腱鞘炎とは

骨と筋肉をつなぐ「腱」と腱の通り道であるトンネル上の「腱鞘」に摩擦が生じて炎症を起こし、痛みや腫れを生じさせる病気です。指や手首を繰り返し使うことで腱と腱鞘がこすれ合い、その摩擦で炎症を起こして痛みや腫れが生じます。
パソコンやスマートフォンの操作、家事・育児、スポーツなど、手を酷使する生活習慣が主な原因です。特に女性や妊娠・出産期、更年期の方に多く見られ、ホルモンバランスの変化も関係しているといわれます。
代表的な腱鞘炎には、手首の親指側が痛む「ドゥ・ケルバン病」、指が引っかかる「ばね指(弾発指)」があります。
症状
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手首や指の痛み・腫れ・熱感
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指の曲げ伸ばしがスムーズにできない
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動かすと「カクン」と引っかかる(ばね指)
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物を握るときに痛い
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親指側の手首を押すと強い痛み(ドゥ・ケルバン病)
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朝起きたときにこわばりが強い
など
原因
主な原因
◯手や指の酷使
パソコンやスマートフォンの操作、ギターやピアノなどの楽器演奏、テニスやゴルフなどスポーツ、指や手首に繰り返される動作による負担で発症します
◯筋力の低下
筋力が弱いと腱に負担がかかりやすく、腱鞘炎の原因になります。
◯加齢によるもの
加齢に伴って、腱鞘に柔軟性がなくなり、発症しやすくなります
◯ホルモン変化の影響
妊娠出産期や更年期などに発症しやすいことから、女性ホルモン「エストロゲン」の関与が指摘されています
◯他の疾患の関連
糖尿病、人工透析の方は発症しやすいです
(例)
・パソコン・スマホの長時間使用
・ピアノ・テニス・ゴルフなど手を酷使する動作
・赤ちゃんの抱っこや料理など、繰り返しの家事動作
・更年期・妊娠・出産によるホルモン変化
・糖尿病やリウマチなどの代謝・炎症性疾患
どのような人がなりやすいか
女性
◯妊娠・出産期、更年期に多く発症
◯女性の方が多くて男性の約3倍
◯女性ホルモン(エストロゲン)の変化が腱・腱鞘に影響
◯家事・育児など、手を酷使する機会が多い
仕事や生活スタイルの影響
◯パソコン業務、スマートフォン操作を長時間行う方
◯調理師、美容師、介護職など、手首や指を繰り返し使う仕事
◯楽器演奏者(ピアノ・ギター・バイオリンなど)
スポーツ選手
◯テニス・バドミントン・ゴルフなど、ラケットやクラブを握るスポーツ
◯野球やバレーボールなど、繰り返し手首を使う競技
その他のリスク要因
◯糖尿病、甲状腺疾患、関節リウマチのある方
◯更年期・妊娠中・授乳中のホルモン変動期
検査・診断
問診・視診
◯痛みの出る動作や生活習慣を確認
◯腫れ・熱感・変形の有無をチェック
触診テスト
◯親指側を押して痛む場合
→「ドゥ・ケルバン病」
◯指の付け根で引っかかる場合
→「ばね指」
画像検査
◯超音波(エコー)検査
炎症や腫れ、腱の動きをリアルタイムで確認
◯レントゲン検査
骨の変形や関節の異常がないかを確認
治療法
薬物療法

◯鎮痛薬(内服・外用):炎症や痛みを抑える
◯湿布・塗り薬:局所の熱感や腫れを軽減
注射療法
◯ステロイド注射:強い炎症がある場合、腱鞘内にステロイドを注入して炎症を鎮める
(比較的、即効性がある)
物理療法
◯温熱療法:血流を促進し、筋肉・腱の柔軟性を高める
◯電気治療:炎症の鎮静や筋緊張の緩和
安静・固定療法

◯サポーターやテーピングで患部を安静に保ち、炎症を落ち着かせる
※特に「ドゥ・ケルバン病」では、親指の動きを制限する装具を使用
リハビリテーション
ストレッチ・可動域改善

◯指や手首の柔軟性を高め、腱の滑りを良くする
◯親指や手首のストレッチで、腱鞘の圧迫を軽減
筋力トレーニング
◯手首や前腕(腕の筋肉)をバランス良く鍛える
◯握る・ひねる動作を支える筋肉の安定化
◯肩〜肘〜手首の「連動」を整える運動
動作・姿勢指導
◯パソコンやスマホ操作時の手の位置を見直す
◯家事・育児動作(抱っこ・料理)の工夫
◯手首を曲げすぎず、まっすぐ保つ姿勢習慣の指導
物理療法との併用
◯電気治療・温熱を併用し、リハビリ効果を高めます。
セルフトレーニング指導
◯自宅でできるストレッチ・マッサージ
◯再発を防ぐためのセルフケア習慣
◯仕事や育児の中でできる簡単なケア方法
セルフケア・予防
日常で気をつけたいこと
◯手を使いすぎないよう、こまめに休む
◯スマホやPCを長時間続けない(1時間ごとに休憩)
◯手を冷やさないよう保温を意識
◯ストレッチで柔軟性を保つ
予防のポイント
◯握る・ひねる・持ち上げる動作を分散
◯手首を反らす姿勢を避ける
◯肩こりや姿勢不良の改善(全身の連動を整える)
Q&A
腱鞘炎は自然に治りますか?
軽症であれば、安静とリハビリで改善することが多いです。ただし、使いすぎを続けると慢性化します。
注射は痛いですか?
針を刺す数秒間のみ痛みがありますが、効果は即効性があります。
手を使わないのが一番ですか?
完全に動かさないのではなく、「痛みのない範囲で使う」ことが重要です。適度なストレッチで血流を保ちます。
再発を防ぐにはどうすればいいですか?
手首や指の使い方、姿勢、筋バランスの改善がポイントです。リハビリで根本から見直しましょう。
手術が必要になることもありますか?
保存療法で改善しない重度のケースでは、腱鞘を切開して圧迫を解除する手術を行うこともあります。ただし、多くの場合は注射やリハビリで改善が見られます。















