頚椎症性脊髄症|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

頚椎症性脊髄症 CERVICAL-SPONDYLOTIC-MYELOPATHY

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頚椎症性脊髄症(けいついしょうせいせきずいしょう)とは

人間の背骨(脊柱:せきちゅう)は、いくつもの骨が積み木のように連なってできており、首の部分にあたる7つの骨を「頚椎(けいつい)」と呼びます。この頚椎の真ん中には「脊柱管(せきちゅうかん)」というトンネルがあり、その中を脳から手足へと向かう最も重要な神経の束である「脊髄(せきずい)」が通っています。

「頚椎症(けいついしょう)」とは、加齢に伴って首の骨が変形したり、骨と骨の間にあるクッション(椎間板:ついかんばん)が潰れたりする、いわゆる首の老化現象のことです。この老化現象自体は誰にでも起こるものですが、変形した骨や飛び出した椎間板がトンネル(脊柱管)を狭くしてしまい、中を通っている「脊髄」を強く圧迫してしまう状態を「頚椎症性脊髄症」と呼びます。

よく似た名前の病気に「頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)」がありますが、こちらは脊髄から枝分かれした細い神経(神経根)が圧迫される病気で、主に「片側の腕や手」に強い痛みや痺れが出ます。 一方、頚椎症性脊髄症は神経の幹である脊髄が締め付けられるため、片手だけでなく両手、体幹、そして両足にまで広範囲に症状が現れるのが最大の特徴であり、重症化しやすい病態と言えます。50代以降の中高年の方に多く発症しますが、生まれつき脊柱管が狭い方の場合は、より若年で発症することもあります。

症状

頚椎症性脊髄症の症状は、首の痛みから始まることもありますが、多くは「手先の違和感」や「足の動かしにくさ」といった、一見すると首とは関係のないような症状から徐々に進行していきます。

手の細かい動作ができない(巧緻運動障害:こうちうんどうしょうがい)と両手の痺れ‌

初期に最も気づきやすい症状です。両手の指先が常にじんじんと痺れたり、感覚が鈍くなったりします。最大のサインは「指先を使った細かな作業ができなくなること(巧緻運動障害)」です。例えば、「お箸で小さな豆を掴めなくなった」「ワイシャツの小さなボタンをかけたり外したりするのに非常に時間がかかる」「字が汚くなった(うまくペンを握れない)」「小銭入れから硬貨を取り出しにくい」といった症状が代表的です。

足の痺れと歩行障害(痙性歩行:けいせいほこう)

首で脊髄が圧迫されると、脳からの指令が足にうまく伝わらなくなり、下半身にも異常が現れます。足の裏に「砂利の上を歩いているような違和感」や「一枚の紙が張り付いているような感覚鈍麻」が生じます。さらに進行すると、足全体が突っ張ってしまい、膝や足首がカクカクしてスムーズに曲がらなくなります(痙性歩行)。「何もない平らな道でよくつまずくようになった」「階段を降りるのが極端に怖くなり、手すりがないと降りられない」「まっすぐ歩けず、ふらふらする」といった症状が出現し、転倒のリスクが急激に高まります。

排尿や排便の異常(膀胱直腸障害:ぼうこうちょくちょうしょうがい)

脊髄の圧迫がさらに重度になると、排泄をコントロールする神経の働きまで阻害されてしまいます。「頻繁にトイレに行きたくなる(頻尿)」「おしっこが出始めるまでに時間がかかる」「残尿感がある」、さらに悪化すると「尿や便を漏らしてしまう(失禁)」といった膀胱直腸障害が現れます。ここまで進行すると、日常生活に極めて重大な支障をきたし、早急な手術が必要な段階と言えます。

原因

頚椎症性脊髄症を引き起こす最大の原因は、「加齢による頚椎(首の骨)の変性(老化現象)」です。具体的には、以下の3つの要素が複雑に絡み合い、脊髄が通るトンネル(脊柱管)を狭くしてしまいます。

椎間板(ついかんばん)の変性と突出

頚椎と頚椎の間には、衝撃を吸収するゼリー状のクッション(椎間板)があります。年齢を重ねると、この椎間板の水分が失われて弾力がなくなり、潰れて後方へと飛び出してしまいます(椎間板ヘルニアを合併した状態)。この飛び出した椎間板が脊髄を圧迫します。

骨棘(こつきょく)の形成

椎間板が潰れてクッション機能が低下すると、骨と骨が直接ぶつかり合うようになります。すると、体はその部分を安定させようとして、骨の縁(ふち)に「骨棘(こつきょく)」と呼ばれるトゲのような余分な骨を形成します。この骨のトゲが脊柱管内にせり出し、脊髄を圧迫します。

靭帯(じんたい)の肥厚(後縦靭帯・黄色靭帯)

背骨を繋ぎ止めている靭帯が、加齢や長年の負担によって分厚く硬く(肥厚)なってしまう現象です。特に脊髄のすぐ前を走る「後縦靭帯(こうじゅうじんたい)」や、後ろから支える「黄色靭帯(おうしょくじんたい)」が分厚くなると、脊髄が前後から挟み込まれるように圧迫されてしまいます。日本人はこれらの靭帯が分厚くなったり、骨のように硬く変性(骨化)したりする体質を持つ方が比較的多く、脊柱管をさらに狭くする重大な要因となります。

【発症リスクを高める要因】‌

加齢変化は誰にでも起こりますが、これに加えて「生まれつき脊柱管が狭い方(発育性脊柱管狭窄:はついくせいせきちゅうかんきょうさく)」は、わずかな骨の変形や椎間板の突出でもすぐに脊髄が圧迫されてしまうため、頚椎症性脊髄症を発症しやすい大きなリスクファクターとなります。また、ラグビーなどのコンタクトスポーツ歴がある方や、日常的に首を大きく動かす重労働を長年続けてきた方も、頚椎へのダメージが蓄積しやすく注意が必要です。

診断

詳細な問診と神経学的所見(反射の確認)

「お箸は使えますか?」「階段は手すりなしで降りられますか?」といった生活状況を詳しく伺います。「深部腱反射(しんぶけんはんしゃ)」を確認し、脊髄が圧迫されていると、この反射が異常に強く出たり(亢進)、本来は出ないはずの異常な反射(ホフマン反射やトレムナー反射、バビンスキー反射などと呼ばれる病的反射)が現れます。これは脊髄の障害を特定するための極めて重要なサインです。

X線(レントゲン)検査

首のレントゲン撮影を行い、頚椎の並び方(ストレートネックなどになっていないか)、椎間板が潰れて骨の間隔が狭くなっていないか、骨棘(骨のトゲ)が形成されていないか、生まれつき脊柱管が狭くないかといった、骨の変形の程度全体を確認します。

MRI検査(確定診断に必須)

レントゲンでは骨しか写りませんが、MRI検査を行うと「脊髄そのもの」や「椎間板」「靭帯」といった軟部組織を鮮明に映し出すことができます。「脊髄がどこで、どの程度強く圧迫されているか」、そして「脊髄の内部が白く変色するなどのダメージを受けていないか」を直接視覚的に確認し、確定診断を下します。まつもと整形外科にてMRI検査が必要と判断した場合は、近隣の提携医療機関にてスムーズかつ迅速に検査を受けていただけるよう手配いたします。

セルフチェック

ご自身の手足の痺れや動かしにくさが、頚椎症性脊髄症による危険なサインかどうか、ご自宅で簡単に確認できるセルフチェック法(10秒テストなど)をご紹介します。

☑️ 【10秒テスト(グーパーテスト)】: 両手を前に出し、指を完全に開く(パー)と、完全に握り込む(グー)動作を、可能な限り速く繰り返してください。「10秒間に、何回グーパーを繰り返せますか?」 健康な方であれば20回以上は容易にできますが、脊髄が圧迫されていると動きがぎこちなくなり、「10秒間に20回以下」しかできない場合は、頚椎症性脊髄症の可能性が極めて高い危険なサインです。

☑️ ワイシャツなどの小さなボタンを、以前のようにスムーズにかけたり外したりできなくなった。

☑️ お箸を使って、焼き魚の身をほぐしたり、小さな豆を掴んだりするのが難しくなった。

☑️ 足の裏に、砂利や薄い紙を踏んでいるような違和感(感覚の鈍さ)が常にある。

☑️ 何もない平らな場所でよくつまずく。または、両足のつま先と踵をくっつけて、一直線上の綱渡りのような歩き方(継ぎ足歩行)がふらついてできない。

☑️ 階段を降りる時、足元が不安で必ず手すりにつかまるようになった。

治療

保存療法‌

○薬物療法
神経の修復を助けるビタミンB12製剤や、神経の過敏な働きを抑えて痺れや痛みを和らげるお薬(神経障害性疼痛治療薬)、血流を改善するお薬などを処方します。

○装具療法(頚椎カラー)
首を動かすことで脊髄への圧迫が強まるのを防ぐため、頚椎カラーというコルセットを首に巻いて局所の安静を図ります。

手術療法(歩行障害や手指の巧緻運動障害が進行している場合)

脊髄は一度深刻なダメージを受けると元の状態には戻りません。したがって、お箸が使えない、ボタンがとめれない、階段が降りられないといった症状が明らかに出現し、進行している場合、または排尿障害が出ている場合は、脊髄の圧迫を取り除くための「手術」が必要となります。 手術では、首の後ろから骨を開いて脊髄の通り道を広げる手術(椎弓形成術:ついきゅうけいせいじゅつ)などが一般的に行われます。まつもと整形外科にて手術が必要な状態であると判断した場合は、脊椎の手術を専門にする高度専門医療機関へ、責任を持ってご紹介いたします。

リハビリ

頚椎症性脊髄症において、リハビリテーションは「保存療法中」から「手術後の回復期」まで、あらゆる場面で極めて重要な役割を果たします。首を強く牽引したり無理に動かしたりするような危険なリハビリは行いません。

転倒予防とバランス訓練(保存療法中〜術前)

歩行が不安定な状態での最大の敵は「転倒」です。転んで首に強い衝撃が加わると、圧迫されていた脊髄が完全に破壊され、手足が麻痺してしまう危険性があります。そのため、理学療法士が安全な歩き方の指導や、杖の正しい使い方、下半身の筋力トレーニングやバランス訓練を行い、転倒を徹底的に予防します。

手指の巧緻運動訓練と歩行訓練(術後)

手術によって脊髄の圧迫が取れても、すぐに元通りに動くようになるわけではありません。手先の細かな動作を取り戻すための作業療法的な訓練(ペグボードやボタンかけの練習)や、硬くなった下半身の筋肉をほぐし、正しい歩行フォームを取り戻すための本格的なリハビリを根気強く行います。 まつもと整形外科では、経験豊富な理学療法士・作業療法士が患者さま一人ひとりの身体機能と生活目標に合わせたマンツーマンのリハビリプランを作成し、専門性の高いリハビリで安全かつ効果的に日常生活への復帰をサポートいたします。

セルフケア・予防

不良姿勢の改善(スマホ首・ストレートネックへの注意)

スマートフォンやパソコンの操作で、長時間うつむいた姿勢(頭を前に突き出した姿勢)を続けると、頚椎と椎間板に数倍の重みがかかり、変形を早めてしまいます。画面は目の高さまで上げ、背筋を伸ばして顎を軽く引いた正しい姿勢を心がける意識を日常的に持ちましょう。

首を急激に反らす動作を避ける

首を後ろに反らす動作(後屈)は、脊柱管を最も狭くし、脊髄を強く圧迫する危険な姿勢です。高いところの物を取る時や、美容院での洗髪、うがいをする時などは、首だけで上を向かず、体全体を傾けたり、顎を上げすぎないように十分注意してください。

首を強く揉む・鳴らす行為は厳禁

肩こりや首の違和感があるからといって、整体などで首を強く揉まれたり、ボキボキと鳴らすような強い施術を受けることは極めて危険です。脊髄が圧迫されている状態で強い外力が加わると、脊髄損傷を引き起こし、四肢麻痺(手足が動かなくなる)になる恐れがあります。違和感がある場合は、安易なマッサージには行かず、必ず整形外科を受診してください。

Q&A

Q

頚椎症性神経根症(しんけいこんしょう)とは何が違うのですか?

A

一番の違いは「症状が出る範囲」と「重症度」です。神経根症は、枝分かれした細い神経が圧迫されるため、主に「片側の腕から手にかけての痺れや強い痛み」が出現します。対して脊髄症は、神経の太い幹そのものが締め付けられるため、「両手・両足・体幹」にまで広範囲に症状が及び、歩行障害や排尿障害を引き起こすのが特徴です。神経根症は時間が経てば痛みが和らぐ(自然治癒する)ことも多いですが、脊髄症は自然に治ることは難しく、進行すれば手術が必要となるため、より深刻な病気と言えます。

Q

首の痛みや手の痺れで、マッサージやカイロプラクティックに行っても大丈夫ですか?

A

頚椎症性脊髄症の疑いがある場合、首に対する強いマッサージや、関節をボキボキ鳴らすような施術は絶対に避けてください。脊髄が通るトンネルが極端に狭くなっている状態で首に強い力が加わると、最悪の場合、脊髄が完全に押し潰されて手足が動かなくなる(四肢麻痺)という取り返しのつかない事態を招く恐れがあります。首や手足に異常を感じたら、自己判断で民間療法に頼らず、まずは整形外科でレントゲンやMRIによる正確な診断を受けてください。

Q

今は少しお箸が使いにくいくらいで、歩くことはできます。それでも手術になることはありますか?

A

はい、もしその症状が「頚椎症性脊髄症」によるものであれば、十分にあり得ます。脊髄という神経は、一度強い圧迫を受けて組織が死んでしまうと、手術をしても二度と元には戻りません。つまり、完全に歩けなくなってから手術をしても手遅れになってしまいます。「お箸が使いにくい」「ボタンがかけにくい」といった症状は、すでに脊髄からの重要なSOSサインです。お薬やカラー固定の保存療法で経過を見ることもありますが、少しでも症状が進行(悪化)していくようであれば、手遅れになる前に、これ以上神経を傷つけないための「予防的な意味合いも含めた手術」が必要となります。ただし、「お箸が使いにくい」「ボタンがかけにくい」といった症状が、必ずしも頚椎症性脊髄症であるとは限りません。手首や肘の神経が締め付けられる病気(手根管症候群や肘部管症候群)や、脳の疾患など、全く別の原因が隠れている可能性も十分に考えられます。だからこそ、自己判断で不安にならず、まずはその症状の「本当の原因」がどこにあるのかを、整形外科で正確に見極めることが何よりも重要です。

監修

院長
松本 淳志 Atsushi Matsumoto

経歴

  • 済生会福岡総合病院
  • 製鉄記念八幡病院
  • 福岡市民病院
  • 九州大学病院
  • 九州医療センター
  • 福岡赤十字病院
  • 済生会八幡総合病院
  • 福岡青洲会病院

資格・所属学会

  • 日本整形外科学会 専門医(日本専門医機構)
  • 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
  • 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
  • 日本フットケア学会認定 フットケア指導士
  • 身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
  • 難病指定医
  • 日本整形外科学会
  • 日本フットケア・足病医学会