福岡県久留米市安武町にある「まつもと整形外科」
こんにちは !
久留米市安武町にある整形外科クリニック まつもと整形外科 院長 松本淳志です
「大事な場面で手に汗をかいてしまう」
「書類が濡れてしまうほど手のひらが汗ばんでしまう」
そんなお悩みを抱えている方はいらっしゃいませんか?それは、手掌多汗症(しゅしょうたかんしょう)という病気かもしれません。
手掌多汗症は、単なる「汗っかき」とは異なり、日常生活に支障をきたすほどの汗が手のひらに多量に出る状態です。実は、医学的にもきちんと診断され、治療が可能な疾患なのです。
今回は、手掌多汗症の症状・原因・診断方法をはじめ、近年注目されている外用薬「アポハイドローション」についても詳しく解説します。
手掌多汗症とは、特に原因となる病気がないにもかかわらず、手のひらに過剰な発汗がみられる状態を指します。緊張やストレスだけでなく、安静にしているときにも突然手汗が噴き出すこともあり、日常生活に大きな影響を与えることがあります。
たとえば以下のような場面で困る方が多いです
・名刺交換や握手の気が引ける
・スマートフォンの操作や書類の取り扱いがしにくい
・ペンが滑って字が書きにくい
・ハイタッチや手をつなぐことが億劫になる
これらの悩みが長期間にわたって続くことで、対人関係に影響が出たり、精神的なストレスを抱えてしまう方も少なくありません。
なぜ手のひらに汗をかくのか?〜原因とメカニズム〜
発汗はもともと体温調節のために行われる生理的な反応です。しかし、手掌多汗症の場合は体温とは関係なく、交感神経が過剰に興奮することで汗腺が刺激され、大量の汗が出てしまいます。
このように、自律神経の乱れや過敏な交感神経の働きが主な要因と考えられています。また、思春期に発症するケースが多く、家族内で同様の症状を持つ人がいる場合もあり、遺伝的な関与も示唆されています。
日本皮膚科学会のガイドラインでは、以下の6項目のうち2項目以上が当てはまれば手掌多汗症と診断されます。
・左右対称性に発汗がみられること
・睡眠中は発汗が止まっていること
・1週間に1回以上多汗のエピソードがあること
・家族歴がみられること
・それらによって日常生活に支障をきたすこと
これらの項目をもとに医師が問診と診察を行い、他の病気による発汗(甲状腺機能亢進症など)を除外して診断されます。
手掌多汗症の治療には、いくつかの選択肢があります。今回は、新薬のご紹介をします。
アポハイドローションとは?~新しい外用治療薬~
● アポハイドローションの特徴
「アポハイドローション20%」は、2023年に日本で承認された手掌多汗症に対する国内初の保険適用外用薬です。主成分はグリコピロニウムトシル酸塩という抗コリン作用を持つ成分で、汗腺に直接作用して発汗を抑制します。
アポハイドローションの特長は以下の通りです:
・毎日1回、夜に手のひらに塗るだけ
・翌日から発汗の減少を実感する人も
・手術や注射に比べてハードルが低い
● 使い方と注意点
アポハイドローションは、入浴後や就寝前に乾いた清潔な手のひらに薄く塗布し、完全に乾かしてから寝るのが推奨されています。朝になると手を洗い流すことで、副作用のリスクも低減できます。
副作用としては、一部の方で皮膚の乾燥・かゆみ・赤みが出ることがあります。異常を感じた場合は、すぐに医師に相談してください。
手掌多汗症は、決して珍しい病気ではありません。しかし、多くの方が「こんなことで病院に行っていいのか」と悩み、長年放置してしまう傾向にあります。
現在はアポハイドローションのように、手軽で継続しやすい治療法も登場し、生活の質(QOL)を大きく改善できるようになりました。
もし、あなたやご家族が手の汗で困っている場合は、ぜひ一度整形外科・内科の医師に相談してみてください。早期の対応が、将来的なストレスや対人関係の不安を軽減する第一歩になります。
手掌多汗症は、日常生活に大きな支障をきたす病気です。最近では、アポハイドローションという新たな治療薬が登場したことで、より簡単に治療が始められるようになりました。
「手汗は我慢するしかない」と思い込まず、正しい知識と治療法を知ることで、快適な毎日を取り戻すことができます。少しの勇気が、未来を大きく変える一歩となるでしょう。まつもと整形外科では手掌多汗症に対するアポハイドローションの処方を行っていますので、お気軽にご相談下さい。
【参考文献】
・日本皮膚科学会のガイドライン,手掌多汗症 https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/takansho2023.pdf