頚椎偽関節(Crowned Dens Syndrome)|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

頚椎偽関節(Crowned Dens Syndrome) CROWNED-DENS-SYNDROME

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頚椎偽関節(Crowned Dens Syndrome)とは

この病気は、医学用語では「クラウンデンス症候群(Crowned Dens Syndrome)」、あるいは「頚椎偽痛風(けいついぎつうふう)」と呼ばれます。名前から「首の骨が外れたり、変形したりしたのかな?」と不安になるかもしれませんが、そうではありません。本当の正体は、骨の構造が壊れたわけではなく、首の関節の奥で突然「火事のような激しい炎症」が起きている状態なのです。

人間の首の骨(頚椎:けいつい)は7つの骨が積み重なってできています。その一番上にある第1頚椎(環椎:かんつい)と、二番目にある第2頚椎(軸椎:じくつい)は、私たちが首を左右に振る動作を行うための重要な役割を担う関節です。第2頚椎には上に向かって突き出した「歯突起(しとっき:Dens)」という歯のような形をした骨があり、第1頚椎がこの歯突起を軸にして回転する仕組みになっています。

この歯突起の周囲にある靭帯(じんたい)に、「ピロリン酸カルシウム」という物質の結晶が長年の間に沈着していくことがあります。そして、何らかのきっかけでこの結晶が関節の中へ剥がれ落ちた際、人間の身体の免疫細胞(白血球など)がそれを「異物」とみなして一斉に攻撃を始めます。これにより、首の奥深くで激しい炎症が引き起こされるのが、この疾患のメカニズムです。

CT検査の画像で見ると、歯突起(Dens)の周囲を取り囲むように沈着したカルシウムが、まるで「王冠(Crown)」を被っているように白く写ることから、「Crowned Dens Syndrome(クラウンデンス症候群)」と名付けられました。60歳以上のご高齢の方、特に女性に多く発症する傾向があり、激しい首の痛みと発熱を伴うため、救急外来などで内科の病気と間違われることも多い要注意な疾患です。

症状

CONSULTATION

  • 突然、首に激痛が走り、前後左右に一切動かせなくなる
  • 発熱や風邪のような悪寒を伴う
  • 痛みのあまり、自力でベッドから起き上がることができない
  • 首だけでなく、肩や背中まで強く痛み、夜も眠れない(肩の痛み・夜間痛)
  • 市販の鎮痛剤や湿布が効かず、数日経っても一向に良くならない

など

原因

クラウンデンス症候群を引き起こす直接的な原因は、第2頚椎の歯突起(Dens)周囲の靭帯への「ピロリン酸カルシウム結晶」の沈着と、それに伴う急激な免疫反応(炎症)です。では、なぜ結晶が沈着し、突然炎症を起こすのでしょうか。それには以下の要因が深く関わっています。

加齢による組織の変性

年齢を重ねると、全身の関節や靭帯の組織が変性(老化)し、カルシウムなどの成分が異常に沈着しやすくなります。実際に、この疾患は60歳以上の高齢者に集中して発症し、若い方に起こることは極めて稀です。

脱水症状や体調不良

夏場の水分不足(脱水)や、風邪を引いて体力が落ちている時、あるいは過度なストレスがかかっている時などに、身体の内部環境が変化し、沈着していた結晶が関節内に剥がれ落ちやすくなります。

軽微な外傷や首への負担

転倒して軽く首を捻った、長時間不自然な姿勢でうたた寝をしてしまったなど、日常のちょっとした首への物理的ストレスが引き金となって、急激な関節炎のスイッチが入ってしまうことがあります。

遺伝的素因や体質

痛風(尿酸の結晶が原因)とは原因物質が異なりますが、ピロリン酸カルシウムが沈着しやすい体質(偽痛風体質)を持つ方がいらっしゃいます。過去に膝や手首が急に腫れて痛くなった(偽痛風の発作)経験がある方は、首にも発症するリスクが高いと言えます。

診断

詳細な問診と視診・触診

「いつから痛いか」「熱はあるか」「過去に膝などが急に腫れたことはないか」を詳しく伺います。そして、首がどの程度動かせるか、首の後ろを押して強い痛み(圧痛)があるかを慎重に確認します。

CT検査(確定診断に最も重要)

クラウンデンス症候群の診断において、最も決定的な証拠となるのがCT検査です。通常のX線(レントゲン)検査では、歯突起の周りに下顎(あごの骨)や後頭部の骨が重なって写ってしまうため、結晶の沈着を正確に確認することが困難です。CT検査で首の骨を輪切りにして見ることで、歯突起を取り囲む「王冠状の石灰化(カルシウムの沈着)」を確認することができます。必要な場合は、まつもと整形外科から提携する総合病院等の専門医療機関へ速やかにご紹介し、スムーズにCT検査を受けていただけるよう手配いたします。

血液検査

体内で激しい炎症が起きていることを裏付けるため、血液検査を行います。白血球数の異常な増加や、CRP(炎症反応の数値)の上昇が見られます。

除外診断

症状が酷似している髄膜炎(細菌やウイルスが脳を包む膜に感染する致死的な病気)や、関節リウマチなど、他の重大な疾患ではないことを総合的に判断して否定(除外)することが、安全な治療の第一歩となります。

セルフチェック

ご自身の、あるいはご家族の突然の首の痛みがクラウンデンス症候群の疑いがあるかどうか、ご自宅で確認できる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ 60歳以上である(特に女性である)。
☑️ 痛みが「数日前」あるいは「今朝」から突然始まり、首が全く回らない。
☑️ 首の激痛と同時期に、37.5度以上(時には38度以上)の発熱がある。
☑️ ベッドから起き上がる時、痛くて自分の手で頭やあごを下から支えてしまう。
☑️ 手足のしびれや麻痺、言葉のしゃべりにくさなどはない(首の痛みだけが突出している)。

治療

クラウンデンス症候群の治療は、原因が細菌感染ではなく「結晶に対する過剰な免疫反応(炎症)」であるため、手術を行うことはありません。早期に正しい「保存的加療」を開始できれば、数日から1週間程度で嘘のように痛みが引き、劇的な回復を見せます。

薬物療法(消炎鎮痛剤の投与)

治療の最大の柱は、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs:ロキソニンやボルタレンなど)の内服または座薬の使用です。クラウンデンス症候群の炎症に対しては、このNSAIDsが特効薬のように非常によく効きます。十分な量のお薬を使用することで、早ければ服用したその日のうちに熱が下がり、首の痛みが半減します。もし痛みが極端に強く、NSAIDsだけでは抑えきれない重症例の場合は、より強力に炎症を鎮める「ステロイド剤」を短期間だけ内服していただくこともあります。

局所の安静(頚椎カラーによる固定)

薬物療法と並行して、首の関節を休ませるための局所の安静が不可欠です。首が動くたびに結晶が刺激されて炎症が長引いてしまうため、「頚椎カラー」と呼ばれるスポンジ状の柔らかいコルセットを首に装着します。これにより、約5キロある頭の重みをカラーが支えてくれるため、首の関節にかかる負担が激減し、痛みが劇的に和らぎます。

水分補給と安静

脱水状態は結晶の炎症を悪化させる要因となります。ご自宅ではしっかりと水分補給を行い、痛みが落ち着くまでは無理に歩き回らず、楽な姿勢で安静を保つことが早期回復への近道です。

リハビリ

急性期(発症から数日)

首に激痛と熱がある時期に無理にストレッチをしたり、マッサージで揉みほぐしたりすると、炎症の火に油を注ぐことになり、症状が確実に悪化します。この時期は「絶対に動かさないこと(安静)」が唯一にして最高のリハビリです。

回復期(痛みが消えた後)

お薬と安静によって首の炎症が完全に治まり、熱も下がったことが確認できたら、少しずつ頚椎カラーを外す時間を増やしていきます。激しい痛みを数日間我慢していたことで、首から肩甲骨にかけての筋肉(僧帽筋など)がガチガチに凝り固まっていることが多くあります。

セルフケア

クラウンデンス症候群は、加齢に伴うカルシウム結晶の沈着がベースにあるため、発症を100%完全に予防することは困難です。しかし、日々の生活の中で再発のリスクを下げるセルフケアは非常に有効です。

こまめな水分補給の徹底

体内の水分が不足すると、血液や体液の濃度が変化し、関節内に沈着している結晶が剥がれ落ちて炎症のスイッチが入りやすくなります。特に高齢者の方は喉の渇きを感じにくくなるため、意識して1日に十分な量のお水やお茶を飲む習慣をつけてください。

首への急激な負担を避ける

重いものを急に持ち上げたり、首を勢いよく振り向いたり、不自然な高さの枕で寝たりすることは、頚椎の関節に直接的なストレスを与えます。ご自身の体格に合った枕を選び、日常動作はゆっくりと行うように心がけましょう。

痛い時は絶対に揉まない(最大の自己防衛)

もし再び首に激痛が走った場合、「肩こりや寝違えだろう」と自己判断して、患部を強くマッサージしたり、無理にストレッチをして首の骨を鳴らそうとしたりすることは悪化するために厳禁です。

Q&A

Q

ひどい「寝違え」と「クラウンデンス症候群」はどう見分ければ良いですか?

A

一番の違いは「痛みの激しさ」と「発熱の有無」です。寝違えの場合、「右は向けるけれど左は痛い」といったように、ある程度動かせる方向が残っていることが多いです。しかしクラウンデンス症候群は、前後左右どの方向に動かそうとしても激痛が走り、全く首が回らなくなります。また、単なる寝違えで38度近い高熱が出ることはありません。高熱と首の激痛がセットになっている場合は、クラウンデンス症候群を強く疑います。

Q

高熱があって首が痛いので、整形外科ではなく内科や救急外来に行くべきでしょうか?‌

A

確かに、高熱と首の痛み(項部硬直)は「髄膜炎」という内科的救急疾患のサインでもあります。意識がもうろうとしている、激しい嘔吐があるといった場合は至急救急病院を受診すべきです。しかし、意識ははっきりしており、「とにかく首を動かすと激痛が走る」という関節・運動器の症状がメインである場合は、整形外科での診断が適しています。まつもと整形外科でも、問診や血液検査を通じて内科的疾患との鑑別をしっかりと行います。

Q

痛くてたまらない時、首は温めた方が良いですか?冷やした方が良いですか?

A

クラウンデンス症候群の発症直後(急性期)は、首の関節の中で激しい炎症が起きている状態です。そのため、氷のうや保冷剤をタオルで包み、患部を「冷やす(アイシング)」のが正解です。お風呂にゆっくり浸かって温めたり、カイロを貼ったりすると、血流が良くなりすぎて炎症が急激に悪化し、痛みが倍増してしまう恐れがあるため絶対に避けてください。

Q

骨に変形や異常があるとのことですが、治すために手術は必要ですか?

A

原則として、クラウンデンス症候群の治療に手術は必要ありません。関節に沈着したカルシウム結晶を直接取り除くことはできませんが、消炎鎮痛剤(お薬)の服用と頚椎カラーによる局所の安静を行うことで、数日から1週間程度で身体の免疫反応が落ち着き、痛みや熱は劇的に治まります。適切な保存的加療で十分完治を目指せる疾患ですのでご安心ください。

Q

一度治っても、数年後にまた再発することはありますか?

A

残念ながら、再発する可能性はあります。お薬で炎症を鎮火できても、歯突起の周囲に沈着した「ピロリン酸カルシウム結晶」そのものが消えてなくなるわけではないからです。そのため、数年後に風邪を引いて体力が落ちた時や、脱水症状になった時などをきっかけとして、再び炎症のスイッチが入ってしまう患者さまもいらっしゃいます。再発した際も、前回と同様に早期にお薬を飲めばすぐに良くなりますので、首の奥に不穏な痛みを感じたら、早めにまつもと整形外科へお越しください。