母趾種子骨障害|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

母趾種子骨障害 SESAMOIDITIS

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母趾種子骨障害(ぼししゅしこつしょうがい)とは

人間の足の親指(母趾)の付け根の関節(MTP関節)の裏側には、「種子骨(しゅしこつ)」と呼ばれる豆粒のような小さな骨が2つ、左右に並んで存在しています。膝のお皿の骨(膝蓋骨)を極端に小さくしたものとイメージしていただくと分かりやすいかもしれません。

この2つの種子骨は、足の親指を曲げるための腱(短母趾屈筋腱:たんぼしくっきんけん)の中に包み込まれるように存在しており、以下の2つの極めて重要な役割を担っています。
○滑車の役割
腱が動く際の支点となり、足の趾(ゆび)で地面を力強く蹴り出す力をサポートする。

○クッションの役割
歩行時やジャンプの着地時に、足の裏にかかる体重(衝撃)を吸収し、関節を保護する。

「母趾種子骨障害」とは、この小さな種子骨そのものや、種子骨を包んでいる腱などの周囲の組織に、過度な負担が繰り返し加わることで炎症が起きる病気です。

ランニングやジャンプを繰り返す陸上競技、裸足で踏み込む動作が多い剣道、柔道、空手などの武道、そしてバレエやダンスを行う方に非常に多く見られる、典型的な「スポーツ障害(使いすぎによる炎症)」の一つです。 しかし、スポーツをしない方でも、足のアーチが高い方(甲高の足)や、お仕事や通学でローファーなどの革靴、長靴、安全靴を履く方、ヒールをよく履く女性にも非常に多く見られ、決してアスリートだけの病気ではありません。

症状

歩行時や踏み込んだ時の「足の裏(親指の付け根)」のズキズキとした痛み

親指の付け根の裏側にズキッとした鋭い痛みや、強い圧迫痛を感じます。痛みをかばうために、かかと歩きや足の外側だけで歩くようになり、歩き方が不自然になって膝や腰など他の部位にも痛みを引き起こす原因となります。

親指を甲側に強く反らせたり、付け根の裏を指で押したりすると痛む

足の親指を手で持って、足の甲側へグッと強く反らせる(背屈させる)と、種子骨周囲の腱が引っ張られて痛みが誘発されます。また、親指の付け根の裏側の少し膨らんだ部分(種子骨がある場所)を指でピンポイントに押すと、飛び上がるような強い痛み(圧痛)を感じるのが特徴です。

足の親指の付け根の裏側が赤く腫れたり、熱を持ったりする

種子骨や周囲の腱、滑液包(摩擦を減らす袋)で強い炎症が起きている場合、足の裏の親指の付け根付近がぷっくりと腫れ上がったり、皮膚が赤くなったり、手のひらで触ると周囲よりも明らかに熱を持っている状態になることがあります。

原因

母趾種子骨障害は、一度の強い衝撃(単回のケガ)で起こることもありますが、多くは毎日の小さな負荷の蓄積(使いすぎ:オーバーユース)によって引き起こされます。主な原因としては以下の要因が複雑に絡み合っています。

足の裏への力学的な負担(繰り返しの外力とスポーツ)

陸上競技でのダッシュ、剣道での強い踏み込み、バレエのつま先立ち(ルルベ)など、親指の付け根に全体重が乗る動作を繰り返すことで、種子骨に微小な衝撃と牽引力(引っ張られる力)が加わり続け、炎症を引き起こします。硬いアスファルトの上を底の薄い靴で走ることも大きな負担となります。

足の骨格や解剖学的な特徴(甲高・分裂種子骨)

生まれつき足のアーチが高い「凹足(おうそく:甲高)」の方は、構造上、親指の付け根と踵(かかと)に体重が集中しやすいため、種子骨へのストレスが格段に増加します。また、生まれつき種子骨が2つ以上に割れている「分裂種子骨(ぶんれつしゅしこつ)」という状態の方が全体の約10%にいらっしゃいます。分裂していること自体は病気ではありませんが、通常の種子骨よりも強度が弱いため、負担がかかると痛み(障害)を起こしやすい傾向があります。

不適切な靴と足裏のクッションの低下

ローファーなどの革靴、長靴、安全靴といった「靴底が硬くて曲がりにくい靴」や、ヒールの高い靴を日常的に履いていると、歩行時に足の裏のクッション機能がうまく働かず、種子骨や周囲の腱への直接的なダメージ(圧力や摩擦)が大きく増加して炎症を引き起こします。また、加齢に伴って足の裏の脂肪組織(クッションの役割を果たす脂肪体)が薄くなることで、日常の歩行だけで発症するケースも少なくありません。

診断

問診と触診

「どのような動作で痛むか」「どのような靴を履いているか」「スポーツの頻度」を詳しく伺います。その上で、親指の付け根の裏側を丁寧に触診し、内側と外側にある2つの種子骨のどちらにピンポイントの痛み(圧痛)があるかを正確に確認します。

X線(レントゲン)検査

足に体重をかけた状態(荷重位)などでレントゲン撮影を行い、骨の形や状態を確認します。生まれつき骨が割れている「分裂種子骨」ではないか、外反母趾などの変形が合併していないかを確認する最も基本的な検査です。分裂種子骨と骨折を見分けるために、痛みのない反対側の足も撮影して比較することがあります。

超音波(エコー)検査

レントゲンには写らない靭帯や腱の炎症、周囲の血流の増加、液体の貯留などをリアルタイムで鮮明に映し出すことができるのが超音波検査です。被爆の心配がなく、関節を動かしながら痛みの原因部位を特定できる超音波診断装置(エコー)を積極的に活用し、極めて精度の高い診断を行っております。

MRI検査

疲労骨折や骨の血流が絶たれる「無腐性壊死」が疑われる場合は、MRI検査が不可欠です。必要と判断した場合は、近隣の連携医療機関にてスムーズにMRI検査を受けていただけるよう速やかに手配いたします。

セルフチェック

ご自身の足の裏の痛みが、母趾種子骨障害の可能性があるかどうか、ご自宅で確認できるセルフチェックリストです。

☑️ 歩く時や走る時、足の親指で地面を蹴る瞬間に足の裏がズキッと痛む。
☑️ 足の親指の付け根の裏側(ふくらみのある部分)を指で押すと、痛い箇所がある。
☑️ 足の親指を手で掴んで、足の甲側に強く反らせると、足の裏に痛みが走る。
☑️ 剣道、柔道、バレエなど、裸足で行うスポーツや、つま先立ちになる動作をよく行う。
☑️ 普段からローファーなどの革靴、長靴、安全靴、またはヒールの高い靴をよく履いている。
☑️ 足の甲が高い(土踏まずのアーチが深い)と言われたことがある。

治療

局所の安静とスポーツの休止

まずは痛みの原因となっている動作(ランニング、踏み込み動作など)を休止し、種子骨にかかる機械的なストレスを遮断します。

インソールやパッドによる保護(免荷)

種子骨に直接体重がかからないようにすることが最も重要です。種子骨の部分だけをくり抜いた専用の柔らかいパッド(ドーナツパッドなど)を靴の中に敷いたり、足のアーチをしっかりと支えて足裏全体に体重を均等に分散させるオーダーメイドのインソール(中敷き)を作成して使用します。

薬物療法(内服薬・外用薬)

炎症を抑え、痛みを和らげるために、消炎鎮痛薬(NSAIDs)の飲み薬や湿布などの外用薬を処方します。まずはこれらのお薬を用いて、痛みをコントロールしていきます。

超音波(エコー)下注射

歩行も困難なほどの強い痛みがある場合や薬・インソールだけでは痛みが引かない場合に行う、最も即効性があり、高い除痛効果が期待できる治療法です。まつもと整形外科では、超音波(エコー)画像で内部の状態をリアルタイムに確認しながら、炎症の強い部位へミリ単位の精度でピンポイントに少量のステロイド薬を注射します。1回の注射で劇的に痛みが緩和されます。

リハビリ

ふくらはぎとアキレス腱の柔軟性確保

一見関係ないように思えますが、ふくらはぎの筋肉やアキレス腱が硬いと、歩行時に踵(かかと)が地面から早く離れすぎてしまい、その結果として足の前側(親指の付け根)に過剰な体重と圧力がかかってしまいます。そのため、アキレス腱やふくらはぎの入念なストレッチを行い、足首の柔軟性を高めることが種子骨の負担軽減(根本的な治療)に直結します。

足の内在筋(足の裏の筋肉)のトレーニング

足のアーチを支える筋力が低下していると、クッション機能が働かずに種子骨に衝撃がダイレクトに伝わります。床に広げたタオルを足の趾(ゆび)でたぐり寄せる「タオルギャザー訓練」などを行い、足の裏の細かい筋肉(内在筋)を鍛え、健康なアーチを再構築します。

動作指導とフォーム改善

スポーツに復帰する際、種子骨に負担をかけないような体重の乗せ方や、踏み込みのフォーム、正しい靴の選び方などを実践的に指導し、再発予防を徹底します。

セルフケア・予防

母趾種子骨障害は、日頃のちょっとした靴選びやケアの習慣を見直すことで、発症や再発のリスクを大幅に下げることができる疾患です。

適切な靴(シューズ)の選択

靴底がペラペラに薄い靴や、クッション性のない靴は避け、靴底に適度な厚みとクッション性があり、足のアーチをしっかりサポートしてくれるシューズを選んでください。また、靴底のつま先側が少し反り上がっている「ロッカーボトム形状」の靴は、蹴り出しの際に親指の付け根にかかる負担を自然と逃がしてくれるため、非常に有効な予防策となります。

裸足での活動をコントロールする

室内でのトレーニングや、剣道・武道など裸足で行う競技は、種子骨への衝撃が最大化します。練習環境(床の硬さ)に配慮し、可能であれば専用の衝撃吸収サポーターやテーピングで足裏を保護する工夫を行ってください。

運動後のアイシングとストレッチの徹底

足裏に負担のかかるスポーツや長時間の歩行をした後は、親指の付け根が熱を持っていることがあります。その場合は氷水などで局所をアイシング(10〜15分程度)して炎症を鎮め、お風呂上がりにはふくらはぎと足の裏のストレッチを念入りに行い、筋肉の柔軟性を保つケアを習慣にしてください。

仕事や通学で指定の靴(安全靴・長靴・ローファー)を履く場合の工夫

お仕事の都合や学校の規定などで、どうしても靴底が硬くて曲がりにくい安全靴、長靴、ローファーを毎日履かなければならない方も多いと思います。靴そのものを変えるのが難しい場合は、「靴の中敷き(インソール)」を工夫することが最も効果的です。市販の衝撃吸収インソールに入れ替えるだけでも違いはありますが、まつもと整形外科では、患者さま一人ひとりの足の形や歩き方のクセに合わせた「オーダーメイドのインソール(治療用装具)」を、健康保険適用(保険診療)で作成することが可能です。ご自身の足にぴったりとフィットし、土踏まず(足のアーチ)を立体的にしっかりと支えてくれる専用のインソールを毎日の靴に入れるだけで、種子骨への直接的なダメージを劇的に減らし、痛みの根本的な改善と再発予防に繋げることができます

Q&A

Q

「痛風(つうふう)」の症状と似ている気がするのですが、自分で見分ける方法はありますか?‌

A

痛む場所は非常に似ていますが、「痛みの出方」と「きっかけ」が異なります。痛風は、スポーツなどの心当たりがないにもかかわらず、ある日突然、足の親指の付け根全体が真っ赤に腫れ上がり、激痛が走るのが特徴です。一方、母趾種子骨障害は、歩く・踏み込むといった「体重がかかる動作」をした時に足の裏の痛みが強くなり、安静にしていれば痛みは和らぐ傾向があります。

Q

レントゲンで「生まれつき骨が割れている(分裂種子骨)」と言われました。割れた骨は元にくっつきますか?‌

A

生まれつき骨が2つ以上に分かれている「分裂種子骨」の場合、それが元の一つの骨にくっつく(癒合する)ことはありません。しかし、分裂していること自体が悪いわけではなく、問題なのは「割れ目の部分で炎症が起きていること」です。したがって、治療の目的は骨をくっつけることではなく、インソールやパッドによる保護、安静によって「炎症を鎮めて痛みをなくすこと」になります。適切な治療を行えば、骨が分かれたままでも痛みなくスポーツに復帰することは十分に可能です。

Q

足の裏への注射はとても痛そうで怖いのですが、ステロイド注射は本当に効くのでしょうか?

A

足の裏は非常に敏感な場所であるため、針を刺す瞬間のチクッとした痛みはどうしても伴います。しかし、ステロイド注射は数ある治療法の中で「最も即効性が高く、劇的な除痛効果」が期待できる非常に優れた治療法です。痛みのために足を引きずって来院された患者さまが、治療を終えて帰宅される頃には「うそのように痛みがなくなった!」と、ご自分の足でしっかりと歩いて帰られることも決して珍しくありません。まつもと整形外科では、超音波(エコー)画像を用いて痛みの原因となっている数ミリの炎症部位を正確に特定し、できるだけ細い針でピンポイントで注射を行います。そのため、無駄な組織を傷つけず、より安全かつ最大限の効果を引き出すことが可能です。

監修

院長
松本 淳志 Atsushi Matsumoto

経歴

  • 済生会福岡総合病院
  • 製鉄記念八幡病院
  • 福岡市民病院
  • 九州大学病院
  • 九州医療センター
  • 福岡赤十字病院
  • 済生会八幡総合病院
  • 福岡青洲会病院

資格・所属学会

  • 日本整形外科学会 専門医(日本専門医機構)
  • 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
  • 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
  • 日本フットケア学会認定 フットケア指導士
  • 身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
  • 難病指定医
  • 日本整形外科学会
  • 日本フットケア・足病医学会