福岡県久留米市安武町にある「まつもと整形外科」
こんにちは
久留米市安武町にある整形外科クリニック まつもと整形外科 院長 松本淳志です
今回は、前十字靭帯損傷(ACL損傷)の原因と症状、治療法である再建手術、手術後のリハビリについて詳しくご紹介します。また、経過期間ごとのリハビリプロセスを順序立てて紹介し、理学療法士との連携による最適なリハビリ実現の方法や自宅で行えるトレーニングもご紹介します。これにより、前十字靭帯損傷(ACL損傷)からの完全復活への道を見つける助けになれば幸いです。
前十字靭帯損傷(ACL損傷)は、膝を安定させるために最も重要な膝関節にある靭帯が損傷(断裂)し、多くの症例で手術が必要となるために、スポーツ障害のなかでも最も重症度が高い膝の怪我になります。特に競技中のジャンプや旋回、着地時に負担がかかるため、サッカーやバスケットボール、バレーのスポーツ競技での発症が多いです。多くは学生の部活や社会人でのスポーツ選手であり、適切な治療とリハビリが必要となります。
前十字靭帯(ACL)は膝関節の安定性を保つために重要な役割を担っているため、断裂や損傷が生じると運動機能が低下します。スポーツだけではなく、日常生活の歩行にも支障をきたします。適切な診断や治療を受けることで、再び安定した膝関節機能を取り戻すことが可能となります。
前十字靭帯損傷(ACL損傷)の原因は、膝に過度の負担がかかった場合に起こることが多いです。外的要因として、交通事故やスポーツ競技中の着地や衝突などが考えられますが、内的要因として筋力不足や不適切な筋トレも考えられます。
膝の痛みは、前十字靭帯損傷(ACL損傷)の重要なサインとなります。また、膝の腫れや関節が不安定感がある場合も注意が必要です。早期に整形外科専門医の診察を受けることが大切です。
前十字靭帯再建手術は、前十字靭帯損傷(ACL損傷)の治療法としてポピュラーな方法であり、再び安定した関節機能を取り戻すことが可能です。手術では、損傷した靭帯を再建することで、膝関節の安定性を回復させることが目的です。適切な手術や術後のリハビリを行うことで、安定した関節機能が獲得できることが期待されます。
手術後のリハビリは、関節機能を回復させる上で非常に重要です。手術をしただけで、治る訳ではありません。手術で前十字靭帯が再建された場合、適切なリハビリが行われないと、手術の効果が十分に発揮されず、膝関節の可動域が低下したり、筋力が低下したり、再び膝関節の不安定感が現れることがあります。
リハビリでは、動作の再教育や筋力トレーニングが行われます。また、歩行訓練やジャンプ訓練なども取り入れられることがあります。リハビリにより、安定した関節機能を取り戻すための重要な要因となります。
リハビリプロセスは経過期間に応じて順序立てた運動が効果的な回復を促します。治療の目標は、関節の安定化、関節可動域の改善、筋力の回復、運動制御の向上であり、リハビリの流れは早期、中期、後期に分けられることが一般的です。
早期リハビリでは、関節の可動域を確保しながら痛みの軽減と安定感を得ることを目的とし、リハビリテーションや筋力トレーニングが行われます。例として、松葉杖を使用した歩行訓練や静的バランスの向上が挙げられます。
一方、中期では筋力トレーニングや競技力の回復が重点となります。具体的には動的ストレッチ、骨盤のコントロール、足関節の筋力トレーニングなどが行われます。ジャンプや着地トレーニングを取り入れることで、力強い動作の修得が期待できます。
後期では競技復帰を見据えて、より高度な練習や運動が取り入れられます。サッカーやバスケットボールなどスポーツ特有の動きを繰り返すことで、競技力が向上します。リハビリの期間や内容は状態や症状によって異なりますので、整形外科専門医や理学療法士と相談しながら進めてください。
早期リハビリのポイントは松葉杖を活用した歩行訓練です。この訓練は、関節の可動域を向上させ、痛みを軽減することができます。また、松葉杖を使用することで、足関節や膝関節に適切な負荷をかけることができ、筋力の低下を防ぐ効果があります。ただし、歩行訓練の際には無理をせず、整形外科専門医や理学療法士と相談しながら進めることが重要です。
中期では力強い動作の修得が重要です。ジャンプや着地トレーニングを実施することで、筋力が向上し、スポーツ競技力が回復します。また、膝関節の安定性を高めるために、大腿四頭筋を鍛えるトレーニングも効果的です。ただし、トレーニングの強度や頻度はその時の状態や医師、理学療法士の指導に従って調整することが重要です。過剰なトレーニングは再発のリスクを高めるため、注意が必要です。
スポーツにおいて、膝の損傷や靭帯損傷を受けた場合、適切なリハビリテーションが競技復帰を大きく左右します。そのため、後期リハビリの過程では、スポーツ特化型のトレーニングメニューが重要であると言えます。この段階でのリハビリには、筋力向上や関節可動域の回復、バランス感覚の再教育などが含まれます。
では、どのようなトレーニングが適しているのでしょうか。以下に一例を示します。
– ジャンプや着地動作の練習
– 競技固有の動作練習(サッカーならパスやシュート、バスケットボールならドリブルやシュート)
– 筋力トレーニング(特に大腿四頭筋やハムストリング)
– バランス感覚と連動性の向上を目指したトレーニング
最適な後期リハビリに取り組むことで、競技復帰に向けて確実な成果を得ることができます。
リハビリテーションの過程において、理学療法士との連携は非常に重要です。理学療法士は、運動器疾患に対する専門的な知識と技術、経験を持っており、リハビリの効果を最大化することができるからです。
理学療法士は、運動能力を的確に評価し、最適なリハビリプログラムを立案します。また、リハビリ期間中の経過や効果を把握することにより、リハビリプログラムの調整が可能となり、競技復帰に向けた迅速な改善が期待できます。
理学療法士と連携することで、選手が安心してリハビリに取り組める環境が整い、競技復帰の成功率が向上します。
理学療法士は、個々の症状や運動能力を正確に評価し、適切なリハビリ方法を提案します。患者様が抱える問題や背景、ニーズを理解し、それに応じたアプローチをとることで、リハビリの効果を向上させることができます。
例えば、膝関節の不安定性が原因で痛みを感じる場合、筋力トレーニングや安定性を向上させる運動が重要となります。一方、関節可動域の制限が問題であれば、ストレッチングや柔軟性向上のための運動が適切です。
理学療法士による評価と個別化されたリハビリ方法により、患者は効果的なリハビリに取り組むことができ、早期の競技復帰が現実的となります。
外来での通院リハビリも重要ですが、自宅で自主トレーニングを取り入れることで効果的なリハビリテーションを継続することができます。具体的には、筋力トレーニングや関節可動域の向上に焦点を当てた運動が推奨されます。筋力トレーニングでは、大腿四頭筋やハムストリングスなどの筋力を向上させることで、膝関節の安定性を高めることができます。また、関節可動域の向上を目指す運動では、膝の屈曲や伸展をスムーズに行えるようになることが目的となります。
これらのトレーニングを自宅で継続的に行うことで、通院リハビリの効果を最大限に引き出すことが可能です。
自宅で継続可能なリハビリメニューについて具体的な例を挙げます。
– 膝を曲げ伸ばしする運動:椅子に座った状態で膝を曲げ伸ばしすることで、膝関節の可動域を向上させることができます。
– ウォールスクワット:壁にもたれかかりながらスクワットを行うことで、膝周りの筋力を向上させることができます。
– ヒールスライド:床に仰向けに寝転んで膝を曲げ、かかとを床に滑らせて膝を伸ばす運動です。これにより膝関節の動きをスムーズにし、筋力を向上させることができます。
リハビリメニューを自宅で行うことで、通院リハビリとの間に負担を軽減し、継続的なリハビリを維持することができます。ただし、運動のフォームに注意し、痛みや過度な負担を感じた場合は直ちに医師や理学療法士に相談してください。
継続的なリハビリを行うことで、安定した膝関節を取り戻すことができます。そのため、通院リハビリと自宅でのトレーニングを効果的に組み合わせ、膝関節の機能回復を目指すことが重要です。リハビリは個人差があるため、整形外科専門医や理学療法士と相談しながらすすめましょう。
まつもと整形外科ではスポーツでのケガの治療を専門とするスポーツリハビリチームがあり、
スポーツでのケガの治療を専門とする理学療法士が治療を担当します。スポーツリハビリでは、スポーツでのケガに対して早期スポーツ復帰、再発の予防、パフォーマンス向上を目的としてリハビリを行っていきます。競技特性に応じた専門的なリハビリが必要となるために、スポーツでのケガでお悩みの方、リハビリをご希望の方はぜひご相談下さい。
【参考文献】
・理学療法診療ガイドライン https://www.japanpt.or.jp/upload/branch/jsptdm/obj/files/理学療法診療ガイドライン%E3%80%80第1版%E3%80%80ダイジェスト版.pdf
・日本スポーツ整形外科学会(JSOA),スポーツ損傷シリーズ6膝前十字靭帯損傷 https://jsoa.or.jp/content/images/2023/05/s06.pdf