大腿骨寛骨臼インピンジメント|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

大腿骨寛骨臼インピンジメント FEMOROACETABULAR-IMPINGEMENT

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大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)とは

人間の股関節は、骨盤側にある受け皿(寛骨臼:かんこつきゅう)に、太ももの骨の先端にある球状の部分(大腿骨頭:だいたいこっとう)がきれいにはまり込むことで、体重を支えながら前後左右に動く「球関節(きゅうかんせつ)」と呼ばれる構造をしています。この受け皿の縁には「関節唇(かんせつしん)」という軟骨組織が付いており、関節の安定性を高めるクッションやパッキンの役割を果たしています。
大腿骨寛骨臼インピンジメント(以下、FAI)とは、この大腿骨(太ももの骨)と寛骨臼(骨盤の受け皿)のどちらか、あるいは両方の骨の形状にわずかな膨らみや過剰な覆いかぶさりがあるため、股関節を深く曲げたり捻ったりした際に、骨同士が異常に接近して衝突(インピンジメント)を繰り返してしまう病態を指します。
正常な股関節であればスムーズに動くはずの隙間が、骨の形態異常によって狭くなっているため、衝突のたびに挟み込まれた関節唇が破れたり、関節の表面を覆う軟骨が削れたりして、強い痛みや炎症を引き起こします。
主に、サッカー、ラグビー、バスケットボール、バレエ、格闘技など、股関節を深く曲げる動作や、急激な切り返し(捻り)動作を伴うスポーツを行う10代〜40代の比較的若い世代に多く発症するのが特徴です。しかし、スポーツをしていない方でも、骨の形態や日常の姿勢(長時間のデスクワークなど)によって発症することがあり、決してアスリートだけの疾患ではありません。

症状

CONSULTATION

  • 股関節を深く曲げた時の、足の付け根(鼠径部)の鋭い痛み
  • あぐらをかく、または靴下を履く動作が痛くて困難
  • スポーツ中(キック動作や切り返し)の股関節の激痛
  • 長時間の車の運転や、低い椅子に座り続けた後の立ち上がり時の痛み
  • 股関節を動かした際の「ポキッ」という異音(クリック音)

など

原因

FAIを引き起こす骨の衝突は、主に以下の3つの「骨の形態異常(タイプ)」と、そこへ加わる「繰り返しの力学的負荷(メカニカルストレス)」が原因となって発生します。

Cam(キャム)病変

大腿骨側の異常 太ももの骨の先端にある球状の部分(大腿骨頭)から首の部分(大腿骨頸部)にかけてのくびれが少なくなり、骨がコブのように出っ張っている状態です。股関節を曲げた際に、この出っ張りが骨盤の受け皿の縁(関節唇)に衝突して損傷させます。男性アスリートに多く見られます。

Pincer(ピンサー)病変

骨盤(寛骨臼)側の異常 骨盤側の受け皿(寛骨臼)の縁が通常よりも深く、大腿骨頭を過剰に覆いかぶさっている状態です。股関節を動かすと、受け皿の縁が毛抜(ピンサー)のように大腿骨の首の部分を挟み込んでしまい、関節唇が潰されて損傷します。中年以降の女性に比較的多く見られます。

Mixed(ミックス)病変

両方の合併 実際の臨床現場で最も多いのが、Cam病変とPincer病変の両方を併せ持っている「Mixed(混合)タイプ」です。大腿骨側の出っ張りと、骨盤側の過被覆が同時に存在するため、より早い段階から激しいインピンジメント(衝突)を引き起こします。繰り返しの力学的負荷(メカニカルストレス) これらの骨の形態異常を持っていたとしても、必ず痛みが出るわけではありません。そこに「股関節を深く曲げた状態での強力な捻り動作」というスポーツや労働での負担が長期間にわたって繰り返し加わることで、初めて軟骨や関節唇が破綻し、発症に至ります。

診断

詳細な問診と徒手検査(前方インピンジメントテスト:FADIRテスト)

「どのような動作で痛むか」「特定のスポーツ歴はあるか」を伺います。ベッドに仰向けになっていただき、股関節を90度以上深く曲げ、そこから内側に倒し込みながら捻る(屈曲・内転・内旋)テストを行います。この動作で普段と同じ足の付け根の痛み(詰まり感)が再現されれば、FAIの疑いが強くなります。

X線(レントゲン)検査

骨の形態異常を評価するために必須の検査です。大腿骨頭のくびれが失われている「Cam変形(アルファ角の増大)」や、骨盤の受け皿が深すぎる「Pincer変形(クロスオーバーサイン)」がないか、確認します。また、軟骨のすり減り(変形性股関節症への進行)がないかも同時にチェックします。

MRI検査

レントゲンでは、骨の形は分かっても「関節唇の損傷」や「軟骨の剥がれ」といった軟部組織のダメージまでは写りません。FAIによる関節内部の損傷状態を直接評価するためにはMRI検査が有用です。MRI検査が必要と判断した場合は、提携する医療機関へご紹介します。

セルフチェック

ご自身の股関節の違和感が、一時的な疲労なのか、大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の疑いがあるのか、ご自宅で確認できる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ 仰向けに寝て、片方の膝を胸にギュッと引き寄せた時に、足の付け根にズキッとした痛みや、何かが挟まるような詰まり感がある。
☑️ 上記の「膝を胸に引き寄せた状態」から、膝を内側に倒すとさらに痛みが強くなる。
☑️ 低いソファや車のシートから立ち上がる最初の一歩で、股関節の奥深くに重だるい痛みを感じる。
☑️ サッカーや格闘技、バレエなど、股関節を激しく動かすスポーツを継続して行っている。
☑️ 股関節を回すと、関節の奥の方で「コキッ」「カクッ」と音が鳴り、引っかかる感じがする。

治療

FAIの治療は、初期の段階であれば手術を行わずに痛みを取り除き、股関節への負担を減らす「保存療法」から開始します。痛みを我慢してスポーツや動作を続けることは、関節の破壊を早めるため絶対に避けなければなりません。

保存療法(痛みのコントロールと機能改善)

◯薬物療法(痛みのコントロールと炎症の抑制)
関節内や関節唇周辺に強い炎症が起きている時は、まずは「痛みをしっかり取り除くこと」が最優先となります。患者さまの症状や生活習慣に合わせ、炎症を強力に抑える「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs:ロキソニン、ボルタレンなど)」の内服薬や湿布を処方します。さらに痛みが強く、NSAIDs(非ステロイド性消炎鎮痛薬)では十分な緩和が得られない場合には、脳や脊髄における痛みの伝達を強力にブロックする「弱オピオイド系鎮痛薬(ツートラム、トラムセットなど)」を患者さまの症状に合わせて慎重に組み合わせるなど、的確な痛みのコントロールを行います

◯活動の修正(生活指導)
「痛みの出る動作(深い屈曲や内旋)」を徹底的に避けることが重要です。スポーツの休止や練習メニューの変更、和式トイレから洋式トイレへの変更、床に座る生活から椅子に座る生活への切り替えなど、インピンジメントを誘発しない環境調整を指導します。

手術療法について

数ヶ月間の保存療法(リハビリテーションや薬物療法)を行っても痛みが改善せず、日常生活やスポーツ復帰に大きな支障をきたしている場合や、MRI検査で関節唇の大きな断裂・軟骨の剥離が確認された場合には、手術療法が検討されます。
股関節鏡視下手術(こかんせつきょうしかしゅじゅつ)
太ももの付け根に数カ所の小さな穴を開け、小型の内視鏡(カメラ)と特殊な器具を入れて行う、身体への負担が少ない低侵襲手術です。破れた関節唇を縫い合わせる(関節唇縫合術)と同時に、衝突の原因となっている大腿骨や寛骨臼の出っ張った骨を専用の器具で滑らかに削り落とし(骨軟骨形成術)、物理的なインピンジメントを根本から解消します。手術が必要と判断した場合は、股関節鏡手術の実績が豊富な専門医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。

リハビリ

骨盤の動き(後傾)の改善

FAIの患者さまの多くは、腰や骨盤の動きが硬くなっています。骨盤が前に倒れた状態(前傾)のまま股関節を曲げると、すぐに骨盤と大腿骨がぶつかってしまいます。理学療法士の手技により、背骨や骨盤の柔軟性を高め、股関節を曲げる際に「骨盤が自然に後ろへ傾く(後傾する)」逃げ道を作ることで、インピンジメントを回避します。

股関節周囲筋のストレッチと体幹強化

硬く縮こまった太ももの前の筋肉(大腿直筋など)や腸腰筋をストレッチでほぐし、同時にお腹の奥深くにある体幹のインナーマッスルや、お尻の筋肉(中殿筋・大殿筋)を徹底的に鍛えます。これにより、股関節がブレることなく安定して動くようになります。

スポーツ動作や日常生活動作の修正

「膝が内側に入り、つま先が外を向く姿勢(Knee-in Toe-out)」など、股関節に強力な捻りストレスをかける不良動作を修正します。患部である股関節だけでなく、隣接する腰椎や膝関節、足首の柔軟性を含めて全身のバランスを根本から整えます。安全にスポーツへ復帰しできるまで、理学療法士がしっかりとサポートいたします。

セルフケア・予防

「深く曲げる+捻る」動作を避ける

日常生活において、極端に低い椅子やソファに長時間座ることや、床にぺたんと座る「女の子座り」、足を深く組む動作は股関節に負担をかけるため避けてください。椅子は股関節が90度以上曲がらない(膝よりもお尻の位置が高くなる)高さに調整しましょう。

股関節周りの柔軟性を維持する

お風呂上がりなど、筋肉が温まっているタイミングで、お尻周りの筋肉や太ももの裏側(ハムストリングス)のストレッチを痛みのない範囲で毎日行い、関節の遊び(可動域)を保つことが予防につながります。

体幹を意識した姿勢づくり

猫背や、お腹を前に突き出した反り腰(スウェイバック姿勢)は、骨盤の傾きを悪化させ、股関節の負担を増やします。日頃から下腹部に軽く力を入れ、背筋をスッと伸ばした正しい姿勢を意識してください。

Q&A

Q

レントゲンで「骨に異常はない」と言われたのですが、FAIの可能性はありますか?

A

はい、可能性があります。初期のFAIによる関節唇の損傷や軟骨の微細なダメージは、骨だけを写すレントゲン検査では発見することができません。また、Cam変形などの骨の出っ張りも、撮影する角度によってはレントゲンに写りにくいことがあります。長引く足の付け根の痛みがある場合は、MRI検査などを含めた精密検査が必要です。

Q

この病気は放置するとどうなりますか?‌

A

骨同士の衝突(インピンジメント)が続く環境を放置すると、関節のパッキンである関節唇が傷んでくるため、その奥にある関節軟骨が急激にすり減っていきます。最終的には、末期の「変形性股関節症」へと進行してしまい、人工股関節手術が必要になる恐れがあります。

Q

痛みがある時は、股関節のストレッチをたくさんやった方が早く治りますか?

A

痛みが強い時期(急性期)に、無理に股関節を深く曲げたり強く捻ったりするような自己流のストレッチを行うと、インピンジメントを誘発してかえって関節唇の損傷や炎症を悪化させてしまうため非常に危険です。まずは安静にして炎症を鎮めることが先決です。ストレッチや運動は、必ず医師や理学療法士の指導のもと、安全な角度と方向で行ってください。

Q

スポーツへの復帰は可能でしょうか?

A

はい、適切な治療とリハビリテーションを行うことで、多くの方が元の競技レベルへ復帰されています。保存療法によるリハビリで身体の使い方を改善することで復帰できるケースもあれば、股関節鏡視下手術によって骨の出っ張りを削ることで、痛みが消失して高いパフォーマンスを取り戻すアスリートもいらっしゃいます。患者さまの目標に合わせて最適な治療方針を一緒に決定していきます。

Q

FAIと言われましたが、手術は絶対に必要ですか?

A

必ずしも全員に手術が必要なわけではありません。骨の形態異常(CamやPincer)があっても、リハビリテーションによって骨盤の後傾を引き出し、体幹や股関節周囲の筋肉を鍛えることで「骨同士がぶつからない動き方」をマスターできれば、痛みをコントロールしながらスポーツや日常生活を続けることは十分に可能です。保存療法を数ヶ月行っても痛みが改善しない場合に初めて、手術が検討されます。