石灰沈着性腱炎(石灰沈着性腱板炎)|久留米の整形外科|まつもと整形外科【西鉄安武駅徒歩2分】

石灰沈着性腱炎(石灰沈着性腱板炎) CALCIFIC-TENDINITIS

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石灰沈着性腱炎(石灰沈着性腱板炎)とは

石灰沈着性腱炎(石灰沈着性腱板炎)とは、肩の関節を動かしたり安定させたりする重要なインナーマッスルである「腱板(けんばん)」の中に、リン酸カルシウムの結晶(石灰)が沈着してしまい、それが原因で急激な炎症と激痛を引き起こす疾患です。別名「石灰性腱炎」とも呼ばれます。

40代から50代の女性に圧倒的に多く発症するのが特徴ですが、男性や他の年代の方に起こらないわけではありません。

この疾患の最大の特徴は、石灰が肩に「溜まる時」ではなく、溜まった石灰がミルク状に溶け出し、身体に「吸収される時」に猛烈な炎症が起こるという点です。

石灰沈着性腱炎(石灰沈着性腱板炎)の経過

①形成期(けいせいき)
腱の組織内に少しずつ石灰が溜まっていく時期です。この段階では自覚症状がないか、あっても軽い肩の違和感程度です。

②休止期(きゅうしき)
溜まった石灰が硬くチョークのように固まっている時期です。動かしたときに少し痛む(動作時痛)ことや、肩の引っかかり感が出ることがあります。

③吸収期(きゅうしゅうき)
固まっていた石灰が、歯磨き粉やミルクのようにドロドロに溶け出し、周囲の組織に吸収されようとする時期です。この時、身体の免疫反応が過剰に働き、「突然の耐えがたい激痛」を引き起こします。患者さまが救急車を呼ぶか迷うほどの痛みが出るのは、この吸収期です。

症状

CONSULTATION

  • 突然発症する肩の激痛
  • 夜間痛(痛くて眠れない・目が覚める)
  • 腕が全く上がらない(挙上困難)
  • わずかな動きでも激痛が走る
  • 痛い方の肩を下にして寝られない
  • 肩の熱感や腫れ
  • 着替えやトイレなどの日常動作ができない
  • 首や腕の先への放散痛

など

原因

腱の加齢性変化(老化)

なぜカルシウム(石灰)が溜まるのか、その原因は完全には解明されていませんが、「使いすぎ(酷使)」だけが原因ではありません。年齢とともに肩のインナーマッスル(腱板)の血流が低下し、酸素不足になった細胞がエラーを起こして、誤ってカルシウムの結晶を作り出してしまうという説が有力です。そのため、利き手ではない方の肩や、スポーツなどを特にしていない方にも突然発症します。

女性ホルモンの影響

40代から50代の女性に好発することから、閉経に伴う女性ホルモン(エストロゲン)の急激な減少やバランスの崩れが、腱の弾力性低下やカルシウム代謝の異常に深く関与していると推測されています。

遺伝的体質や代謝異常

ご家族に石灰沈着性腱炎になりやすい方がいる場合や、体内のカルシウム代謝、尿酸代謝などに異常がある方は、石灰が沈着しやすい体質を持っている可能性があります。

診断

レントゲン(X線)検査‌

石灰沈着性腱炎の診断において、最も基本かつ強力な検査です。石灰(カルシウム)は骨と同じようにレントゲンに白く写るため、肩の骨の隙間(腱板の部分)に、ぼんやりとした雲のような、あるいは丸く固まった白い塊が写っていれば、ほぼ間違いなくこの疾患であると診断できます。

超音波(エコー)検査

超音波検査を用いれば、石灰の正確な位置や大きさ、周囲の炎症(水が溜まっているかなど)をリアルタイムで詳細に把握でき、後述する注射治療を安全かつピンポイントで行うための強力なガイドとなります。

セルフチェック

痛みの始まり方

何ヶ月もかけて徐々に痛くなった(五十肩の疑い)のではなく、「数日以内、あるいは一夜にして突然激痛になった」という場合は石灰沈着性腱炎の可能性が高いです。

痛みの強さ

何もしていなくても、ズキズキとうずくような耐えがたい痛み(安静時痛)が常にありますか?

他動運動のチェック

痛くない方の手で、痛い方の腕を下から支えて持ち上げようとしたとき、痛みが強すぎて他人の手を借りても全く持ち上がらない(五十肩はある程度動くことが多いです)場合は、強い炎症が疑われます。

治療

エコーガイド下ステロイド注射

痛みを最速で取り除く、最も効果的な治療法です。超音波(エコー)画像を見ながら、石灰が溜まっている部分にピンポイントで針を進め、強力な抗炎症作用を持つステロイド剤と局所麻酔薬の混合液を注射します。注射直後から「嘘のように痛みが引いた」と仰る患者さまも少なくありません。

薬物療法(お薬による治療)

注射と併用して、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)の飲み薬や湿布を処方し、炎症の再燃を抑え込みます。

手術療法(関節鏡下石灰摘出術)

非常に稀ですが、数ヶ月から半年以上あらゆる保存的治療を行っても痛みが引かない場合や、硬い石灰が大きく残ってしまい肩の動きを物理的に邪魔している重症例に限り、肩に小さな穴を開けて内視鏡(関節鏡)で石灰を直接削り取る手術が検討されます(必要と判断した場合は、適切な高次医療機関へ責任を持ってご紹介いたします)。

リハビリ

痛みのない範囲での可動域訓練

急性期の強い痛みが治まった段階で、早期にリハビリを開始します。理学療法士が患者さまの肩を優しく動かし、関節が固まるのを防ぎます。ご自宅でもできる「振り子体操(コッドマン体操)」などのセルフストレッチも丁寧に指導いたします。

肩甲骨の動きの改善

肩の関節だけでなく、土台となる肩甲骨の動きが悪いと、腱板に再び負担がかかってしまいます。肩甲骨周りの筋肉の緊張をほぐし、正しい動きを取り戻す訓練を行います。

インナーマッスル(腱板)の機能回復

石灰によってダメージを受けたインナーマッスルを、ゴムチューブなどを用いて少しずつ鍛え直し、肩関節の安定性を高めて再発を予防します。

セルフケア・予防

【急性期(激痛の時)】は「安静と冷却」

突然の激痛が走っている時は、とにかく肩を動かさずに安静にすることが第一です。三角巾などを使って腕の重みを支えると痛みが和らぎます。また、炎症で熱を持っているため、無理に温めず、氷のうなどで15分ほどアイシング(冷却)を行ってください。

【回復期(痛みが落ち着いてきたら)】は「温熱と運動」‌

ピークの痛みが過ぎ、鈍い痛みに変わってきたら、今度は肩を温めて血流を良くし、石灰の吸収と組織の修復を促します。入浴時に湯船にしっかり浸かり、無理のない範囲でゆっくりと肩を回すストレッチを心掛けてください。

日頃から肩を動かす習慣を‌

特定の姿勢(猫背など)を続けたり、肩を動かさない生活をしていると血流が悪化します。日常的にラジオ体操や軽いストレッチを行い、肩関節の血行を良好に保つことが最大の予防策となります。

Q&A

Q

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)とは何が違うのですか?

A

四十肩・五十肩(肩関節周囲炎)は、加齢によって関節の袋(関節包)に炎症が起き、数ヶ月かけて「徐々に」痛みが強くなり、関節が固まっていく疾患です。一方、石灰沈着性腱炎は、腱の中に石灰が溜まり、それが溶け出す時に「突然、激痛」が発症するという明確な違いがあります。また、レントゲンを撮ると、五十肩では骨に異常が見られませんが、石灰沈着性腱炎ではハッキリと白い石灰が写ります。

Q

治療の注射(エコー下穿刺・注射)は痛いですか?‌

A

痛いところに注射をするなんて怖い」と不安になるお気持ちはよく分かります。確かに針を刺す際のチクリとした痛みはありますが、まつもと整形外科では超音波エコーを用いて安全かつ的確な場所に局所麻酔薬を併用して注射を行うため、処置中の痛みは最小限に抑えられます。注射をしている間の数秒間は針を刺すので痛みますが、注射の数分〜30分後には「あの激痛が嘘のようになくなった」と喜ばれる方がほとんどですので、ご安心ください。

Q

肩にできた石灰は、自然に消えてなくなるのですか?‌

A

はい、多くの場合、時間をかけて自然に身体に吸収されて消失します。ただし、吸収される過程(溶け出す時)に猛烈な炎症と痛みを伴うため、放置するのは非常に辛いです。また、すべての石灰が完全に消えるわけではなく、一部が硬いまま腱の中に残ってしまうこともあります。残った石灰が大きいと、腕を上げる時に骨にぶつかって痛む(インピンジメント症候群)原因となるため、適切な治療とリハビリが必要です。

Q

石灰が溜まらないように、食事でカルシウム(牛乳など)を控えた方がいいですか?

A

これは非常によくある誤解ですが、食事から摂取するカルシウムの量と、肩に石灰が沈着することには「全く関係がありません」。むしろ、カルシウム摂取量を減らすと骨粗しょう症のリスクが高まってしまいます。食事制限をする必要はありませんので、これまで通りバランスの良い食事でカルシウムをしっかり摂取してください。

Q

痛みが治まったら、すぐにゴルフやテニスなどの運動を再開してもいいですか?

A

痛みが引いた直後は、ステロイド注射の効果で炎症が抑えられているだけで、腱の組織そのものはまだダメージから完全に回復していません。運動再開は1週間ほど待った方がよいと思います。