変形性肘関節症 OSTEOARTHRITIS-OF-THE-ELBOW

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変形性肘関節症(へんけいせいひじかんせつしょう)とは

変形性肘関節症とは、肘の関節を構成している軟骨がすり減り、骨同士が直接こすれ合うことで、痛みや動きの制限が生じる疾患です。

肘の関節は、二の腕の骨である「上腕骨(じょうわんこつ)」と、前腕(肘から手首まで)の骨である「尺骨(しゃっこつ)」「橈骨(とうこつ)」という3つの骨が組み合わさってできています。これらの骨の表面は、通常であれば弾力のあるツルツルとした「関節軟骨」で覆われており、これがクッションの役割を果たすことで、肘をスムーズに曲げ伸ばしすることができます。

しかし、長年の使用や過度な負担の蓄積により、この軟骨が少しずつ摩耗してすり減っていくと、衝撃を吸収しきれなくなります。その結果、骨同士が直接ぶつかり合うようになり、関節の辺縁に「骨棘(こっきょく)」と呼ばれるトゲのような異常な骨の出っ張りが形成されます。さらに進行すると、剥がれ落ちた軟骨や骨の欠片が関節の中をフワフワと動き回る「関節遊離体(かんせつゆうりたい:通称『関節ネズミ』)」となり、これが関節の隙間に挟まることで、激しい痛みや突然肘が動かなくなるロッキング症状を引き起こすこともあります。

「最近、肘が痛い」「荷物を持つと肘に違和感がある」といった初期症状から始まり、進行すると「洗顔の時に手が顔に届かない」「ズボンの後ろポケットに手が回らない」など、日常生活に大きな支障をきたすようになります。

症状

CONSULTATION

  • 肘の動作時や安静時の痛み
  • 肘が曲がらない(屈曲制限)
  • 肘が伸びない(伸展制限)
  • 関節の異音(軋轢音)
  • 薬指や小指のしびれ(肘部管症候群の合併)
  • ある角度で突然激痛が走る(ロッキング現象)
  • 朝の関節のこわばり
  • 痛みをかばうことによる他の部位への負担

など

原因

一次性(加齢や日常的な過労によるもの)

最も多い原因は、長年にわたる肘への負担の蓄積です。大工仕事、工場での組み立て作業、漁業、農業、重い荷物を運ぶ運送業など、腕や肘を酷使する職業の方に多く見られます。また、加齢に伴って軟骨の水分量が減少し、弾力性が失われることで摩耗が急速に進むことも大きな要因です。特別なケガをした覚えがないのに、年齢とともに徐々に「肘の痛み」が強くなってきたという方は、この一次性に該当することが多いです。

二次性(外傷や他の疾患によるもの)

過去のケガやスポーツ、病気が引き金となって発症するケースです。

◯外傷後遺症
過去に肘の骨折や脱臼、重度の靭帯損傷などを経験していると、数年〜数十年後に軟骨がすり減って変形性肘関節症を発症しやすくなります。

◯スポーツ障害
野球(投球動作)、柔道、剣道、テニスなど、肘に強い負荷や衝撃が繰り返し加わるスポーツを長期間続けていた方に多く見られます。野球肘の成れの果てとして発症することもあります。

◯関節疾患
関節リウマチは関節内に強い炎症を持続的に引き起こす疾患の合併症として、軟骨が破壊されて発症することがあります。

診断

問診・視診・触診

いつ頃から肘が痛いのか、どのような動作で痛みが強くなるのか、日常生活で何が一番困っているのかを詳しく伺います。その上で、肘の腫れや変形の有無を確認し、関節の可動域(どれくらい曲がるか、伸びるか)を角度計を用いて正確に測定します。

X線(レントゲン)検査

診断の基本となる最も重要な検査です。骨の隙間(関節裂隙)がどれくらい狭くなっているか)、骨棘(トゲ)が形成されていないか、関節内に遊離体(関節ネズミ)が落ちていないかを視覚的に確認します。

超音波(エコー)検査

レントゲンでは写らない靭帯や腱の炎症、関節内に水(関節液)が溜まっていないかをリアルタイムで確認します。

セルフチェック

ご自身の肘の状態が「変形性肘関節症」のサインを発していないか、以下の項目でチェックしてみましょう。一つでも当てはまる場合は、症状が進行する前にまつもと整形外科を受診することをお勧めいたします。

☑️ 肘が曲がらない
☑️ 肘が伸びない
☑️ ペットボトルのキャップを開けたり、雑巾を絞ったりする時に肘の関節の奥が痛む。
☑️ 肘を曲げ伸ばしすると、関節の中で「ゴリッ」「ジャリッ」という嫌な音がする。
☑️ 過去に野球や柔道などのスポーツに打ち込んでおり、最近になって肘の痛みが再発した。

治療

保存的加療

◯安静と負担の軽減
まずは痛みを誘発する動作(重いものを持つ、肘を強くひねるなど)を避けることが重要です。仕事や家事でどうしても手を使う場合は、サポーターを着用して関節の負担を和らげます。

◯薬物療法
痛みが強い急性期には、非ステロイド性消炎鎮痛剤(NSAIDs)の飲み薬や湿布、塗り薬を処方し、関節内の炎症を鎮めます。

◯関節内注射
痛みが激しい場合や関節の動きが極端に悪い場合には強力に炎症を抑える「ステロイド注射」を肘関節内に直接行うことがあります。

手術療法‌

保存的加療を数ヶ月続けても肘の痛みが改善しない場合や、関節ネズミが挟まって肘が全く動かない(ロッキング)、あるいは神経が強く圧迫されて手指の筋肉が痩せてきているといった重症例では、手術を検討します。関節鏡(カメラ)を使って骨棘や遊離体を取り除く手術や、痛んだ関節を人工の関節に置き換える「人工肘関節置換術」などがあります。手術が必要と判断した場合は、専門の医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。

リハビリ

関節可動域訓練(ストレッチ)

硬くなってしまった肘関節の周りの筋肉や関節包(関節を包む袋)を、理学療法士・作業療法士の「人の手」によって少しずつ丁寧に引き伸ばし、曲げ伸ばしの角度を広げていきます。無理に強く引っ張るのではなく、痛みの出ない範囲で優しく柔軟性を高めていくことがポイントです。

筋力強化訓練

肘関節を支えている上腕二頭筋や上腕三頭筋、前腕の筋肉を鍛えることで、関節にかかる負担を筋肉でカバーできるようにします。これにより、痛みの再発を防ぐ強靭な腕を作ります。

物理療法

超音波治療器や温熱療法を用いて、肘関節の深部まで温めて血流を改善します。

日常生活動作(ADL)の指導

肘に負担をかけない荷物の持ち方、関節を保護する姿勢など、再発を防ぐための具体的な身体の使い方を専門的な視点からアドバイスいたします。

セルフケア・予防

重い物を腕を伸ばして持たない

荷物を持ち上げる時は、腕をピンと伸ばしたままではなく、なるべく自分の身体(体幹)に近づけ、肘を少し曲げた状態で持ち上げるように意識しましょう。

冷やさず、温める

肘関節が冷えると血行が悪くなり、筋肉や靭帯が硬くなって痛みが強く出やすくなります。冬場や夏の冷房が強い部屋では、長袖を着たりサポーターで覆ったりして、関節を冷えから守りましょう。入浴時に湯船でゆっくり温めるのも非常に効果的です。

手首から腕のストレッチの習慣化

肘の関節は、手首を動かす筋肉と密接に繋がっています。手のひらを上に向けて手首を反らせるストレッチや、前腕の筋肉を優しく揉みほぐすケアを毎日続けることで、肘への過剰な引っ張り力を防ぐことができます。

痛みを我慢して使い続けない

「これくらいなら大丈夫」と痛みを我慢して作業を続けると、軟骨の摩耗が一気に加速します。違和感があったらこまめに休憩を挟むことが最大の予防です。

Q&A

Q

テニス肘(上腕骨外側上顆炎)とは違う病気ですか?

A

はい、まったく別の疾患です。「テニス肘」は、肘の外側にある筋肉の付け根(スジ)が炎症を起こしている状態で、骨や軟骨自体には異常がないことが多いです。一方「変形性肘関節症」は、関節の中の軟骨がすり減り、骨そのものが変形してしまう病気です。症状が似ている場合もあるため、レントゲン検査で確認します。

Q

肘の痛みを我慢して放置するとどうなりますか?

A

放置して痛みを我慢したまま腕を使い続けると、軟骨のすり減りが進行し、骨棘(トゲ)がどんどん大きくなります。最終的には肘がほとんど曲がらなくなったり真っ直ぐ伸びなくなったりして、洗顔や着替えなどの日常動作が自力でできなくなる恐れがあります。

Q

骨棘(骨のトゲ)は薬やリハビリで溶けて無くなりますか?‌

A

一度形成されてしまった骨棘や、すり減ってしまった軟骨を、飲み薬や注射、リハビリで元の状態に戻すことはできません。保存的治療の目的は、変形の進行を食い止め、今ある痛みを取り除き、残された関節の機能を最大限に引き出すことにあります。

Q

肘が痛いだけでなく、最近小指のあたりがしびれてきました。関係ありますか?

A

関係があります。変形性肘関節症が進行すると、増殖した骨や腫れた靭帯が、肘の内側を通る「尺骨神経」を圧迫することがあります。これを「肘部管症候群(ちゅうぶかんしょうこうぐん)」と呼びます。

Q

どのような職業・仕事の人がなりやすいですか?

A

大工やとび職などの建設・建築関係、漁業などの漁師、重い荷物を日常的に運ぶ運送業、チェーンソーや振動工具を扱う林業・製造業、フライパンを重く振る調理師など、腕に強い力や振動を持続的にかける職業の方に多く発症する傾向があります。お仕事で腕を酷使される方は、定期的なケアが不可欠です。