ぎっくり腰
症状・病態
急に起こった強い腰の痛み(腰痛)を「ぎっくり腰」と呼び、正式な病名ではありません。重たい物を持ち持ち上げたり、腰を捻ったり、仕事で腰に負担をかけた際に起こるが多いですが、何もしないでも起きることもあります。
原因
筋肉や椎間板、椎間関節、仙腸関節に炎症が起きていると考えられていますが、画像検査で写らないこともあり、実際には完全には原因が解明されていません。
検査
レントゲンで骨、椎間関節、椎間板の評価を行います。
治療
局所安静のために簡易式コルセットを装着します。また、消炎鎮痛薬の内服や外用薬(湿布)で痛みと炎症を抑えます。痛みが強い場合は、1~2週間継続して内服することで効果が表れることもあります。腰へのトリガーポイント注射も効果的です。
物理療法として電気治療(低周波、高周波)で筋肉の炎症を抑えます。激痛の場合は少し安静にして、腰痛が慢性化してくるようであればリハビリを行っていくことで症状を緩和させます。
高齢者の腰痛
症状
起き上がるときに激しい腰の痛みが出ます。
原因
加齢に伴う腰の変形で起きることもありますが、最も注意が必要なのは腰の圧迫骨折です。腰の圧迫骨折は、転んで尻もちをついて起こすことが多いですが、骨粗しょう症がある場合には骨が弱いために転んだりしなくても突然、骨折を生じることがあります。
治療
コルセットを採型して、約3ヶ月間装着が必要です。また、骨粗しょう症がある場合には骨粗しょう症の治療も行っていきます。また、筋力が落ちて寝たきりにならないようリハビリを行っていきます。
代表的疾患
胸椎圧迫骨折、腰椎圧迫骨折、変形性腰椎症
腰痛症
症状
- 体動時の腰や背中の痛み
- 高齢者で転倒後に腰痛がある場合は、腰椎圧迫骨折を疑います。
- 高齢者で、起き上がりに腰痛が強い場合は転倒などがない場合でも「いつのまにか骨折」の可能性があります。
- 腰部から臀部の痛みや痺れ、下肢の痛みや痺れは腰椎椎間板ヘルニアや腰部脊柱管狭窄症の可能性があります。
原因
腰痛や臀部痛は以下の原因で起こります。
- 筋肉の疲労からくるもの。
- 椎間板や椎間関節の炎症からくるもの。
- 骨粗鬆症による胸椎圧迫骨折、腰椎圧迫骨折(転倒による骨折、いつのまにか骨折)
- 加齢に伴う椎間板の変性や椎間関節の変形
- 尿管結石や尿路感染症などの泌尿器疾患
- 動脈瘤や動脈解離なども血管の疾患
治療
保存的治療(手術をしない治療)
当院はできるだけ手術をしない、侵襲性のない方法で治療を提案します。
鎮痛薬や外用薬を用いて治療を行います。
鎮痛薬は種類によって性能や特性が違ってきます。この薬の使い分けは経験によって大きな差が出てきます。当院では一人ひとりに合ったオーダーメイドでの治療を行っていきます。
リハビリテーション
当院は九州地区最大規模のリハビリテーション施設です。症状に応じて、物理療法(電気治療、牽引、ウォーターベット)だけではなく、「人の手」による施術でアプローチして腰痛の治療を行っていきます。
腰椎分離症
腰椎分離症は、腰椎の骨が正常な位置からずれることによって引き起こされる痛みや不快感が特徴の疾患です。
原因
遺伝的要素
骨の構造が遺伝的に弱い場合、腰椎分離症が発症しやすくなります。
成長期の急激な成長
成長期に腰椎にかかる負担が増加すると、腰椎分離症になりやすくなります。
スポーツや運動
激しいスポーツや運動、特に腰にストレスがかかるものは、腰椎分離症を引き起こす可能性があります。
事故や怪我
腰椎を損傷する事故や怪我は、腰椎分離症の直接的な原因となることがあります。
症状
腰痛
特に立ち上がる際や長時間の座り姿勢後に強く感じることが多い。
坐骨神経症
足裏やふくらはぎに痛みやしびれを感じる場合がある。
活動制限
激しい運動や重いものを持ち上げる際に痛みを伴うため、活動に制限が生じる。
可動域の制限
腰の曲げ伸ばし動作が制限され、柔軟性が低下する。
症状は個人差がありますので、適切な治療法を選択するためには専門医の診断が重要です。早期発見が望ましいため、痛みや違和感がある場合は早めに医療機関を受診することがおすすめです。
リハビリ
適切なリハビリを行うことにより、症状の改善を目指すことができます。腰椎分離症のリハビリは、症状に応じて段階的に進められます。最初は、痛みを抑えるための治療が行われることが一般的です。
筋力トレーニング
腰椎周りの筋肉を鍛えることで、腰椎の安定性が向上し、再発を防ぐことができます。
ストレッチ
腰椎周りの筋肉が硬くなることを防ぎ、血流を改善します。
姿勢の矯正
正しい姿勢を維持することで、腰への負担を減らすことができます。
体幹トレーニング
体幹の筋力を増やし、腰椎の安定に寄与します。
リハビリの際には、無理をせず、自分に合った方法で行うことが大切です。
また、リハビリの効果を最大限に引き出すために、以下のポイントにも注意しましょう。
・定期的な通院
専門家の指導を受けながらリハビリを行うことで、適切な方法でトレーニングができます。
・継続
効果を実感できるまでには、継続的な努力が必要です。焦らず無理せず、長期的に続けられるペースで進めましょう。
腰椎分離症のリハビリは、症状の改善だけでなく、再発を防ぐためにも重要です。適切なリハビリを行い、健康な日常生活を取り戻しましょう。
腰椎すべり症
腰椎すべり症とは
腰椎すべり症は、腰椎の椎間板や関節が変性し、腰椎の一部が滑り出す(ズレる)病気です。この病気は、加齢や長期間に渡る腰への負担で、椎間板の変性や椎間関節の変性が起きて、腰や足の痛みなどの症状を引き起こします。
腰椎すべり症は、症状や程度によって保存療法や手術が選択されます。保存療法では、投内服薬調整やリハビリが実施されます。一方、手術が必要な場合は、腰椎の固定や神経の圧迫を取り除く手術が行われることもあります。
診断方法
腰椎すべり症の診断は、整形外科専門医によって行われます。診察所見やレントゲン所見で診断が付きます。場合によっては、腰椎MRIによる画像検査が行われます。
リハビリ
腰椎すべり症の治療においてリハビリは非常に重要です。リハビリでは、筋力トレーニングやストレッチを通じて、腰や下肢の筋力や柔軟性を向上させることを目指します。また、適切な運動習慣や生活習慣の改善も、腰椎すべり症のリハビリの一環となります。医師や理学療法士と相談しながら、一人ひとりに合ったリハビリプログラムを実施することが大切です。
日常生活での注意点
日常生活での注意点としては、正しい姿勢を保つことや、適度な運動を心掛けることが重要です。また、重いものを持つ際は、腰に負担をかけないように膝を曲げて持ち上げるようにしましょう。さらに、長時間の立ち仕事や座り仕事が続く場合は、適度に休憩を取り、ストレッチや筋力トレーニングを行うことが大切です。
著者
執筆者 松本 淳志
まつもと整形外科 院長
<経歴>
福岡大学医学部卒
済生会福岡総合病院
九州大学病院
九州医療センター
福岡赤十字病院
<保有資格>
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本フットケア学会認定フットケア指導士
<所属学会>
日本整形外科学会
日本感染症学会
日本フットケア・足病学会