皆様、こんにちは。久留米市にある「まつもと整形外科」院長の松本です。
以前の院長ブログでは、手首や指の痛みの原因となる「腱鞘炎(けんしょうえん)」の基本的な知識や日常での対処法についてお話しさせていただきました。家事や育児、デスクワークやスマートフォンの操作など、私たちの生活は手や指を酷使することが多く、当院にも毎日多くの患者様が腱鞘炎の痛みでお悩みになり来院されます。
腱鞘炎の治療法には、安静、湿布や塗り薬、飲み薬、そしてリハビリテーションなど様々な選択肢がありますが、痛みが強く日常生活に大きな支障が出ている場合に、ご提案することが多いのが「ステロイド注射」です。
しかし、「ステロイド」と聞くと、「副作用が怖い」「痛そう」「何度も打つと良くないと聞いたことがある」といった不安を感じる方が非常に多いのも事実です。
そこで今回は、整形外科専門医の視点から、腱鞘炎に対するステロイド注射の効果と注意点、そして当院がおこなっている、より安全で確実な「エコーガイド下注射」について詳しくお話ししたいと思います。
目次
なぜステロイド注射が効くのか?その強力な効果と即効性
腱鞘炎は、骨と筋肉をつなぐ「腱」と、それを包むトンネルのような「腱鞘」が擦れ合い、炎症を起こしている状態です。特に「ドケルバン病(手首の親指側の痛み)」や「ばね指(指の付け根の痛みと引っかかり)」が進行し、「痛くてペットボトルのフタが開けられない」といった日常生活に支障が出ている場合には、ステロイド注射は非常に有効です。
ステロイド注射の最大のメリットは、何と言っても「強力な抗炎症作用」と「即効性」です。腫れ上がってしまった腱鞘の局所に直接お薬を注入することで、ダイレクトに炎症を鎮めます。多くの場合、注射をしてから直後〜数日で劇的に痛みが引き、腫れや指の引っかかりが改善します。すぐに手を使って仕事や家事をしなければならない方にとって、この即効性は非常に大きな助けとなります。

必ず知っておきたい注意点と副作用
非常に効果の高いステロイド注射ですが、決して「魔法の薬」というわけではなく、注意点が存在します。
1. 頻繁に打つと「腱が切れる」リスクがある :これが最も注意すべき点です。ステロイド剤を同じ部位に何度も頻繁に注射すると、腱の組織自体がもろくなり、「腱断裂」を起こす危険性があります。そのため、同じ部位への注射は最低でも数ヶ月の期間を空けることが一般的です。
2. 感染のリスクがある:注射による一定の感染リスク、特に糖尿病をお持ちの方は注意が必要です。
なぜステロイド注射が効くのか?
当院で使用する「ケナコルト」の特徴腱鞘炎は、骨と筋肉をつなぐ「腱」と、それを包むトンネルのような「腱鞘」が擦れ合い、炎症を起こしている状態です。
特に「ドケルバン病(手首の親指側の痛み)」や「ばね指(指の付け根の痛みと引っかかり)」が進行した場合、ステロイド注射は非常に有効な選択肢となります。
当院では、腱鞘炎の注射において「ケナコルト」というステロイド剤を使用することがあります。
このお薬の最大の特徴は、成分が水に溶けにくい細かい粒子状になっていることです。
そのため、血流に乗って全身に回りにくく、注射した局所(腱鞘の中)に長期間とどまって、強力な抗炎症作用が長く続くという非常に優れたメリットがあります。
当院の強み:より安全で確実な「エコーガイド下注射」
上記のような副作用、特に「腱断裂」「感染」のリスクを最小限に抑え、効果を最大限に引き出すために、まつもと整形外科がこだわっているのが「エコー(超音波)ガイド下注射」です。
従来の腱鞘炎の注射は、医師の指先の感覚と解剖学的な知識を頼りに打つのが一般的でした。しかし、これでは炎症のピンポイントな部位からわずかにずれてしまったり、誤って腱そのものに針を刺してしまいます。もちろん、このように盲目的に注射をしても一定の効果は得られます。
当院では、エコーを用いて皮膚の下の腱、腱鞘、血管、神経の状態をリアルタイムでモニター画面に映し出し、「針先が今どこにあるか」「炎症が起きている正確な場所はどこか」をミリ単位で直接確認しながら注射を行います。
これにより、以下のような大きなメリットがあります。
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確実な効果: 標的となる腱鞘の中だけに正確に薬を届けることができるため、少量の薬液でも高い鎮痛効果が期待できます。
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副作用リスクの大幅な軽減: 腱自体にステロイドを直接打ち込んでしまうのを確実に防ぐことができるため、腱断裂のリスクを劇的に減らすことができます。
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痛みの軽減: 周囲の神経や血管を避けて安全なルートで針を進めるため、注射時の痛みや合併症のリスクも抑えられます。
「注射の副作用が不安」という方にこそ、このエコーガイド下注射は安心していただける選択肢になると思います。
※エコーガイド下注射であれば絶対に安全で、100%の確率で「腱断裂」「感染」を起こさないという訳ではありません。

エコーガイド下注射
授乳中のステロイド注射について
授乳中のステロイド注射について実は、産後の授乳期は、女性ホルモンの変化や、赤ちゃんを抱っこする負担から、腱鞘炎(特にドケルバン病)を非常に発症しやすい時期です。
「授乳中にステロイド注射をしても、赤ちゃんや母乳に影響はないの?」と不安に思われるお母様は多くいらっしゃいます。
結論から申し上げますと、当院で行う腱鞘炎に対する局所的なステロイド注射は、飲み薬のように全身の血液に成分が大量に回るものではありません。
そのため、授乳中の方でも、基本的には安全に受けていただける治療とされています。
痛みを我慢して育児に支障をきたし、ストレスを抱え込むよりも、注射で速やかに痛みを和らげたほうが、お母様にとってプラスになると思います。
注射は「ゴール」ではありません
エコーガイド下注射によって痛みが劇的に取れると「完全に治った」と誤解される方がいらっしゃいますが、注射はあくまで「強力に火事(炎症)を消し止めた」状態です。手や指の使いすぎという原因が改善されていなければ再発します。
当院では、痛みが落ち着いた段階で、手首に負担のかからない動作のアドバイスや、必要に応じて理学療法士によるリハビリテーションを行い、「再発しないための環境づくり」までしっかりとサポートいたします。
おわりに
腱鞘炎の痛みは、我慢すればするほど悪化し、治りにくくなってしまいます。 「注射は怖い」と一人で悩んで痛みを抱え込む前に、まずは一度ご相談ください。お一人おひとりの症状に寄り添い、エコーを用いた安全な治療と、根本的な改善に向けたサポートをさせていただきます。
手や指の痛みでお困りの際は、どうぞお気軽に久留米市の「まつもと整形外科」へご来院ください。
皆様が笑顔で健やかな日常を送れるよう、全力でサポートさせていただきます。















