肩の痛み
誘因なく突然発症する肩の激痛や加齢や変性による慢性的な肩の痛みがあります。痛みが強くなると、腕を挙げれなくなったり、夜間に痛みが出て寝れなくなることもあります。
原因
加齢に伴い肩を構成する筋肉(腱板)が変性したり、使い過ぎによって筋肉(腱板)がダメージを受けている可能性があります。また、筋肉(腱板)付着部に炎症が起きて石灰が沈着することもあります。
治療
レントゲン撮影や超音波エコー、MRIで原因を特定します。
治療の目標は痛みを取り除き、肩の動きを改善させることにあります。
ステロイドやヒアルロン酸注射で炎症を取り除いたり、リハビリテーションで動きや痛みを改善させます。また、リハビリを行うことで再発を予防していきます。
代表的疾患
四十肩、五十肩、肩関節周囲炎、石灰沈着性腱板炎、肩板損傷、肩板断裂
肩こり
肩こりは現代社会において、子どもからご高齢の方まで多くの人々が悩む問題です。日常生活の中で、デスクワークやスマートフォン、テレビゲームの使用が増加し、長時間同じ姿勢を続けることが原因となります。さらに、ストレスや疲労、運動不足も肩こりの原因となることがあります。
肩こりは首~肩にかけての筋肉や筋膜の張りのことを肩こりと呼んでいます。筋肉や筋膜が硬くなると、血管を圧迫するために筋肉への血行が不良となります。筋肉への血行が不良となると、筋肉に十分な酸素が供給されずに、筋肉に老廃物が増々筋肉は硬くなります。
症状
- 肩の凝りや張り、痛み
- 首の凝りや張り、痛み
- 頭痛
- 腕や手のしびれ
原因
- 長時間のデスクワーク
- スマートフォンの長時間使用
- 猫背や姿勢の悪さ
- ストレスや疲労
- 運動不足
- 身体が冷えている
これらの原因が重なることで、肩周りの筋肉や筋膜が凝り固まり、血行が悪化し、痛みや違和感が引き起こされます。また、肩こりは首の痛みや頭痛、目の疲れなど、他の身体的不調も招くことが多いです。
検査
問診
問診では、肩こりの程度や症状、痛みの場所や痛みが出るタイミング、仕事や生活習慣などを確認します。
診察(触診)
診察の際に触診で、筋肉の緊張状態を確認します。触診によって硬くなった筋肉や筋膜もコリを感じることができるため、問題のある箇所を特定することができます。
関節可動域検査
関節可動域検査では、首や肩の動きを確認します。
レントゲン
首の形状を確認します。頚椎の変形や変性、ストレイトネックなど異常などを確認することができます。神経症状がひどい場合にはMRI検査を追加で行うこともあります。(MRI検査は当院にはないため総合病院に検査を依頼します)。
ただし、肩こりの原因には生活習慣やストレスが大きく関与しているため、自分自身で生活習慣を見直し、リラックスできる時間を作ることも重要です。日頃からストレッチや適度な運動を取り入れ、肩こりの予防に努めていきましょう。
治療
- 投薬:鎮痛薬や筋弛緩薬を服用したり、外用薬(湿布)を使用します。
- リハビリ:肩こりはリハビリが最も効果的です。「人の手」を使った徒手的な施術治療で筋肉や筋膜の緊張を直接取り除きます。 まず、肩こりのリハビリの目的は、筋肉の柔軟性を高め、血行を促進することです。これにより、痛みや緊張が緩和されます。
- ストレッチ:首や肩の周りの筋肉を伸ばすことで、凝り固まった筋肉をほぐしましょう。また、背中や胸の筋肉もストレッチすることが効果的です。
- セルフマッサージ: テニスボールや専用のリハビリ用具を使って、肩や首周りの筋肉をマッサージしましょう。力加減は自分に合ったもので行ってください
- リラクゼーション: 深呼吸や瞑想、ヨガなどで心身ともにリラックスしましょう。精神的なストレスも肩こりの原因となることがあります。
- 適度な運動: 上半身の筋力トレーニングや柔軟性を高める運動、有酸素運動などを継続的に行うことで、肩こりの予防や改善が期待できます。過度の筋トレは、逆に筋肉の硬直を増悪させますので気を付けてください。
肩こりのリハビリを行う際のポイントは、無理せず継続的に行うことです。無理に筋肉を伸ばそうとすると、逆に筋肉が緊張し、効果が得られません。また、継続して行うことで、筋肉の柔軟性が持続して向上し、肩こりの予防や改善が期待できます。 最後に、肩こりのリハビリだけでなく、日常生活の習慣も見直してみましょう。適切な姿勢で座ることや、1時間に1度は立ち上がって歩くなどの工夫が、肩こりの予防につながります。 肩こりリハビリは、簡単な方法から始めて、自分に合った方法を見つけてみてください。
Q&A
- 肩こりの原因は何ですか?
- 肩こりの主な原因は、筋肉や筋膜の緊張や張りが強くなり、首から肩にかけて痛みを生じます。長時間のデスクワークや同じ姿勢の維持が続くと、筋肉が緊張し、血行が悪くなるので肩こりの原因となります。スマートフォンやテレビゲームの長時間の使用にも注意をしましょう。
- 肩こりの予防方法を教えてください。
- 肩こりの予防には、以下の方法が有効です。
- 正しい姿勢を維持する
- 適度なストレッチやリラックスを行う
- 適切な枕を選ぶ
- ストレスをためない
- 適度な運動を行う
- 肩こりに効くストレッチ方法はありますか?
- 肩こりに効くストレッチ方法として、次のようなものがあります。
- 首を前後左右にゆっくり動かす
- 耳たぶを肩に近づけるように首を傾ける
- 肩を前後に回す
- 肩こりに良い食事は何ですか?
- 肩こりに良いとされる食事は、以下のようなものがあります。
- カリウムが豊富なバナナやアボカド
- マグネシウムが豊富なほうれん草やアーモンド
- ビタミンB群が豊富な玄米やサンマ
- プロテインが豊富な鶏肉や豆腐
これらの食材をバランスよく摂取し、血行を促進することが大切です。
- リハビリで肩こりを改善できますか?
- はい、リハビリは徒手的に手を使った施術になるため筋肉の緊張をほぐし、血行を促す効果があります。定期的なリハビリで肩こりの改善が期待できますが、適度な運動やストレッチも行ってください。
四十肩・五十肩
症状
肩を動かすと痛みが出て、肩が上がらなくなります。悪化すると、安静時にも痛みがあり、さらに悪化すると夜間痛といって寝ているときにも肩がうずいて寝れなくなります。
原因
肩関節や関節周辺の炎症や癒着により、肩に痛みが生じます。肩関節内に炎症が起きて癒着するために、肩がスムーズに動かなくなり、肩関節が固まって拘縮します。
40歳~60歳に多いために、総称して四十肩・五十肩と呼ばれています。特にきっかけがなく、肩の痛みや可動域制限が出現し、1週間以上続くときは、四十肩・五十肩の可能性があります。
治療
治療の目標は痛みと動きの改善になります。消炎鎮痛薬を内服したり、肩関節にヒアルロン酸やステロイド薬の注射を行って、炎症や癒着を取って関節の動きを改善させます。また、リハビリを行って拘縮した肩関節の可動域を改善させます。肩の痛みは、完治するのに非常に時間がかかります。焦らず、根気強く通院して治療を行っていく必要があります。
肩関節脱臼
肩関節脱臼の原因
肩関節脱臼は、外部からの強い力が加わることによって肩関節が脱臼する状態です。スポーツや交通事故などで起こることが多く、特にコンタクト競技や柔道などでよく見られます。肩関節は可動範囲が広いため、脱臼しやすい関節でもあります。
外的要因による外部からの強い力が加わることによる脱臼であれば、これを未然に完全に防ぐことは難しくなります。しかし、肩の筋力不足や関節の緩み、過去に肩を脱臼した経験がある方は元々、脱臼しやすい状態にあります。
症状
症状としては、肩関節の痛みや腫れがあり、肩関節や腕を動かす際に強い痛みが生じ、動かすことができなくなります。また、肩の形が変形して、外観的も脱臼がわかる場合もあります。脱臼が疑われる場合、すぐに医療機関で診断を受けることが重要です。
脱臼整復
整形外科専門医による診察、レントゲンで診断をつけ、徒手整復を行います。
リハビリ
肩関節脱臼後のリハビリは、関節を安定させ、再発防止のために行われます。まずは、関節の炎症や痛みを抑えるために安静にし、適切な期間固定(2〜4週間)します。リハビリでは、筋力トレーニングや関節可動域訓練が行われます。筋力トレーニングでは、特に肩周囲の筋肉を鍛えることで関節の安定性を高めることが重要です。また、関節可動域訓練では、肩の動きを改善し、日常生活やスポーツへの復帰を目指します。リハビリ期間中は、症状に合わせて装具を使用することもあります。また、リハビリの効果を最大限に発揮するため、専門的なプログラムを組んで、治療を進めていきます。
日常生活でのリハビリの取り入れ方
日常生活でのリハビリは、状態や症状に応じて適切な方法で行うことが重要です。医師や理学療法士と相談しながら適切なリハビリ方法を選択しましょう。代表的なリハビリ方法として、筋力トレーニングや関節の可動域を維持・改善するストレッチが挙げられます。これらは、生活の中で簡単に取り入れることができ、効果的な回復を促します。
また、姿勢や動作の改善も大切です。日常生活の中で意識して正しい姿勢を保ち、無理のない範囲で動作を行うことで、筋肉や関節に適切な負荷をかけることができます。
三角巾固定や装具の役割
三角巾固定や装具は、関節や筋肉に安定性を与え、腫脹や炎症、痛みの軽減や再発防止に効果的です。
装具は脱臼を繰り返す場合に使用することがあります。
肩関節脱臼再発防止
肩関節脱臼再発防止には、適切なリハビリが欠かせません。重要なポイントは、筋力の強化と関節の安定性向上です。
具体的には、筋肉の柔軟性や可動域を高めるストレッチや、周囲の筋肉を鍛える筋力トレーニングが効果的です。また、ライフスタイルの見直しやスポーツの際の正しいフォームの習得にも役立ちます。
肩鎖関節脱臼
肩鎖関節脱臼の原因と病態
肩鎖関節脱臼は、肩と鎖骨を繋ぐ関節に負担がかかり、靭帯が損傷して肩峰と鎖骨が外れる疾患であり、スポーツや日常生活で、腕や肩に強い力が加わった時に発生する場合が多いです。主な原因は、転倒して肩に直接的な衝撃を受ける際に生じることが多いです。病態としては、関節周囲の靭帯や筋肉、腱が損傷し、関節が不安定になることで脱臼が引き起こされます。この関節損傷により痛みや可動制限が生じ、日常生活動作やスポーツへの復帰が困難になることがあります。また、肩鎖関節脱臼の種類(分類)は、靭帯の損傷程度よって分類されます。肩鎖関節脱臼は、診察所見やレントゲンの画像検査で診断します。適切な治療やリハビリテーションが必要となり、重症度や状態によっては手術が適応となることもあります。
肩鎖関節脱臼の症状
肩鎖関節脱臼の症状は、急性期には肩周囲の痛みや腫れ、可動制限が生じます。関節の部分に変形(段差)が見られることもあり、場合によっては皮下に鎖骨や烏口骨の突起が触れられることがあります。慢性期では痛みが軽減されてきます。
リハビリ
肩鎖関節脱臼のリハビリテーションは、急性期・亜急性期・慢性期の各ステージに分けて進められます。急性期では、まず安静にし、患部の腫れや痛みを抑えることが重要です。痛みや腫れが落ち着いたら、筋肉の柔軟性や可動域を改善するための運動療法を開始します。亜急性期では、肩関節の機能回復を目指し、筋力トレーニングや関節可動域訓練を行います。慢性期では、スポーツや日常生活への復帰に向け、肩関節の安定化や筋力バランスを整え るトレーニングが行われます。適切なリハビリテーションが行われることで、関節の安定性が向上し、肩周囲の筋肉が強化されます。これにより、再脱臼リスクの低減や肩関節の機能の回復が期待できる。リハビリテーションは個々の症状や状態に応じて、専門的な指導や適切な治療法の選択が大切です。
効果的なリハビリ運動と注意点を紹介
リハビリは患者の機能回復を目指すために行われる治療法であり、注意点を守って行うことが重要です。主な注意点は、患部への過剰な負担を避けること、適切な強度で行うこと、医師やリハビリテーションスタッフの指導に従うことが挙げられます。リハビリ運動の種類は疾患や状態によって異なります。
- 筋力トレーニング:筋力低下の改善
- 関節可動域訓練:関節可動域の拡大
- 知覚訓練:感覚機能の回復
- 姿勢矯正:姿勢不良の修正
リハビリを適切に行うことで、患者様の日常生活での痛みを緩和したり、スポーツへの復帰を早めることができます。痛みを感じる場合は無理をせず専門の病院やクリニックに相談しましょう。
慢性的な痛みが残る原因
慢性的な痛みが残る原因としては、筋肉や靭帯の損傷、炎症が原因として考えられます。これらの症状は、リハビリテーションや運動療法で改善することが一般的です。もし、痛みが長期間続く場合は、適切な診断と治療のため整形外科専門医に相談しましょう。
肩関節周囲の筋肉強化がもたらす効果
肩関節周囲の筋肉を強化することで、肩痛の改善や関節の安定化、動作の制限解消、スポーツへの復帰の促進が期待できます。また、筋肉バランスの改善により、再度の負傷予防も可能です。肩関節周囲の筋肉強化のためには、適切な筋力トレーニングとストレッチが重要です。自分に適したリハビリ運動を見つけ、肩の健康を取り戻しましょう。
肩腱板損傷
肩の腱板は棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋の4つの筋肉群で構成されれいます。腱板はインナーマッスルとして関節の安定性を高める機能があります。転倒などによる怪我や重労働による摩耗で腱板が切れたり、傷んだりすることで肩を上げることができなくなります。
【アウターマッスルとインナーマッスルの役割】
アウターマッスル:表面にある三角筋は大きくて太いために力を発する
インナーマッスル:腱板は関節の安定性を高める
症状
- 肩を挙げることができない
- 肩を動かすと痛みが走る
- 夜間に肩の痛みで眠れない
原因
- スポーツでの怪我や転倒での怪我
- 重たいものをもったり、肩への急激な負担
- 加齢に伴って腱板が変性し、腱板が弱くなって傷んでくる
- 野球の投手など肩の使い過ぎ(オーバーユース)
診断
- 診察:肩の動きや筋力を確認します
- レントゲン:レントゲンで腱板は写りませんが、腱板が切れると骨棘を形成したり、関節の隙間が狭くなることがあります
- MRI:腱板の断裂や損傷を確認できます
治療
薬物治療
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代表的な薬剤:ロキソニン、セレコキシブ、ボルタレン
痛みと炎症を和らげるための薬です。炎症を引き起こす物質の産生を抑制し、炎症を抑えて肩の痛みを軽減させます。
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代表的な薬剤:カロナール
鎮痛薬として使用され、副作用が少ないため小児や高齢者でも使用しやすい薬です。腎機能が悪い方にも使用できます。
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代表薬剤:トラムセット、トラマール、ワントラム、ツートラム
非麻薬性のオピオイド鎮痛薬はロキソニンなどの非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDS)などに効果がない場合に使用されます。脳内にあるオピオイド受容体という鎮痛に関わる受容体を刺激し、脳に痛みの信号が伝わりにくくする働きがあります。夜間痛が強い場合には積極的に使用します。
注射
痛みが強い場合は関節内の炎症を取り除くために、肩関節内にステロイド注射を行います。
リハビリ
まずは、痛みの軽減を目指し、関節の動きが硬くならないようにストレッチを行います。症状に合わせて、徐々に筋力を取り戻す運動を重ねます。理学療法士の指導のもと、正しく運動を行いましょう。
手術療法
関節鏡下で断裂した腱板を縫合することもあります。
石灰沈着性腱炎
石灰沈着性腱炎とは、肩の腱板にリン酸化カルシウム結晶(石灰)が沈着することで痛みが引き起こされる病気です。この病状は、40才~50才の女性に多く発症します。なぜ、リン酸化カルシウム結晶(石灰)が沈着して、炎症を起こすのかはっきりとした原因はわかっていません。
症状
- 誘因(原因)なく、激しい肩の痛み発症する
- 夜間に突然痛みが出ることが多い
- 激痛で寝ることができない、寝返りがうてない
- 痛みで肩を動かすことができない
原因
- リン酸化カルシウム結晶(石灰)が沈着して発症する
- なぜ、起きるのか解明されていない
- 長年の使用による腱の微細な損傷、ホルモンの代謝異常など考えられている
診断
- 問診と診察:誘因なく激痛で発症し、肩を動かせない
- レントゲン:腱板部分の石灰化を確認します
治療
保存的治療
- 安静:肩を安静にし、冷やします。
- 薬物治療:NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)が有効で、炎症反応を抑え、痛みを軽減させます。
- 注射:ケナコルト(ステロイド)の肩関節内注射が最も効果的で、注射でほとんどの方が改善します。エコーガイド下で注射するので石灰部位にピンポイントで注射するので、すぐに効果が出ます。
リハビリ
内服薬や注射で炎症が取れた後も肩可動域が悪い方はリハビリを行い、肩関節の可動域を改善させます。また、痛みや炎症が長引く場合には、疼痛や炎症の軽減を目的に温熱療法や電気療法も取り入れられることがあります。
著者
執筆者 松本 淳志
まつもと整形外科 院長
<経歴>
福岡大学医学部卒
済生会福岡総合病院
九州大学病院
九州医療センター
福岡赤十字病院
<保有資格>
日本整形外科学会専門医
日本整形外科学会認定運動器リハビリテーション医
日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医
日本フットケア学会認定フットケア指導士
<所属学会>
日本整形外科学会
日本感染症学会
日本フットケア・足病学会