膝内側側副靱帯損傷|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

膝内側側副靱帯損傷 MEDIAL-COLLATERAL-LIGAMENT-INJURY

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膝内側側副靱帯損傷とは

膝内側側副靱帯(MCL:Medial Collateral Ligament)とは、太ももの骨(大腿骨:だいたいこつ)と、すねの骨(脛骨:けいこつ)の内側を縦に繋いでいる強靭な線維組織です。人間の膝関節は、前後の揺れを制御する前十字靱帯と後十字靱帯、左右の揺れを制御する内側側副靱帯と外側側副靱帯によって安定性が保たれています。その中でも内側側副靱帯は、膝が極端に内側へ入り込む動き(外反:がいはん)や、外側へ過度に捻られる動き(外旋:がいせん)を制御し、関節を正常な位置に保つという極めて重要な役割を担っています。

膝内側側副靱帯損傷とは、スポーツ中の接触や転倒などによって膝関節に強力な「外反・外旋方向の力」が加わり、この靱帯の線維が引き伸ばされたり、部分的に断裂したり、あるいは完全に断裂してしまった状態を指します。膝の靱帯損傷の中で最も発生頻度が高い外傷です。

3つの段階(重症度)

医学的には、靱帯の損傷度合いによって以下の3つの段階(重症度)に分類されます。

I度損傷(微細断裂・伸張): 靱帯の線維がわずかに引き伸ばされた状態。関節の不安定性(グラつき)はありません。
II度損傷(部分断裂): 靱帯の線維が部分的に断裂した状態。軽度から中等度の不安定性が生じます。
III度損傷(完全断裂): 靱帯が完全に断裂した状態。膝の著しい不安定性が生じ、前十字靱帯(ACL)や内側半月板の損傷を合併している危険性が非常に高くなります。

受傷直後から適切な処置(固定と免荷)を行わずに動いてしまうと、切れた靱帯が緩んだ状態で癒着・修復されてしまい、生涯にわたって「膝が抜けるような感覚(Giving way)」に悩まされることになります。そのため、早期の正確な診断と医学的根拠に基づいたリハビリテーションが必須となります。

症状

CONSULTATION

  • 膝の内側を押すと鋭い痛み(圧痛)がある
  • 膝の曲げ伸ばしが制限され、深く曲げられない
  • 体重をかけた時や、方向転換する時に膝が痛む
  • 膝が横にグラグラする、または力が抜けるような不安定感がある
  • 受傷から数日後に、膝の内側からすねにかけて内出血(皮下出血)が現れる

など

原因

膝内側側副靱帯損傷は、膝の外側から強力な衝撃を受ける、あるいは足裏が地面に固定された状態で膝が過度に内側へ倒れ込む(Knee-in)ことによって発生します。

コンタクトスポーツでの直接的な外力(接触型)

ラグビーやアメリカンフットボールでのタックル、サッカーで相手選手と交錯した際など、膝の外側から強烈な衝撃を受け、膝関節が強制的に「外反(内側に曲がる)」させられることで発生します。

ノンコンタクトスポーツでの急激な方向転換(非接触型)

スキーでエッジが引っかかり足が外側に持っていかれた時や、バスケットボールやバレーボールなどでジャンプの着地時に膝が内側に入る不良姿勢(Knee-in Toe-out)をとった時、柔道で技をかけられて踏ん張った時などに、自身の体重と遠心力によって靱帯の強度の限界を超えて断裂します。

日常生活中の不慮の事故や転倒

スポーツ現場だけでなく、雨の日の階段や濡れた床で足を滑らせて不自然な体勢で転倒した際や、自転車の転倒時に膝を強く捻った際など、日常生活の動作の延長線上でも発症することがあります。

診断

詳細な問診と徒手検査(ストレステスト)

受傷時の状況(どのような体勢で、どの方向から力が加わったか)を詳しく伺います。その後、患者さまの膝を様々な角度(完全に伸ばした状態と30度曲げた状態)で外反方向へ力を加え、靱帯の緩み(動揺性)と痛みの程度を評価する「外反ストレステスト」を慎重に行います。

X線(レントゲン)検査

靱帯そのものはレントゲンには写りませんが、靱帯が骨に付着している部分が剥がれてしまう「剥離骨折(はくりこっせつ)」が起きていないかを評価します。

MRI検査

内側側副靱帯がどの部位で、どの程度断裂しているかを鮮明な画像で直接確認します。さらに重要な点として、膝の関節内に血腫(血の溜まり)がある場合などは、前十字靱帯の断裂や内側半月板の損傷を高い確率で合併しているため、これらの状態を正確に把握するためにMRIは欠かせません。MRI検査が必要と判断した場合は、提携する医療機関へご紹介します。

セルフチェック

ご自身の膝の痛みが、単なる打撲や筋肉痛なのか、内側側副靱帯損傷の疑いがあるのか、ご自宅で確認できる簡単なセルフチェックリストです。

☑️ 膝のお皿のやや下から「内側」にかけての部分を指で押すと、鋭い痛みがある。
☑️ 受傷した瞬間に、膝が内側へ「グニャッ」と曲がった、または外側から強い衝撃を受けた記憶がある。
☑️ 膝が腫れていて、まっすぐ伸ばしきることや、深く曲げることが痛くてできない。
☑️ 立って体重をかけたり、歩行で方向を変えたりすると、膝の内側にズキッとした痛みが出る。
☑️ 歩くときに膝がグラグラして安定せず、力が抜けて転びそうになる感覚がある。

治療

膝内側側副靱帯損傷の治療は、損傷の程度(I度〜III度)に関わらず、大部分のケースにおいて手術を行わない「保存療法」が第一選択となります。この靱帯は血流が比較的豊富な組織であるため、適切な時期に適切な固定を行うことで、良好な自然修復が期待できるからです。

急性期の処置(炎症の抑制と組織の保護)

RICE処置と装具療法(固定): 腫れや内出血を最小限に抑えるため、まずはアイシング(冷却)を行います。そして、損傷の程度に応じて「サポーター」から「金属支柱付きの硬性膝装具(ヒンジ付きブレース)」まで適切な装具を選択し、膝の横揺れ(外反)を防ぎます。II度以上の損傷で痛みが強い場合は、松葉杖を使用して患部への体重負荷を減らし、切れた靱帯が緩んだまま癒合しないよう保護します。

薬物療法(痛みのコントロールと炎症の抑制): 強い炎症と疼痛を取り除き、痛みの悪循環を防ぐために薬物療法を並行して行います。患者さまの症状や体質に合わせ、炎症を強力に抑える「非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs:ロキソニン、ボルタレンなど)」の内服薬や、鎮痛消炎効果の高い湿布・塗り薬を適切に処方します。さらに痛みが強く、NSAIDsでは十分な緩和が得られない場合には、痛みの伝達をブロックするより強力な鎮痛薬(ツートラム、トラムセットなど)を慎重に組み合わせるなど、的確な痛みのコントロールを行います。

手術療法について‌

単独の内側側副靱帯損傷で手術が必要となることは非常に稀です。しかし、III度の完全断裂に加えて「前十字靱帯断裂」や「半月板損傷」を合併している複合靱帯損傷の場合や、数ヶ月の保存療法とリハビリテーションを経ても膝の強度の不安定感(グラつき)が残り、競技復帰が困難な場合には、靱帯縫合術や靱帯再建術といった手術療法が検討されます。その際は、手術実績が豊富な医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。

リハビリ

関節可動域訓練(ROM訓練)

固定によって硬くなった膝関節に対し、理学療法士の手技により、痛みの出ない範囲でゆっくりと曲げ伸ばしの範囲を広げていきます。無理に動かすと修復中の靱帯を再び引き裂いてしまうため、専門性の高いリハビリが必要になります。

筋力増強訓練

膝を固定している間に急速に衰えてしまう太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)や裏側の筋肉(ハムストリングス)を鍛え直します。初期は関節を動かさずに筋肉に力を入れる「等尺性運動」から始め、徐々に負荷をかけていくことで、関節を支える筋肉を再構築します。

神経筋協調性訓練と動作指導

靱帯を損傷すると、関節の位置を感じ取るセンサーの機能も低下します。バランスボードなどを用いて膝の安定性を高めるトレーニングを行い、同時にケガの原因となった「Knee-in Toe-out(膝が内側に入り、つま先が外を向く姿勢)」などの不良動作を修正します。再びスポーツ現場へ復帰し、高いパフォーマンスを発揮できるようになるまで、全身のバランスを根本から整え、理学療法士がしっかりとサポートいたします。

セルフケア・予防

股関節と臀部(お尻)の筋力強化

膝が内側に倒れ込む不良動作を防ぐためには、実は膝周囲だけでなく、骨盤を安定させ大腿骨のねじれを制御する「中殿筋(お尻の横の筋肉)」や「体幹(インナーマッスル)」の強さが不可欠です。日頃からスクワットやヒップリフトなどのトレーニングを取り入れてください。

適切なウォームアップと柔軟性の確保

股関節や足首の関節が硬いと、その間の関節である膝に逃げ場のない捻りのストレスが集中します。スポーツ前にはダイナミックストレッチを行い、下半身全体の連動性を高めることが予防に直結します。

疲労の蓄積を防ぐアイシング

スポーツ後や、たくさん歩いて膝に熱っぽさや違和感がある時は、速やかに氷のうなどで患部を15分程度アイシングし、微細な炎症をその日のうちに鎮める習慣をつけましょう。

Q&A

Q

スポーツに復帰するまで、どのくらいの期間がかかりますか?‌

A

損傷の重症度によって大きく異なります。I度の軽傷であれば約2〜4週間、II度の中等症であれば約4〜8週間、III度の重症であれば8〜12週間程度が一般的な競技復帰の目安となります。焦って自己判断で復帰すると再受傷のリスクが高まるため、医師や理学療法士による評価を得てから復帰することが極めて重要です。

Q

手術をしなくても、本当に靱帯はくっつくのでしょうか?

A

はい、内側側副靱帯は血流に恵まれた組織であるため、前十字靱帯などとは異なり、適切な期間、装具で外反の動きを制限し保護すれば、自身の治癒力で修復されます。ただし、「緩んだ状態」でくっついてしまうのを防ぐため、医師の指示通りの期間は装具を外さないことが絶対条件となります。

Q

歩くと痛いのですが、松葉杖は使ったほうが良いですか?

A

体重をかけた時に痛みがある場合や、膝にグラつきを感じる場合は、躊躇せずに松葉杖を使用してください。痛みを我慢してびっこを引くような歩き方(跛行)を続けると、膝だけでなく股関節や腰にも過度な負担がかかり、新たな痛みを引き起こす原因となります。痛みが落ち着くまでは、免荷(体重をかけないこと)が早期回復への近道です。

Q

受傷後、お風呂で温めても大丈夫ですか?

A

受傷直後から約3日〜1週間程度(急性期)は、患部に強い炎症と出血が起きているため、温めると血流が良くなりすぎて腫れや痛みが悪化する危険があります。この時期は「アイシング(冷却)」が基本です。腫れや熱感が完全に引き、慢性期に入ってからは、逆に温めて筋肉の緊張をほぐし、組織の修復を促す「温熱療法」へと切り替えていきます。

Q

治療後に後遺症が残ることはありますか?

A

早期に正しい診断を受け、適切な固定とリハビリテーションを完了すれば、後遺症を残さずに元のレベルまで回復することが十分に可能な疾患です。しかし、痛みが引いたからといって途中で治療を放棄してしまうと、靱帯が緩んだまま関節の不安定性が残り、将来的に半月板を損傷したり、加齢とともに変形性膝関節症へと進行する可能性が出てきます。