成長期に多い野球肘について-症状と適切な治療法-

福岡県久留米市安武町にある「まつもと整形外科」

こんにちは !!

久留米市安武町にある整形外科クリニック まつもと整形外科の理学療法士徳永です!

理学療法士として、日々子どもたちのケガや成長をサポートしている中で、特に多く見かけるスポーツ障害の一つに「野球肘」があります。成長期の野球少年にとって、野球肘はプレーの継続を左右する重大なトラブルとなり得ます。

今回は、そんな「成長期に多い野球肘」について、症状や原因、適切な治療法、再発予防のためのリハビリの重要性、そして自宅でできる簡単なトレーニングをご紹介します。

野球肘とは?

野球肘とは、主に野球の投球動作によって肘関節に繰り返しストレスが加わることで発症する、成長期に多くみられるスポーツ障害のひとつです。医学的には「上腕骨内側上顆障害」や「離断性骨軟骨炎(OCD)」など複数の疾患を含む総称として使われています。

特に小学生〜中学生といった骨・関節・筋肉・靭帯が未発達な成長期の子どもたちは、こうした繰り返しのストレスに耐える力がまだ十分ではありません。そのため、大人よりも関節に負荷が集中しやすく、障害が起きやすくなります。

肘は「曲げる・伸ばす」だけでなく、「ねじる」動作(回内・回外)も担っています。投球動作ではこの複雑な動きが繰り返されるため、肘関節の内側・外側・後方のいずれにも障害が起こる可能性があります。

グローブと野球ボール
野球肘は成長期に多くみられるスポーツ障害のひとつです

野球肘の主な原因

野球肘を引き起こす要因は一つではなく、さまざまな身体的・技術的・環境的な要素が関与しています。以下に代表的な原因をご紹介します。

◯投球数の多さ(オーバーユース)

もっとも大きな要因は、投げすぎです。1日あたりの投球数が多すぎたり、連日試合や練習が続くなどで肘が休まらない状態が続くと、回復が追いつかず炎症や損傷を引き起こします。

投球フォームの乱れ

誤ったフォーム、特に上半身に頼った投球動作を繰り返すと、肘に過剰な負荷がかかります。体幹や下半身を使えていない投げ方では、肘が代償動作として酷使され、痛みが出やすくなります。

◯柔軟性の低下

特に肩や胸、股関節周囲の柔軟性が不足していると、投球時の動作が制限されてしまい、結果として肘への負担が増加します。全身の柔軟性は、肘の負担軽減に直結する重要な要素となります。

◯筋力不足と筋力バランスの崩れ

筋力不足は単なる弱さだけでなく、「バランスの悪さ」も問題です。肩甲帯や体幹、下半身の筋力が不十分だと、上肢だけに力が集中してしまい、肘を酷使するフォームになりがちです。

◯過密なスケジュール(休息不足)

週に何度も試合や遠征がある、休みがなく練習が続くといったケースでは、組織の修復に必要な「回復の時間」が確保できません。成長期はただでさえ身体が作り変わる重要な時期であるため、適切な休息が取れないことは大きなリスクとなります。

 

発症しやすい年齢層とポジション

野球肘は、小学校高学年(10〜12歳)〜中学生(13〜15歳)に特に多く見られます。

また、以下のようなポジションに特に多く発症します。

◯ピッチャー(投手):長時間にわたって繰り返し全力投球を行うため

◯キャッチャー(捕手):スローイング回数が多く、姿勢的にも負担が大きい

◯ショート・セカンド:クイックスローを多用するため、フォームが崩れやすい

ピッチャー
ポジションによって負担がくることがあります

 

成長期ならではの注意点

成長期の特徴として、骨よりも筋肉・腱・靭帯の成長が遅れる傾向があります。そのため、骨に付着する部分(付着部)で炎症や剥離が起きやすいのが特徴です。筋肉や腱が硬くなることで柔軟性も低下し、投球フォームに悪影響を与えるという悪循環に陥ることも少なくありません。

このように、野球肘は単なる「投げすぎ」だけでなく、身体全体の使い方や成長のタイミング、休息の質など、複数の要因が重なって発症する障害です。早期発見と適切な対処が、将来的なスポーツライフを守る鍵となります。

理学療法士の視点から見るリハビリの重要性

成長期の野球肘を再発させないためには、以下の3つがポイントとなります。

① 正しいフォームの習得

肘への過剰なストレスは、フォームの乱れから生じることが多いです。ビデオや指導者のフィードバックに加え、理学療法士が身体の使い方を評価し、修正をサポートします。

② 柔軟性の回復と改善

肩甲帯、体幹、下肢の柔軟性が低下していると、投球時に肘へ余計な負荷がかかります。特に以下の部位は重点的にストレッチを行う必要があります。

◯肩の後方(肩甲下筋・小円筋)

◯前腕の屈筋群

◯股関節周囲

③ 筋力強化とバランス改善

局所的な筋力強化だけでなく、全身の連動性を高める「運動連鎖」の視点が大切です。体幹や下肢の安定性が不十分だと、投球時に肘へ負担が集中してしまいます。

自宅でできる!野球肘予防のトレーニング

ここで、リハビリや予防にも役立つ簡単なエクササイズを1つご紹介します。

【体幹・肩甲帯の安定性を高めるトレーニング】

「四つ這いアームリフト」

方法:

四つ這いの姿勢になり、背中を平らに保ちます(頭からお尻まで一直線)。

片手をゆっくり前方に伸ばし、3秒キープ。

手を戻して反対側も同様に行います。

左右10回ずつを1セットとして、1日2セット行いましょう。

    効果:

    • 肩甲帯の安定性向上
    • 体幹の筋出力バランスの改善
    • 投球時のフォーム安定と肘への負荷軽減
    運動する男性理学療法士
    痛みのない範囲で運動をしましょう

     

    まとめ

    成長期の野球肘は、早期の発見と適切なリハビリ、トレーニングによって予防・改善が可能です。特に成長期は身体が変化する時期ですので、一度の完治ではなく、継続的なケアと正しい身体の使い方を身につけることが重要です。

    理学療法士として、子どもたちが「好きな野球を長く続けられること」を何よりも願っています。保護者の方や指導者の皆さまも、ぜひ選手の変化に気づき、早めに専門家へご相談ください。

    スポーツリハビリ

    まつもと整形外科ではスポーツでのケガの治療を専門とするスポーツリハビリチームがあり、スポーツでのケガの治療を専門とする理学療法士が治療を担当します。スポーツリハビリでは、スポーツでのケガに対して早期スポーツ復帰、再発の予防、パフォーマンス向上を目的としてリハビリを行っていきます。競技特性に応じた専門的なリハビリが必要となるために、スポーツでのケガでお悩みの方、リハビリをご希望の方はぜひご相談下さい。

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    【参考文献】

    ・日本整形外科学会,野球肘 https://www.joa.or.jp/public/sick/condition/baseball_elbow.html

    2025年05月02日