びまん性特発性骨増殖症(DISH)|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

びまん性特発性骨増殖症(DISH) DIFFUSE-IDIOPATHIC-SKELETAL-HYPEROSTOSIS

びまん性特発性骨増殖症(DISH)|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】
  1. Home
  2. >
  3. びまん性特発性骨増殖症(DISH)

びまん性特発性骨増殖症(DISH)とは

びまん性特発性骨増殖症(以下、DISH)とは、椎体前面にある前縦靱帯を中心に背骨を支えている「靭帯」が石灰化して、長い時間をかけて硬い「骨」に変わってしまう病気です。
本来、人間の背骨はたくさんの小さな骨が連なってできています。それらが靭帯という「しなやかなバンド」で繋がれているため、私たちはお辞儀をしたり、後ろを振り向いたり、身体を自由に曲げることができます。
しかしDISHを発症すると、この「しなやかなバンド」が次々と硬い骨に変化し、背骨同士をまるでセメントで固めたようにくっつけてしまいます。その結果、背骨全体が「1本の硬い丸太」のように固まってしまい、本来のしなやかな動きが全くできなくなってしまうのです。

この骨化は、背骨(特に胸椎という背中の部分)に最も多く見られますが、進行すると首(頸椎)や腰(腰椎)、さらにはアキレス腱の付着部(かかと)や膝のお皿(膝蓋骨)など、全身の靭帯や腱の付着部にも骨の増殖が起こることがあります。
また、この病気は50歳以上(特に60代〜70代)の中高年の男性に多く見られます。さらに、「肥満」や「糖尿病」といった生活習慣病(代謝疾患)と深く関連して進行することが、大きな特徴として分かっています。

症状

背中や腰、首の「強いこわばり」と可動域制限

最も代表的な症状です。背骨が広範囲にわたって骨で繋がり、一本の棒のように固まってしまうため、背骨本来のしなやかさが完全に失われます。「朝起きた時に背中がこわばって起き上がりにくい」「前かがみになれず、足の爪切りや靴下を履く動作が困難」「車のバック駐車で後ろを振り向く際、首だけが回らずに肩や体全体を回さなければならない」といった、日常生活における動かしにくさが現れます。

軽微な転倒による「脊椎骨折」

健康な背骨は、転んだりぶつけたりしても、しなることで衝撃を吸収します。しかし、DISHの患者さまの背骨は、しなりのない硬い丸太状態になっているため、衝撃を逃がすことができません。そのため、室内で軽く尻餅をついた、ベッドから落ちた程度の「軽微な外傷」であっても、テコの原理が働いて背骨が骨折するリスクが高まります。

首の骨の増殖による「嚥下障害」

‌ 首(頸椎)の部分で靭帯の骨化(増殖)が前方に大きく張り出してくると、背骨のすぐ前を通っている食道や気管、神経を物理的に圧迫してしまいます。その結果、「食事の際に、食べ物や錠剤の薬が喉につかえる感じがする(嚥下障害)」「声がかすれる(嗄声)」「いびきがひどくなる」「息苦しさを感じる」といった、一見すると整形外科の病気とは思えないような症状が現れるのが大きな特徴です。

原因

病名に「特発性」とついている通り、なぜ靭帯が次々と骨化して骨に変わってしまうのか、その完全なメカニズムは現在の医学でも解明されていません。

しかし、長年の研究により、DISHの発症や進行には「代謝の異常(生活習慣病)」が深く関与していることが明確に分かっています。

具体的には、以下の要素を持っている方にDISHが発症しやすいことがデータとして示されています。

・肥満(BMIが高い方)
・2型糖尿病、または予備軍(インスリンの過剰分泌や抵抗性)
・高血圧症、脂質異常症(高コレステロールなど)、高尿酸血症(痛風)

つまり、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)と呼ばれる状態が、体内の成長因子などに影響を与え、本来は骨にならないはずの靭帯を過剰に骨化させてしまう強力な「引き金」になっていると考えられているのです。加齢や遺伝的な体質に加えて、長年の生活習慣の蓄積が原因となる、全身性の代謝疾患という側面を持っています。

診断

レントゲン(X線)検査

背骨のレントゲン写真を撮影すると、背骨の前面に沿って、まるで「ろうそくの蝋(ろう)が垂れて固まったような」特徴的な分厚い骨の増殖がはっきりと写し出されます。医学的な診断基準(Resnickの基準など)に基づき、「連続した4つ以上の背骨が、連続した骨の増殖で架橋されている(繋がっている)こと」などを確認して確定診断を行います。

血液検査(他の疾患の除外)

症状がよく似ている「強直性脊椎炎(AS)」などのリウマチ性疾患ではないことを確認するために、血液検査で炎症反応(CRP)や特定の遺伝子(HLA-B27など)を調べ、鑑別を行うことがあります。

CT・MRI検査

DISHの患者さまが転倒して、背中や腰を痛めた場合、椎体骨折を起こしやすくなります。通常のレントゲンではDISHによる骨の増殖が邪魔をして、骨折線が見えにくいことが多々あります。その場合は、骨折や神経(脊髄)の損傷状態を正確に把握するために、CT検査やMRI検査が必要となることがあります。CT検査やMRI検査が必要と判断した場合は、提携する高度医療機関へご紹介いたします。

セルフチェック

「背中が痛い」「首が回らない」という時、ご自身で確認できるDISHのセルフチェックリストです。

☑️ 50歳以上の男性である。
☑️ 糖尿病、肥満、高血圧などの生活習慣病(メタボ)を指摘されている。
☑️ 背中や腰が板のように硬く、前かがみになって靴下を履くのが難しい。
☑️ 振り返る時、首だけでは振り向けず、肩や体ごと回してしまう。
☑️ 最近、食事中に食べ物や飲み物が喉につかえたり、むせたりしやすくなった。
☑️ 軽い尻餅をついたり、車で軽い追突事故に遭ったりした後から、背中や首に強い痛みが続いている。

治療

現在の医学では、一度骨に変わってしまった靭帯を、お薬などで元の柔らかい靭帯に溶かして戻す(根本的に治す)方法は存在しません。そのため、DISHの治療は「現在の症状を和らげること(対症療法)」「病気の進行を食い止めること」、そして何より「骨折を防ぐこと」が最大の目的となります。

薬物療法

背中や首の強い痛みに対しては、消炎鎮痛薬(NSAIDs)の飲み薬や外用薬(湿布など)を適切に処方し、まずはつらい痛みをしっかりとコントロールします。

物理療法

背骨の動きが悪くなることで、周囲の筋肉が過度に緊張して痛みを引き起こしている場合は、まつもと整形外科に完備している機器を用いた温熱療法などの物理療法を行います。患部の血流を改善させ、筋肉のこわばりをほぐすことで症状を和らげます。

代謝疾患(生活習慣病)のコントロール

DISHの進行を少しでも遅らせるためには、原因となっている糖尿病や肥満の改善が不可欠です。適切な体重管理、血糖値のコントロールを行うことが、結果的にご自身の背骨を守るための極めて重要な治療となります。

手術療法(重篤な合併症が生じた場合のみ)

骨が癒合しているだけであれば手術は不要ですが、「転倒して背骨が折れてしまい、神経が圧迫されている場合」や、「首の骨の増殖が大きすぎて、食事が喉を通らない、息ができないといった重度の嚥下・呼吸障害がある場合」には、骨折部を金属で固定したり、出っ張った骨を削り取ったりする手術が必要になります。手術が必要と判断した場合は、脊椎を専門とする高度医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。

リハビリ

代償動作の獲得と、周囲の関節の柔軟性アップ

背骨が動かない分、それを補うために「股関節」や「肩関節」の柔軟性を高めることが非常に重要になります。まつもと整形外科の理学療法士が、硬くなった背骨には負担をかけず、股関節や肩甲骨周囲のストレッチを安全に行い、日常生活動作(靴下を履く、棚の上の物を取るなど)をスムーズに行えるようサポートいたします。

転倒予防のための筋力・バランストレーニング

DISHの患者さまにとって「転倒」は命取りになります。体幹(お腹や背中)の筋力強化や、下半身の筋力トレーニング、バランス感覚を養う訓練をご自宅でもできるよう指導し、ふらついても踏みとどまれる「転びにくい身体」をプロデュースします。

セルフケア・予防

DISHと診断された方が、ご自宅での日常生活において最も徹底すべきセルフケアは、「転倒しない環境づくり」です。

転倒予防のための住環境の整備

室内のちょっとした段差や、滑りやすいカーペット、電気のコードなどは、DISHの患者さまにとって骨折の大きな原因になります。家の中のつまずきやすい障害物を無くし、階段や浴室、トイレには必ず手すりを設置してください。靴はスリッパやサンダルではなく、かかとをしっかりホールドする滑りにくい靴を選ぶことが大切です。

交通事故への警戒と予防

車を運転される方、または同乗される方は、シートベルトを正しく着用することはもちろん、「ヘッドレスト(頭当て)」の位置を後頭部の高さに正確に合わせてください。軽い追突事故(むち打ち)の衝撃でも、DISHの患者さまは首の骨(頸椎)を骨折してしまう危険性が高いため、頭が後ろに過度に反り返らないようにする予防が必須です。

メタボリックシンドロームの改善(食事と運動)

骨化の進行を抑えるために、食べ過ぎや過度な飲酒を控え、バランスの良い食事と適度な運動(ウォーキングなど)を心がけてください。体重を適正に保ち、糖尿病の数値を改善させることが、ご自身の背骨を守る直結のケアとなります。

Q&A

Q

同じように背骨が硬くなる「強直性脊椎炎(AS)」とは何が違うのですか?‌

A

強直性脊椎炎(AS)は、主に10代〜30代の若い方に発症する「自己免疫の異常」による炎症性の病気で、安静にしていても強い痛みがあり、骨盤の関節(仙腸関節)から症状が始まるのが特徴です。一方、DISH(びまん性特発性骨増殖症)は、主に50代以降の中高年に発症し、加齢や「糖尿病・肥満などの代謝異常」が原因と考えられています。痛みよりも「動かしにくさ」が前面に出る傾向があり、発症する年齢や原因、メカニズムが全く異なる別の病気です。

Q

一度硬い骨になってしまった部分は、お薬やリハビリで元の柔らかい状態に戻りますか?

A

残念ながら、現在の医学では、一度骨化した靭帯を元の柔らかい状態に戻すことはできません。しかし、だからといって治療法がないわけではありません。DISHの治療の最大の目的は「元の状態に戻すこと」ではなく、「今の痛みを和らげ、これ以上悪化させないこと」、そして何より「転倒による背骨の骨折を防ぐこと」にあります。お薬や物理療法で痛みをコントロールしながら、病気の進行を抑えるための生活習慣改善のアドバイスや、転びにくい身体を作るためのリハビリテーションを行います。ご自身の背骨の状態を正しく知り、適切な対策を立てることで、安心して日常生活を送ることが十分に可能です。

Q

最近、飲み込みにくさを感じるのですが、耳鼻咽喉科と整形外科、どちらに行けばよいですか?

A

飲み込みにくさ(嚥下障害)は、食道や喉そのものの病気(ポリープや腫瘍など)が原因である可能性もあるため、まずは耳鼻咽喉科で喉の内部をカメラで診てもらうことが重要です。しかし、耳鼻科で「喉の中には異常がない」と言われた場合、DISHによって増殖した骨が、外側から食道を圧迫している可能性が考えられます。その場合は、背骨の状態を調べるために、ぜひまつもと整形外科を受診してください。 1

監修

院長
松本 淳志 Atsushi Matsumoto

経歴

  • 済生会福岡総合病院
  • 製鉄記念八幡病院
  • 福岡市民病院
  • 九州大学病院
  • 九州医療センター
  • 福岡赤十字病院
  • 済生会八幡総合病院
  • 福岡青洲会病院

資格・所属学会

  • 日本整形外科学会 専門医(日本専門医機構)
  • 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
  • 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
  • 日本フットケア学会認定 フットケア指導士
  • 身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
  • 難病指定医
  • 日本整形外科学会
  • 日本フットケア・足病医学会