頚椎椎間板ヘルニアとは

頚椎とは首の骨のことで、頚椎は7つの骨で構成されています。頚椎椎間板ヘルニアとは、首の骨(頚椎)と骨(頚椎)の間にある椎間板が加齢性変化や首への負担から変性し、椎間板内の髄核(ずいかく)が飛び出して神経を圧迫し、痛みや痺れを引き起こす病気です。
椎間板は、軟骨組織でクッションの役割があり、衝撃を吸収する役割を担っています。この椎間板の一部(髄核)が外に飛び出すことで、神経根や脊髄を圧迫し、首・肩・腕・手にかけての痛みやしびれ、筋力低下が起こります。
30〜50代に多く見られ、デスクワークやスマートフォン操作など、うつむいた姿勢を長く続ける生活習慣が関係しているといわれます。

椎間板の4つの役割
①支持性(体を支える柱)
②運動性(背骨が動く機能)
③クッション性(椎体の衝撃を吸収して和らげる)
④保護性(肋骨と組み合わさって内臓を守る)
症状
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首の痛み、肩こり、違和感
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首を動かしたときの強い痛み
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肩から肩、腕、手指にかけての痛みや痺れ
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握力の低下、指先の動かしにくさ
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頭痛、めまい、吐き気を伴うこともある
など
原因
頚椎椎間板ヘルニアは、椎間板の老化や姿勢の悪化による椎間板への負荷が主な原因です。
椎間板は骨と骨の間のクッションの役目を果たしていますが、加齢性変化で椎間板の水分が失われて弾力性がなくなると、外部からの力に弱くなります。この加齢性変化で老化した椎間板に負担がかかると、繊維輪が損傷されて、髄核が外に飛び出します。
主な要因
◯加齢による椎間板の変性(弾力・水分の減少)
◯長時間のデスクワークやスマホ操作による前かがみ姿勢による首への負担
◯運動不足による頚部・背部筋力の低下
◯外傷やスポーツによる首の椎間板への負担
◯遺伝的要因
検査・診断
身体診察
◯首の動きや姿勢の確認
◯感覚(しびれ)の範囲・筋力・反射テスト
画像検査
◯レントゲン検査
骨の配列の確認、骨棘(とげ)の有無、椎間板腔狭小化
◯MRI検査
椎間板の突出や神経の圧迫を詳細に評価
治療法
薬物療法

◯非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)
代表的な薬剤:ロキソニン、セレコキシブ、ボルタレン
痛みと炎症を和らげるための薬です。痛みがある部位に炎症が起きているため、痛みや炎症を引き起こす物質の産生を抑制し、痛みを軽減させます。
◯鎮痛薬
代表的な薬剤:カロナール
中枢神経に作用して、痛みを抑えます。副作用が少ないため小児や高齢者でも使用しやすい薬です。
◯神経障害性疼痛薬
代表的な薬剤:タリージェ、プレガバリン
神経由来の痛みや痺れにr特に効果を発揮します。
◯オピオイド系鎮痛薬
代表薬剤:トラムセット、トラマール、ワントラム、ツートラム
非麻薬性のオピオイド鎮痛薬でロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDS)などに効果がない場合に使用されます。脳内にあるオピオイド受容体という鎮痛に関わる受容体を刺激し、脳に痛みの信号が伝わりにくくする働きがあります。
◯選択的セロトニン・ノルアドレナリン再吸収阻害薬
代表薬剤:サインバルタ
セロトニンとノルアドレナリンの再取り込みを抑制することで下行性疼痛抑制系を賦活化し、鎮痛効果を高めます。
注射療法
◯神経根ブロック注射:強い痛みの原因となる神経根に薬剤を注入し、痛みや炎症を緩和
◯トリガーポイント注射:筋肉の緊張やコリを和らげる
※神経根ブロックはペインクリニックで行われています。
物理療法
◯温熱療法(ホットパック・遠赤外線):血流を改善し、筋肉の緊張を緩和
◯電気治療(低周波・干渉波):痛みの伝達をブロック
◯頚椎牽引療法:首をやさしく引っ張り、神経の圧迫を軽減
リハビリテーション
痛みを和らげるだけでなく、首や肩のバランスを整え、再発を防ぐためのリハビリを行います。
手術療法
保存療法で改善しない場合や、しびれ・筋力低下が進行する場合は、神経の圧迫を取り除く除圧術や椎間板摘出術が検討されます。
リハビリテーション
姿勢改善・動作指導
首のヘルニアは、姿勢の悪さから起こるケースが多いため、正しい姿勢の習得が基本です。
◯デスクワーク・スマホ使用時の姿勢指導
◯枕の高さ・寝姿勢の調整
◯肩甲骨の動かし方や体幹バランスの再教育
「頭が体の真上にある姿勢」を意識することが、再発予防の第一歩です。
筋力トレーニング
首や肩を支える筋肉を鍛えることで、椎間板への負担を減らします。
◯頚部深層筋(深頚屈筋)トレーニング
◯肩甲骨まわりの筋力強化(僧帽筋・菱形筋など)
◯体幹安定トレーニング
インナーマッスルを鍛えることで、首を安定させ、痛みの再発を防ぎます。
ストレッチ・可動域改善
硬くなった首・肩・胸まわりの筋肉をやさしく伸ばし、血流を促進します。
◯僧帽筋・胸鎖乳突筋のストレッチ
◯肩甲骨の動きを広げるエクササイズ
◯首の可動域改善運動(痛みのない範囲で)
リラックスした呼吸とともに行うことで、神経圧迫の軽減にもつながります。
セルフトレーニング指導
ご自宅で継続できるように、症状に合わせた運動やストレッチ方法を指導します。
◯壁を使った姿勢矯正
◯タオルやチューブを使った軽負荷トレーニング
◯スマホ・PC使用時の休憩タイミングの工夫
「自分で守れる首」をつくることがリハビリの最終目標です。
セルフケア・予防
日常生活の中で意識するポイントが、再発防止につながります。
◯長時間同じ姿勢を避ける(1時間ごとに軽いストレッチ)
◯デスクやモニターの高さを調整
◯枕の高さを低めにし、首の自然なカーブを保つ
◯適度な運動で肩甲骨まわりを動かす
姿勢を整えることで、首の負担は大きく減らせます。
Q&A
頚椎椎間板ヘルニアは自然に治りますか?
軽症であれば、飛び出した椎間板が徐々に吸収され、自然に軽快することがあります。多くの方は保存療法で改善します。
手術が必要になるのはどんなときですか?
まずは保存的加療で内服薬やリハビリで治療を行なっていきます。保存的加療でも日常生活に支障が出るような痛きや痺れが3ヶ月ほど続く場合には手術が検討されます。
仕事や運動は続けても大丈夫ですか?
痛みが強い時期は安静が必要ですが、痛みが強くない婆にはリハビリで動作を整えながら再開できます。
再発しやすい病気ですか?
姿勢や筋力バランスを整えれば再発リスクは減らせます。正しい姿勢を習慣にすることが大切です。
早期に痛みを治すにはどうしたらよいでしょうか?
まずは安静が第一です。頚椎カラーを装着して、投薬調整、リハビリが必要になります。
日常生活で気をつけることはありますか?
首に負担をかけない生活を送ることが大切です。ラグビーや柔道など首に負担のかかるスポーツ・パソコンを使用した長時間のデスクワーク・長時間のスマートフォンの使用は避けることが望ましいです。















