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「肩が上がらない…」それ、四十肩・五十肩かもしれません
まつもと整形外科は福岡県久留米市安武町にある、整形外科・リハビリテーション科・スポーツ整形外科のクリニックです!!
こんにちは!
久留米市安武町にある整形外科クリニック まつもと整形外科 院長 松本淳志です
年齢を重ねるにつれて、「なんとなく肩が痛い」「腕が上がらない」「夜間にズキズキする」「下着が取りずらい」といった不快な症状を感じたことはありませんか?
その症状、もしかすると「四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)」かもしれません。
四十肩・五十肩は、肩関節の動きに関わる筋肉や靱帯、関節包などが炎症を起こし、肩の痛みや可動域制限を生じる疾患です。今回は、整形外科の視点から「四十肩・五十肩」について詳しく解説し、症状の特徴や治療法、自宅でできる予防法までお伝えします。
四十肩・五十肩とは?
正式には「肩関節周囲炎」と呼ばれる疾患で、肩関節を構成する関節包や腱板、滑液包などの組織に炎症が生じて痛みと動きの制限を引き起こします。
40代から50代に多く見られるため、「四十肩」「五十肩」とも呼ばれていますが、最近では30代や60代以上の方にも見られることがあります。
こんな症状があれば要注意
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腕を横から上げると痛む
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背中に手を回せない(下着のホックが留めにくい)
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髪を結ぶ動作がしづらい
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夜中に肩の痛みで目が覚める
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痛みで服の袖に腕が通しづらい
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痛みは肩の前面や外側に出ることが多く、最初は違和感程度でも、徐々に可動域が狭まり、日常生活に支障をきたすことがあります。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の進行ステージ
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は、以下の3つの時期に分けて経過していくのが一般的です。
① 炎症期(急性期)
痛みが強く、動かさなくてもズキズキとした痛み(安静時痛)があります。夜間痛が出るのもこの時期。関節の中で炎症が起きており、無理に動かすと悪化することがあります。
② 拘縮期
炎症は落ち着いてくるものの、肩関節の動きが著しく制限される時期。可動域が狭まり、「凍結肩(フローズンショルダー)」とも呼ばれる状態に。動かそうとすると強い痛みがあり、日常動作に不便を感じます。
③ 回復期
徐々に痛みが軽減し、肩の動きも回復していく時期。ただし、何もしなくても元通りになるとは限りません。放置すると可動域が完全に戻らないケースもあります。
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)の原因
明確な原因は解明されていませんが、以下のような要素が関係していると考えられています。
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加齢による腱板や関節包の変性
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血流の低下による炎症
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同じ姿勢の繰り返し(デスクワークや家事)
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運動不足による筋力低下・柔軟性の低下
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肩への過負荷や外傷
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糖尿病や甲状腺疾患などの持病がある方は、発症リスクが高いとも言われています。

四十肩・五十肩(肩関節周)
診断方法と整形外科での対応
診断は問診と画像検査が基本
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問診:痛みの場所、強さ、動作時の変化、夜間の痛みの有無などを確認します。
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徒手検査:肩の可動域や動作時の痛みの有無を確認。
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画像検査:レントゲン、超音波(エコー)、MRIなどで関節構造や腱板の状態を評価します。
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※腱板断裂や石灰沈着性腱板炎、変形性肩関節症など他の疾患との鑑別も大切です。
治療方法:急性期と回復期でアプローチが違う!
【炎症期】
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安静(過度な使用を避ける)
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消炎鎮痛剤の内服や湿布
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関節内注射(ヒアルロン酸、ステロイド)
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痛みの少ない範囲での軽い運動療法
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【拘縮期〜回復期】
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リハビリテーション(理学療法士による運動療法)
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温熱療法(ホットパックなど)
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可動域訓練・ストレッチ
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肩甲骨周囲筋の強化訓練
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日常生活での動かし方指導
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※自己流で無理に動かすと、かえって炎症がひどくなり痛みが悪化するがありますので注意が必要です。
拘縮期・回復期のカギはリハビリによる「徒手療法」
〜理学療法士の「人の手」による繊細で的確なアプローチ〜
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)のリハビリでは、徒手療法が極めて重要です。
「徒手療法」とは、国家資格を有する理学療法士や作業療法士が自らの手で関節や筋肉、靭帯、筋膜に直接アプローチする治療法のことです。
単に肩を動かす訓練や筋トレを行うのではなく、“今の肩の状態”に合わせて、優しく・的確に手で導くことで、関節の柔軟性や可動域の回復を目指します。
リハビリで行う主なプログラム
① 関節モビライゼーション(他動運動)
理学療法士が肩関節にやさしく動きをつけていく手技です。固くなった関節包に少しずつ刺激を与え、痛みの出ない範囲で可動域を広げていきます。
→ 【目的】拘縮の改善、可動域拡大
→ 【特徴】関節に負担をかけずに柔軟性を回復できる
②電気療法・温熱療法(物理療法)
痛みが強い方には、患部の血流改善や鎮痛を目的として、以下のような物理療法も併用します。
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干渉波・低周波治療
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マイクロ波・ホットパックによる温熱療法
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超音波療法(深部への温熱と組織修復の促進)
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→ 治療直後に関節が動かしやすくなるため、リハビリ効果も高まります。
徒手療法は「痛みを伴わない」からこそ続けられる
「肩を無理に動かされるのが怖い」「痛い治療はしたくない」という方もご安心ください。
徒手療法は「痛くないけど効いている」感覚を大切にしています。
当院の理学療法士は、常に「今どの程度の刺激が適切か」を確認しながら施術を行うため、不安を抱えずに継続できます。
自宅でできる!予防&再発防止のセルフケア
四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)を予防したり、回復を早めるためには、日頃から肩関節を柔軟に保つことが大切です。以下のセルフケアを取り入れてみましょう。
簡単ストレッチ
● タオル体操
タオルの両端を持ち、背中に回して上下に動かします。
→ 背中に手が回りづらい人におすすめ。
● 肩甲骨寄せ体操
椅子に座り、背筋を伸ばして肩甲骨をギュッと寄せる→脱力を繰り返します。
→ 猫背改善、肩周りの血流アップに効果的。
● ペットボトル振り子運動
軽いペットボトルを手に持ち、上体を前に倒して腕をブランブランと揺らします。
→ 関節内の循環改善・痛みの軽減にもつながります。
よくある質問(Q&A)
Q1. 四十肩・五十肩は自然に治りますか?
→ 軽症の場合は自然に治ることもありますが、放置すると関節が固まってしまい、可動域が戻らないこともあります。早期の診断と治療が重要です。
Q2. 両肩に同時に起こることはありますか?
→ 通常は片側に出ますが、まれに両肩に症状が出る場合もあります。
まとめ|肩の痛みは我慢しないで整形外科専門医へ
「そのうち治るだろう」と我慢してしまう方が多い四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)ですが、早期に整形外科で適切な診断とリハビリを受けることで、痛みの軽減や機能回復のスピードが大きく変わります。
久留米市のまつもと整形外科では、国家資格を有する理学療法士による個別リハビリをはじめ、エコー診断や運動器リハビリを通じて、患者様一人ひとりに合わせた最適な治療をご提供しています。
「最近肩が痛い」「腕が上がりにくい」と感じたら、お気軽にご相談ください。肩の健康を守り、快適な日常生活を取り戻しましょう!
当院には国家資格を持つ理学療法士·作業療法士が計26名在籍しています。患者さま一人ひとりに合った専門性の高いリハビリメニューを提供させていただきます。
ご不明な点などありましたら、お気軽にご相談ください!
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【参考文献】
・日本整形外科学会.肩関節周囲炎(四十肩・五十肩)診療ガイドライン 2013年版
https://www.joa.or.jp/
・日本理学療法士協会.理学療法診療ガイドライン2021:肩関節疾患
https://www.japanpt.or.jp/
・村上英樹 他.(2019)肩関節周囲炎のリハビリテーション治療戦略,『関節外科』Vol.38(3), 南江堂
・古島弘三 編.(2014)理学療法マニュアル 肩関節,文光堂
・加藤浩 他.(2020)肩関節周囲炎に対する徒手療法の効果:システマティックレビュー,『日本物理療法学会誌』Vol.47(1)
・伊藤俊一.(2017)肩関節周囲炎に対する筋膜リリースの臨床応用,『理学療法ジャーナル』Vol.51(4), 医学書院
・奥村裕一.(2021)肩関節の拘縮に対するモビライゼーション技術,『MB Med』Vol.54(2)
・肩関節学会(JSS)肩関節疾患の診療ガイドラインと画像診断の進め方
https://jssm.or.jp/
・中山和弘.(2018)ストレイン・カウンターストレイン(SCS)の理論と実践,『臨床スポーツ医学』Vol.35(5), 文光堂
・三輪洋人 他.(2022)五十肩患者におけるリハビリ継続の重要性と運動恐怖の克服,『運動器リハビリテーション』Vol.33(2)