べ物が気管に入りやすくなり、「誤嚥性肺炎」を引き起こすリスクが高まります。ご高齢の方にとって誤嚥性肺炎は命に関わる重篤な病気です。また、前が見えないことによる転倒・骨折から寝たきりになるリスクも高まるため、間接的に健康寿命を縮める大きな要因となり得ます。

Q

若い人でも首下がり症候群になりますか?‌

A

典型的な首下がり症候群は高齢者に多いですが、若い方でも発症する可能性はゼロではありません。重症筋無力症などの特定の自己免疫疾患や、極端な長時間のうつむき姿勢(パソコンやスマートフォンの過度な使用)による筋肉の過労が引き金となり、一時的に首が持ち上がらなくなるケースも稀に見られます。