リスフラン関節捻挫とは

「リスフラン関節」とは、足の甲にある足根骨(そっこんこつ)と、5本の中足骨(ちゅうそくこつ)をつなぐ関節のことです。ちょうど足の甲の真ん中あたり、靴紐を結ぶ部分に位置しています。
足のアーチ(土踏まず)が潰れないように頂上で体重を支える、建築物でいう「要石(キーストーン)」のような重要な役割を担っています。
この関節は、体重を支えたり、歩く・走る・ジャンプするといった動作の際に地面からの強力な衝撃を吸収するクッションとして機能します。リスフラン関節捻挫とは、スポーツでの激しい動きや日常生活でのつまずきなどによって、リスフラン靭帯が伸びたり、切れたりしてしまう状態を指します。
この疾患で最も注意すべき点は、一般的な「足首の捻挫(外側のくるぶし付近の捻挫)」とは異なるケガであるにもかかわらず、初期症状が似ているため「単なる捻挫として軽く見過ごされやすい」ということです。
リスフラン関節の靭帯が損傷したまま無理に体重をかけ続けると、足のアーチを支えきれなくなり、足の甲がペチャンコに潰れてしまう「扁平足(へんぺいそく)」の変形をきたしたり、将来的に関節の軟骨がすり減って激しい痛みを伴う「変形性関節症」に移行したりする恐れがあります。スポーツ選手であれば競技生命を脅かしかねない、非常に厄介で慎重な治療が求められるケガです。
症状
軽症:足の甲の腫れと、体重をかけた時の痛み
ケガをした直後から、足首ではなく「足の甲の中央部分」が腫れ上がり、押すと痛み(圧痛)を感じます。じっとしていると痛みは少ないものの、立ち上がって体重をかけたり、歩き出そうと踏み込んだりした瞬間に、足の甲にズキッとした痛みが走ります。この段階では「少し痛いけれど歩けるから」と、足を引きずりながら無理をしてしまう患者さまが少なくありません。
中等症:つま先立ちやダッシュ時の激痛
靭帯の損傷が強い場合、足の甲の腫れがさらに目立つようになります。特に、かかとを浮かせて「つま先立ち」になる動作や、階段を上る時、スポーツでダッシュやジャンプの踏み切りをする瞬間に、リスフラン関節に極めて強い負担がかかるため、激痛でそれらの動作が全くできなくなります。
重症:足の裏の内出血と歩行困難
靭帯が完全に断裂したり、骨折や脱臼を伴うような重症のリスフラン関節損傷(リスフラン関節脱臼骨折)の場合、数日経つと「足の裏(土踏まずのあたり)」にべっとりと紫色の内出血(あざ)が現れることがよくあります。この状態になると、痛みが強烈で足に一切体重をかけることができず、松葉杖がなければ歩くことが難しくなります。
原因
リスフラン関節捻挫は、関節に対して「強力なねじれの力」や「縦方向の押しつぶす力」が加わることで発生します。原因は大きく分けて以下の3つのパターンに分類されます。
つま先立ち状態での強力な縦への圧力(スポーツ外傷)
サッカー、ラグビー、アメリカンフットボールなどで最もよく見られる原因です。つま先立ち(足首が伸びた状態)で踏ん張っている時に、後ろから他の選手にタックルされて乗られたり、体操や剣道などで高いところからつま先から着地したりした際に、足の甲が二つに折れ曲がるような強烈な縦のストレスがかかり、靭帯が引きちぎられます。
足が固定された状態での強力な捻れ
乗馬で鐙(あぶみ)に足を入れた状態で落馬したり、スノーボードやウェイクボードで足がボードに固定されたまま転倒して体がねじれたりした際、足の甲の関節に限界を超えるねじれの力が加わって靭帯が損傷します。
日常生活でのつまずきや直接的な衝撃(直接外傷)
スポーツ現場だけでなく、日常生活でも発症します。階段を踏み外して不自然な形で足をついたり、ヒールのある靴を履いていて足の甲を強くねじったりすることで捻挫を起こします。
診断
問診と触診
ケガをした瞬間の状況(つま先立ちだったか、上に乗られたかなど)を詳しく伺います。そして、足の甲のどこを押すと痛いかをピンポイントで探し出します。また、つま先側の骨を片手でつかみ、ピアノの鍵盤を弾くように上下に動かすテスト(Piano key test)を行い、リスフラン関節の緩みや激痛がないかを確認します。
X線(レントゲン)検査
骨折の有無を評価します。
CT検査・MRI検査(微小な骨折や靭帯の評価)
レントゲンでは分かりにくい微小な剥離骨折(Flecks sign)がないかを確認するためにCT検査を行ったり、靭帯そのものの切れ具合や周囲の炎症を鮮明に映し出すためにMRI検査をおこなうことがあります。CT検査やMRI検査が必要な場合は、速やかに提携する専門医療機関での検査を手配いたします。
セルフチェック
ご自身の足の痛みが、ただの捻挫ではなくリスフラン関節にダメージが及んでいる危険なサインかどうか、ご自宅で確認できるセルフチェックリストです。
☑️ 足首(外くるぶし)ではなく、「足の甲の真ん中あたり」が腫れて盛り上がっている。
☑️ 裸足になり、痛い方の足だけで「片足つま先立ち」をしようとすると、激痛でかかとを浮かせることができない。
☑️ 足の裏(土踏まずのあたり)に、ぶつけた記憶がないのに青紫色の内出血(あざ)が出ている。
☑️ 階段を上る時や、歩行時に後ろ足で地面を蹴り出す瞬間に、足の甲にズキッと痛みが走る。
☑️ ケガをしてから2週間以上経っても、足の甲の痛みが全く引かず、歩行に支障がある。
治療
保存療法(基本となる治療法)
○ギプスやサポーターによる固定と免荷(めんか)
痛みが強い初期や損傷の程度が大きい場合は、ギプスで足をしっかり固定します。重症度によって、最初の2〜4週間は松葉杖を使用し、患部に絶対に体重をかけない(免荷)期間を設けて靭帯の修復を待ちます。
○段階的なリハビリと保護
軽症の場合や、ギプスが外れて歩行を開始する段階からは、専用のサポーターを装着して患部を保護します。その後は痛みの状態を慎重に確認しながら、段階的に体重をかける訓練やリハビリテーションを進めていきます。
手術療法について(極めて稀なケース)
交通事故などによる非常に強い衝撃で関節が大きく脱臼している、あるいは複雑な骨折を伴っているといった、極めて稀な重症例に限り手術が検討されることがあります。万が一、そのような状態であり手術が必要と判断した場合は、スポーツのケガや足の治療を専門とする高度医療機関へ、責任を持ってご紹介いたします。
リハビリ
患部外トレーニング(固定中の筋力維持)
足に体重をかけられない期間も、松葉杖生活で全身の体力が落ちないよう、体幹トレーニングや上半身、健側(ケガをしていない方の足)の筋力トレーニングを理学療法士の指導のもとで行います。
段階的な荷重訓練と可動域の改善
医師の許可が出たら、体重計などを用いて「体重の3分の1」「半分」「全荷重」と、数週間かけてゆっくりと足に体重をかける練習を行います。同時に、長期間の固定で硬くなった足首や足の指の関節を、手技やストレッチで柔らかくほぐしていきます。
足底の筋力強化とバランス訓練(スポーツ復帰へ向けて)
リスフラン関節を筋肉の力でサポートするため、足の裏の筋肉(内在筋)を鍛えるタオルギャザー運動を徹底します。また、不安定なボードの上でのバランストレーニングを取り入れ、ダッシュやジャンプ着地時の衝撃に耐えうる「強い足元」を作り上げ、再発を防ぐ身体操作を獲得します。
セルフケア・予防
靴底の硬い(シャンクのしっかりした)シューズを選ぶ
足の甲が曲がりすぎるのを防ぐため、靴底(特に土踏まずの部分)が柔らかすぎて手で簡単にねじれてしまうような靴は避けてください。靴底の中央に硬い芯材(シャンク)が入っており、足指の付け根だけで曲がる設計の、しっかりとしたシューズを選ぶことが関節を守る第一歩です。
ふくらはぎとアキレス腱の柔軟性確保
ふくらはぎの筋肉やアキレス腱が硬いと、歩行時に足首が十分に反らず、その代償として足の甲(リスフラン関節)に無理なねじれのストレスがかかります。運動前後やお風呂上がりには、アキレス腱伸ばしやふくらはぎのストレッチを入念に行い、足全体の柔軟性を高く保つケアを習慣にしてください。
テーピングやサポーターの活用(スポーツ活動時)
スポーツに復帰する際や、足に強い負担がかかる動作をする時は、関節を保護するために足用のサポーターやテーピングを活用し、リスフラン関節への過度な負担やねじれを軽減することも再発予防として有効です。
Q&A
足首の捻挫とリスフラン関節捻挫は自分で見分けることができますか?
痛む場所と腫れる場所が異なります。一般的な足首の捻挫は「外くるぶしの下や周囲」が腫れて痛みますが、リスフラン関節捻挫は「足の甲の真ん中(靴紐を結ぶあたり)」が腫れて痛むのが特徴です。
痛みが引いて、元の生活に戻るまでにどれくらいの期間がかかりますか?
靭帯の損傷度合いによって異なりますが、保存療法の場合、まずは1~2週間ギプスなどで足を固定し、患部を安静に保ちます。その後、痛みに応じて体重をかけていきます。早ければ2週間程度、重症の場合は6週間ほどかかることもあります。
激しいスポーツはしていませんが、日常生活でリスフラン関節捻挫になることはありますか?
はい、日常生活でも十分に起こり得ます。スポーツでのケガが多い疾患ではありますが、「階段を踏み外して不自然な形で足をついた」「ヒールのある靴を履いていて足の甲を強くねじった」「足の甲に重い物を落とした」といった日常のトラブルでも、リスフラン関節の靭帯を損傷することがあります。
監修
経歴
- 済生会福岡総合病院
- 製鉄記念八幡病院
- 福岡市民病院
- 九州大学病院
- 九州医療センター
- 福岡赤十字病院
- 済生会八幡総合病院
- 福岡青洲会病院
資格・所属学会
- 日本整形外科学会 専門医(日本専門医機構)
- 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
- 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
- 日本フットケア学会認定 フットケア指導士
- 身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
- 難病指定医
- 日本整形外科学会
- 日本フットケア・足病医学会















