痛風(つうふう)とは

痛風とは、血液中の「尿酸(にょうさん)」が増えすぎることによって、関節に激しい痛みが生じる病気です。 増えすぎた尿酸が関節の中で「結晶化」してしまうことが原因で、この尿酸の結晶に対して、体の免疫機能(白血球)が過剰に反応して攻撃を仕掛けるため、関節に強い炎症が起きて赤く腫れ上がってしまいます。
その歴史は古く、古代エジプトやギリシャの時代から「帝王病」や「贅沢病」と呼ばれてきました。現代でも、美食や過度なアルコール摂取、運動不足といった生活習慣が大きく関わっているため、働き盛りの30代〜50代の男性に非常に多く見られます。
「痛風」という病名の由来は、「風が吹き抜けるだけでも激痛が走る」ことから名付けられたと言われています。文字通り、発作が起きると歩くことすら困難になるほどの強烈な痛みに襲われます。最も症状が出やすいのは「足の親指の付け根」ですが、足の甲、足首、膝、アキレス腱、手首などの関節に起こることもあります。
痛風の恐ろしいところは、激痛の発作(痛風発作)が数日から1〜2週間程度で「嘘のようにスッと消えてしまう」点にあります。炎症がお落ち着くことで痛みがなくなりますが、痛みが無くなったからといって治ったわけではなく、根本的な原因である「高い尿酸値(高尿酸血症)」を放置しておくと、発作を何度も繰り返すだけでなく、腎臓の機能障害や心筋梗塞などの命に関わる合併症を引き起こす危険性があります。
まつもと整形外科では、激しい痛みをいち早く取り除くことはもちろんのこと、その後の尿酸値コントロールや生活習慣の改善までをトータルでサポートし、痛風発作の再発を徹底的に防ぐ診療を行っております。
症状
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足の親指の付け根に、突然刺すような激痛が走る
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患部が赤く腫れ上がり、熱を持つ
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風が当たるだけでも痛い(知覚過敏)
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足を床に着けず、歩行が困難になる
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発症から24時間以内に痛みがピークに達する
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靴下や靴を履く動作すらできなくなる
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数日から2週間程度で、痛みが自然に消えていく
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痛風結節(つうふうけっせつ)ができる
など
原因
プリン体の過剰摂取(食生活の乱れ)
レバーなどの内臓類、白子や魚卵(イクラ・タラコ)、カツオやイワシなどの魚介類にはプリン体が豊富に含まれています。これらを日常的に過食していると、体内で尿酸が産生されやすくなります。
アルコールの過剰摂取(特にビール)
ビールにプリン体が多く含まれていることは有名ですが、実は「アルコールそのもの」に尿酸の産生を促し、腎臓からの排泄を妨げる作用があります。つまり、プリン体ゼロの焼酎やウイスキーであっても、飲み過ぎれば痛風の原因となります。
水分不足(脱水)
汗をたくさんかいたり、水分摂取が少なかったりして体内の水分が不足すると、脱水となることで血液がドロドロになり尿酸の濃度が上昇します。夏場に痛風発作が多いのはこのためです。
肥満とメタボリックシンドローム
内臓脂肪が蓄積すると、インスリンの働きが悪くなり、それに伴って腎臓での尿酸の排泄が低下しやすくなります。肥満は痛風の非常に大きなリスクファクターです。
激しい無酸素運動
筋力トレーニングや短距離ダッシュなど、息を止めて瞬発的に力を発揮する「無酸素運動」は、細胞のエネルギーを急激に消費するため、体内での尿酸の産生を一時的に急増させます。
ストレスと遺伝体質
精神的・肉体的な過労やストレスも尿酸値を上昇させます。また、尿酸を排泄しにくい体質は遺伝的な要素も関与していることがわかっています。
診断
問診・視診・触診

いつから、どこが、どのように痛むのか、健康診断での尿酸値の指摘歴、アルコールの摂取量などを詳しくお聞きします。患部の赤み、腫れ、熱感の程度を直接確認します。
血液検査
血液中の「尿酸値(UA)」を測定します。基準値の7.0mg/dLを超えているかどうかが重要な指標となります。ただし、痛風発作の真っただ中は、一時的に尿酸値が正常範囲まで下がっていることがあるため、痛みが引いてから再度検査を行うこともあります。また、炎症反応(CRPや白血球数)の程度も確認します。
X線(レントゲン)検査
痛風の初期には骨の変形は写りませんが、偽痛風や外反母趾、変形性関節症など「骨の異常」「関節の異常」が原因ではないことを確認(除外診断)するために必須の検査です。
超音波(エコー)検査
関節液が溜まっている状態をリアルタイムで確認します。痛みを伴わず迅速に診断できる有用な検査です。
セルフチェック
ご自身の激痛が「痛風」のサインかもしれないかどうか、以下のチェックリストで確認してみてください。
☑️ 昨晩は普通に寝たのに、朝起きたら足の親指の付け根が激しく痛んだ。
☑️ 患部が赤く腫れており、触るだけでも飛び上がるほど痛い。
☑️ 過去の健康診断で、尿酸値が「7.0mg/dL」を超えていると指摘されたことがある。
☑️ ビールなどのアルコールを毎日欠かさず飲んでいる。
☑️ レバー、白子、魚卵などのプリン体が多いおつまみや、焼肉が大好きだ。
☑️ 30代〜50代の男性である。
☑️ 最近、仕事が忙しくストレスが溜まっていたり、睡眠不足が続いたりしている。
☑️ サウナや激しい運動をした後、十分に水分補給をしていなかった。
※これらに複数当てはまる場合は、痛風発作の可能性が高いです。無理に歩かず、まつもと整形外科へご相談ください。
治療
【1. 痛風発作の最中(急性期の治療)】
激しい痛みが起きている最中は、絶対に尿酸値を下げる薬を飲んではいけません。 尿酸値が急激に変動すると、関節内の結晶がさらに剥がれ落ちて炎症が激化するからです。
○消炎鎮痛剤(NSAIDs)の投与
まずは目の前の激痛を取り除くことが最優先です。ロキソプロフェンやボルタレンなどの強力な痛み止めを通常より多めに短期間服用し、一気に炎症を鎮火させます。
○コルヒチンの使用
「足がムズムズする」「そろそろ発作が来そうだ」という前兆の段階であれば、コルヒチンという薬を服用することで、白血球の働きを抑え、発作の本格化を未然に防ぐことができます。
○安静と冷却
患部を心臓より高くして安静にし、アイシングで冷やします。この時期のマッサージや温め(入浴)は炎症を悪化させるため厳禁です。
【2. 痛みが引いた後(尿酸コントロール療法)】
痛風発作が完全に治まってから約2〜4週間後、痛風の根本的な原因である「高尿酸血症」の治療を開始します。これが最も重要な治療です。
○尿酸降下薬の内服
患者さまの痛風のタイプ(尿酸を作りすぎるタイプか、うまく排泄できていないタイプか)に合わせて、最適なお薬を選択します。尿酸の生成を抑えるお薬(フェブリク[成分名:フェブキソスタット])や、近年新しく登場した尿酸の排泄を促すお薬(ユリス[成分名:ドチヌラド])など、患者さまの状態に合わせて適切に使い分けて処方します。
○目標値の設定
まずは尿酸値「6.0mg/dL以下」を目標に数ヶ月かけてゆっくりと下げていきます。一度薬を開始したら、自己判断で中断せず、長期的にコントロールし続けることが発作予防の最大の鍵となります。
リハビリ
歩行バランスの改善と二次的痛みの予防
痛風発作の激痛をかばって歩き続けると、痛みのない方の膝や股関節、腰に過度な負担がかかり、新たな関節痛(変形性膝関節症や腰痛など)を引き起こすことがよくあります。足の痛みが引いた後の歩行姿勢をチェックし、崩れた身体のバランスを整えるストレッチや動作指導を行います。
安全な有酸素運動の指導
肥満解消は痛風治療に不可欠ですが、激しい筋トレ(無酸素運動)は尿酸値を急上昇させます。そのため、ウォーキングや軽い水泳、サイクリングといった「会話ができる程度の軽い有酸素運動」を、関節に負担をかけない正しいフォームで行えるよう指導いたします。
痛風結節による関節拘縮のケア
治療を長年放置して痛風結節が大きく形成され、関節が物理的に動かなくなってしまった重症例に対しては、お薬で結節を小さくしていく過程に併せて、関節の可動域を少しでも維持するための機能訓練を慎重に行う場合があります。
セルフケア・予防
こまめな水分補給(1日2リットル以上)
尿の量を増やして尿酸を体外へ洗い流すことが最も効果的です。水やお茶などをこまめに飲みましょう。甘いジュースは肥満や尿酸値上昇の原因となるため避けてください。
プリン体の過剰摂取を控える
レバーや白子、干物などを毎日食べるのは控えましょう。ただし、プリン体はほぼ全ての食品に含まれているため、極端な制限によるストレスは逆効果です。バランスの良い食事を腹八分目に抑えることが基本です。
アルコールの節度を守る
ビールだけでなく、アルコール全般に尿酸を上げる作用があります。お酒を飲む場合は適量を守り、休肝日を週に2日以上設けるようにしましょう。
体重のコントロール(肥満解消)
標準体重に近づけるだけで、尿酸値は自然と下がることが多いです。極端な絶食ではなく、バランスの良い食事と適度な有酸素運動で健康的に減量しましょう。
尿をアルカリ性にする食品を摂る
尿酸は酸性の尿には溶けにくく、アルカリ性の尿に溶けやすい性質があります。海藻類(わかめ・ひじき)、野菜(ほうれん草・キャベツ)、きのこ類などを積極的に摂取し、尿酸を排泄しやすい体内環境を作りましょう。
Q&A
女性でも痛風になりますか?
痛風患者の約9割以上は男性ですが、女性でも発症することはあります。特に閉経後の女性は注意が必要です。女性ホルモン(エストロゲン)には尿酸の排泄を促す働きがあるため、若い女性が痛風になることは極めて稀ですが、閉経によって女性ホルモンが減少すると、尿酸値が上昇しやすくなり、痛風のリスクが高まります。
痛風発作が起きた時、痛い部分をマッサージしたり温めたりしても良いですか?
絶対にやめてください。痛風発作の最中の関節は強い炎症が起きています。マッサージで刺激したり、お風呂で温めて血流を良くしたりすると、炎症物質がさらに広がり、痛みが悪化します。患部は心臓より高く上げ、冷水で絞ったタオルなどで「冷やして安静にする」のが正しい応急処置です。
痛み止めを飲んで痛みが消えたら、通院をやめても良いですか?
痛みが消えたからといって通院をやめてしまうのは、大変危険です。痛み止めで一時的に炎症が治まっただけで、根本的な原因である「尿酸値が高い状態」は全く変わっていません。そのまま放置すると、関節の中に尿酸の結晶が溜まり続け、いつまた激しい発作が起きてもおかしくない状態が続きます。痛みが無くなってから、高尿酸血症の治療がスタートします。
プリン体ゼロのビールなら、毎日たくさん飲んでも痛風になりませんか?
いいえ、痛風のリスクは高まります。プリン体をカットしたビールであっても、「アルコール」そのものが体内で分解される過程で尿酸を産生し、さらに腎臓からの尿酸排泄を邪魔する働きを持っています。したがって、プリン体ゼロであっても、お酒の飲み過ぎは尿酸値を上げる原因となります。
痛風と似ている「偽痛風(ぎつうふう)」とは何ですか?
偽痛風とは、尿酸ではなく「ピロリン酸カルシウム」という別の結晶が関節内に溜まることで、痛風とよく似た激しい炎症と痛みを引き起こす病気です。痛風が足の親指に多いのに対し、偽痛風は「膝の関節」に最も多く発症し、高齢者に多いという特徴があります。まつもと整形外科では、レントゲンやエコー検査、関節液検査、血液検査などを組み合わせて両者を正確に鑑別し、それぞれに最適な治療を提供いたします。















