まつもと整形外科は福岡県久留米市安武町にある、整形外科・リハビリテーション科・スポーツ整形外科のクリニックです!!
こんにちは
久留米市安武町にある整形外科クリニック まつもと整形外科 院長 松本淳志です
目次
【田植えで腰が痛くなった方へ】農作業特有の腰痛と整形外科リハビリのすすめ
春から初夏にかけて、田植えの季節がやってきました。日本の農業に欠かせない大切な田植えですが、毎年この時期になると「田植えのあとから腰が痛くて…」という相談が増えてきます。
田植えは、前かがみや中腰といった腰に負担がかかる姿勢が長時間続くため、腰痛を引き起こしやすい作業のひとつです。今回は、田植えによる腰痛の原因と対策、そして整形外科でのリハビリや再発予防のポイントについて詳しくご紹介いたします。
田植えと腰痛の関係
田植え作業では、前かがみや中腰といった姿勢を長時間保ちながら、手作業を繰り返す必要があります。特に、ぬかるんだ水田の中での作業は足場が不安定で、バランスをとろうと腰や背中に余分な力が入るため、腰部への負荷は想像以上に大きくなります。
前かがみ姿勢の負担
人間の腰は、本来まっすぐ立った状態で最も負担が少ない構造をしています。しかし田植え作業では、苗を植えるために何時間も腰を曲げた姿勢を続けることになります。
このとき、腰椎(ようつい)と呼ばれる背骨の下部には、上半身の体重の約2~3倍の負荷がかかると言われています。
また、この前かがみの姿勢によって背中の筋肉が常に緊張し、血流が悪くなって疲労が蓄積しやすくなることから、痛みや炎症の原因にもなります。
中腰・ひねり動作による影響
苗を一列に並べて植える際には、左右に体をひねったり、前後に小さく移動したりする動作が繰り返されます。このときに中腰での体幹の回旋動作(ひねり)が加わると、腰部の筋肉や関節、靭帯にねじれの力がかかり、筋膜性腰痛や椎間関節性腰痛を引き起こすリスクが高まります。
特に、体幹の筋力が弱っている方や、加齢によって関節が硬くなっている方は、これらの動作が痛みや炎症につながりやすい状態です。
体幹の筋力低下・柔軟性不足も要因に
農作業に慣れている方であっても、年齢とともに体幹の筋力は徐々に低下し、股関節や脊椎の柔軟性も失われていきます。
こうした身体の変化によって、以前と同じ作業をしていても腰にかかる負担は増し、痛みとして現れるケースが多く見られます。
季節の変わり目による冷えや湿気の影響
田植えの時期である5〜6月は、朝晩の気温差が大きく、湿気の多い季節です。こうした気候条件も、腰まわりの筋肉や関節のこわばりを招きやすく、痛みを助長する要因となります。
田植えは地域にとって欠かせない大切な仕事である一方、身体への負担はプロの肉体労働に匹敵する重労働です。年齢や体力に関係なく、どなたでも腰痛を起こす可能性があるため、「農作業=腰を痛めやすい」という自覚を持ち、事前の準備やケアがとても重要です。
要注意の症状とは?
田植え後、次のような症状が出た場合には、整形外科の受診をおすすめします。
- 腰を動かすと痛みが走る
- 腰からお尻、足にかけてしびれがある
- 朝、腰が固まったように動かしづらい
- 安静にしていても痛みが続く
- 過去にぎっくり腰を経験している
「そのうち治るだろう」と放置すると、坐骨神経痛や椎間板ヘルニアなどの疾患に発展する可能性もあります。早期の診断が、長引かせないための第一歩です。

整形外科でできる検査
整形外科では、腰痛の原因を明確にするために、以下のような検査が行われます。
問診・触診
痛みの程度や動かしたときの反応、生活習慣などを細かく確認します。
レントゲン検査(X線)
骨の変形や椎間の狭まり、すべり症などの有無を確認します。
超音波検査(エコー)
筋肉や靭帯の状態をリアルタイムで確認できます。
これらの検査をもとに、腰痛の原因を正確に把握し、最適な治療法とリハビリ計画が立てられます。
整形外科でのリハビリの重要性
田植えによる腰痛の多くは、筋膜や筋肉の硬直、田植え特有の姿勢の問題、筋肉や関節の柔軟性の不足により起こります。整形外科では、国家資格を持つ理学療法士が患者さま一人ひとりに合わせて対応し、再発を防ぐための根本的なアプローチを行います。
ストレッチ指導
硬くなった腰まわり・股関節・太ももの筋肉を、安全かつ効果的に伸ばす方法を指導します。正しいフォームで行うことで、日常生活でも再現できます。
「人の手」を使った手技による施術
硬直した筋肉や筋膜を徒手的に「人の手」を使っても揉みほぐします。
姿勢・動作指導
田植えや畑仕事での姿勢を見直し、「腰を守る動き方」を実践的に学びます。
日常生活動作の改善
家庭内での荷物の持ち上げ方、洗濯や掃除の姿勢など、腰への負担を減らす生活術を具体的にアドバイスします。

ご自宅でできる予防ストレッチ(キャットアンドドッグ)
- 四つ這いになります
- 息を吸いながら背中をそらせてお尻を突き出す
- 息を吐きながら背中を丸めてお腹を引き込む
- これを5〜10回繰り返します
腰の柔軟性を高め、筋肉の緊張を緩和する効果があります。作業前後の習慣として取り入れてみましょう。
具体的な運動の方法は以下のブログをチェック!!
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再発予防のための生活習慣アドバイス
田植えによる腰痛が一度治まっても、再発のリスクは少なくありません。特に農作業のように繰り返し同じ動作を行う仕事では、日々の姿勢・筋力・柔軟性の状態によって再び痛みが出ることがあります。
そのため、整形外科での治療と並行して、ご自宅での予防・セルフケア習慣がとても重要になります。
作業前後のウォームアップとストレッチを習慣化
朝の農作業前、すぐに動き出すと筋肉や関節がまだ固く、腰を痛めやすい状態です。
5分程度で良いので、軽く体を動かして筋肉を温めるウォーミングアップを取り入れましょう。たとえば:
- 腰を左右にゆっくりひねる
- 股関節をぐるぐる回す
- その場足踏みや軽いスクワット
といった方法があります。また、作業後は疲労がたまりやすい太もも裏(ハムストリング)や腰回りのストレッチを行うことで、血流を促進し、翌日の痛みを軽減できます。
特に田植えで酷使した筋肉をその日のうちにケアすることが、腰痛の慢性化を防ぐカギです。
こまめな休憩と「腰をいたわる時間」の確保
長時間同じ姿勢で作業をしていると、腰への負担が蓄積します。
「あと少し…」と無理をせず、30〜40分に一度は意識的に小休憩を入れることをおすすめします。
その際に以下のような簡単なリセット動作を取り入れてみてください:
- 背伸びをして腰を反らせる
- 立ち上がって腰に手を当てて軽く後屈する
- 地面に座って軽く体を左右にひねる
短時間でも、同じ姿勢を続けない工夫が腰の健康を守ります。
日常的な運動習慣で“動ける身体”を維持
農繁期以外の時期に筋力や柔軟性をキープしておくことが、再発防止の鍵です。とくに体幹や下半身の筋力があると、作業中の姿勢が安定しやすく、腰の負担が軽くなります。
継続しやすい運動例:
- ウォーキング(毎日15〜30分)→下肢の筋力強化+血流促進
- ラジオ体操→全身の柔軟性アップ+良い姿勢の習慣化
- ドローイン(お腹をへこませる腹筋運動)→体幹筋をやさしく鍛える運動で腰を守る
いきなりハードな運動をする必要はありません。「少しずつでも毎日続けること」が大切です。
寝具・椅子・作業道具など腰にやさしい環境づくり
腰痛の再発には、作業中だけでなく休息中の姿勢も大きく関わります。
寝具
柔らかすぎる布団やマットレスは腰が沈みやすく、朝の腰痛につながることがあります。
→やや硬めで腰が沈みにくい寝具がおすすめです。
椅子・座布団
長時間の座位作業や休憩時、骨盤が後傾するような椅子やクッションは腰痛の原因になります。
→骨盤が立つ姿勢を保てる椅子や、低反発の腰当てなどを使うと良いでしょう。
作業道具
長靴や腰ベルト、補助具なども「腰にやさしい設計」の製品を選ぶことで作業時の負担軽減につながります。
→腰ベルトは、正しく装着することで腰部の安定を保ち、再発予防に効果的です。
心がけ次第で腰痛は予防できる
「腰痛になったら治す」のではなく、「腰を痛めないために備える」という意識が、これからの農作業を元気に続けるために欠かせません。
些細な習慣の積み重ねが、将来の健康を守ります。整形外科での診断・リハビリと並行して、自分自身で日常の中に“腰をいたわる行動”を組み込むことが、再発を防ぐ最大のポイントです。
まとめ:腰に違和感を覚えたら、早めの受診を
田植え作業は日本の穀物を作るうえで大切な工程ですが、身体への負担も大きい作業です。
「ちょっと痛むけど我慢しよう」と放置せず、腰痛を感じたら早めに整形外科へ相談しましょう。
正確な検査と診断、そして理学療法士によるリハビリを受けることで、今後も元気に農作業を続けていく身体づくりが可能になります。
当院には理学療法士・作業療法士が計26名在籍しています。患者様一人ひとりに合った専門性の高いリハビリメニューを提供させていただきます。
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【参考文献】
・理学療法ハンドブック,シリーズ3腰痛 https://www.japanpt.or.jp/about_pt/asset/pdf/handbook03_whole_compressed.pdf