単純性股関節炎|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

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単純性股関節炎とは

単純性股関節炎とは、太ももの骨(大腿骨)と骨盤をつなぐ「股関節」を包んでいる「滑膜(かつまく)」という組織に、一時的な炎症が起こる疾患です。炎症によって股関節の中に水(関節液)が溜まり、関節の内圧が上がることで強い痛みを生じます。

この疾患は、主に3歳から10歳くらい(特にピークは3歳〜6歳)の活発な時期の子供に多く見られ、女の子よりも男の子に約2倍〜3倍多く発症する傾向があります。

病名に「単純性」や「一過性(いっかせい)」という言葉が使われている通り、ほとんどのケースでは1週間から2週間程度の安静で炎症が自然に治まり、水も吸収されて元通りになります。骨が変形したり、将来歩けなくなったりするような重大な後遺症を残すことは基本的にはありません。

しかし、子供の股関節の痛みには、緊急で手術が必要になる「化膿性股関節炎(かのうせいこかんせつえん)」や、太ももの骨の先端が血流障害で壊死してしまう「ペルテス病」など、非常に恐ろしい病気が隠れていることがあります。そのため、「ただの成長痛だろう」「そのうち治るだろう」と自己判断して放置することは大変危険です。

症状

CONSULTATION

  • 朝起きたら突然「股関節が痛い」「太ももの付け根が痛い」と泣き出し、歩くのを嫌がる
  • 痛みをかばうように、足を引きずって歩く(跛行:はこう)
  • 股関節ではなく、「太もも」や「膝が痛い」と訴えることがある
  • 安静にして座ったり寝転んだりしている時は痛みがなく、機嫌が良い
  • 37度台の微熱がある

など

原因

単純性股関節炎がなぜ起こるのか、その明確な原因は現代の医学でも完全には解明されておらず、「特発性(原因不明)」とされています。しかし、発症した子供の経過を詳しくたどると、以下のような要因が深く関わっていると考えられています。

ウイルス感染(風邪などの上気道炎)の後の免疫反応

股関節が痛くなる1週間から2週間ほど前に、「鼻水が出た」「咳が出ていた」「下痢をした」といった、軽いウイルス感染のエピソードを持つお子様が非常に多くいらっしゃいます。風邪のウイルスそのものが関節に入ったわけではなく、ウイルスと戦うための体の免疫反応が、何らかの理由で股関節の滑膜に一時的な炎症を引き起こしてしまう(アレルギー反応のようなもの)という説が最も有力です。

軽微な外傷(ケガ)や関節への負担

前日にトランポリンで激しく遊んだ、高いところからジャンプした、公園で転んだなど、股関節への機械的な負担や軽い衝撃が引き金となって、滑膜が炎症を起こすことがあります。

活発な活動による疲労の蓄積

男の子に多いことからも分かるように、運動量が多く、関節を常に活発に動かしていることが発症の要因の一つと考えられています。

診断

問診と視診・触診

「いつから痛がっているか」「数週間前に風邪を引いていなかったか」「熱はないか」を詳しく伺います。そして、お子様の歩き方(足を引きずっていないか)を確認し、仰向けに寝かせた状態で股関節をゆっくりと曲げたり回したりして、どの動きで痛がるか(可動域制限の有無)を優しく確認します。

超音波(エコー)検査

レントゲンでは写らない「股関節の中の水(関節液)の溜まり具合」や「滑膜の腫れ」を確認できることがあります。

X線(レントゲン)検査

単純性股関節炎の場合、骨そのものに異常はないためレントゲン画像は正常に写ります。しかし、太ももの骨が壊死してしまう「ペルテス病」や、骨がズレてしまう「大腿骨頭すべり症」、または微小な骨折が隠れていないかを除外(否定)するために必須の検査となります。

血液検査(必要に応じて)

お高熱がある場合や、激しく泣いて全く関節を動かせない場合には、血液検査を行います。白血球の数値やCRP(炎症反応)が異常に高い場合は、細菌感染による「化膿性股関節炎」の疑いが強くなるため、速やかに連携する総合病院へご紹介いたします。

セルフチェック

お子様が足を痛がっている場合、ご自宅で確認していただきたいセルフチェックリストです。以下の項目を確認し、医師へお伝えいただくと診断が非常にスムーズになります。

☑️ 痛がる数日から数週間前に、風邪(鼻水、咳、熱など)を引いていたか?
☑️ 痛がっているのは、右と左のどちらの足か?
☑️ 股関節ではなく、膝や太ももをさすって痛がっていないか?
☑️ 微熱が出ていないか?(※高熱がある場合は大至急受診してください)
☑️ 仰向けに寝かせて、親御さんがゆっくり足を開こうとした時、嫌がって抵抗するか?

※これらはあくまで状況を整理するための目安です。子供は痛みを正確な言葉で伝えることができないため、ご自宅で様子を見続けず、まずはまつもと整形外科へご来院ください。

治療

保存療法

単純性股関節炎の治療は、お薬や手術で強制的に治すのではなく、「徹底した安静(Rest)」によって、お子様自身の持つ自然治癒力で炎症が引くのを待つ「保存的加療」が唯一にして最大の治療法となります。

股関節の安静
痛みが強い最初の数日間は、歩く、走る、跳ぶといった股関節に体重がかかる動作を徹底して避けます。幼稚園、保育園、小学校、習い事(スポーツ)はすべてお休みしていただきます。ご自宅の中でも歩き回らせず、移動の際はご家族が抱っこをするか、ベビーカーや車椅子を使用してください。

薬物療法
痛みが強くて夜眠れない、機嫌が極端に悪いといった場合には、小児用の非ステロイド性消炎鎮痛剤(アセトアミノフェンやイブプロフェンなどの飲み薬や坐薬)を処方し、痛みを和らげます。

経過観察
安静を守っていれば、通常は数日から1週間程度で痛みが引き、足を引きずらずに歩けるようになります。

リハビリ

単純性股関節炎においては、一般的な整形外科疾患で行うような「理学療法士による特別なリハビリテーション(筋力トレーニングやストレッチなど)」は、原則として必要ありません。

一番のリハビリは「安静」です
痛みが強い時期に無理に動かしたりストレッチをしたりすると、かえって関節の炎症を長引かせてしまいます。最も痛みが和らぐ楽な姿勢で徹底して安静を保つことが、早期回復に向けた一番の治療(リハビリ)となります。

セルフケア・予防

単純性股関節炎は、風邪などのウイルス感染に引き続いて起こることが多いため、完全に予防することは困難です。しかし、リスクを減らし、お子様の健やかな成長を守るための日常の心がけはいくつかあります。

感染症の予防

手洗い、うがいを習慣づけ、規則正しい生活と十分な睡眠・栄養をとって、風邪を引きにくい健康的な体(免疫力)を作ることが、結果的に単純性股関節炎の予防につながります。

風邪の後の激しい遊びに注意

お子様が風邪を引いて熱が下がった直後は、まだ体内で免疫反応が続いています。治りかけの時期にトランポリンやジャンプなどの激しい運動をさせると股関節に炎症が起きやすくなるため、数日間は室内で落ち着いた遊びを促してください。

痛みを訴えたら無理に歩かせない

「甘えているだけだ」「歩きなさい」と無理に歩かせると、炎症が悪化して長引いてしまいます。お子様が足を痛がった際は、決して無理をさせず、抱っこをして休ませてあげてください。

Q&A

Q

痛がっている時に、親が足をマッサージしてあげても良いですか?‌

A

痛みが強い時期に無理にマッサージをしたり、股関節を動かしてストレッチをしたりするのは避けてください。単純性股関節炎は関節の中で急激な炎症が起きている状態ですので、刺激を与えると痛みが悪化してしまいます。お子様が一番痛がらない楽な姿勢(少し膝と股関節を曲げた姿勢など)で、そっと安静にさせてあげることが一番の治療になります。

Q

単純性股関節炎は「癖」になりますか?何度も再発するのでしょうか?

A

一度治れば、慢性化して一生の癖になるような病気ではありませんのでご安心ください。ただし、風邪を引くたびに免疫反応が強く出やすい体質のお子様の場合、成長する過程(3歳〜10歳の間)で、別の風邪をきっかけとして数回再発を繰り返すケースはあります。年齢が上がり、免疫機能が大人に近づくにつれて自然と発症しなくなります。

Q

子供が「膝が痛い」と言って泣くのですが、膝には腫れも赤みもありません。股関節の病気なのでしょうか?‌

A

はい、その可能性が非常に高いです。これは「関連痛」といって、股関節の神経と膝の神経が同じルートを通っているため、股関節で起きている痛みを脳が「膝が痛い」と勘違いして認識してしまう現象です。単純性股関節炎のお子様の多くが、股関節ではなく膝や太ももを痛がります。膝に異常がなくても、足を引きずっている場合はまつもと整形外科にご相談ください。

Q

安静にして1週間経ちますが、まだ痛がって足を引きずっています。どうすればいいですか?

A

単純性股関節炎であれば、1週間から10日程度で症状は劇的に改善します。もし1週間以上経っても痛みが全く引かない、あるいは熱が出てきたという場合は、ただの単純性股関節炎ではなく、血流障害で骨が壊死する「ペルテス病」や、その他の重大な疾患が隠れている(あるいは移行している)可能性があります。

Q

痛がっている時は、お風呂には入らせない方がいいですか?温めた方がいいですか?

A

発熱がなく、お子様の機嫌が悪くなければ、お風呂に入ってシャワーを浴びたり、短時間湯船に浸かったりして体を清潔に保つことは問題ありません。ただし、股関節の中で急激な炎症が起きている「急性期」ですので、長湯をして患部を温めすぎると、炎症が強くなってお風呂上がりに夜泣きをしてしまうことがあります。痛みが強い数日間は、サッと汗を流す程度にしておくのが無難です。