有痛性分裂膝蓋骨|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

有痛性分裂膝蓋骨 PAINFUL-BIPARTITE-PATELLA

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有痛性分裂膝蓋骨(ゆうつうせいぶんれつしつがいこつ)とは

有痛性分裂膝蓋骨とは、通常は1つの塊であるはずの膝蓋骨(膝のお皿)が、2つ以上の複数の骨に分かれたまま成長し、そこにスポーツなどの負荷がかかることで痛みを引き起こす疾患です。 人間の膝のお皿は、赤ちゃんの頃は軟骨でできており、成長とともに一つの硬い骨へと癒合して完成します。しかし、人口の約2〜3%の方において、成長の過程で骨が完全には癒合せず、分裂したままの状態になることがあります。これを「分裂膝蓋骨」と呼びます。 お皿の骨が分かれていること自体は異常ではなく、多くの場合、痛みもなく日常生活を送ることができます。しかし、サッカー、バスケットボール、陸上競技など、走る・跳ぶといった膝を激しく使うスポーツを本格的に始めると、分かれている骨の隙間(軟骨部分)に強いストレスがかかり、炎症を起こして痛みを伴うようになります。痛みが出た状態になって初めて、有痛性分裂膝蓋骨と診断されます。

発症するのは、10歳〜15歳頃(小学校高学年から中学生)の、スポーツを活発に行う男の子に圧倒的に多く見られるのが最大の特徴です。

分裂する位置による3つのタイプ(Saupe分類)

・I型(下方が分かれる):約5%
・II型(外側が分かれる):約20%
・III型(外側上方が分かれる):約75%
このように、膝のお皿の「外側の上方」が分かれているIII型が全体の約75%を占め、最も多く見られます。

症状

運動中や運動後の強い膝の痛み

ダッシュやストップ動作、ジャンプの着地、ボールを蹴る動作など、太ももの前側の筋肉を強く収縮させた瞬間に、膝蓋骨の周りにズキッとした鋭い痛みが走ります。スポーツ中だけでなく、練習が終わって帰宅した後にジンジンと痛むこともあります。

膝蓋骨の外側・上部を押した時の痛み

膝蓋骨の「外側の上の方」を指で押すと、強い痛み(圧痛)を感じます。これは、分裂している骨のつなぎ目に炎症が起きているためです。

膝蓋骨の一部の出っ張りや腫れ

痛みのない反対側の膝と見比べた時に、痛い方の膝蓋骨の外側上がポコッと出っ張って見えたり、熱を持って腫れていたりすることがあります。正座をする時や、膝をついた時にこの出っ張りが床に当たって痛むこともあります。

原因

有痛性分裂膝蓋骨が痛みを引き起こす最大の原因は、太ももの前側にある大きな筋肉「大腿四頭筋(だいたいしとうきん)」による強い牽引力です。

膝蓋骨には、大腿四頭筋が付着しています。走ったりジャンプしたりする際、この大腿四頭筋は強く収縮し、膝蓋骨を上に向かって力強く引っ張ります。 膝蓋骨が一つの塊であれば問題ありませんが、分裂膝蓋骨のお子様の場合、分かれている小さな骨の破片だけが大腿四頭筋と外側広筋に強く引っ張られることになります。

スポーツの練習量が増えたり、ストレッチ不足で筋肉が硬くなったりすると、この牽引力が過剰になり、本体の骨と分裂している小さな骨をつないでいる軟骨部分が引き剥がされそうになります。その結果、軟骨部分に微小な亀裂が入ったり、強い炎症が起きたりして、激しい「膝が痛い」という症状を引き起こすのです。

診断

レントゲン(X線)検査

診断の基本となります。膝を正面や側面、あるいは膝を曲げた特殊な角度から撮影し、膝蓋骨が分かれているかどうかを確認します。保護者の方はレントゲンを見て「骨折している!」と驚かれますが、骨折の場合は骨の断面が鋭利になるのに対し、分裂膝蓋骨の場合は断面が丸みを帯びて滑らかであるため、正確に見極めることができます。

MRI検査

レントゲンでは骨の形は分かりますが、軟骨の炎症や水分の貯留までは見えません。痛みの原因が本当に分裂膝蓋骨の炎症によるものなのか、あるいは筋肉の損傷によるものなのかをより詳しく調べるためにはMRI検査が有効です。まつもと整形外科では、必要に応じて連携医療機関でのMRI検査を手配し、痛みの根本原因を正確に診断します。

他のスポーツ障害との鑑別

成長期の膝の痛みには、膝蓋骨の下が痛くなる「オスグッド・シュラッター病」や膝蓋骨の下端が痛くなる「シンディング・ラーセン・ヨハンソン病」など、よく似た疾患が多数存在します。これらを正確に鑑別することが、正しい治療への第一歩です。

セルフチェック

お子様の「膝が痛い」という訴えが、有痛性分裂膝蓋骨によるものかどうか、ご家庭でできる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ 小学校高学年〜中学生の男の子で、スポーツを熱心にしている。
☑️ 走ったり、ジャンプしたり、ボールを蹴ったりすると膝が痛い。
☑️ 膝蓋骨の「外側のやや上の部分」を指で押すと痛がる。
☑️ 痛い方の膝蓋骨が、反対側と比べて大きく見える、または出っ張っている。
☑️ 体が硬く、特に太ももの前側の筋肉のストレッチをすると痛がる・曲がらない。
☑️ 練習量が増えた、あるいは上の学年に上がって練習が急にハードになった。

治療

有痛性分裂膝蓋骨の治療は、手術を行わない「保存療法」が原則となります。まつもと整形外科では、お子様のスポーツへの想いに寄り添いながら、段階的な治療をご提案します。

局所の安静(スポーツ活動の制限)

痛みが強い急性期は、炎症を鎮めることが最優先です。ジャンプやダッシュなど、膝に強い負担のかかるスポーツ動作を一時的に休止、または制限します。「完全に部活を休まなければならない」と落ち込むお子様もいらっしゃいますが、痛みの程度に合わせて「上半身のトレーニングはOK」「軽いジョギングまでならOK」など、できる範囲の活動を医師や理学療法士と相談しながら決定します。

薬物療法

痛みを和らげるために、消炎鎮痛剤(湿布や塗り薬など)を処方します。患部の炎症が強く、お子様が「膝が痛い」と辛い思いをしている時期には、まずお薬でしっかりと痛みを抑え込むことが重要です。※ただし、お薬で一時的に痛みが消えたからといって、無理にスポーツ(運動)を再開するのは絶対にやめてください。根本的な原因が治っていない状態で激しく膝を動かすと、かえって軟骨や骨の引き剥がしを進行させ、症状を悪化させる逆効果となってしまいます。

物理療法

まつもと整形外科では、症状に合わせて専用の医療機器を用いた物理療法を行います。たとえば、超音波治療器を用いて、手技では届かない骨や軟骨の深部組織に細かな振動を与え、炎症を効果的に鎮めながら組織の修復を促します。また、低周波治療器(電気治療)などを活用して、膝蓋骨を強く引っ張っている太ももの筋肉の緊張をほぐし、血行を促進することで、膝にかかるストレスをスムーズに軽減させます。

サポーターやテーピング

大腿四頭筋や外側広筋が分裂した膝蓋骨を引っ張る力を和らげるため、スポーツ復帰時には膝用の専用サポーターを装着したり、理学療法士がテーピングを指導したりして、膝への負担を物理的に軽減します。

手術療法(稀なケース)

半年以上リハビリや保存療法を続けても痛みが全く取れず、スポーツや日常生活に重大な支障をきたしている場合にのみ、手術(分裂している小さな骨の摘出や、筋肉の付着部を切り離す手術)が検討されます。しかし、大半は保存療法で改善するため、まつもと整形外科ではまず徹底したリハビリテーションと保存治療に全力を尽くします。

リハビリ

大腿四頭筋の徹底的なストレッチ

まつもと整形外科の理学療法士がマンツーマンで介入し、太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)の柔軟性を高めるストレッチを徹底的に指導します。筋肉が柔らかくなれば、膝蓋骨を引っ張る力が弱まり、痛みが劇的に改善します。

全身の柔軟性とフォームの改善

膝が痛くなるお子様は、股関節や足首が硬かったり、体幹の筋力が弱かったりすることが多く、そのしわ寄せが膝にきているケースが多々あります。局所のストレッチだけでなく、全身のバランスを見直し、膝に負担のかかりにくい走り方やジャンプの着地フォームを指導します。

セルフケア・予防

痛みが落ち着いてスポーツに復帰した後も、再発を防ぐための日常的なセルフケアが欠かせません。

ウォーミングアップとクールダウンの徹底

練習前は必ず動的ストレッチで筋肉を温め、練習後は太ももの前側、裏側、ふくらはぎを時間をかけてゆっくり伸ばす静的ストレッチを行ってください。日々のストレッチの積み重ねが最大の予防薬になります。

運動後のアイシング

練習後に膝蓋骨が熱を持っていたり、少しでも「膝が痛い」と感じたりした場合は、氷水やアイスパックで10〜15分程度しっかり冷やし(アイシング)、炎症をその日のうちに抑え込んでください。

練習量(オーバーユース)の管理

お子様は痛みを隠して無理をしてしまうことがあります。保護者の方や指導者の方は、お子様の歩き方やジャンプの着地に違和感がないか観察し、膝に負担が集中しすぎないよう練習量やスケジュールを調整してあげてください。

Q&A

Q

レントゲンで「膝蓋骨が割れている」と言われました。骨折とは違うのですか?

A

はい、骨折とは全く異なります。骨折は強い衝撃を受けて骨が「折れた・割れた」状態ですが、分裂膝蓋骨は、成長の過程で本来一つに癒合するはずの骨が「癒合せずに分かれたまま成長した」状態です。ケガで骨折したわけではないので、過度に心配なさらないでください。

Q

痛みがある間は、スポーツや部活は完全に休まなければいけませんか?‌

A

痛みの程度によって異なりますので、必ずしも「完全に休まなければならない」わけではありません。歩くのも痛いような強い急性期は安静が必要ですが、痛みが引いてくれば、膝に負担のかからない上半身のトレーニングや、水中歩行などから徐々に再開できます。まつもと整形外科では、お子様の「試合に出たい」という気持ちを尊重し、理学療法士とともに「今はどこまでやっていいのか」を明確にアドバイスし、安全なスポーツ復帰をサポートします。

Q

大人になれば自然に骨が癒合して治るのでしょうか?

A

大人になってから分裂している膝蓋骨が自然に癒合することは、基本的にはありません。膝蓋骨は分かれたまま一生を過ごすことになります。しかし、成長期が終わって骨が成熟し、大腿四頭筋や外側広筋の過剰な牽引や、激しいスポーツ活動のピークが過ぎると、炎症が治まり痛みは自然に消失することがほとんどです。大人になっても痛みが続くケースは稀ですので、焦らず今の時期のケアとリハビリをしっかり行いましょう。

監修

院長
松本 淳志 Atsushi Matsumoto

経歴

  • 済生会福岡総合病院
  • 製鉄記念八幡病院
  • 福岡市民病院
  • 九州大学病院
  • 九州医療センター
  • 福岡赤十字病院
  • 済生会八幡総合病院
  • 福岡青洲会病院

資格・所属学会

  • 日本整形外科学会 専門医(日本専門医機構)
  • 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
  • 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
  • 日本フットケア学会認定 フットケア指導士
  • 身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
  • 難病指定医
  • 日本整形外科学会
  • 日本フットケア・足病医学会