一過性大腿骨頭萎縮症|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

一過性大腿骨頭萎縮症 TRANSIENT-OSTEOPOROSIS-OF-THE-HIP

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一過性大腿骨頭萎縮症とは

一過性大腿骨頭萎縮症(Transient Osteoporosis of the Hip: TOH)とは、1959年にCurtissらによって初めて報告された疾患です。股関節を構成する太ももの骨の先端部分(大腿骨頭:だいたいこっとう)の骨量が一時的に減少し(骨粗鬆症のように骨がスカスカになる)、骨髄が炎症を起こして骨髄浮腫(こつずいふしゅ)を生じることで、強い痛みを引き起こします。

現在の医学でも正確な原因はまだ分かっていませんが、この病気の最大の特徴は、「働き盛りの40〜50代の中年男性」と「妊娠後期(妊娠第3三半期)の女性」に突如として発症しやすいという点です。

「萎縮」という言葉が使われていますが、実際に骨が縮んでなくなってしまうわけではありません。あくまで「一時的」に骨の密度が低下して脆くなっている状態です。

最も注意しなければならないのは、症状が非常によく似ている「特発性大腿骨頭壊死症」との鑑別です。大腿骨頭壊死症は骨の組織が死んでしまい、進行すると手術(人工関節置換術など)が必要になる難病ですが、一過性大腿骨頭萎縮症は時間をかければ自然に治る病気です。

症状

一過性大腿骨頭萎縮症の症状は、ある日突然、あるいは数日かけて徐々に強くなる股関節周辺の痛みが特徴です

体重をかけた時の足の付け根の鋭い痛み

最も代表的な症状です。立ち上がろうとした時や、歩行時に体重が患部の足にかかった瞬間に、股関節(太ももの付け根)からお尻にかけてズキズキとした鋭い痛みが生じます。痛みを無意識にかばうため、足を引きずるような歩き方(跛行:はこう)になってしまい、長距離を歩くことが非常に困難になります。

思い当たるケガやきっかけがないのに突然発症する‌

転んで股関節を打った、スポーツで激しく足を捻ったなど、はっきりとしたケガの記憶が全くないにもかかわらず、ある日を境に急激に股関節が痛み始めます。「ただの筋肉痛だろう」「少し休めば治るだろう」と思っていても、数週間経っても痛みが引かない、あるいは逆に痛みが強くなってくるのが特徴です。

じっとしている時や夜間にも痛む

歩いている時だけでなく、椅子に座ってじっとしている時や夜ベッドで横になって寝ている時にも、股関節の奥の方がうずくように痛むことがあります。股関節の動かせる範囲(可動域)も狭くなり、靴下を履く動作や、足の爪を切る動作、あぐらをかくような姿勢をとることが辛くなります。

原因

大腿骨頭の血流障害(静脈のうっ滞)

何らかの理由で大腿骨頭へ向かう静脈の血液の流れが悪くなり、骨の中に血液や水分がうっ滞してしまう(骨髄浮腫)ことで、骨の内圧が上がり、激しい痛みを引き起こしているという説です。

微細な骨折(マイクロフラクチャー)

骨の密度が一時的に低下している状態のところに、歩行などの日常生活の体重負荷がかかることで、レントゲンでは見えないほどのミクロの骨折が生じ、それが痛みの原因になっているという考え方です。

ホルモンバランスや体重増加の影響(特に妊娠中の女性)

妊娠後期の女性に発症しやすいことから、妊娠に伴う急激なホルモンバランスの変化(骨の代謝への影響)や、短期間での体重増加による股関節への物理的な負担増大、あるいはお腹が大きくなることによる骨盤内の血管の圧迫などが、引き金になっていると考えられています。

診断

一過性大腿骨頭萎縮症の診断において最も重要なのは、「大腿骨頭壊死症」や「化膿性股関節炎」といった、早急な治療が必要で重篤な疾患ではないことを確実に除外することです。まつもと整形外科では、丁寧な問診と各種検査を組み合わせて正確な診断へと導きます。

問診と身体診察

いつから痛いのか、ケガのきっかけはあったか、ステロイド薬の大量使用歴や多量の飲酒習慣はないか(これらは大腿骨頭壊死症の大きなリスク因子です)を詳しくお伺いします。そして、実際に股関節を動かし、どの方向に動かすと痛むのか、関節の動く範囲が狭くなっていないかを確認します。

レントゲン(X線)検査

発症してすぐの初期段階では、レントゲン写真には異常が全く写らないことがよくあります。しかし、発症から3〜4週間ほど経過すると、痛い方の股関節(大腿骨頭)の骨が、健康な側と比べて色が薄く(黒っぽく)透けて見えるようになります。これが、骨の密度が低下している(萎縮している)サインです。

MRI検査

一過性大腿骨頭萎縮症を確定診断し、大腿骨頭壊死症と見分けるためにはMRI検査が重要です。MRIを撮影では「骨髄浮腫」が鮮明に映し出されます。初期の段階から異常を捉えることができるため、診断には欠かせません。まつもと整形外科にてMRI検査が必要と判断した場合は、速やかに連携する高度医療機関へ検査の予約を手配いたします。

セルフチェック

「急に股関節が痛い」とお悩みの方へ、一過性大腿骨頭萎縮症の可能性を探るためのセルフチェックリストです。

☑️ 40代〜50代の男性である。
☑️ 妊娠後期(第3三半期)の女性である。
☑️ 転んだりぶつけたりといった、明らかなケガの記憶がないのに股関節が痛い。
☑️ 体重をかけると足の付け根がズキッと痛み、足を引きずって歩いてしまう。
☑️ 安静にしていても、夜寝ている時にも股関節がうずくように痛む。

治療

一過性大腿骨頭萎縮症は、名前の通り「一過性(一時的)」の病気であり、時間はかかりますが自然に治癒していく疾患です。そのため、手術などは行わず、「保存療法」が基本となります。

免荷(めんか)による徹底した安静

治療の最大の鉄則は、痛い方の股関節に「体重をかけないこと(免荷)」です。骨が脆くなり、骨折を起こしやすい状態になっているため、無理に歩き続けると、大腿骨頭が潰れてしまう(圧潰:あっかい)危険性があります。これを防ぐため、松葉杖を使用して、患部に体重がかからないように生活していただきます。仕事や日常生活に制限が出ますが、数ヶ月後の完全な治癒のために、この免荷期間を守ることが極めて重要です。

薬物療法

股関節の強い炎症と痛みを和らげるために、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)などの飲み薬や湿布を処方します。ただし、薬で痛みが楽になったからといって、治ったと勘違いして松葉杖を使わずに歩いてしまうのは絶対に禁物です。(※妊娠中の方に対しては、胎児への影響を考慮し、使用できるお薬を産婦人科の主治医とも連携しながら非常に慎重に検討します)。

経過観察

発症から数ヶ月〜半年(長い方で1年程度)かけて、骨髄浮腫が引き、骨密度が徐々に元の状態に回復していきます。定期的にレントゲン検査を行い、骨が圧潰していないか、しっかりと見守りながら、松葉杖を外すタイミングを見極めます。

リハビリ

免荷期間中の筋力・可動域維持訓練

まつもと整形外科の理学療法士が、患部に体重をかけない安全な姿勢(仰向けや横向きなど)のままで、股関節を優しく動かして関節が固まるのを防ぎます。また、太ももの筋肉(大腿四頭筋など)やお尻の筋肉(中殿筋など)の筋力が落ちないよう、体重負荷をかけないチューブトレーニングなどの安全な筋力訓練を指導いたします。

松葉杖の正しい使い方の指導

「松葉杖をついて歩く」というのは、実は非常に難しく、脇の下の神経を痛めてしまったり、転倒してしまったりするリスクがあります。理学療法士が、患者さまの身長に合わせた松葉杖の長さの調整を行い、階段の上り下りを含めた安全で正しい松葉杖の歩き方を徹底的にサポートいたします。

段階的な荷重訓練(痛みが引いてきたら)

数ヶ月経過し、レントゲンやMRI画像で骨の回復が確認され、痛みも落ち着いてきたら、医師の指示のもとで少しずつ股関節に体重をかけていく「荷重訓練」を開始します。急に全体重をかけるのではなく、体重計などを用いて「今日は体重の3分の1まで」「来週は半分まで」と段階的に負荷を増やし、最終的に松葉杖なしで元の歩き方ができるようにリハビリを進めていきます。

セルフケア・予防

一過性大腿骨頭萎縮症は原因がはっきりと分かっていないため、完全に予防することは難しい側面があります。しかし、発症してしまった後の悪化を防ぎ、スムーズな回復を促すための日常生活でのセルフケアは非常に重要です。

とにかく「痛みを我慢して歩かない」こと

「仕事が忙しいから」「少し痛いだけだから」と、松葉杖を使わずに無理に歩き続けることが一番の悪化の原因です。骨が脆い時期に負担をかけ続けると、大腿骨頭が骨折して潰れてしまい、手術が必要な状態になってしまう恐れがあります。医師から「体重をかけないように」と指示が出ている期間は、その指示を厳守してください。

体重のコントロール

股関節には、普通に歩くだけでも体重の約3倍、階段の上り下りではそれ以上の負担がかかると言われています。体重の増加は、股関節にとって物理的な凶器となります。バランスの良い食事を心がけ、適正体重を維持することが、股関節を守るための基本的な予防策となります。

安全な住環境の整備

松葉杖での生活は、バランスを崩しやすく転倒の危険が伴います。家の中の段差をなくす、滑りやすいラグやカーペットを片付ける、お風呂場に滑り止めマットを敷くなど、転ばないための環境づくりをご家族と協力して行ってください。

Q&A

Q

インターネットで「大腿骨頭壊死症」という病気を見て不安です。違いは何ですか?

A

「一過性大腿骨頭萎縮症」と「大腿骨頭壊死症」は、初期の症状やMRIの画像が非常に似ているため、整形外科専門医でも最初は見分けがつきにくいことがあります。しかし、決定的な違いは「治るか、治らないか」です。大腿骨頭壊死症は骨の組織が死んでしまい進行していく難病ですが、一過性萎縮症は数ヶ月で骨の状態が回復し自然に治癒します。

Q

治療期間はどのくらいかかりますか?仕事は休まなければいけませんか?

A

痛みの程度や回復の早さには個人差がありますが、一般的には発症から痛みが完全に取れて松葉杖が外れるまでに、3ヶ月から半年程度かかることが多いです。お仕事に関しては、デスクワークなど松葉杖をついて通勤でき、座ったまま行える業務であれば続けることは可能です。しかし、立ち仕事や重いものを運ぶ重労働、長距離を歩く営業職などは、骨が回復するまではお休みいただくか、業務内容の変更(配置転換)を職場に相談していただく必要があります。

Q

痛みが少しマシになってきたのですが、松葉杖はもう外してもいいですか?‌

A

自己判断で松葉杖を外すのは絶対にやめてください。痛み止めのお薬が効いていたり、炎症のピークが過ぎたりすると、痛みが軽くなることがあります。しかし、痛みがない=治った、というわけではありません。骨がスカスカで脆い状態で無理に体重をかけると、骨が潰れてしまう危険性があります。 0

監修

院長
松本 淳志 Atsushi Matsumoto

経歴

  • 済生会福岡総合病院
  • 製鉄記念八幡病院
  • 福岡市民病院
  • 九州大学病院
  • 九州医療センター
  • 福岡赤十字病院
  • 済生会八幡総合病院
  • 福岡青洲会病院

資格・所属学会

  • 日本整形外科学会 専門医(日本専門医機構)
  • 日本整形外科学会認定 運動器リハビリテーション医
  • 日本整形外科学会認定 脊椎脊髄病医
  • 日本フットケア学会認定 フットケア指導士
  • 身体障害者福祉法第15条指定医師(肢体不自由)
  • 難病指定医
  • 日本整形外科学会
  • 日本フットケア・足病医学会