ハムストリング肉離れ|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

ハムストリング肉離れ HAMSTRING-STRAIN

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ハムストリング肉離れとは

そもそも「ハムストリング」とは、太ももの裏側にある3つの大きな筋肉(大腿二頭筋、半腱様筋、半膜様筋)の総称です。骨盤の坐骨(お尻の骨)から膝の下まで繋がっており、主に「膝を曲げる動作」や「股関節を後ろに伸ばす(足を後ろに蹴り出す)動作」で強い力を発揮します。走る、跳ぶ、ブレーキをかけるといったあらゆるスポーツ動作においてエンジンのような役割を果たす、非常に重要な筋肉群です。

「肉離れ(筋挫傷:きんざしょう)」とは、急激に筋肉が引き伸ばされながら強い力を発揮した際に、筋肉の線維や、筋肉を包んでいる筋膜が耐えきれずに部分的に、あるいは完全に断裂してしまった状態を指します。

太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)やふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)でも肉離れは起こりますが、全身の筋肉の中で最も肉離れを発症しやすいのが、この太もも裏の「ハムストリング」なのです。

症状

ハムストリングの肉離れは、発症した瞬間にご自身でも「あ、やってしまった」と明確に自覚できるほど、急激な症状が現れるのが特徴です。

発症の瞬間の「バチッ」「ブチッ」という断裂音と、歩行困難になるほどの激痛‌

最も分かりやすい初期症状です。ダッシュをした瞬間、ジャンプの着地、あるいはボールを強く蹴ろうとした瞬間に、太ももの裏に「バチッ」「ブチッ」という音がしたような感覚(断裂音:ポップ音)を伴う激しい痛みが走ります。痛みが強烈なため、その場にうずくまってしまったり、痛めた方の足に体重をかけることができず、足を引きずらないと歩けなくなります。

筋肉を伸ばした時や力を入れた時の強い痛み(ストレッチ痛・収縮時痛)

筋肉の線維が切れて炎症を起こしているため、膝を伸ばした状態でお辞儀をするような姿勢をとったり(ストレッチ痛)、逆に膝を曲げて太ももの裏に力を入れようとしたり(収縮時痛)すると、引っ張られて鋭い痛みが走ります。靴下を履く動作や、階段を登る動作など、日常の些細な動きでも激痛を伴います。

太もも裏の腫れ、筋肉のへこみ(陥凹)、数日後に現れる内出血(青あざ)

重症度が高く筋肉が大きく断裂している場合、切れた筋肉のすき間が指で触れると「へこみ(陥凹:かんおう)」として感じられることがあります。また、筋肉の中の血管も一緒に切れて出血するため、受傷した直後は太ももの裏が腫れ上がり、数日〜1週間ほど経過すると、重力によって血液が皮膚の下に下がり、膝の裏からふくらはぎにかけて広範囲に痛々しい内出血(青あざ)が現れます。

原因

筋肉が引き伸ばされながら収縮する「遠心性収縮(えんしんせいしゅうしゅく)」

ハムストリングの肉離れが最も起こりやすいのは、全力疾走(スプリント)をしている時です。走っている時、足が地面に着く直前から着地した瞬間にかけ、ハムストリングは「ブレーキをかけるために筋肉を縮めようとする力」と「勢いで筋肉が前方に引き伸ばされる力」を同時に受けます。このように、筋肉が伸ばされながら無理やり力を発揮する状態(遠心性収縮)は筋肉の線維にとって非常に過酷であり、この瞬間に耐えきれずブチッと切れてしまうのです。

筋肉の疲労の蓄積と柔軟性の低下

日々の練習の疲れが溜まって筋肉が硬くなっていると、筋肉がゴムのように伸び縮みする弾力性を失います。柔軟性が低下した硬い筋肉は、少し引き伸ばされただけでも簡単に限界を迎え、断裂を引き起こします。特に、ウォーミングアップ不足や、気温が低く筋肉が冷えて血流が悪い冬場には発症リスクが跳ね上がります。

前後の筋肉のアンバランス(筋力比の崩れ)

太ももの前側の筋肉(大腿四頭筋)は非常に力が強く、裏側のハムストリングは相対的に力が弱いという特徴があります。この「前後の筋力のバランス」が極端に崩れて前側ばかりが強すぎると、走る時に前側の筋肉の強い引っ張りにハムストリングが負けてしまい、肉離れを起こしやすくなります。

診断

詳細な問診と触診

「どのような動作の瞬間に痛めたのか」を詳しく伺います。ベッドにうつ伏せになっていただき、太ももの裏を指で触診し、最も痛みが強い部分(圧痛点)を探ります。同時に、筋肉にへこみ(陥凹)がないかを慎重に確認し、断裂の規模を推測します。

超音波(エコー)検査

肉離れの正確な診断において、レントゲン検査は骨しか写らないため役に立ちません。超音波(エコー)検査を最大限に活用します。エコーを太ももに当てることで、筋肉の線維がどのように切れているか、筋肉の周囲にどれくらいの血液(血腫)が溜まっているかをリアルタイムかつ鮮明に確認することが可能です。これにより、「軽傷に見えて実は深く切れている」といった見落としを防ぎ、極めて正確な重症度判定を行います。

MRI検査

エコー検査で、筋肉が根本から完全に切れている(III度損傷)と判断された場合や、筋肉が骨にくっついている部分(坐骨結節など)ごと剥がれる「剥離骨折(はくりこっせつ)」が疑われる場合は、より広範囲で詳細な状態を確認するためにMRI検査が必要となります。MRI検査が必要と判断した場合は、速やかに連携する高度医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。

セルフチェック

「急に太ももの裏が痛くなった」という時、ご自宅やスポーツの現場ですぐに確認できるセルフチェックリストです。

☑️ ダッシュやジャンプ、急ストップをした瞬間に突然激痛が走った。
☑️ 痛みの瞬間に「バチッ」「ブチッ」という音がした感覚がある。
☑️ 太ももの裏を指で押すと、ピンポイントで飛び上がるほど痛い場所がある。
☑️ 太ももの裏の筋肉を触ると、一部がペコッとへこんでいる気がする。
☑️ 痛い方の足を前に出して、膝を伸ばしたままお辞儀をしようとすると、太もも裏が痛くて曲げられない。
☑️ 痛くて普通の歩幅で歩けず、足を引きずってしまう。

治療

受傷直後〜急性期の徹底したRICE(ライス)処置

肉離れを起こした直後(48時間以内)は、筋組織から出血し、強い炎症が起きています。この時期は「RICE処置」と呼ばれる応急処置がその後の回復スピードを決定づけます。

◯Rest(安静): 無理に歩かず、松葉杖などを使用して痛い方の足に体重をかけない(免荷)ようにします。
◯Ice(冷却): 氷のうなどで患部をしっかりと冷やし、内出血と腫れを最小限に抑えます。
◯Compression(圧迫): 弾性包帯(バンテージ)やテーピングで太ももを適度に圧迫し、血腫(血の塊)が広がるのを防ぎます。
◯Elevation(挙上): 寝る時はクッションなどを足の下に敷き、心臓より高い位置に保ちます。

薬物療法

肉離れに伴う強い痛みと炎症を速やかに鎮めるため、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)などの飲み薬や、外用薬(湿布など)を処方し、まずは急性期の痛みをしっかりとコントロールします。

弾性包帯(エラスコット包帯)による圧迫・固定

肉離れの回復において非常に重要なのが、患部の的確な「圧迫(Compression)」です。まつもと整形外科では、簡易的なサポーターではなく、患者さまの足の太さや腫れの度合いに合わせて最適な圧力をかけられる「エラスコット包帯(弾性包帯)」を用いて、太ももをしっかりと圧迫固定します。これにより、筋肉内部の出血(血腫)が広がるのを強力に防ぎ、歩行時の痛みを和らげながら早期の組織修復を促します。

手術療法(極めて稀な重症例)

肉離れのほとんどは手術を必要とせず、保存療法で治癒します。しかし、筋肉が完全に断裂して大きくめくれ上がってしまっている場合や、骨ごと引き剥がされる重度の剥離骨折で、将来的にスポーツ活動に深刻な障害を残すと判断された極めて稀なケースにおいてのみ、手術(縫合術など)が検討されます。

リハビリ

こわばりを解きほぐす、心地よい徒手療法(マッサージ的アプローチ)

痛みをかばって歩いていたことで、太ももだけでなくお尻や腰、ふくらはぎの筋肉までが緊張し、血流が悪くなっています。まずは硬くこわばった周囲の筋肉を心地よくほぐす徒手的なアプローチ(マッサージ的な施術)を丁寧に行います。筋肉の過度な緊張を取り除き、血流を改善させることで、痛みを和らげながら組織の回復を強力に後押しします。

段階的なストレッチングと筋力強化(再発予防)

痛みが落ち着いてきたら、硬くなったハムストリングの柔軟性を取り戻すための痛みのない優しいストレッチから開始します。その後、ゴムチューブなどを用いて、筋肉に軽い負荷をかけながら少しずつ筋力を回復させていきます(等尺性収縮から開始)。

スポーツ動作への復帰訓練

最終段階では、ジョギングからダッシュへの移行、方向転換、ジャンプ動作など、実際のスポーツに直結する動きの中で筋肉が耐えられるかを確認し、正しい身体の使い方(フォーム修正)を指導した上で、安全に競技へと復帰していただきます。

セルフケア・予防

肉離れは「防ぐことができるケガ」です。日頃のちょっとした意識とケアで、筋肉の断裂リスクを大幅に下げることができます。

受傷直後の自己流マッサージや温め

肉離れを起こした直後(数日間)に、「早く治そう」と思って患部を強く揉みほぐしたり、お風呂で温めたり、無理にストレッチをして引っ張ったりすることは絶対にやめてください。これらは切れた筋組織をさらに広げ、出血を悪化させます。急性期は「安静・冷却・圧迫」が鉄則です。

入念なウォーミングアップとクールダウン

スポーツを始める前は、軽いジョギングや動的ストレッチ(身体を動かしながら筋肉を伸ばす体操)を行い、筋肉の温度を上げて血液を十分に巡らせてから激しい動作に入ってください。運動後は、疲労物質を溜め込まないように、反動をつけない静的ストレッチ(ゆっくりと伸ばす体操)を入念に行うことが重要です。

こまめな水分補給と栄養管理

筋肉内の水分が不足すると、筋肉は柔軟性を失い、ケイレンや肉離れを起こしやすくなります。運動前から運動中にかけて、こまめに水分や電解質(ミネラル)を補給するよう心掛けてください。

Q&A

Q

歩けるくらいの痛みですが、病院に行かずに様子を見てもいいですか?‌

A

自己判断で放置することは絶対にお勧めできません。ハムストリングの肉離れは、たとえ歩ける程度の軽症(I度損傷)であっても、筋肉の内部で微小な断裂と出血が起きています。適切な圧迫や固定を行わずに無理をして日常生活を続けると、筋組織の損傷が広がって重症化したり、治った後に筋肉の中に硬いしこりが残って「少し走っただけでまた切れる」という再発のクセがついてしまいます。初期の適切な診断と処置がその後のスポーツ寿命を左右します。

Q

痛みがなくなったら、すぐに部活(スポーツ)の試合に出てもいいですか?

A

「大事な試合が近いから早く復帰したい」というお気持ちはとてもよく分かります。ただし、日常生活で痛みが消えたばかりの段階で急に全力疾走をすると、まだ十分な耐久力を取り戻していない筋肉が再び切れてしまう(再発する)リスクがあります。 まつもと整形外科では、ただ「休んでください」と安静を強いることはいたしません。患者さまの「この試合に出たい」という目標に向けて、今の段階で安全にできるトレーニングは何か、テーピングなどでどうカバーできるかを理学療法士と一緒に考え、最短かつ安全なスポーツ復帰を全力でサポートいたします。

Q

肉離れをした直後は「冷やす」べきですか?「温める」べきですか?

A

受傷直後から約48〜72時間の「急性期(痛めてすぐの時期)」は、筋肉からの出血や炎症を抑えるために、氷などで「徹底的に冷やす(アイシング)」のが正解です。この時期に温めると炎症が爆発的に悪化します。しかし、痛みのピークが過ぎて内出血が青黄色く変色してくる「亜急性期〜慢性期」に入ると、今度は筋肉の修復を促すために血流を良くする必要があるため、入浴などで「温める(温熱療法)」のが正解に変わります。この切り替えのタイミングは非常に難しいため、当院の医師の指導の下で正しいケアを行ってまいりましょう。

監修

院長
松本 淳志 Atsushi Matsumoto

経歴

  • 済生会福岡総合病院
  • 製鉄記念八幡病院
  • 福岡市民病院
  • 九州大学病院
  • 九州医療センター
  • 福岡赤十字病院
  • 済生会八幡総合病院
  • 福岡青洲会病院

資格・所属学会

  • 日本整形外科学会 専門医(日本専門医機構)
  • 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
  • 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
  • 日本フットケア学会認定 フットケア指導士
  • 身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
  • 難病指定医
  • 日本整形外科学会
  • 日本フットケア・足病医学会