外反母趾 BUNIONS

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外反母趾(がいはんぼし)とは

外反母趾とは、足の親指(母趾)が、人差し指(第2趾)の方へ「くの字」に曲がってしまう病気です。医学的には、親指の付け根の関節(第1MTP関節)を基準に、親指が外側(小指側)へ20度以上曲がっている状態を外反母趾と定義します。

人間の足には、本来カメラの三脚のように体重を支えるための「アーチ(土踏まずなどのアーチ構造)」が備わっています。そのうち、足の指の付け根を横に結ぶ「横アーチ」が崩れて足幅がベタッと平らに広がってしまう状態を「開張足(かいちょうそく)」と呼びます。外反母趾は、この開張足が根本的なベースとなって進行することがほとんどです。

足幅が広がった状態で靴を履くと、靴の壁に圧迫されて親指が内側に押し込まれ、逆に関節の付け根は内側へと突き出してしまいます。この突き出した部分が靴とこすれ合うことで、「バニオン(滑液包炎)」と呼ばれる赤い腫れや激しい痛みを引き起こすのです。

「足の親指が痛い」「お気に入りの靴が履けなくなった」とお悩みの方は非常に多く、特に中年期以降の女性に多く見られますが、近年では若い方や男性にも増加傾向にあります。放置すると痛みが強くなるだけでなく、足の裏のタコや他の指の変形、さらには膝や腰の痛みにまで波及することがあります。

症状

CONSULTATION

  • 親指の付け根の出っ張りが靴に当たって痛む
  • 足の親指が人差し指に寄りかかる、または重なる
  • 足の裏(特に人差し指や中指の付け根)にタコやウオノメができる
  • 合う靴が見つからない(靴選びが困難になる)
  • 親指に力が入りにくく、踏み込みが弱い
  • 膝や腰、股関節など他の部位まで痛くなってくる

など

原因

【内因性(ご自身の身体の要因)】

◯筋力低下とアーチの崩れ(開張足)
加齢や運動不足により、足の裏の筋肉や靭帯が衰えると、足の横アーチが崩れて足幅が広がる「開張足」になります。これが外反母趾の最大の引き金です。

◯女性ホルモンの影響と関節の柔らかさ
女性は男性に比べて関節を支える靭帯が柔らかく、さらに更年期以降の女性ホルモンの低下によって関節が緩みやすくなるため、女性に圧倒的に多く発症します。

◯遺伝的要素(足の形)
親指が他の指より長い「エジプト型」と呼ばれる足の形をしている方は、靴の先端で親指が圧迫されやすいため、外反母趾になりやすい傾向があります。また、親や祖母が外反母趾の場合、骨格や靭帯の性質が遺伝しやすくなります。

【外因性(環境の要因)】

◯足に合わない靴の着用
つま先が細く尖ったパンプスやヒールの高い靴は、足先が前方に滑り落ちて親指を強く圧迫し、変形を助長します。逆に、大きすぎる靴も足が靴の中で動いてしまい、指先で踏ん張る悪い癖がつくため原因となります。

◯悪い歩き方(ペタペタ歩き)
指先を使わず、足の裏全体で着地するような「すり足・ペタペタ歩き」をしていると、足の裏の筋肉が退化し、アーチの崩れを加速させます。

診断

問診・視診・触診

いつ頃から痛むのか、どのような靴を履いた時に痛いのかを詳しく伺います。そして実際の足を目視で確認し、腫れや赤み、タコ、関節の柔軟性、足のアーチの崩れ具合を確認します。

X線(レントゲン)検査

外反母趾の診断において最も重要なのがレントゲン検査です。通常の寝た状態ではなく、体重をかけた状態(立位)で撮影を行うことで、実際の日常生活における骨の広がりや曲がり具合を正確に評価します。第一中足骨(親指の根元の長い骨)と基節骨(親指の先の骨)がなす角度(外反母趾角)を測定し、20度以上であれば外反母趾と診断し、軽度・中等度・重度へと分類します。

セルフチェック

ご自身の足が外反母趾の兆候を示していないか、ご自宅で簡単にできるセルフチェックをご紹介します。複数当てはまる場合は、早めにまつもと整形外科へご相談ください。

☑️ 足の親指の付け根の関節が、内側にポッコリと飛び出している。
☑️ 上から足を見たとき、親指が人差し指の方向へ明らかに曲がっている。
☑️ 足の裏の人差し指や中指の下あたりに、硬いタコができている。
☑️ パンプスやヒールを履くと、親指の付け根が赤くなってズキズキ痛む。
☑️ 昔履いていた靴の横幅がキツくなり、ワンサイズ上の靴を選ぶようになった。
☑️ 足の指を自分の力で「パー」の形に大きく開くことができない。
☑️ 母親や祖母など、血縁者に外反母趾の人がいる。

治療

【保存的加療】

装具療法(インソール・足底挿板): 最も効果的な保存療法のひとつです。崩れてしまった足の横アーチと縦アーチを立体的に持ち上げてサポートする、患者さまの足に合わせた医療用のインソール(足底版)を作成します。アーチを復元することで足幅の広がり(開張足)を抑え、親指への負担を劇的に軽減します。

テーピング・サポーター: 親指を正しい位置に引き戻し、横アーチを締めるためのテーピング指導を行います。痛みが強い時の応急処置や、進行を遅らせるために非常に有効です。市販のサポーターの使用方法についてもアドバイスいたします。

薬物療法: 親指の付け根の関節(バニオン)の炎症が強く、激しい痛みがある場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の飲み薬や湿布、塗り薬を処方し、まずは速やかに炎症を鎮めます。バニオンの痛みが強い場合には即効性があるエコーガイド下ステロイド注射を行うことがあります。

【手術療法】‌

保存的加療を続けても痛みが取れず、歩行や日常生活に重大な支障が出ている場合や、親指が人差し指に乗っかるほどの重度の変形がある場合は、骨を切って真っ直ぐに矯正する手術(骨切り術など)を検討します。まつもと整形外科にて手術が必要と判断した場合は、足の外科手術の実績が豊富な連携病院へ、速やかにかつ責任を持ってご紹介いたします。

リハビリ

足趾(そくし)の機能訓練

退化してしまった足の指の筋肉(足内在筋)を再び使えるようにするためのトレーニングを行います。足の指でタオルをたぐり寄せる「タオルギャザー運動」や、足の指でジャンケンをする「グーパー体操」などを指導し、アーチを支える筋力を回復させます。

ストレッチと徒手療法

ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)やアキレス腱が硬いと、歩行時に足首が十分に曲がらず、足の裏全体や親指の付け根に過剰なストレスがかかります。理学療法士の「人の手」による丁寧なストレッチとマッサージで、足部全体の柔軟性を引き出します。また、固まって動かなくなった親指の関節を優しく動かし、可動域を広げます。

歩行指導

痛みをかばう悪い歩き方を修正します。かかとから着地し、足の外側を通って、最後に親指の腹でしっかりと地面を蹴り出すという、足に負担のかからない「正しい体重移動」を身体に覚え込ませていきます。

セルフケア・予防

正しい靴の選び方と履き方

つま先にゆとりがあり、親指が圧迫されない靴を選びましょう。ただし、全体が緩すぎる靴はNGです。かかとがしっかりとホールドされ、甲の部分を靴紐やマジックテープでしっかりと固定できる靴が理想的です。

長時間のハイヒールを避ける

お仕事などでどうしてもパンプスやヒールが必要な場合も、通勤時や休憩中はスニーカーに履き替えるなど、足を開放する時間を作ってください。ヒールの高さは3〜4cm程度までが推奨されます。

足の指のストレッチを日課に

お風呂上がりなど筋肉が温まっている時に、足首を大きくグルグルと回すストレッチを行いましょう。凝り固まった足先の血流が良くなり、関節の柔軟性が保たれます。

裸足で過ごす時間を増やす

家の中ではスリッパを脱ぎ、できるだけ裸足で過ごすことで、足の裏の感覚が刺激され、指先を使って踏ん張る力が自然と養われます。

Q&A

Q

外反母趾は、放っておいても自然に治りますか?

A

残念ながら、一度変形してしまった外反母趾が、何もしないで自然に元の真っ直ぐな状態に戻ることはありません。むしろ、歩行のたびに負担がかかるため、放置すると年齢とともに徐々に変形と痛みが進行していくケースがほとんどです。早めのケアが重要です。

Q

痛みが強いのですが、絶対に手術をしなければいけませんか?

A

いいえ、すぐに手術になるわけではありません。多くの場合、まずは患者さまの足に合わせた専用のインソール(足底版)の作成や、正しい靴の指導、テーピング、リハビリといった「保存的加療」で痛みを大幅に和らげることができます。日常生活に支障がないレベルまで改善する方も多くいらっしゃいますので、まずはまつもと整形外科へご相談ください。

Q

ハイヒールを一度も履いたことがないのに外反母趾になりました。なぜですか?

A

ハイヒールは外反母趾を悪化させる大きな要因ですが、それが全てではありません。もともとの足の形(親指が長いエジプト型)や、遺伝的な靭帯の緩さ、加齢や運動不足による足の裏の筋力低下(開張足)が根本的な原因としてあるため、男性や子どもでも外反母趾になることは十分にあります。

Q

市販の外反母趾用サポーターは効果がありますか?‌

A

市販のサポーターや指の間に挟むシリコンパッドは、親指と人差し指がこすれるのを防いだり、一時的に痛みを和らげたりする「対症療法」としては効果があります。しかし、根本の原因である「足のアーチの崩れ」を治すものではないため、根本的な改善を目指すには、医療機関での専用インソール作成やリハビリの併用をお勧めします。

Q

外反母趾を防ぐための「足に良い靴」とはどのような靴ですか?

A

足に良い靴の条件は、①かかと部分が硬くてしっかりしていること(かかとの安定)、②足の甲の部分を靴紐やベルトでギュッと締められること(前滑りの防止)、③つま先部分の横幅と高さにゆとりがあり、足の指が靴の中で自由に動かせること、④靴の底が指の付け根のラインで適度に曲がること、の4点です。