肘内障|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

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肘内障(ちゅうないしょう)とは

肘内障とは、一般的に「肘(ひじ)が抜けた」と表現される、小さな子ども特有の肘の関節の「亜脱臼(あだっきゅう:完全に外れてはいないが、ズレている状態)」のことです。生後数ヶ月の乳児から、小学校入学前(特に1歳〜5歳頃)の幼児に非常に多く見られます。 人間の肘の関節は、腕の骨(上腕骨)と、肘から手首に向かう2本の骨(橈骨:とうこつ、尺骨:しゃっこつ)で構成されています。このうち「橈骨」の先端(橈骨頭)は、「輪状靭帯(りんじょうじんたい)」という輪っか状の靭帯で束ねられ、関節が外れないように固定されています。 しかし、小さな子どもはこの橈骨の先端がまだ未発達で丸みを帯びており、さらに靭帯そのものも柔らかく緩い状態です。そのため、腕を強く引っ張られたり、不自然な方向に捻られたりすると、この輪っか状の靭帯から骨の先端がスルッと抜けかかってしまい、靭帯が骨と骨の間に挟まり込んでしまいます。これが肘内障の痛みのメカニズムです。 成長とともに骨の先端がしっかりと引っ掛かる形(キノコの傘のような形)に発達し、靭帯も強固になるため、小学校にあがる6歳〜7歳頃には自然と起こらなくなります。

症状

CONSULTATION

  • 急に泣き出し、腕を動かさなくなる
  • 腕をだらんと下げたままにしている
  • バンザイの姿勢ができない
  • 痛む場所を正確に伝えられず、手首や肩を痛がる素振りを見せる
  • お気に入りのおもちゃやお菓子を出しても、痛めた手で取らない
  • 肘を軽く曲げ、手のひらを下に向けた姿勢をとる
  • 腕に触れられることを極端に嫌がる
  • 明らかな腫れや内出血、変形は見られない

など

原因

肘内障は、子どもの「腕が引っ張られること」をきっかけに発症することが大半です。日常生活の何気ない動作の中に原因が潜んでいます。

親御さんが子どもの手を引っ張った時

最も多い原因です。子どもが急に道路に飛び出そうとしたのを引っ張って止めた時、転びそうになったのを手をつないで引き上げた時などに起こります。

腕を引っ張って遊んでいる時

両手を持ってグルグルと振り回す遊び(飛行機やメリーゴーランドなど)や、両手を引いて高い高いをする遊びの最中にも発症します。

着替えの最中

タイトな長袖の服やアウターの袖に腕を通す際、親御さんが子どもの腕を引っ張ったり、無理に捻ったりした時に靭帯がズレてしまうことがあります。

寝返りや不自然な体勢

誰かに引っ張られなくても、寝ている間に自分の体の下敷きになって腕が捻られたり、発症することがあります。

診断

詳細な問診(エピソードの確認)

まずは親御さんに「いつ、どのような状況で痛がったか」を伺います。「手を引っ張ってから」という明確なエピソードがあれば、肘内障の疑いが強くなります。逆に「ジャングルジムから転落した」「肘から直接床に落ちた」という場合は骨折を強く疑います

視診・触診

子どもの腕の姿勢(だらんと下げているか)、腫れや内出血の有無を目視で確認します。腫れがある場合や、鎖骨(さこつ)付近を押して痛がる場合は、肘内障ではなく骨折の可能性があります。

X線(レントゲン)検査

肘内障そのものは軟骨や靭帯のズレであるため、レントゲン画像には異常が写りません。典型的な「手を引っ張った」という原因があり、腫れがない場合はレントゲンを撮らずに整復(治療)に進むことが一般的です。しかし、転倒エピソードがある場合や、整復操作を行っても腕を動かさない場合は、骨折を除外するためにレントゲン検査を実施します。

セルフチェック

お子様が急に腕を動かさなくなった時、ご自宅で確認できるセルフチェックリストです。病院へ向かう前の冷静な観察が、スムーズな診断に繋がります。

☑️ 痛がる前に、手を強く引っ張る出来事があった。
☑️ 腕全体をだらんと下げ、手のひらを下に向けている。
☑️ 痛がる方の腕や肘、肩に「赤み・腫れ・内出血」はない。
☑️ バンザイをさせようとすると泣いて嫌がる。
☑️ 痛がっている方の手にお気に入りのおもちゃを持たせようとしても、受け取らない。

【重要なお願い】
上記のチェックで肘内障が疑われる場合でも、絶対に親御さんがご自宅で無理に治そう(腕を回したり引っ張ったり)としないでください。 万が一骨折だった場合、神経や血管を傷つけて取り返しのつかない後遺症を残す恐れがあります。そのままの姿勢で、速やかにまつもと整形外科を受診してください。

治療

肘内障の治療は、ズレて挟まり込んだ輪状靭帯を元の位置に戻す「徒手整復術(としゅせいふくじゅつ)」を行います。手術や麻酔、特別な器具は一切必要ありません。医師が直接お子さんの腕に触れ、特定の方向に腕を動かして整復します。

回外法(かいがいほう)

昔から行われている伝統的な整復法です。手のひらを上に向けるように腕を外側に回しながら(回外)、肘をゆっくりと曲げていきます。初回の整復成功率は約70〜80%程度とされています。

回内法(かいないほう)

近年、より推奨されている整復法です。医師が肘の関節(橈骨頭)を押さえた状態で、手のひらを下に向けるように前腕を内側に強く回し(回内)、そのまま肘を曲げていきます(屈曲)。多くの医学的な研究データにおいて、回内法の初回成功率は約85〜95%と非常に高く、回外法に比べて「1回の処置で整復されやすい」「処置時の痛みが少ない」ことが証明されています。

適切な方向に力が加わると、医師の指先に「コクッ」「ポキッ」という小さなクリック音(整復音)が伝わり、わずか数秒で靭帯が元の位置にカチッと収まります。 整復の瞬間は一瞬だけ痛みがあるためお子さんは泣いてしまうことが多いですが、靭帯が元に戻ればこれまでの激痛が魔法のようにスッと消え去ります。

リハビリ

肘内障は、靭帯が元の位置に戻ればすぐに元の生活に戻れるため、筋肉を鍛えたり関節を伸ばしたりといった、いわゆる大人のような「リハビリテーション」は必要ありません。

セルフケア・予防

手や手首だけを引っ張らない

子どもを引き上げる時や、歩調を合わせるために引っ張る時は、手先だけを引っ張らず、手首より上の「前腕(ぜんわん)」や「二の腕」を持つようにするか、できれば「脇の下に手を入れて抱え上げる」ようにしてください。

遊び方に気をつける

両手を持って振り回す飛行機遊びや、段差を飛び降りる時に両手で引っ張り上げるような動作は、肘に全体重がかかるため非常に危険です。

着替えは慎重に

袖を通す時は、親御さんが袖の出口から手を入れて子どもの手を迎えにいき、優しく引き抜くようにしてください。お子様の腕を無理やり押し込んだり引っ張ったりしないよう注意しましょう。

周囲への情報共有

肘内障になりやすい(関節が緩い)子どもの場合は、保育園や幼稚園の先生方にも「肘が抜けやすいので、手を強く引っ張らないでください」と事前にお伝えしておくことが、集団生活での予防に繋がります。

Q&A

Q

一度肘内障になると、癖になって何度も抜けるようになりますか?

A

はい、繰り返すことがあります。もともと輪状靭帯が緩い体質の子どもは、一度外れると組織がさらに緩くなり、少し引っ張られたり寝返りを打ったりした程度の軽い力でも、肘内障を繰り返す(反復性肘内障)ことがあります。しかし、骨や靭帯が成長して形がしっかりしてくる6〜7歳頃には自然と起こらなくなりますので、過度にご心配なさらず、その年齢までは引っ張らないよう注意してあげてください。

Q

夜間に急に痛がりました。翌朝まで様子を見ても大丈夫ですか?‌

A

肘内障は、そのまま一晩様子を見ても命に関わったり、後遺症が残ったりするものではありません。しかし、子どもは痛みのために一晩中泣いて眠れないことが多く、ご家族も大変な思いをされます。夜間救急を受診するか、お子様がなんとか眠れているようであれば、痛む腕を無理に動かさず楽な姿勢に保ち、翌朝一番で整形外科を受診してください。稀に、寝ている間に自然に整復されて治ってしまうこともあります。

Q

インターネットを見て、親が自分で治そうとしても良いですか?‌

A

絶対にやめてください。肘内障の整復自体は簡単なように見えますが、実は「骨折」や「別の関節の脱臼」が隠れていた場合、素人判断で腕を捻ったり引っ張ったりすると、骨のズレを悪化させたり、神経や血管を傷つけてしまったりする大変危険な行為です。痛みの原因を正しく診断できるのは整形外科医だけです。必ず整形外科を受診しましょう。

Q

レントゲン検査は必ず撮るのでしょうか?

A

全てのケースで撮影するわけではありません。「親が手を引っ張ってから痛がった」という原因がはっきりしており、腫れがない典型的な肘内障であれば、レントゲン検査による被ばくを避けるため、まずは整復操作を試みます。整復しても痛みが取れない場合や、「転んだ」「どこかにぶつけた」など骨折の疑いが少しでもある場合には、安全のために必ずレントゲン検査を実施します。

Q

治療(整復)が終わった後、お風呂に入ったり外で遊んだりしてもいいですか?

A

はい、問題ありません。靭帯が正しい位置に戻り、子どもが自分から手をバンザイしたり、おもちゃを持ったりできるようになれば、完全に治っている証拠です。その日から普段通りにお風呂に入り、公園で遊んでいただいて構いません。ギプスなどの固定も必要ありません。ただし、「腕を強く引っ張る動作」だけは再び抜けてしまう原因となるため、しばらくの間は十分に気をつけてあげてください。