扁平足(へんぺいそく)とは

扁平足とは、足の裏にあるはずの「土踏まず(内側縦アーチ)」が潰れて平らになり、足の裏全体が地面にベタッとついてしまう状態を指します。
人間の足には、カメラの三脚のように体重を支えるための「3つのアーチ(内側縦アーチ、外側縦アーチ、横アーチ)」が存在します。これらはお城の石垣のように、骨と靭帯、筋肉が精巧に組み合わさってできており、歩行時やジャンプした際の衝撃を吸収する「クッション(サスペンション)」として、また、前に進むための「バネ」として極めて重要な役割を果たしています。
この3つのアーチのうち、最も大きくて目立つ内側のアーチ(土踏まず)が低下してしまうのが扁平足です。クッション(サスペンション)機能が失われるため、地面からの衝撃がダイレクトに足の骨や関節に伝わり、強い疲労や痛みを引き起こします。
扁平足には、子どもの頃から土踏まずが形成されない「小児期扁平足」と、大人になってからアーチが崩れてしまう「成人期扁平足(後天性扁平足)」の2種類があります。特に整形外科を受診される患者さまで圧倒的に多いのが、中年期以降の女性に発症しやすい「成人期扁平足」です。
症状
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足の裏や土踏まず周辺が痛い
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足が異常に疲れやすい
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足首の内側(内くるぶしの下)が腫れて痛む(後脛骨筋腱炎)
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靴の内側ばかりが極端にすり減る
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ふくらはぎがパンパンに張る・頻繁に足がつる
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外反母趾(がいはんぼし)など指の変形を伴う
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足の裏や指の付け根にタコ・ウオノメができる
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足だけでなく、膝や腰まで痛くなってくる
など
原因
後脛骨筋腱(こうけいこつきんけん)の機能不全(大人の扁平足の最大の原因)
ふくらはぎから内くるぶしの下を通り、土踏まずの骨を下からハンモックのように引き上げている「後脛骨筋」という筋肉の腱があります。加齢や肥満、長時間の立ち仕事などの負荷が蓄積すると、この腱が少しずつ伸びて傷つき、最終的にはアーチを支えきれなくなります。これを「後脛骨筋腱機能不全(PTTD)」と呼び、中年期以降の女性に非常に多く見られます。
女性ホルモンの低下
更年期を迎え女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が減少すると、腱や靭帯の弾力性が失われて弱くなり、アーチを維持する力が低下しやすくなります。
運動不足と体重増加
歩く機会が減って足の裏やふくらはぎの筋力が低下することに加え、体重の増加によって上からの圧力(物理的な負荷)が強まることで、アーチが押し潰されてしまいます。
足に合わない靴の着用
クッション性のないペタンコの靴やサンダル、あるいはハイヒールやサイズが大きすぎる靴を履き続けることは、足の筋肉を正しく使えない状態を作り出し、扁平足を助長します。
小児期の靭帯の緩み(子どもの扁平足)
乳幼児期は脂肪が多く靭帯も柔らかいため、誰もが扁平足です。成長とともにアーチが形成されますが、生まれつき関節や靭帯が緩い体質のお子さまの場合、学童期になってもアーチが形成されにくいことがあります。
診断
視診・触診
内くるぶしの下の腱(後脛骨筋腱)に腫れや痛みがないかを丁寧に触って確認します。
レントゲン(X線)検査
体重をかけた状態(立位)で足のレントゲンを撮影します。アーチの高さを表す角度や、かかとの骨の傾き具合などを計測し、アーチがどの程度崩れているかを客観的に評価します。
超音波(エコー)検査
レントゲンには写らない、筋肉や腱、靭帯の状態を詳細に確認します。痛みの原因である「後脛骨筋腱」が炎症を起こしているか、部分的に切れていないかをエコーで確認し、適切な治療方針を決定します。
セルフチェック
濡れた足跡チェック(フットプリント)
お風呂上がりなど、足の裏が濡れた状態で乾いた脱衣マットや色の変わる床に立ち、ご自身の足跡の形を見てください。足の裏全体の形がべったりと跡に残る場合は扁平足のサインです。
片足つま先立ちテスト(シングル・ヒール・ライズ・テスト)
壁やテーブルに軽く手を添えてバランスを取り、痛む方の足一本で立ちます。そのまま「片足でつま先立ち(かかとを高く上げる)」ができるか試してください。もし、かかとが上がらない、痛みで力が入らないという場合は、後脛骨筋腱が機能していない(断裂している)可能性があります。
治療
装具療法(足底挿板療法・インソール)
まつもと整形外科では、患者さまお一人おひとりの足の型を正確に採り(採型)、崩れたアーチを理想的な位置に持ち上げて支えるための「医療用オーダーメイドインソール(足底板)」を作成します。これを普段履く靴に入れて生活していただくことで、靭帯や腱への負担を減らし、痛みを和らげ、変形の進行を食い止めます。
薬物療法
内くるぶしの下などに強い炎症と痛みがある急性期には、非ステロイド性消炎鎮痛薬(湿布や塗り薬、内服薬)を使用して痛みの悪循環を断ち切ります。
手術療法(重症例の場合)
インソールやリハビリを長期間行っても痛みが取れず、歩行が困難な場合や、腱が完全に断裂して足の変形が重度な場合には、骨を切って形を矯正する手術(骨切り術)や、関節を固定する手術が必要になることがあります。手術が必要と判断した場合は、適切な高次医療機関へ責任を持ってご紹介いたします。
リハビリ
足裏の筋肉(内在筋)の強化
土踏まずを内側から持ち上げる筋肉を鍛えます。「タオルギャザー」と呼ばれる、床に敷いたタオルを足の指先だけで手繰り寄せる運動や、足の指でビー玉を掴んで移動させる運動が非常に効果的です。
後脛骨筋の強化と柔軟性アップ
低下したアーチを引き上げる後脛骨筋を鍛えるために、ゴムチューブを足首にかけて内側に引っ張る抵抗運動などを行います。
アキレス腱とふくらはぎのストレッチ

ふくらはぎの筋肉(下腿三頭筋)やアキレス腱が硬いと、歩く際にかかとが早く浮き上がってしまい、足の真ん中(アーチ部分)に強大な折り曲げのストレスがかかります。この負担を逃がすために、傾斜台を使ったストレッチや、壁に手をついてアキレス腱をしっかりと伸ばすリハビリを徹底して行います。
セルフケア・予防
正しい靴選び
靴選びは治療そのものです。柔らかすぎる靴やサンダルは避け、かかと部分(ヒールカウンター)が硬くしっかりしており、足首をホールドしてくれるスニーカーやウォーキングシューズを選んでください。また、靴紐は面倒でも毎回しっかりと結び直し、靴の中で足が滑らないようにすることが重要です。
適正体重の維持
体重が1キロ増えれば、歩行時に足にかかる負担は数キロ分増大します。足への物理的な押し潰しストレスを減らすため、食事管理と足に負担のかからない運動(水中ウォーキングや自転車こぎなど)で適正体重の維持に努めましょう。
足の休息とケア
長時間の立ち仕事や歩行をした日は、必ず湯船に浸かってふくらはぎと足の裏の血流を良くしてください。お風呂上がりに、足の指の間に手の指を入れて足首を大きく回すストレッチを行うことで、足の柔軟性を保つことができます。
Q&A
子どもの扁平足は、大人になるまでに自然に治りますか?
乳幼児期の扁平足は正常な成長過程であり、多くの場合、歩き方や走り方がしっかりしてくる小学校低学年頃までに自然と土踏まずが形成されていきます。しかし、痛みを伴う場合や、極端にかかとが内側に倒れ込んでいる場合、あるいは学童期になってもアーチが見られない場合は、インソールによる介入が必要になることがあります。気になる場合は、一度まつもと整形外科へご相談ください。
大人の扁平足(成人期扁平足)は、放置するとどうなりますか?
成人期扁平足は進行することがあります。単なる足の疲れだと思って放置していると、後脛骨筋腱が完全に切れたり、後脛骨筋腱が機能しなくなることがあります。
市販のインソール(中敷き)を使用しても効果はありますか?
薬局やスポーツ店で市販されているアーチサポート付きのインソールも、足の疲れを軽減する一定の効果は期待できます。しかし、市販のものはオーダーメイドでは無いためにご自身のアーチに適切にあっているわけではありません。治療を目的とする場合は、ご自身の足の型から正確に作成する「医療用のオーダーメイドインソール」を強くお勧めします。
青竹踏みは扁平足の改善に効果がありますか?
青竹踏みは、足の裏の硬くなった筋肉(足底腱膜など)をマッサージして血行を良くし、足の疲労を和らげる「ストレッチ効果」としては有効です。しかし、すでに靭帯が伸びて後脛骨筋腱が弱っている「大人の扁平足」の場合、青竹を強く踏みすぎると痛んだ組織にさらにダメージを与えて炎症を悪化させる危険があります。痛みが強い時期は控え、行う場合も優しく乗る程度にとどめてください。
リハビリや足の指の運動をすれば、潰れたアーチ(土踏まず)は完全に元の形に戻りますか?
残念ながら、大人になってから一度完全に伸びきってしまった靭帯や腱、崩れてしまった骨の配列を、運動だけで10代の頃のような完璧なアーチの「形」に戻すことは極めて困難です。しかし、まつもと整形外科でのインソール治療とリハビリを継続することで、残された筋肉を鍛え、「これ以上変形を進行させない」「痛みのない快適な歩行を取り戻す」ことは十分に可能です。















