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結晶誘発性関節炎 CRYSTAL-INDUCED-ARTHRITIS

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結晶誘発性関節炎(痛風・偽痛風)とは

結晶誘発性関節炎とは、本来は関節の中には存在しないはずの「微小な結晶」が関節内に蓄積し、それを人間の免疫細胞(白血球)が「異物(敵)」とみなして攻撃することで、関節の中に猛烈な炎症が引き起こされる病気の総称です。 この結晶の成分によって、病名や発症しやすい年齢、起きやすい部位が大きく2つに分類されます。それが「痛風」と「偽痛風」です。

①痛風(つうふう)
血液中の「尿酸(にょうさん)」という物質の濃度が異常に高くなる(高尿酸血症)ことで、溶けきれなくなった尿酸がトゲトゲとした針状の「尿酸塩結晶」となって関節に沈着する病気です。 30代〜50代の働き盛りの「男性」に多く発症します。最も発症しやすい部位は「足の親指の付け根(第1MTP関節)」であり、発作全体の約7割がこの部位に集中します。その他、膝関節、足首や足の甲、アキレス腱などにも起こります。

②偽痛風(ぎつうふう)
痛風と非常によく似た激しい症状を引き起こしますが、原因となる結晶は尿酸ではなく「ピロリン酸カルシウム」という物質です。これが軟骨に沈着し、何かの拍子に関節内に剥がれ落ちることで激しい炎症を起こします。 痛風とは異なり、60代以上のご高齢の方に多く、男女ともに発症します。最も発症しやすい部位は「膝関節」であり、その他にも手首、肩関節、足首などの大きな関節に突然の腫れと激痛をもたらします。また、首の骨(頚椎)に結晶が沈着して、寝返りも打てないほどの猛烈な首の痛みと発熱を引き起こすこともあり(クラウンデンス症候群)、単なる寝違えと間違われやすいため注意が必要です。

どちらの疾患も、「骨が折れたかと思うほどの激痛」が突然襲ってくるのが最大の特徴ですが、原因物質が全く異なるため、発作が落ち着いた後の治療法や生活指導のアプローチは大きく異なります。

症状

CONSULTATION

  • 何の前触れもなく、ある日突然、関節に激痛が走る(急性の激痛)
  • 関節周辺が赤く腫れ上がり、熱を持っている(発赤・腫脹・熱感)
  • 痛みが非常に強く、歩くことも、靴下を履くことすら困難になる
  • 発作は24時間以内に痛みのピークに達する
  • 1〜2週間で自然に痛みが引くが、忘れた頃に再び激痛発作を繰り返す

など

痛風の原因(尿酸値の上昇)

痛風と偽痛風では、結晶が関節に溜まってしまう根本的な原因が異なります。

痛風の原因(尿酸値の上昇) 痛風の根本的な原因は、血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超える「高尿酸血症」です。尿酸は「プリン体」という物質が体内で分解されてできる老廃物です。

食生活の乱れ

プリン体を多く含む食品(レバーなどの内臓類、魚卵、一部の魚介類)の過剰摂取。

アルコールの過剰摂取

ビールだけでなく、アルコールそのものが尿酸の産生を増やし、尿からの排泄を妨げます。

肥満とストレス

肥満は尿酸値を押し上げる大きな要因です。また、過度なストレスや激しい無酸素運動も尿酸値を急上昇させます。

水分不足

夏場の脱水や水分摂取量が少ないと、尿の量が減り、尿酸が体外へ排出されにくくなります。

偽痛風の原因

偽痛風の原因であるピロリン酸カルシウム結晶がなぜ軟骨に溜まるのか、その完全なメカニズムは解明されていません。

加齢(老化)

年齢を重ねるにつれて軟骨が変性し、結晶が沈着しやすくなると考えられており、ご高齢の方に頻発します。

誘発因子

溜まっていた結晶が関節の中に落ちるきっかけ(引き金)として、関節への物理的な負担(旅行で長く歩いたなど)、軽いケガ、他の病気での入院、手術のストレスなどが挙げられます。

診断

問診と視診・触診

「いつから痛いか」「過去にも同じような痛みがあったか」「健康診断で尿酸値が高いと言われていないか」を確認し、関節の腫れや赤み、熱感を確認します。

血液検査

体内の炎症の強さ(CRPや白血球数)を測定します。また、痛風の診断には尿酸値の測定が不可欠ですが、「痛風発作の真っ最中には、一時的に尿酸値が正常範囲に下がってしまうことがある」という点に注意が必要です。

X線(レントゲン)検査

痛風の場合、慢性化すると骨が溶けている様子(骨びらん)が見られることもあります。偽痛風の場合は、レントゲンで膝などの軟骨に白い線状の石灰化(軟骨石灰化症)がはっきりと写ることが多く、診断の強力な手がかりとなります。

超音波(エコー)検査と関節液検査

エコーを用いて関節に溜まっている水(関節水腫)をリアルタイムで確認します。さらに、腫れた関節から注射器で関節液を抜き取り、顕微鏡で「尿酸結晶」や「ピロリン酸カルシウム結晶」が実際に存在するかを確認することで、確定診断を行います。

セルフチェック

突然の関節の激痛が、痛風や偽痛風の発作である可能性が高いかどうか、ご自宅で確認できる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ 前触れもなく、24時間以内に一気に痛みがピークに達した。
☑️ 痛む関節(足の親指の付け根、膝、手首など)が赤く腫れ上がり、熱を持っている。
☑️ 痛くて患部に触れることも、靴を履くこともできない。
☑️ 健康診断で尿酸値が高い(7.0mg/dL以上)と指摘されたことがある。
☑️ 痛くなる前日などに、お酒をたくさん飲んだ、あるいは激しい運動をした。
☑️ 60歳以上で、最近旅行などでよく歩いた後に膝が腫れた。

治療

痛風および偽痛風の治療は、「今起きている激痛(発作)をいち早く鎮める治療」と、発作が落ち着いた後に行う「再発を防ぐための根本治療(痛風の場合)」の2段階に明確に分かれます。

発作時の治療(痛みを早急に取る)

激痛が起きている最中は、関節の中で激しい炎症が起きている状態です。まずはこの炎症を治めることに全力を注ぎます。

◯非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)
ロキソプロフェン、ボルタレンなどを服用し、強力に炎症を抑えます。
◯コルヒチン
発作の予兆(ムズムズする感じ)がある時や、発作の初期に服用すると、白血球の働きを抑えて炎症の拡大を防ぐ効果があります。
◯ステロイド関節内注射
エコーガイド下で関節の中に直接ステロイド薬を注射をします。これにより、驚くほど速やかに痛みと腫れを引かせることができます。

発作が落ち着いた後の根本治療(痛風のみ)

痛風の場合、痛みが引いたからといって放置すれば必ず再発します。再発を防ぐためには、尿酸値を下げる薬を継続的に服用し、尿酸値を「6.0mg/dL以下」に維持して関節内の結晶を徐々に溶かしていく必要があります。

※注意:発作の真っ最中に尿酸値を下げる薬を飲み始めると、関節内の結晶が中途半端に溶け出して炎症がさらに悪化してしまいます。そのため、尿酸を下げる治療は、発作の痛みが完全に消えてから開始するのが大切です。 偽痛風に関しては、カルシウムの結晶を溶かすお薬は現在のところ存在しないため、痛みが取れればひとまず治療は終了となり、その後の再発予防は生活の工夫(関節への負担軽減)が中心となります。

リハビリ

関節拘縮(関節の固まり)の予防と改善

数日〜数週間にわたって激痛のために関節を動かさずにいると、関節周囲の筋肉や靭帯が固まってしまい、痛みが引いた後も「膝が曲がりきらない」「歩きにくい」といった後遺症が残ることがあります。発作は治った後は理学療法士が安全な範囲で関節の曲げ伸ばし(可動域訓練)を行い、元のスムーズな動きを取り戻します。

歩行姿勢の矯正

足の親指や膝が痛い期間が続くと、痛みを避けるために無意識のうちに変な歩き方(跛行)になってしまいます。これを放置すると、健康な方の膝や股関節、腰にまで負担がかかり、新たな痛みを引き起こします。患者さまの全身のバランスを評価し、正しい歩行姿勢を取り戻すための筋力トレーニングや動作指導を丁寧に行います。

痛風の予防(尿酸値をコントロールする)

こまめな水分補給

尿の量を増やして尿酸を体外へ洗い流すため、水や麦茶などでこまめな水分補給を心がけましょう。痛風のガイドラインでは1日2リットル程度の飲水が推奨されていますが、心臓の病気(心不全など)や腎臓の病気で、かかりつけの医師から水分制限の指示を受けている方は、必ず事前に主治医へご相談ください。(※果糖を多く含む甘いジュースやスポーツドリンクの飲み過ぎは尿酸値を上げてしまうため逆効果です)。

アルコールの適量化

休肝日を設け、飲み過ぎを避けることが絶対条件です。ビールだけでなく、どのような種類のお酒でも尿酸値は上昇します。

プリン体の過剰摂取を控える

レバーや白子、干物などの食べ過ぎに注意し、野菜や海藻類を積極的に摂るバランスの良い食事を心がけてください。

適度な有酸素運動

息が上がるほどの激しい筋トレやダッシュ(無酸素運動)は尿酸値を急激に上げます。ウォーキングや水泳などの有酸素運動で、適正体重を維持することが予防の鍵です。

偽痛風のセルフケア(発作の引き金を避ける)

偽痛風は痛風とは異なり、食事やプリン体とは全く関係がないため、厳格な食事制限は必要ありません。また、加齢に伴う軟骨の変化が主な要因と考えられているため、結晶が溜まること自体を完全に防ぐセルフケアや予防法は、現在のところ存在しません。

発作の引き金(関節への急激なストレス)を避ける

すでに軟骨に結晶が溜まっている場合、旅行などで急に長距離を歩く、重い荷物を持って関節に強い衝撃を与える、といった「関節への急激な物理的負荷」や「軽いケガ」が引き金となって結晶が剥がれ落ち、激痛発作が起きることが分かっています。日常生活の中で関節への無理な動作を避け、負担をかけすぎないことが、発作を防ぐ一つの手段となります。

異常を感じたら早めに受診する

偽痛風は事前の予防が難しい疾患だからこそ、「関節が少し熱っぽい」「いつもより腫れている気がする」という初期の違和感を見逃さないことが何よりも大切です。我慢せずに早めに受診し、発作が本格化する前に治療を開始することで、痛みのピークを最小限に抑えることができます。

Q&A

Q

痛風発作が起きて激痛なのですが、家にある尿酸値を下げる薬を飲んでもいいですか?

A

絶対に飲まないでください。発作が起きている最中に尿酸値を下げる薬を飲んだり、普段飲んでいる薬の量を自己判断で増やしたりすると、関節内の尿酸値のバランスが急激に崩れ、さらに痛みが激化し、発作が長引いてしまいます。まずは痛み止めの薬(NSAIDs等)で炎症を鎮めることが最優先です。

Q

偽痛風と言われましたが、痛風と同じようにビールやプリン体を控えた方がいいですか?

A

偽痛風の原因は「ピロリン酸カルシウム」であり、「尿酸(プリン体)」ではありません。そのため、痛風のような厳格な食事制限や禁酒は、偽痛風の予防には全く関係ありません。健康維持のためのバランスの良い食事を心がけていただければ大丈夫です。

Q

足の親指の痛みがすっかり引いたのですが、もう通院しなくていいですか?

A

痛風の場合、痛みが引いたからといって治療を自己中断するのは非常に危険です。痛みがなくても体内の尿酸値が高い状態が続けば、いずれ必ず痛風発作が再発します。さらに注意が必要なのは、高い尿酸値を放置すると腎臓の機能に悪影響を及ぼし、慢性腎臓病(CKD)の進行を早めてしまうことです。痛風を放置する方は高血圧などを合併していることも多く、最悪の場合、将来的に人工透析が必要になるリスクも高まります。痛みがなくなってからが本当の治療の始まりだとお考えください。

Q

痛い時は、患部を温めた方がいいですか、冷やした方がいいですか?

A

発作による激痛がある時(急性期)は、患部で激しい炎症が起きて熱を持っています。そのため、入浴で温めたり、温湿布を貼ったり、マッサージをしたりすると、血流が良くなって炎症が悪化します。保冷剤などをタオルで包み、患部を「冷やして」安静にして下さい。

Q

痛風は「おじさんの病気」というイメージがありますが、女性もなるのですか?

A

女性ホルモン(エストロゲン)には、尿酸を体外へ排泄するのを促す強力な働きがあるため、閉経前の女性が痛風になることは極めて稀です。しかし、閉経を迎えて女性ホルモンの分泌が急激に低下すると、尿酸値が上昇しやすくなり、60代以降の女性では痛風を発症するリスクが高くなります。また、偽痛風に関しては高齢の女性に非常に多く見られます。